転生したら、嫁がドラゴンだったんだが。   作:FGO太郎

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前回までのあらすじ!

訳あって、温泉旅行に来たお二人さん。

温泉で茹だってフラフラなお竜さん。
一組しか敷かれていない布団。
何も起きないわけがなくーーー。




第5話「ドキドキの温泉旅行〜後編〜」

お竜さんは、赤らんだ顔でこちらを見ている。

心なしか、いや、体調が悪いせいだろうか。

目が潤んで、ひどく弱々しく見えてしまう。

 

なんていうか、僕が守ってあげなくてはいけない。

そんな気持ちになる。

だがそれと同じくらい、良からぬことが頭に浮かんでしまう。

 

「一緒に、寝るーーー?」

「ああ、嫌か?」

 

言葉が出ず、思わず唾を飲み込んだ。

 

「お竜さん。そういうこと、女の子が言っちゃ駄目だよ」

「なんでだ?」

「それは...」

返す言葉に困っていると、甘えるように手に顔を擦り付ける。

「リョーマの手、ひんやりして気持ち良い」

「...そう?」

「ああ、火照った身体が少し楽になる...」

そう言われてしまえば、無理に引き剥がすのも可哀想だ。

「...お前は優しいな、リョーマ」

「そうかな?別に、普通だよ」

「こんな風に優しい人間は、お前が初めてだ」

 

そう言ったお竜さんは、なんだか悲しい目をしていた。

きっと、今までに色々と大変なことがあったのだろう。

 

「...お竜さん、あの場所にずっと一人だったのかい?」

「山の上か?」

「うん。封印される前は、どうだったのかなって...」

「...そうだな。お前に話したことはなかったな」

 

そう言うと、お竜さんは深く溜め息を吐いた。

 

「お竜さんのツバが、傷や怪我に効くのは前に話したよな?」

「ああ、確かそう言ってたよね」

「昔はな、それ目当てによく狙われた。まだ小さくて弱かった時は、捕まって無理やり取られたりな」

「...ひどいな」

「それだけで済むなら良い方だ。時には鬣を毟られたり鱗を剥がされた。なんで人間はこんなことするのか、吾には分からなかった」

 

「身を守る為に、牙を剥いて追い払ったり吠えて威嚇した。吾は大きくなり、振るう力も増えた。そのうち、死んでしまう人間も出た。人を殺す、悪い竜だと追われた」

 

「そのうち、吾の血肉を喰らえば不老不死になると言い出した奴がいた。その血肉を喰らえば、千年も万年も生きると。大陸から、わざわざ来るやつも居た。そんなもの、あるわけないのにな」

 

「吾を追う人間は、日増しに増えた。振り払う為に振るう力はより強くなった。死ぬ奴も増えた。さらに追われた。だから逃げた。どこかにある筈だ。安寧の場所が。誰も吾を狙わない、傷つけない。そんな場所がーーー」

 

「そんな場所、地上に在りはしなかったのにな」

 

「まあ、それなりに悪さもした。暴れもした。だから、矛が刺さって封印されたんだろうな。インガオーホーってやつだ」

 

「それで気が付いたら長い事眠りながらあそこに居た、というわけだ」

「そう...辛いこと、聞いたね?」

「いいや、平気だ」

 

そう言って、首を振る。

 

「今はな、リョーマが居るからすごく楽しい。前がどんなだったか、今の今まで忘れてしまうくらいにな」

「そいつは良かったよ」

まだ気分が悪いのか、目を瞑る。

息は荒く、汗ばんでいる。

水を飲むか訊くと、首を縦に振る。

こくりこくりと、静かに水を飲む。

 

しばらく、無言が続いた。

 

「...なあ、リョーマ。お竜さん、側に居て迷惑じゃないか?」

「どうしたんだい、突然」

そう尋ねると、お竜さんは口を開いた。

「なあ?こういうところって、本当は...大事な人間と来るんじゃないのか?」

「まあ、そうかもね。それが、どうかした?」

「リョーマ、本当は別のやつと来たかったんじゃないか?」

「え?」

「だって、普通は...夫婦とか恋人とかと来るんだろ?」

 

結婚はしていないし、付き合っている人も居ない。

お竜さんと行けと言われたから来た、とは流石に言えなかった。

何故だろう。別に、言ってしまってもよかったのに。

そう言ったら、お竜さんが傷付くと思ったからだ。

 

「まあ、そうかもね。でも残念ながら、そういう人はいないよ。今はね」

「そうか...」

そう言って目を伏せる顔を見て、何故か少しだけ胸が痛んだ。

「でもね、お竜さんは大事だよ」

「本当か?」

「ああ。だって、もう家族みたいなものだからね」

「...リョーマ」

「だから、邪魔とか迷惑とか気にしないで欲しいな。お竜さんが居て助かってるのは、今じゃ僕の方なんだからね」

 

