ギャル嫌いな俺の隣にギャルがいる   作:イチゴ侍

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【閑話】とある友人の掲示板事情/おまけ

 氷川勇樹、高校2年。またの名を"ギャルころ"

 

『家畜どもぉ!朗報だ!ギャルころに春が来たぞー!!』

 

『マ!? kwsk』

 

 とある掲示板にて書き込みが行われていた。もちろんほとんどが勇樹にとって昔馴染みの身内である。そしてここを仕切っているのは、リアル友人である景虎だった。その名をマンチカン。

 

 

『ギャルころ殿とデートしていた時の事だった……』

 

『リアルフレンド羨ましす』

 

『そこ変われ』

 

『ま た か』

 

 勇樹のネ友には最初期から少なからず女性もいた。

 しかし、とあるアイドルとの集合写真が公式より上げられたその日に、最前で満面の笑みを浮かべた勇樹の姿があった。それが景虎によって"ギャルころ"だと知れ渡ると、顔に釣られた女性オタがこぞって寄り付き、オタサーの姫ならぬオタサーの王子状態を引き起こして今では女性のネ友がさらに増えていたのだ。

 

 

『へっ!オタクというブランドぶら下げてるお前らにゃ微塵もチャンスなんかねぇ!』

 

『彼女面すんな!』

 

『ざけんな!(゜Д゜╬)』

 

『お前もオタクブランド下げてんじゃねぇか!』

 

 それからというもの景虎は、勇樹に引っ付いた女性オタを刺激するように「ギャルころとデート♡」とか「ギャルころと飯♡」とか「ギャルころの家なう♡」とかetc……。

 そんなことを定期的にSNSに呟いては、炎上していた。それは景虎の密かな楽しみの一つだった。

 

 

『……とりあえず話続けるぞ? んで、俺の買い物に付き合ってくれたギャルころと昼飯の話になってだな』

 

『ギャルころ様を私有に付き合わせた……?』

 

『おいこらマンチカン、何様だこら』

 

『○ねっ!』

 

『信者と過激派が怖くて草 マンチカンこわーい!』

 

『草生やす余裕あるの草』

 

『草に草を生やすな』

 

 イケメンは罪だなー、と楽観視する景虎。今頃なんにも知らずに今日買ってたゲームでもプレイしてるんだろうと、勇樹が隠していた購入品に抜け目なく気がついていた景虎は想う。

 

 

『そんであるもんじゃ焼きの店に入ったのよ。そこでなんとめっちゃくちゃ美少女な可愛いギャルに出会っちまったのよ』

 

『( 'ω')ファッ!?』

 

『ギャルはだいたい可愛くないか?てかもんじゃ焼き屋で働くギャルとかなんちゅうギャップ萌えよ』

 

『うっ……ラブコメの波動が』

 

『ギャルころ様が堕とされる……( ;꒳; )』

 

『ほら、涙拭けよ(ボロン)』

 

『噛みちぎるぞこら』

 

『ひ……ひえぇぇぇぇ(´・∀・`)』

 

 景虎の書き込みによってあれやこれやと想像を掻き立てる住民達。それを景虎はニヤニヤと見守り、ある程度の反応が返ってきたところを頃合に書き込みを始める。

 

 

『出会った瞬間、時が止まりかけたわ。もうそんじょそこらの有象無象とは訳が違うガチの美少女だった』

 

『お前のは聞いてない』

 

『ギャルころ様は!ギャルころ様はどんなお顔してらっしゃってたんですか!』

 

『イケメンとガチの美少女ギャル……くっ!顔か!顔なんだな!』

 

『美少女ギャル……そこ変わって』

 

 引っ込め!などなど批判罵倒の嵐にブチギレる景虎。「誰のおかげでギャルころの話が聞けてると思ってんだ豚どもが!」と、発狂していた……と後に景虎の家族はそう証言するのだった。

 

 

『……俺はともかくとして、ギャルころは何やら固まっていた。そんでそんなギャルころに美少女が近づいた辺りでなんと、ギャルころが美少女の手を振り払ったのよ』

 

『( ゚д゚)』

 

『( ゚д゚)』

 

『(゜д゜)』

 

 まぁ、そういう反応になるよねー。と書いた本人である景虎ですら未だに信じ難い状況を振り返る。

 普段からだいたい共にいる景虎の記憶に、勇樹が女子にあんな態度を取った状況は存在していなかった。むしろ優男全開であっちこっち手助けしてるような奴だ。そんな勇樹が学校の女子以上の美少女の手を振り払った時は、衝撃だった。

 

 

『流石に空気も重くなってたから俺が焦ってアシストに入ってなんとかその場は収まったから良かったけどよ……』

 

『ナイス』

 

『今だけナイス』

 

『今回だけはお手柄』

 

『お前らなぁ……』

 

 なんだかんだと言われる景虎だったが、褒められて満更でもない笑みを画面越しに向ける。

 しかし、民たちの興味はやはり勇樹に向けられ続けていた。

 

 

『まさかギャルころはブス専……?』

 

『('ω')スッ』

 

