嗚呼、麗しの淑女同盟よ   作:瓶ラムネ

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オリヴィア、あそ研で一歩抜きん出る

キンコンカンと日本全国お馴染みの鐘が校内に鳴り響き、ようやくお待ちかねのランチタイムが始まる。

 

「ぶへぇぇ〜……お腹減ったぁ〜……」

 

「ちょっと華子、一応女なんだから、ぶへぇ〜は無いんじゃないぷへぇ〜は」

 

「うっさいなぁ。女子高という女の園ではあらゆる行動が許容されるのよ!」

 

「はいはい。高校入って男子と触れ合う時にも同じことやって引かれそう(ぼそ)」

 

「そんなことないもん!........アレよ!ここは同性の女子ばっかりだから身が入らないのよ!かっこいい男子の一匹や二匹が近くにいれば私の淑女力が火を吹くわ!!」

 

「淑女って(笑)」

 

「何笑ってんだこらー!!」

オリヴィアの首を締めて懲らしめる華子。そんな言動ばっかりだからモテんのだわ。

 

「ゲホッゲホッ。あー苦しかった。中学生活もあと1年しかないんだから高校入ってモテたいなら準備くらいはしといた方がいいんじゃない?」

 

「準備?この天才美少女本田華子様を捕まえてなんの準備が必要だというの?」

 

「クソムカつく(ぼそ)」

これでブサイクなら鼻で笑うところだが見た目だけならこの中学でもトップを争うほどに美少女だからタチが悪い。

 

「今ムカつくって「言ってない」........。まぁ、いいや。で?彼氏持ちでもなけりゃ交際歴も全くないオリヴィアちゃんの意見なんてトイレで尻を拭いた後のトイレットペーパー位の価値しかないけど、聞いてあげるわ」

 

黙ってりゃ好き勝手言いやがって。

なんの出会いもなければ部室で日々ダリの時計のように溶けてるだけの女が偉そうな口をきくじゃねーか。

喧嘩なら買うぞ、おう?

と、思うが行動には移さない。

ここは教室で部室ではない。本校でも屈指の変人にして奇行種扱いされてる麗しの友人と同レベルの戦いを教室で繰り広げればこれと同列扱いされることになるのだ。

自分で自分を人間だと思うのは当たり前だが、周りからも人間に見てもらいたいのだ。社会性をゴミ箱に捨てるには売り言葉がチープにすぎる。

そう、自分は目の前で踏ん反り返って私ってば美少女でございと言わんばかりのポーズを取る友人と違って出会いがあるのだ。

 

争いは同レベルの存在同士でしか起きないのだよ。

目の前のチンパンジー(華子)と争うなど自分を下げるだけの行為。

ここは、我慢。我慢よオリヴィア。

出会いもなく部室でダリの時計となっているがいいわと心の中で吐き捨てながら口を開く。

 

「うんこ以下の華子にアドバイスするならやっぱり前に言ったようにその言動を改めた方がいいと思うな。

男子だけじゃなくて同性の評判にも気を配らないと後で痛いしっぺ返しを食らうんじゃない?」

 

「ふんふん。周りの評価ねぇ。さすがは一年近くエセ外国人で通した人は違うわ」

 

「うっさい!今じゃ日本語ペラペラでも怪しまれまセーン。」

 

「悲しくならない?......そういえば話変わるような変わらないようなだけど、」

 

「なに?」

 

「オリヴィアはどこの高校受けるの?......いや、オリヴィアの成績の悪さだと選択肢なんてどんだけあるのか知らんけど。」

 

「○○高校」

 

「はぁ!?オリヴィアが!?どうやって?賄賂!?買収!?色仕掛け!?」

 

「失敬な!ちゃんと受験して突破するわよ!最近は塾通いの成果が出初めてね。こないだの中間はかなり自信があるし。」

 

「いやーまだ春先で半年以上あるとは言っても2年度末の成績は確か下から10番目くらいだっけ?流石に無理じゃね?」

どこまで言っても華子は失礼なやつだった。

 

「ふふーん。今までは勉強してこなかっただけ!今年は受験の年だからね、本気よ本気。私が本気を出せばチョチョイのチョイよ」

 