そういうと、熱で汗ばんだ顔を拭いてあげた。

 

「なあ、リョーマ。お前だって、いつかは番いを作るんだろう?」

「まあ、そうなるかもね...」

「お前に番いが出来るまで。それまでは、どうか側に置いて欲しい」

「僕が、誰かと結婚するまで?」

「あ、ああ...」

 

僕も、いつかは誰かと結婚するのだろう。

だが、どうしてだろうーーー。

このままずっと、お竜さんとのんびり暮らしてる想像しか出来なかった。

僕はおじさんになってもおじいさんになっても、若いままのお竜さん。

「今のリョーマはシワシワで、食うところが少ないな」

「え、なんだい。突然...」

「やはり、若いうちに食べておけば良かった」

「はいはい。年寄りになってごめんよ」

そう言いながら、相変わらずあの狭いアパートで仲良く暮らしてる。

そんな想像が、ボワッと浮かんですぐに消えて行った。

 

(あれ?それってつまりーーー)

 

何か答えに近いようなものが浮かびかけた、その時だった。

 

グーーー...キュルキュルキュル....と盛大にお腹の音がした。

勿論、僕ではない。

あからさまに目を逸らしている、お竜さんを見る。

 

「,,.お竜さん。もしかしなくても...お腹が空いたのかい?」

「すまん」

「いや、謝らなくて良いよ。健康な証拠だからね」

「違うんだ、リョーマ。風呂上がりのお前から、良い匂いがして」

「えっ」

「それで、つい腹が鳴ってしまったんだ...」

 

お竜さんは、腹の音が出たのを恥ずかしそうにしている。

それを見て、僕はつい笑ってしまった。

(やっぱり、僕を食べに来たのは変わらないんだなぁ....)

 

「...横になってると、うとうとするな」

「もうすぐ、夕飯だし。それまで少し眠ったらどうだい?」

「でも、リョーマは?」

お竜さんは不安そうに、手をぎゅうと握ってきた。

「大丈夫だよ。ちゃんと、側にいるからね」

「でも...」

「寝付くまで、手を繋いでるから。

「ああ、分かった...」

 

頭を撫でると、安心したのかすぐに寝入ってしまった。

 

 

人間なんか嫌いだーーー。

 

吾の唾に治癒能力がある。

それを目当てに随分追い回された。

肉を食ったら不老不死になると言われた。

薙ぎ倒して、毒を吐いて、自分の身を守った。

 

静かに暮らしたい。安心して眠りたい。

いやだ、こわい。

いたいのもこわいのもいやだ。

いやだ、いやだよう。

 

ただ、それだけだった。

 

人間だって。

鳥や猪を食うだろうに。

肉を食らうだろうに。

 

どうして、どうして吾ばかり責められる?

人を食ったことなど、一度も無いのにーーー。

 

そうして、気がつけばあの矛の下に居た。

どうして、吾は封印されねばならないのだろう?

 

数千年一人で寂しかった。辛かった。

人間のせいだ。人間なんか居るからーーー。

人間なんか、大嫌いだ。

 

でも、あいつは違う。

リョーマだけは。リョーマだけは違う。

だから、食いたくない。

食いたいけど、食いたくない。

 

リョーマ、大好きだ。お竜さんは、お前が好きなんだ。

でも、また言えなかったな。お前が好きだから来たんだって。

なんで、素直に言えないんだろう?

リョーマ、なんでーーー。

なんでいつも、お竜さんより先に逝ってしまうんだ?

 

 

「...さん。お....さん...」

 

遠くで、名前を呼ぶ声がするーーー。

 

「...お竜さん、お竜さん?」

「...ん?」

 

目を覚ますと、目の前に人間の男が居た。

 

いや、違う。これは、リョーマだ。

 

「夕飯が来たから、起きてご飯にしよう?」

 

見れば、テーブルの上には豪勢な料理が山のようにある。 

 

「あれ、全部お竜さん達が食べて良いのか?」

「そうだよ」

 

リョーマが、何か言いたそうな顔をしていた。

 

「お竜さん、大丈夫かい?」

「何がだ?」

「いや、寝ながら泣いてたみたいだから」

 

そう言われ、慌てて顔を触る。

 

「本当だ、顔が濡れてる」

「悲しい夢でも見たのかい?」

「分からない。あんまり、覚えてない...」

 

さっきまで見ていたのに、思い出せない。

忘れてはいけない、大事な記憶だったような。

思い出しては、いけないようなーーー。

とまどって俯いていると、リョーマが肩を叩いた。

 

