ひょんなことから、テレビで人気の遊園地に行くことになりーーー!?
僕の名前は坂本龍馬。
東京でしがないサラリーマンをしている。
今日は、巷に人気の遊園地に来た。
何故かと言うと....
あれは、家で一緒にテレビを見ていた時のことだ。
『今日はネズミーランドに来ていま〜す!すごい人ですね』
ネズミーランドは、老若男女幅広い層に人気の遊園地だ。
どうやら新しいアトラクションが出来たようで、それを紹介する番組だった。
お竜さんは、それを興味深そうに見ている。
「リョーマ、あいつらはなんであんなうじゃうじゃ集まってるんだ?」
「うーん、楽しいからかな?」
「楽しいのか?うじゃうじゃ集まるのが?」
「乗り物がたくさんあったり、美味しいご飯もたくさんあるからね」
「ふぅん、そうなのか...」
食い入るようにテレビを見ている
お竜さんからしたら、目に写る何もかもが新鮮なのだから仕方ない。
「興味があるなら、今週末にでも行くかい?」
「本当か?」
「ああ、何も予定はないし。僕は構わないよ」
こうして、はるばる遠出して来たのだった。
「はあ...遊園地とか、何年振りだろう...」
来るまでの道のりで既に疲れている僕をよそに、
お竜さんは元気いっぱいだ。
「リョーマ、次!次あれ!あれ乗りたい!」
「はいはい、分かってますよ」
はしゃいで、文字通り浮かれているお竜さん。
その後を僕は慌ててついて行った。
※
テレビで紹介されるだけあって、今日はすごい人出だ。
特に新しく出来たアトラクションは一番人気で、数十分待ちのようだ。
乗り物の列に並ぶと、順番待ちをすることにした。
お竜さんは、さっき買ってあげたポップコーンを頬張っている。
「これ美味いな。リョーマのやつは何味なんだ?」
「僕のはキャラメルだよ。甘いのが好きだからね」
「美味そうだな、ちょっと寄越せ」
「はい、どうぞ」
乗り物の待ち時間の間、話をしながら時間を潰す。
「はあ...お竜さん早く乗りたいぞ」
「まあまあ」
「こんなに長い時間並んだら、あっという間に帰る時間になるんじゃないか?お竜さん、心配だぞ」
「大丈夫だよ、乗り物は逃げたりしないから」
「テレビでやってたから、やっぱり人気なんだな」
「かもねぇ。まあ、気長に待とうよ」
「しかし、人間ばっかりなのは気が滅入るな。少し減らして欲しい」
「えっ」
「お竜さん、食って良いか?丁度、腹減ったし」
「た、食べちゃダメだよ!連休だし、仕方ないんだよ」
なだめるように頭を撫でる。
「お腹空いたなら、これ乗ったらお昼にしよう。ね?」
「ま、まあ...乗り物はたくさんあって面白いし、お竜さんは気に入ったぞ」
「はは、なら良かったよ」
楽しそうにしてくれるので、連れてきた甲斐があるというものだ。
「...でもさ〜カップルにしたら、ちょっと歳離れてない?」
「女の子は可愛いけど、あっちはおじさんじゃん」
「ぷっ、おじさんってw」
後ろからヒソヒソ話をされ、ぎくりとする。
恐らくは、中学生くらいだろうか。
並んだ列の後ろにいる若い女の子が、どうやら僕らについて話しているらしかった。
「やば、気付かれたんじゃない?」
「平気でしょw」
それを聞いていたのは、僕だけではないようだった。
「なあ、リョーマ。カップルってなんだ?」
「えっ?」
「お竜さんとリョーマは、後ろの奴らが言うようにカップルってやつなのか?」
「いや...その...」
思わず、口篭ってしまう。
僕としてはいつも家事を頑張ってお竜さんの労いの為というか。
田舎の親戚の娘を引率しているくらいの気持ちだった。
だが、側から見たら若い娘に振り回されているおじさんだ。
「僕なんかとカップルじゃ、お竜さんが可哀想だよ」
平気なフリをして、へらへらしながらそう答える。
「じゃあ、お竜さん達はカップルじゃないのか?」
「そう、だね...」
「ふーん、そうなのか」
何と言っていいか分からない。
周りにも、そういう仲ではないと何回も言っている。
なのに、自分で言って落ち込むなんて思いもしなかった。
「ほら〜やっぱり...」
「もしかしてさ、パパ活かもよw」
「やだぁ〜」
やはり、側から見たらそう見えるのだろうか。
さっきまで楽しかった気分が、少しだけ滅入ってしまった。
※
乗り物に乗り終わり、僕らは少しお昼にすることにはした。混んでいる中をかき分けて席に着くと、なんだかぐったりと疲れてしまった。
「はあ...おじさんかぁ...ははっ」
確かに、僕はもう若くない。
今年は年男、四捨五入すれば三十路だ。
若い子からしたら、もう十分におじさんなのだろう。
(気持ちだけは若いままでいるつもりだったけど、最近は疲れも取れにくいしなぁ)
ため息を吐きながら、出来立ての料理を食べる。
「お竜さん、それ美味しい?」
「ああ、はんばーがーだろ?美味いぞ」
嬉しそうに、食べるお竜さんを見る。
見た目は、若い。ハタチ...いや、多分10代くらいだ。
人外だから、いくらでも見た目は誤魔化せる。
だが、お竜さんは若い。いや、中身が幼いのだ。
封印されていて世間知らずなせいもあるがーーー。
だから、余計に気が滅入ってしまう。
(カップルっていうか、親代わりみたいなもんだからなぁ...)