「(失笑)」

 

「あー!笑った!!言っとくけど今回は本気で成績良いはずよ!見てなさい!!」

 

「ふーん?全く期待してないけど、万が一億が一にも今回の中間でオリヴィアが一個も赤点取ってなかったら腹踊りしながら校内一周してあげる」

 

「言ったわね!?約束やぶんじゃないわよ!?」

 

「今回の中間はかなり出題難易度が厳しかったし赤点王のオリヴィアが一個も赤点取ってないわけないじゃん!一筆書いてもいいよ一筆!」

煽りに煽る華子。

一筆まで書いたことを後に後悔することになるとはこの時は誰も思わなかったのだった。

 

「(華子さんとオリヴィアさん楽しそう。......赤点まみれのオリヴィアさんが赤点を全教科回避するとは私も思えませんが、もしそうなったら、私も塾行こうかな)」

 

---

 

「ほーら華子。なんだっけ?腹踊りしながら校内一周だったっけ?」

 

「ばかな......」

 

後日中間テストが返却され見事に全教科の成績が大幅に向上して全て赤点を回避し、国語に関しては80点を超える高得点域にまで復活したオリヴィア。

オリヴィアは今までの恨みを全て晴らすと言わんばかりの勢いで部室で華子をいびっていた。

 

反転華子は今回もまた学年一位を逃し、成績最上位を占めるリア充どもを呪い殺さんばかりだった。

そんな所に馬鹿の代名詞オリヴィアの成績急上昇の報を受けてただただ混乱していた。

 

とりあえず泣いて謝って、腹踊りしながらの校内一周は回避した。

今度サイゼで何か奢ることになったが、流石に腹踊りでの校内一周に比べれば屁でもない。

 

「てゆーかさ、オリヴィアは急になんでそんなにやる気になったわけ?」

 

「え゛ぇ!?いやほら塾通ってるわけだし、そんなおかしいことじゃないんじゃない?」

 

「いや塾行ったからってそんないきなり成績が急上昇したら世の受験生はそんなに苦労してないっての」

 

「そうですよ!オリヴィアさん!どうやってそんな成績が急上昇したっていうんですか!?.....まさか賄賂「違うっての!」」

 

「二人とも失敬すぎるよ!!..........んーまぁ塾の先生の教え方がいいってのもあるけど、塾の自習室で他の塾生と教えあいしてるっていうのが大きいかな。これでも結構塾では友達できたんだよ。」

 

自分が教えてるとは言ってないが、嘘も言ってない。

塾で友達が出来たのは本当だし他の塾生と教えあいをしているのも本当だ。

その相手がお向かいさんの男子高校の生徒で同級生だという事実を言ってないだけで。

 

真実の中に嘘を混ぜる、それがこの厄介極まる友人たちとの部活で身に付けた処世術だ。

雑魚の華子はともかく香純は強敵だ、と瞳を細めるオリヴィア。

 

「ふーん?自習室?それってどんなの?学校の図書館的な?」

 

「うーん、雰囲気は似てるかなぁ。お一人様用のラーメン屋あるじゃん?あーいう感じで仕切りがあって一人で勉強に没頭できるスペースがあったり、少人数用で勉強を教え合うための個室があったりって感じ?水はタダだしお菓子とか飲み物も結構安く売ってるから気分転換もしやすいし良いところだよ。」

 

「へー結構良さそう。でも、お高いんでしょう?」

 

「まぁ、安くはないかなぁ。あ、でも塾の友達の一人は特待生?とかいうので塾の受講料が確か通常の半分以下だって言ってたよ。」

 

「へぇ!結構いいじゃんいいじゃん。私も行きたいかも。あーでもじいじが許してくれるかな」

 

ーーしまった。

華子の興味を無駄に引いてしまったことを少し後悔する。

調子に乗ってあまりに塾を良いように言ってしまった、と焦るオリヴィア。軌道修正に乗り出す。

 

「えぇ?華子って一応成績上位じゃなかったっけ?行く必要なくない?」

 

「一応ってなに!?これでも学年3位ですけど!?」

 