『やめろやめろ、家畜が騒ぎ出すだろ』

 

『マンチカン……貴様、猫だからと甘く見ていたら調子に乗りやがって』

 

 

 どこが甘く見られてたんだよ……と呆れ顔の景虎。しかしこのままでは勇樹が初対面の美少女ギャルを引っぱたくブス専として知れ渡ってしまう。それだけは避けねば、と景虎は続きを書き始める。

 

 

『そんでまぁ、もしかしたら喧嘩別れした幼馴染だったのかも……と考えた俺は、実は知り合いだったり?とか運命の出会い!?とかカマをかけてみたのよ』

 

『その説が合ってたらマジの運命じゃん!Σ( ´・ω・`)』

 

『だけどギャルころから返ってきたのは完全否定よな』

 

『むしろ怪しい……』

 

『確かに』

 

 だよなー、と共感する景虎。そこでふと、その事についての話を最後まで聞いていなかったことを思い出す。

 オチになるようなものを用意していなかったことに焦る景虎。だが、その結果については濁すことにして、その後の出来事をそのまま書き綴る。

 

 

『んで、丁度俺たちの頼んだもんじゃが来たわけな。俺がカレーもんじゃ、ギャルころが偶然にも美少女ギャルのおすすめを頼んでたのよ』

 

『運命じゃん……』

 

『ちなみに、ギャルころが頼んだ時その美少女ギャルがめっちゃ喜んでた』

 

『脈アリ!?』

 

『いや焦るな……ギャルころ様はイケメン。どんな美少女でも喜ぶ時は喜ぶもの……』

 

 

 あれは脈アリって顔してたぞー、と餌をまく景虎。

 

 

『料理持ってきてくれたのが美少女ギャルなんだけど、ギャルころに悪いことしちゃったから、って本来無いサービスのアイスクリーム持ってきてくれてたんだよ』

 

『可愛いかよ?』

 

『女神だ……』

 

『あざとい……だけどギャルころ様を気遣うその姿勢は素晴らしいわ!』

 

 その際、景虎は目の前のもんじゃに気を取られてたが、今日初めて来たような客にあそこまで普通はしないし、謝るのなら勇樹が一般的だろう。と考えていた。

 

 

『もちろん、ギャルころも自分が悪いのだから気を使わないでくれって遠慮していた。けど、美少女ギャルも1歩も引こうとはせず。デッドロック状態さ』

 

『どっちも性格良い証拠だな……青春だ』

 

『どこが?』

 

『青春だろ』

 

『そこはどうでも良くてだな……。結局はギャルころが折れたんだけどな?そのトドメのドラマティックさと言ったら……』

 

『なになに気になる!』

 

『(*・ω・*)wkwk』

 

『ギャルころ様が堕とされた……?』

 

 

 

 ……数時間後

 

 

 

『……なぁ、もしかしてこれ、マンチカンもう見てない説あるぞ』

 

『あの腐れ猫もどきがァ!』

 

『あんな奴に放置プレイされるとか……解せぬ』

 

 その日、遅くまでマンチカン──もとい、景虎を待ったもの達は一斉に発狂したそうな。

 

 

「あーもしもし、勇樹か? ……いやなに、ちょっちお前のファンクラブ掲示板に今日のこと呟いたらみんな喜んでたぞ〜? ……え、なに?明日しばくって? ははは、そりゃあ楽しみだな!」

 

 決してブレない景虎だった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 とある休日。いつものように勇樹の家にやってきた愛。何気なく思い出したことを勇樹に問いただす。

 

 

「ねぇねぇ! 初めて会った時のこと覚えてる?」

「ん? あぁ、宮下の家の……」

「そうそう! トラトラと一緒に来てくれたよね」

「来てくれたって……俺たちはただテキトーに入っただけだぞ」

 

 雰囲気もクソもない正論で愛の幻想をぶち壊す勇樹。

 

 

「それはそうだけどさぁー! 運命とか信じないの?」

 

 勇樹の傍らで、むくれる愛。

 

「……柄じゃないし」

「頑固!」

「なんとでも言ってくれ」

「ばーか!」

「ボキャブラリーが激寒親父ギャグより少ないのな」

「いいもーんだ。愛さんには愛すべきダジャレ達が……」

 

『愛さん』には『愛』すべき……ねぇ……。

 

「てか、そんなに俺との出会いを運命だって思ってくれてたわけ?」

「……は、はぁ!?」

「だってそうじゃんか。運命〜とか、来てくれた〜とかもまるで俺に出会えたのが嬉しいーみたいな言い方だったし」

「──それは……だって、えと……えっと……!」

 

 懐かしい。勇樹は今の愛を見て初めて彼女に出会った時のことを思い出していた。あの時はまだトラウマが根強く残っていて、愛に酷く当たってしまったのを未だに後悔していた。

 

 

「ぷっ……」

 

「……あー!また笑った!そうだよ!あの時もそうやって笑ってたじゃん!なんで笑ったのかが聞きたかったんだよ!」

「あー、それはだな」

 

 

 ──怖くて怖くて仕方なかったギャルが慌てふためく姿が可愛かったんだよ。

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