「そこのお方、無事ですか?」
「えっあ……はい。ありがとうございます?」
アバン先生にもう一度声を掛けられてハッとして、何とか答える。
とりあえず立ち話もあれだし、ということで焚き火の近くに持ってきた石とかに座ってもらうことにした。
ポップがちょっと文句を言っていたが、石であることに対して文句を言いたいのは俺も同じである。座布団が恋しい。
「……なるほど。村を出てからの記憶が無く、いつの間にか森に迷い込んでいた、と?」
「はい。セントシュタインへ買い物に行こうと村を出たのはいいんですが……その後から何も思い出せないんです。」
とりあえず、「ウォルロ村に住んでいる旅芸人で、買い物のに行くつもりがいつの間にか森にいた」ということにしておこう。ウォルロ出身じゃないし住んでいないのだが、同じドラクエシリーズの別世界出身であることは間違いない。
なんでナザムじゃないのかって?………色々あるから、そこはスルーしてくれると助かる。
「ウォルロ村にセントシュタイン城ですか。聞かない名前ですねえ。」
「先生、聞かないも何も存在しないですよ?!」
アバン先生が真面目に思い出そうとしてくれているが、ポップの反応が普通正解である。というかなんでアバン先生は真面目に考えてるんだ。
ただ、ここはきちんと反応を合わせなければ。
「存在、しない……?どういうことですか?!」
あたかも取り乱したかのように言ってみせ、すぐに落ち着いたフリをする。ポップがビクッとしているが、そりゃ驚く。驚かせたのはすまない。
「落ち着いてください。地図に乗ってない場所という可能性も無きにしも非ずですから」
「すみません……けど、えっと……ここは?」
しばらくあーだこーだ言い合い、とりあえずここはロモスの近くにある森だと言うことは分かった。魔の森だろうか?と思ったものの、多分違う。
「うーん……よく分かりませんねぇ。ま、とりあえず……」
状況が分からないまま、アバン先生は何やら荷物をゴソゴソとあさり出した。自分もポップも『?』マークを浮かべる。
「晩ごはんにしましょーか!」
ズコーんとコケた。いや確かに腹は減ったけどね!とは言っても、自分は何も持っていないのだけども……。
「あの……自分、何も持ってないのですが……?」
「いいのですよ!とりあえず共にごはんを食べれば分かり合えますからね!」
「????」
わかるけどわからない。そう首を傾げると、ポップがそっと肩に手を置いて、「先生はこういう人だから」とでも言わんばかりに苦笑いだ。
「と、言うことでポップ、それと……」
「あ……自分はエルギオスと申します。」
「エルギオスさん、手伝ってくれませんか?」
「それは勿論」
と、言うことで突然始まりますはドキドキ☆飯盒炊飯である。ごめん自分でも何言ってるかわかんない。
やり方は簡単。飯盒に水と穀物と肉を突っ込んで、簡易的に作って立てた棒にひっかけて焚き火の上で煮込むだけ!
「ね?簡単でしょう?」
で、現在は3人でリンゴを剥いている。剥いているというか種を取っているという方が正しいか。
確かに簡単だとは思うけど、その言い方はどうしてか脳裏に黄色っぽいDJっぽいペンギンの姿がチラつきます、アバン先生。
「そういえば、お二人は何の為に旅を?っていうか……ポップ……さん?は先程アバンせ…さんのことを先生と呼んでいましたが」
「おっと?それ聞いちゃいます?それはですねぇ……」
丁度料理(?)が出来上がったので、皿によそって貰い、食べながら説明を受ける。いやまあ知ってるんだけど、本人の口から聞いてみたいのだ。
数分後。
「……なるほど。凄いですね」
「先生はすげーんだぜ!」
話しているうちに、ポップが少し警戒を解いてくれたらしく、アバン先生のことについて語る。
さてここで、かなり早いが今後の身の振り方を考えよう。
まず、ほのぼの隠居。これが最も理想だが、できる気がしない。どの道『この先』……言ってしまえば『本編』があるのだ。この2人がいる以上、本編に突入してしまえばほのぼのとか無理だ。結局戦いに巻き込まれる。
しかも今の自分は正直言って弱い。
それならば、いっその事アバン先生について行くのが得策だろう。とりあえず『死なない』のが先決だが、そのためには力がいる。特にドラゴンクエスト系列の世界はそうだ。せめて何かしら魔法か特技か武器かが使えるようにはなりたい。
なら、後者しかあるまい。しかし、簡単に弟子入りOKしてくれるかどうか……
ご飯も食べ終わる頃。
「……ふぅ、腹いっぱい……」
「美味しかった……ご馳走様、です。」
初めての飯は簡素なものだったが、美味しかった。だが、和食には敵わないなぁとは思う。出来たらいつか再現したいが……それはさておき。
「…アバンさん。ひとつ、よろしいでしょうか」
「はい?どうしました?」
「自分も、旅に連れて行っては……ああ違う。弟子にして貰いたいのです。」
「?!」
驚きのリアクションを取ったのはポップ。アバン先生は顎に手を当てて考える素振りだ。
「どう、でしょうか……」
「いいでしょう!ですが、弟子となると…修行は厳しいですよ?」
「せ、先生?!」
「問題ありません。野垂れ死にするよりも遥かに良いですから」
「なら、ベリーベリーOKです!」
うーーん、分かっているけどノリが軽い。一番の問題は、このテンションについていけるかどうかになりそうだ。
で、まあとにかく。今日の所は寝ることになった。
書いてるうちにわからなくなってきました。申し訳ないです