中編集 ラブライブ 虹ヶ咲   作:カーテンと手袋

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動物達の隠れ家 (近江彼方7)

淑女とうさぎは、街を出ました。

質屋で洋服を売り、旅の資金に当てました。

目的地はうさぎの故郷。

うさぎは一つだけ思い出しました。

あゆぴょん「私、昔は人間でした」

淑女は驚いてしまいました。

うさぎの口から、そんな言葉が出てくるなんて。

あゆぴょん「道端で目覚めた時、病室で話したことよりも前の記憶。繋がりがあるかも分からないけど、自分が人間だった記憶が確かにあるんです」

彼方「驚くを隠せない」

あゆぴょん「私もです!」

二人はそんなことを話しながら、歩みを止めませんでした。前方から不思議な動きをした人が来ました。

果林「あら」

あゆぴょん「あ!」

女性は立ち止まって挨拶をしました。

果林「こんばんは。今日はいい天気ね。日焼けが怖いけど、まぁ、それも気にしないほどいい天気」

彼方「同感」

うさぎは威嚇していました。

果林「こんな日って、歌を歌いたくなるわよね」

彼方「うむ」

果林「あなた、なかなか話がわかるわね」

彼方「お主もな」

淑女と女性は笑い合いました。うさぎは淑女の脚をぽかぽか叩きました。

彼方「帰りですかな?」

果林「そうよ、ちょっと隣町までね」

彼方「そんな遠くまで?」

果林「競歩の選手なの。まぁ必然よね、脚が長いんだから」

脚を前に出してアピールしました。

彼方「羨ましいかぎりですぞ」

果林「日々のストレッチが大切よ」

彼方「そういえば、キノコの森って向こうでいいのかな?」

果林「だいぶ、遠くまで行くのね。合ってるはずよ、そっちでね」

淑女はお礼を言って女性とお別れしました。うさぎはずっとぽかぽか叩いていました。

隣町では、お昼ご飯を食べ、先を急ぎました。

 

森がありました。

うさぎに連れられ一歩踏み出すと、そこには静寂と冷涼が潜んでいました。淑女はブルブルと身体を震わせました。

あゆぴょん「ここです」

うさぎが指差した場所には、電車の形をした石が置いてありました。

彼方「ここ?」

淑女がなにやなにやと思っていると、うさぎは掌で二回音を出しました。

あゆぴょん「続けてください」

淑女は言われた通りに手を叩きました。

そして、うさぎが石の周りを回り始めると、その後ろをついて行きました。右回りに二周すると、右手で石を触りました。

あゆぴょん「ひらけごまだんご!」

彼方「おっ? ひっ、ひらけごまだんご!」

石が突然、光り出しました。

 

