堕天使の大冒険   作:VerT-EX

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1話[堕天使はこんらんしている!]

さて、皆様は『ドラゴンクエスト』というものをご存知だろうか。

 

はいそこ早かった。そうそう、その通り。かの有名なRPGゲームから始まるシリーズ群だ。

 

俺が知る限りでは、リメイク込でメインシリーズが1〜11、モンスターズがリメイクもあって数作品、スライムもりもりが3作品にソシャゲが何作品か。外伝とかマンガとか他にもいくつかある。

で、特にメインシリーズだが、RPGという特性上もあって『ラスボス』がいる。例えば1の竜王様とか、6のデスタムーア、11のウルノーガ。10はMMOなんで微妙だが、一応Ver.1.0のネルゲルってことにしておこう。

 

で、うち『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』というメインシリーズ9作品目がある。

9のメインストーリーのラスボスに当たるキャラクターは『堕天使エルギオス』。色々あって人間を憎んで堕天して、怪物化して人間を滅ぼそうとする天使。割と美形。

 

──えっ、何が言いたいか分からないからハッキリしろ?

分かった、端的に言おう。

 

『俺は何故かエルギオスの姿を持って、謎の森で目を覚ました』のだ。

 

 

───────

 

「………って、納得できるかああああああ!!!!」

 

目を覚ましてから体感時間で早数時間。どうしてこうなったのかと考え続けて出した答えはどれも絶対違うと言う結論に至った。

 

さて改めまして、自分の名前はエルギオス。元天使で元堕天使、現在全く分からない状態の輪無し羽なし天使もどきだ。

エルギオスはあのDQ9のメインストーリーのラスボスの堕天使で間違いない。間違いであって欲しかったけど。

なぜ確信があるのかと聞かれれば、まず見た目を挙げるだろう。エルギオスは3つの姿がある。天使としての姿、堕天使としての姿、化け物の姿。今の俺は1番目、天使としてのエルギオスの姿である。ただし、そこから9の主人公よろしく輪と羽をとっぱらった姿だが。

 

で、次に記憶。現在俺にはおよそ2つ記憶がある。

『エルギオス』としての記憶。天使界にいた頃から、あの忌々しい──じゃなくて、わかりやすく言うと9の主人公に撃破されて、星になる直前辺りまでの記憶。

もうひとつが、『いつかどこかの誰か』の記憶。有り体にいえば前世の記憶か。とは言っても、いつのどこの誰だったかは覚えてないし、だいたいサブカルチャーについての知識ばかりが多くを占めるが。

 

以上のことより、俺はエルギオスである!!証明完了AED!じゃなくてQED!!

 

 

で、現在地は良く分からん森の中。どこだよここ。

目が覚めてから少し彷徨う中、バブルスライムを見かけたので間違いなく何かしらのドラクエ世界であることは確実だ。

 

彷徨った結果、一応森の中とはいえ若干開けた場所に出たため、知識を総動員して超簡易拠点を作る。焚き火と座るための石を持ってきただけだけど。

 

「自由度なら10辺りがいいなぁ……9ならめんどくさそうだから何とかしなきゃだし。11ならどの時点か、だな。」

 

バブルスライム、というかスライム系統は外伝含めて基本皆勤賞の一族だ。まだ見たのはバブルスライムだけなので、どこのドラクエか断定できない。

それに。

 

「呪文、どーやって使うんだよ……」

 

現在、魔物に襲われた際の対抗手段がほとんどない。装備品的には見た目からすると『みかわしのふく』以外は『天使の』シリーズだ。一応『スーパーリング』も着いてるので、状態異常に関しては問題ないと思いたい。

で、肝心の武器なのだが……『きりんのおうぎ』である。よりにもよって扇である。せめてムチがよかった。

 

しかもなんで『たまはがねのおうぎ』みたいな鉄扇とかじゃなくて『きりんのおうぎ』なの?!ホイミ効果はあるけどうまのふん錬金するやつじゃん?!いやモンスターからもドロップするけど。

 

ゲームでは、はねのおうぎでも普通に戦っていたが、実際持たされるとどうしろって言うんだ。

呪文の使い方も上手く思い出せない。ならばと特技系統を考えたが……。

まず、『急降下』は羽が無いため無理だ。飛び上がってってのはそれほぼムーンサルトじゃねーかということで、後で出来ないかやってみるとこに。

『激しい稲妻』はなんとなくできる気がしたが、下手すると森が焼けるので保留。

『いてつくはどう』らしきものは出来たが、攻撃手段ではない。

 

第2形態で使えた『あやしいひとみ』とか使えるといいのだが、練習相手がいないと分からない。

テンションとかもよくわからん。

 

以上より、とりあえず魔物に出くわしたら逃げるしかない。幸い『みかわしのふく』のおかげで動きは軽いため、逃げに関しては問題ないと思われる。

 

「……腹減ったなぁ」

 

くうううと腹が鳴る。天使でもお腹は減るのか……とか謎の関心をしてしまったが、食料も水もないのがマズイ。

せめて獣系のモンスターでもいたらいいんだけど……。

 

と、思った矢先。近くの茂みが揺れた。気休めに扇を広げて構える。

 

ガサガサ、ガサガサと出てきたのは───グリズリーだった。

 

「は……?」

 

かなり腹を好かせてるのか、ヨダレを垂らしながらゆっくりと向かってくる。

確かに獣系のモンスターいないかなとは思ったけど!!それはいっかくうさぎとそういう感じのモンスターの事で、こういう猛獣じゃないんだ!!

 

「グルルルル……」

 

よし、熊に会った時の対処法だ。

まず目を離さずにゆっくりあとずさる!!で、持ち物を投げ……れねえわ!!なけなしのきりんのおうぎ投げる訳にもいかねえ!!

 

とにかくゆっくりとあとずさろう。ゆっくり、慎重n

 

バキッ。

 

「あ」

 

落ちていた枝が折れる音がした。それを皮切りに、グリズリーはいきなりおそいかかってきた!

 

「グァァルァァァァ!」

 

「ふえああああ?!」

 

焚き火を中心に、ぐるぐると回るように攻撃をなんとかして回避していく。流石、みかわしのふく。回避に関しては万全だ。

が、回避し続けではいつかこちらの体力が尽きるのが先だ。天使もどきとはいえど、野生の熊の体力には勝てない。

 

かと言って焚き火を離れる訳にもいかない。離れればほかの魔物に襲われるのがオチになる。

俺死んでまうストーリーとか勘弁やで!……とか言ってる場合じゃなくて。

 

「へえええるぷみいいいい!!!」

 

とりあえず叫ぶ。人が来るとは思わないけど───

 

「メラ」

 

「ギャウ?!クューン!」

 

どこかから飛んできた火球──メラにより、グリズリーは驚いたのか逃げて行った。

誰かと思って周囲を見渡す。すると、茂みの方から人影が出てくる。

 

「先生、やっぱり人がいますよ!」

 

「おや、本当ですね。そこのお方、無事ですか?」

 

茂みから現れたのは2人組──勇者の家庭教師(アバン先生)後の大魔導士(ポップ)だった。


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