「あ、下がったんですね」

 

香純の一言で華子は撃沈した。

 

「ぐぎぎ......あのリア充どもめぇ。男と乳繰り合ってばっかのくせに私より成績いいとかありえん!!何かイカサマしてるに決まってる!!」

 

ダンダンと机を叩く華子。1年以上も華子に酷使された机はギシギシと悲鳴を上げている。

 

「なわけないでしょ.....。そういえば華子と香純は高校どこ行くか決めてるの?塾に行くにしても行かないにしても志望校は決めておかないといけないんじゃない?」

 

「オリヴィアのくせに真っ当なことを........」

 

ーーぶん殴るぞ。

オリヴィアはイラッとした。

 

「今日のオリヴィアさん頭良さそう....」

 

香純は香純で素で失礼なことを口走る。

オリヴィアの額に浮かぶ青筋が1本増えた。

 

「全く.......。塾の先生も言ってたしあのお局とかも言ってたじゃん。行きたい目標を決めて勉強した方が絶対効率はよくなるって。」

 

「オリヴィアのくせに今日はグサグサと真っ当なことばっか言いおって........。そういうオリヴィアは〇〇高校行きたい理由ってあるの?」

 

「え?ないよ。県内の近場で一番頭いい高校だったから〇〇高校目指してるだけ」

 

「えー......そんなんでいいんですか?」

 

「そうだよ!?大事な進路決めだよ!?」

 

「いやいや。まだ学校見学もしてないのにそんなんわかるわけないって。とりあえず目標は高く持っておけば、後から選べる選択肢が増えるって先生も言ってたし。世の受験生は大体そんなもんだって」

 

嘘である。

既に進路希望表には第一志望以外書いてない。それっぽいことを言いながら頭の中はピンク色の女がそこには居た。

 

「まーそれもそっか。私も〇〇高校にしておくかなぁ。」

 

「えぇ!華子さんも!?そんな.......二人ともそんなレベルが上の高校を受けるなんて............」

 

「あぁ、香純さん」

 

「香純....」

 

華子は元よりオリヴィアの視線までが香純に注がれる。

その不快な視線に香純はキレ、机をバンバンと叩き始めた。その姿は先ほどの華子と瓜二つだ。

ーー華子と同レベじゃんやっぱ。

オリヴィアの視線により冷たさが加わる。

 

「なんですか!?二人ともその目は!!そうですよ!今回もいっぱい赤点とりましたよ!!前回まではオリヴィアさんもこっち側だったのに!!この裏切り者!!」

 

「いやいや裏切り者て。......努力の差じゃない?」

 

ちなみに香純の今回のテスト週間の勉強量は華子とタメを張る。

方や学年最上位層、方や学年最下位層。世の無情に香純は涙を流した。

 

「香純〜。私が英語教えてあげようかぁ?」

 

泣き崩れる香純に追い討ちをかけるオリヴィア。

華子はウサギと亀の物語をふと思い出した。

なお香純は努力家で辿った経緯だけを見れば亀側のはずだ。華子は不意に涙を流した。

 

「......ぐぐぐ。私はネイティブになりたいのであって受験英語だけの人は.......」

 

「香純さん....そんなことばっかり言ってるから成績上がらないんじゃ......」

 

香純の報われなさに涙を流しながら、それはそれとして華子は無慈悲な一撃を放った。

香純の意識は途切れた。

 

「ま、まぁ。まだ一学期の中間だし、受験までは時間あるし?その間にがんばろ!香純!!」

 

嘘である。

春休みと一学期の中間までの時間が矢のように過ぎ去り、今回の中間も国語以外は赤点ではないものの平均よりもだいぶ低い点数を取っているオリヴィア。

このままだと受験までに安全圏まで成績を向上させるのはかなり厳しいことを塾講師から言われてるし自分でも理解している。

このままではまずいと塾の日を増やし、ガチで勉強する構えだ。

ーー具体手には塾で彼に手取り足取り教えてもらう予定だ。

 

想像でニヤついたオリヴィアに、見下されてると勘違いした香純は憤死した落武者のような顔になった。

奥羽山脈より高いプライドをもつ香純には大ダメージだったのだ。慌てて表情を戻す。

 