遥「もう帰ってきたの? 早い家出だね」

あゆぴょん「ちっちがうもん! たくさん勉強してきたんだから!」

遥「後で、その成果、見せてもらうね」

あゆぴょん「ううぅー」

朦朧とした意識の中で、淑女はそんな会話を聞いていました。

遥「たくっ……また長老に怒られなよ」

あゆぴょん「それは嫌だけど……長老に話があるから、ちょうどいいかも」

遥「直談判は偉いね」

あゆぴょん「もうっ! あっ……そうだ、凄いこと思い出したんだよ!」

遥「何?」

眩しいくらいの陽が、淑女の瞼に乗ります。

あゆぴょん「私、人間なの! 理由とかはわからないんだけど、人間だって分かるの!」

遥「っえ!? 人間!? そっか、そうなんだ……思い出したんだね、だったら長老のところに行くのはいいかも」

あゆぴょん「ちょっとだけね、私、結構可愛い子だった気がしてる」

遥「うーん、あんまり変わらないね。まぁ、着いてきてよ、可愛い可愛いあゆぴょんさん」

あゆぴょん「もう!」

うさぎは淑女を揺すって起こしました。淑女はうさぎとリスが元気よく話す姿を、半目で眺めていました。とってもかわええと思いました。

リスに案内されている途中、沢山の動物達がいました。それらはこちらを見て驚いていたりしました。

遥「ここだよ」

案内され、扉が開かれると、一匹の亀が椅子に座っていました。

「新しい子達ですか?」

遥「いいえ。歩夢が思い出したそうです」

「戻ったのですね、それに、えっ!?」

亀は淑女を見て、驚きました。淑女は椅子に座る亀を器用なものだなと眺めていたところです。

「お嬢様……どうして、いえ、あ……」

彼方「えっ……」

「分かりませんよね、このような姿では、私です。お城でお使いしていました栞子です」

彼方「しっ栞子ちゃん!?」

栞子「驚くのも無理はありません。何故か亀になってしまいましたので。それに」

亀はリスに目配せをしました。

遥「邪悪な気配が、この方からは全くしません」

栞子「そんな不思議なことがあるのですね」

遥「私も、初めてです」

栞子「お嬢様は、記憶の欠損が何一つ無いということですね」

あゆぴょん「???」

彼方「うっうん。えっと、なにがなんだかだよ?」

栞子「ああ。ごめんなさい。これからお話し致します。あの日までの事を」

彼方「あの日?」

栞子「はい。しずくさんのことです」

あゆぴょん「あのひどい人!」

亀はリスに目配せをしました。

遥「歩夢、向こうに行くよ」

あゆぴょん「がーん!」

彼方「あ、関係ないかもしれないけど、私の、私の友達だから。一緒に聞いてて欲しい。ダメ?」

栞子「まぁ、お嬢様がそこまで言うなら。歩夢、静かにしていてくださいよ」

あゆぴょん「はーい……」

彼方「よしよし」

栞子「しずくさんと私は、物心つく前から、お嬢様のお城で召使いをしてきました。楽しい事も辛い事も、まるで姉妹のように苦難を乗り越えて来たのです。私はお嬢様としずくさんと、身分はないけれど、お城での生活にささやかな幸せを感じていました」

リスは紅茶のマブカップをみんなに配りました。良い香りが漂っています。

栞子「……ある日からでした。しずくさんはどこか遠い目をする様になりました。熱を帯びるような、求めるような、潤んだ瞳のような、とても悲しそうな目を。私は聞きました『お暇をもらったら』どうかと。そしたらこう言ったんです『私たちって、どこに行くのかな』しずくさんの目は力がこもっていました。でも、すぐに笑って『大丈夫』と言っていました。それからは何もなく、お嬢様の方が私たちの心配の種になっていました」

彼方「その度は……」

栞子「いいんです。それが召使いの役目。でも、お嬢様が立派になられて良かった」

あゆぴょん「私も! 私も立派になったよ!」

遥「あゆむ」

栞子「そうですね」

あゆぴょん「えへへ」

彼方「私が城を追い出されてからって事だよね」

栞子「はい。その直前からしずくさんは手鏡を持ち歩くようになったんです。今思えば、それが元凶だったなんて……」

あゆぴょん「手鏡……」

栞子「そして、お嬢様は隣町へと置いたと聞きました」

彼方「私は木の下だったから、もうすでに……か」

栞子「はい。その夜です。しずくさんは『機が熟しました』と私に言いました。『どうしたんですか』と聞いても何も答えてはくれませんでした。そして、しずくさんがボソボソと何かを呟くと、気がついたらこの姿に」

遥「記憶が残っている人達で、話し合った結果、同時刻に私たちも同じように」

あゆぴょん「私は覚えてない……」

栞子「記憶の欠損は、個人差があるようです。一部だけや、多くを覚えている人、まちまちです」

彼方「それって、分かるものなの? 私が過ごした人たちは、忘れていることすら忘れているように感じたから」

栞子「単独では不可能に近いと思います。それ程まで、手鏡の効力が強いんです。しかし、遥だけは、影響を受けた人が視えると」

彼方「凄い」

遥「人間の頃は、呪術師をしていたんですよ。まぁ、全然相手にされなかったんですけど」

栞子「黒いもやが視えるそうなんです。その大きさによって程度が分かるそうです」

彼方「それで、彼方ちゃんには記憶の欠損がないって分かったんだね」

遥「私に出来るのはこれくらいなんですけどね」

栞子「ですが、大事なことが分かりました。手鏡の効力は、しずくさんに近ければ近いほど薄まるということを」

彼方「私が……栞子ちゃんよりも近いってこと?」

栞子「詳しくは何とも……ですが、姫の立ち位置は入れ替わっています、それが関係しているのかもしれません」

彼方「姫……か……思えば、お城の時から姫らしい事なんて何にもしてないよ」

あゆぴょん「私と出会った頃からも、姫らしいとは思ったことないですよ」

リスはうさぎの頭をはたきました。

彼方「確かにそうかも」

栞子「でも、私たちの世界は少しだけ変わってしまっています。……私は元に戻したい。元には戻らないかもしれませんが、邪悪な力など、あってはなりません」

彼方「なんだか、難しい話になってきたなぁ」

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