「ごめんよ。僕が昔のことなんか聞いたからーーー」

「いや、リョーマのせいじゃない。多分」

「でも、」

 

そうして、渡されたタオルで顔をごしごし拭いた。

 

「お竜さん、あのさ」

「ん?」

「今はもう僕が居るんだから、大丈夫だよ」

「ああ、わかってる。平気だ」

「実は...渡したいものがあって...」

「なんだ?」

 

リョーマが、差し出してきたものを受け取る。

 

「これ、開けて良いのか?」

「もちろん、どうぞ」

 

そうして、箱の蓋を開けた。

きらきらした、石が付いてる。

どうしていいか分からず黙って見ていると、リョーマが苦笑いした。

 

「...やっぱり、気に入らない?」

「いや、なんだ?これ?」

「もうすぐ、お竜さんが来て半年経つだろう?だから...」

「食い物じゃないのは、分かるんだが」

「ああ、そっちか。あのね、これは...」

 

そう言って、リョーマはお竜さんの腕にそれを付けてくれた。

 

「お竜さん、首は弱点だっていうから...これなら平気かなって」

「よく分からないが、すごく綺麗だな」

「これなら、家事の邪魔にもならないし失くしたりしないかなって」

「リョーマ...」

「別に、深い意味は無いからね?ただ、いつも助かってるからお礼がしたかったんだ。それでさ、」

「お礼?お竜さんに?」

「ああ、だから...嫌じゃなかったら、付けてくれると嬉しいかな...」

 

そう言うリョーマはいつになく真面目で、なんだか別の人みたいだった。

 

腕に付けて貰ったのは、金属の鎖みたいなやつだった。

お竜さんには、この価値はさっぱり分からない。

でも、リョーマから貰ったものだ。

それだけで、意味がある。

お竜さんにとっては、命と名前とカエルの次くらいに大事だ。

 

「さ、料理食べよう?冷めたら勿体無いからね」

「ああ、そうだな」

「ほら、これとか美味しそうだよ?」

 

そうして、またいつものヘラヘラリョーマになった。

それを見ながら、豪華な料理を堪能したのだった。

 

 

 

「ーーー電気、消すよ?」

「ああ」

 

そうして布団に入る。

お竜さんは向かって右の布団。

僕は向かって左の布団。

 

夕飯を平らげると、中居さんにもう一組布団を敷いてもらうようにお願いしたのだ。

 

「布団のこと、今更言うの少しだけ恥ずかしかったよ...」

「お竜さんは、リョーマと一緒の布団が良かったぞ」

そう言って、頬を膨らます。

「だから、女の子がそういうこと言っちゃ駄目だよ」

「なんでだ?」

「それは...」

「お竜さん、家族みたいなもんなんだろ?なら一緒に寝るのくらい、気にしなくて良い筈だ」

 

そう言われてしまい、たじろいでしまった。

だが、どう言い繕ったとしてもやはりお竜さんは若い女の子だ。

何か間違いがおきたらーーー困るのはお互いだ。

 

そんなことは露知らず、お竜さんは寝入ってしまったようだ。

見ると、浴衣のはだけた部分から綺麗な白い肌がのぞく。

 

思わず、目を逸らして寝返りをうつ。

 

僕だって、健康な成人男性だ。

何も考えないわけじゃない。

動揺する時だってある。

ほんの少し、少しだけ。

良からぬことを考える時だってあるーーー。

 

はあ、と溜め息を吐く。

料理や家事は、毎日少しずつ上手くなっている。

噛みつかれたって、少しは痛いが嫌な気はしない。

ある一点を除けば、至って普通の女の子だろう。

僕を食べに来た、ドラゴンだという点以外はーーー。

 

彼女が、人間の女の子だったら良かったと思う。

そうしたら、一緒に歳を重ねて老いていけただろう。

今度こそ、一人きりおいていかずーーー。

 

(今度?まるで、前はそうだったみたいじゃないか)

 

何か思い出しそうだったが、眠気には勝てなかった。

 

(僕も楽しいって、言えば良かったな....)

 

目を瞑ると、すぐに寝入ってしまったーーー。

 

 

 

つづく!

 




坂本さんが真面目過ぎて、お竜さんとなかなかフラグを立ててくれないので困りますね(;ω;)
二人の間に精神的な繋がりがようやく出来たので、二人が早く素直になってくれるのを願いたいです...^^;
10話までに完結を予定しているので、ようやく半分まで来ました。

次回の更新は今週末を予定してます♫
(たくさんのお気に入りやPV、ありがとうございます!)
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