「えー?もう一学期の半分が終わったんだよ?受験まであっという間だよ?」

 

余計なこという華子にチッと舌打ちするオリヴィア。

 

「.....お二人とも。これからのあそ研の活動は受験対策重点で行きましょう!!」

 

「えぇ.....。私は受験までの予習は済ませて県内の高校の大半は模試でもAかB判定だし、部活くらいはゆっくり遊びたいんだけど.....」

 

「んー。まぁ、私は別にいいかなー。あ、でも勉強ばっかりだと気疲れしちゃうからちゃんと休憩時間はあそ研っぽい活動はしたいけど」

 

本気を出しているオリヴィアは本気だった。

いつになく貪欲なオリヴィアの様子に華子と香純は目を見開く。

 

「まじかオリヴィア......。(あのオリヴィアが勉強するのに前向きとかまじか。春休みとか塾でなんかあった?)」

 

「オリヴィアさん.......。(やばい。オリヴィアさん本気だ。このままだと本当に私だけ置いてかれてしまう)」

 

「て、いってもあそ研っぽい活動ってなによ?」

 

「......えーと、駄弁る?」

 

たっぷり数秒かけて思い出を掘り返して出てきた言葉とは思えなかった。

 

「なんかないの!?もう一年以上あそ研やってるんだよ!?......いや具体的に何したっけ?って感じだけど」

 

思い返して何やったかというとコックリさん、魔女裁判、腕相撲、怪盗ごっこ。あとは魔女裁判.....そして魔女裁判。

ろくな活動をしてないというのが全員の回想からもわかる。

 

これでは生徒会長も部費もとい同好会費を認めないわけである。

いまだに部屋は不法占拠状態だ。

 

「あれ、私たちろくな活動してない.......?渋谷でナンパもされてないし」

 

「ナンパはともかく確かに活動っぽい活動というと文化祭の映画撮影くらいですかね......」

 

「...........。うん。細かいことを考えるのはやめよう」

 

「そ、そうね。華子の言う通り。後一年あるんだから受験勉強がてらなんかすればいいわけだし!」

 

「そ、そうですよね!後一年近くあるんですし!!」

 

思考を打ち切るオリヴィア。

逆に考えればこいつらとまともな活動なんて出来っこないのだ。考える時間がもったいない。

 

ーーま、この部活がなんの生産性もないのは最初からだからし。まぁ、いいか。誰かなんか提案するでしょ。

 

全員の思考が合致する。

この有様だからあそ研は所詮あそ研であり、この有様だからこそあそ研は未だに存続しているとも言える。

 

「話は戻るけど、結局華子は〇〇高校目標ってことだけど、香純はどこ受けるか決めてるの?」

 

「え!?......えーっと......その.......」

 

「香純さん.....」

 

華子の無残な物を見るような視線が香純に突き刺さった。

副音声で「そんなことだから」と聞こえてきそうな視線だ。

 

「なんですか!華子さんだってついさっきまで決めてなかったじゃないですか!!」

 

「いやいや。ついさっきはそうでも、今はすでに目標も定まってるわけだから。決まってない香純さんに比べて」

 

「ぐぎぎ......。!私も〇〇高校......」

 

「えー?パクリっぽくない?」

 

とことん煽る華子。オリヴィアは飛び火しないように息を潜めた。

 

「いいんです!目標を高く持っておけば後から変わったとしても困らないですみます!!」

 

「やっぱパクリじゃん.....」

 

「まぁまぁ。全員同じ高校を目指してるならモチベーションも保ちやすいし。」

 

オリヴィアは助け舟を出した。見ていられなかったのだ。

「元!」底辺成績仲間ということで助け舟を出してあげた。

なおそれっぽいだけで口から出まかせの発言だ。

 

香純はその助け舟に1にも2にもなくしがみついた。早くこの針の筵から脱出したかったのである。

華子は何故か泥舟に乗る狸の絵を幻想した。

 

「そうですね!全員一丸となって〇〇高校目指して頑張りましょう!」

 

「「おぉ〜!」」

 

 

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