犬転 〜引きこもりの彼女が再び大学に通うまで〜   作:lane

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犬になりました。死んだら犬になるとかどうなってんの?そこはさぁ…安らかに眠らせてくれよ。

 人間、一度落ちてしまえば、あっさりと谷底まで行き着く。そして谷底から上がること等不可能に近いのだ。あ、あと一つ。自分が努力し、ようやく手につかんだ物は誰かにとって石ころでしかないのだと。

 

 何の話だって?今世の教訓みたいなものかな…。身に合わないレベルの大学に手を伸ばし、1浪し合格。必死に勉強して睡眠時間を削り、ありとあらゆる娯楽から目を逸らし、紙に向かい合う日々だった。もちろん、合格した時は感激のあまり空を仰ぎ泣いてしまったものだけど…しかし、本当の地獄はここからだった。

 

 真面目に前を向き、必死にノートを取るが、授業についていけない。教授の話が理解できない。そして周りを見れば話半分に談笑している者もいれば、なにやらパソコンでカタカタしている眼鏡の女の子も居る。挙げ句の果てに寝ている者も居た。しかし、その誰もが定期考査では俺より点数を取るのだ。

 

 

 

 それはお前がどこかで勉強を怠ったり、過去問を譲り受ける友達を作る努力をしていないからだろう、と思うかもしれない。大学とは得てしてそういった効率の良い学び方を学ぶ場所でもある…と思う。そして、条件は一緒だ。俺は今考えても謎でしかないサークル、確かUFO観察サークルとかいう馬鹿げた名前のサークルに身を置き、そこに居た当時大学8年生を名乗る先輩に協力してもらい過去問を貰ったりもした。

 

 ここまで長々と語ったが、何が言いたいか…それは。

 

 俺はどうしようもなく頭が悪いらしい。

 

 結果大学へ入って夢のキャンパスライフ…とはいかずに、受験期同様本と紙に向かい合う毎日です。本当にありがとうございます。ちくしょうめ。

 

 就職のため、就職のため、と自ら言い聞かせ、周りが合コンだのタコパだのしている傍ら俺は毎日図書室で教科書相手に睨めっこし続けた。

 

 そうして丁度一年たった日、俺は留年した。

 

 悔しかった。ふざけんじゃねぇって言ってやりたかった。

 

誰よりも勉強していたはずだ。誰よりも頑張ったはずだ。なのに留年した。考えられるか?ずっと寝ていた奴が進級して俺は留年だ。睡眠学習でもしているとでも言うのか?

 

俺の茫然自失さに見かねた友人からは、『教科書見るんじゃなくて、もっとその先を考えたら良いよ』等と言ってきたが、俺は耳を塞いだ。なんだよその先って。そんなもん知らねぇよ。

 

 2年目からはもっと勉強した。2年生になった。今度は留年しないようにもっと勉強して3年生になった。

 

しかし、空いた差なんて埋まらなかった。4年生になる頃には、俺と一緒に1年間授業を受けていた奴らは就職していた。

 

 なんだよ。まるで何の障害もありませんでしたよ、みたいな顔して大学を去っていきやがって。それを、見ながら俺は自分のどうしようもなさに打ちひしがれていた。何故こうも差があるのか。一体何がいけなかったのか。それが未だに分からない。

 

 今までは、あいつらは前を走る目標みたいなものでもあった。しかし、今やそれは卒業ということで無くなってしまった。

 

 モチベーションの喪失みたいな物だ。俺は少しづつ、走るスピードが落ち、歩きになり、そしてある日止まってしまった。

 

 つまり、大学へ行かなくなってしまった。毎日通い詰めた図書室も、一週間に一回、足が遠のき、気づけば行かなくなり、そして大学へ行くのも勉強をするのもやめてしまった。

 

 俺は気づいてしまった。自分が勉強をすることの無価値さを。自分の一日はまるであいつらの1時間と同程度なんだって。だって、寝ているやつにも負けるんだぜ?

じゃあ頭の良い奴が勉強をすれば良いだろ。当たり前だろ。

 

 俺がかけた時間と努力なんてただただ苦しくて辛いだけだったんだ。俺が1を積み上げた時に周りは10を積み上げる。俺が10を積み上げた時、周りはそれ以上を簡単に積み上げていく。

 

 ぶっちゃければこれ以上俺は劣等感に苛まれたくなかった。ただただ辛い道のりが待っているとして、山を登る勇気なんて一度止まってしまえばもう2度と登ろうと思わないだろう?下山するだろう?

 

 そうして、俺はいつの間にか引きこもりになっていた。最早なにも聞きたくなかった。何もしたくなかった。何かをすれば否応にも他人との差を感じてしまうのに、これ以上辛い思いはしたくなかった。

 

 

 引きこもりなんてして、親にばれないかと思うだろう。大丈夫この引きこもりは早々にバレない。なぜなら、俺は大学の近くのアパートに下宿しているからだ。

 

でも、どうしても、申し訳なくて、胸が痞える感じがするので明日言おう。明日こそは…と思いはしても、もう何の気力も湧いてきやしなかった。

 

 

 とはいえ、人間腹は減る。俺は夜中1時に近くのコンビニに行くことにした。何の気力も無くなっても、生存本能だけは見事に生きているようだ。

 

 そうして、道路に出て、コンビニ前の信号が青になった時、下を向いて横断歩道を渡っていたのがいけなかったのだろう。

 

 突然全身を照らす眩い光とまるでトラックにでもぶつかった衝撃で俺は宙を舞った。

 

 

 

 …全身が痛い。跳ね上げられた後どうなった?首を動かそうにも上手く動かない…

 何か大切なものが俺の中から失われていく感覚がするが、どうしてか、それが妙に心地よかった。

 

 なぜならそれは俺がずっと心の奥で求めていたものだったから。

 

 「あぁ……。や…と、…わった」

 

 遠くでサイレンの音が聞こえるが、俺は徐々に閉じる視界に身を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に俺が目を開いた時、そこは…

 

 「さぁ、ここが君の家だよ。勇気」

 

 

 …???

 

 知らない男に見下ろされていた。なんだか、体が変だなと思い、腕を見てみると。

 

 毛がフサフサだった。肉球もある。

 

 

 

「アオーーーーーーーーーン!?!?」(なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?!?)

 

 

 

 どうやら、動物に転生?したみたいです。いや、意味がわからん。まじで。

 

 

 

 

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