「リョーマ、どうかしたのか?」
「いや、ちょっと疲れちゃってね。もう歳かなぁ〜なんて」
「リョーマはまだ若い筈だろ?お竜さんなんか、ピーー歳だぞ?」
「はは...そうだね...」
「食べないなら、リョーマのはんばーがー貰うぞ」
「待って、今食べるから」
※
夕方になり、あらかた乗り物には乗り尽くした。
夜はパレード目当ての人で昼間よりも混んでいる。
お竜さんは人混みをもまれ、少しげっそりしている。
「なあ、リョーマ。飛んじゃダメか?」
「ダメだよ。ドラゴンってバレたら大変なんだろう?」
「うう....」
へろへろになりながら、僕についてくる。
「ほら、早くおいで。お隣さんに渡すお土産、買いに行くんだろう?あれ?お竜さん?」
まずい、この人混みの中ではぐれてしまった。
「お竜さん?お竜さん?」
あたりを見渡すが、それらしい姿は無い。
「参ったなぁ...」
※
「うーん....」
「お姉さん、大丈夫?」
「あ、ああ...」
「まだ、気分悪そうね。お水、飲めるかしら」
差し出された水を少しばかり飲む。
「悪いな」
「いいえ、困ってる人は見過ごせないもの」
にっこりと笑う少女は、天使のようだ。
「でも良かったわ。草むらに倒れているから、どうしようかと思ったわ」
「人間がたくさん居て...飛んで探すわけにはいかなくて困ってたら、気持ち悪くなってしまったんだ」
「あら、お姉さんは人間ではないのね?」
「あ、ああ...」
「どうしたの?顔色が悪いわ。まだ具合が悪いからかしら?」
「...それでリョーマに、お竜さん達はカップルじゃないって言われたのを思い出して。ぼーっとしてたらはぐれてしまった」
「まあ、喧嘩してしまったの?」
「いいや。でも、なんかしょっくだったんだ...」
会ったばかりの少女に、ペラペラと話してしまう。
「ショックなのは、カップルだって言って欲しかったから?」
「ああ。でも、リョーマは違うって」
「ふふっ。お姉さんは、リョウマって人が好きなのね?」
そう言われ、思わず固まってしまう。
「リョーマは鈍いから...お竜さんが喰うために来たとしか思ってないんだ」
はあ、と深いため息を吐く。
「隣のエルフ耳には騙されてるって言うし、もしかしたらそうなのかもしれない」
「でもそんな人が、わざわざ優しくしたり遊園地に連れてくるかしら?もし本当にそうなら。とっくに貴女のことを売り飛ばしているのではなくて?」
「...そうだな」
少女と顔を見合わせ、思わず笑う。
「お竜さーーーん!」
「ん、リョーマ?リョーマの声がする」
「お竜さーーーん!どこだーい?」
龍馬が、大声で自分を探し回っているようだった。
「なにあれ?」
「喧嘩して彼女に逃げられたんじゃない?」
周りからそう言われるのも気にせず、探している。
「リョーマ...」
あんなに必死になって自分を探す姿を見て、胸が締め付けられる。
「...リョーマ、お竜さん探してる。行かなきゃ」
「ええ!やっぱり、お姫様を助けにくるのは王子様じゃなきゃね。ふふっ」
「お竜さん!?」
こちらに気付いたのか、ほっと安心している。
「ーーーお姉さん、お姉さん」
「なんだ?」
「...本当に悪い人なら、あんなに慌てて貴女を探さないわ。私、良い人を見分けるのは得意なのよ?」
少女は、怪しく笑う。
「私は悪い子だから、良い人はすぐ分かっちゃうの。ふふっ。本当よ...お姉さんのお兄さんは、すごく良い人だわ」
そう言う顔は可愛らしいのに、何故か背筋がぞわりとした。
「なら、良いんだが..,」
「じゃあね、ドラゴンのお姉さん。ばいばーい!」
そう言って、手を振る相手に手を振った。
「随分可愛い子だったね。もしかして、迷子?」
「いいや、迷子なのはお竜さんだ。気分が悪くなって、それであの娘に介抱して貰ってたんだ」
「そうか、なら良かったよ。僕も、お礼言えば良かったよ」
「....そんなに、心配したのか?」
「そりゃあ、するよ。お竜さん、一人にしておけないからね」
「リョーマ....」
「さ、お土産屋さん行こう?」
「ああ」
※
お竜さんが急に居なくなり慌ててしまった。
もし、お腹が空いて人間を食べてしまったらどうしようか。
それが心配で、必死に探し回った。
(何もなくて良かったけど、見つかって良かった)
目の前で、ぶらぶらと揺れる腕を掴む。
「な、なんだ?リョーマ...」
「いや、その...またはぐれたら。困るからさ」
「もう、迷子にはならないから心配するな」
「手、繋がないかい?それなら、はぐれないだろう?」
「あ、ああ...分かった」
そうして、細く華奢な柔らかい手を握る。
じんわりと湿っているのは、暑さからからかいた汗だ。
自分から言い出したのに、何故だかすごく気恥ずかしい。
それを誤魔化す為、ポケットから袋を取り出す。
「あ、そうだ。お竜さん、これ...」
「ん?なんだ?」
「さっき、お竜さんを探してる時に見つけたんだ...」
包み紙から、キーホルダーを取り出す。
「あ、カエルくんだ!」
カエルくんは、ネズミーランドのキャラクターだ。
「お竜さんは蛙が好きだからさ。家の鍵にでも、付けたらどうかなって」
「ああ、そうする」
「可愛いだろ?よく出来てるよね」
「本物みたいに美味そうだな、食べたいくらいだ」
「いや、食べちゃダメだって」
「お竜さんジョークだ」
「じゃあ...そろそろ帰ろうか」
こうして、駅までの道なりを手を繋いで歩いたのだった。
「リョーマ、今日ははぐれちゃってごめんな?」
「良いよ、気にしてない」
「探しに来てくれて、嬉しかったぞ」
「いやぁ、心配だったからね...」
一人にしておいて、誰か食べてしまったら大変だからね。
とは、流石に言わなかった。
※
遊園地の帰りの電車の中。
人混みにもまれ、はしゃぎ疲れたのだろうか。
お竜さんは、すっかり寝入ってしまった。
僕の肩によりかかり、だらだらと垂らしている。
「うーん...カエル...待て...待てって...」
きっと、何か楽しい夢を見ているんだろう。
電車の中は楽しかった思い出を持ち帰り、幸せそうな人でいっぱいだった。
ふと、昼間のことを思い出す。
「お竜さんと僕は、カップルじゃないよ」
じゃあ、今の僕らは一体何だというのだろうか?
側から見たら、未成年の女の子とおじさんだ。
パパ活だと思われても仕方がないのかもしれない。
(いや、良いんだ。僕は別に今のままで...)
そう、今のままで十分幸せだ。
だから、これで良い筈だーーー。
『お竜さんは、坂本龍馬とくっつけば必ず不幸になる』
だから、これでーーー。
久しぶりの遠出で、僕も疲れてしまった。
うとうとしてきたので、僕も少しだけ目を瞑ることにした。
つづく!
前回の第1話へのお気に入りやしおり、感想などなど、
反応があり嬉しい次第です♪ありがとうございました!
世間はコロナ第3波でまだまだ外出は出来そうにありませんね(´;ω;`)
せめて、大好きな二人には楽しい思いをして欲しい......
これを読んでくれてる方にも、少しでも楽しんでもらいたい。
そんな思いを込めたお話でした♬
次回更新は来週を予定しています。