反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど 作:コロリエル
あ、こちらは今日投稿始めた、ポケモン二次創作です。良かったらどうぞ。
『ガラル同期組+αが他地方へ旅行に行くそうです』
https://syosetu.org/novel/244375/
俺と蘭の数少ないデート先、羽沢珈琲店。
今日も今日とて、二人で店を訪れ、パタパタと駆け回るつぐの姿を目で追っていた。
ここ最近は暴れまくっていたこともあり、反省の意も込めて、外でのんびりする事にした。二人っきりだと、蘭のこと無茶苦茶にしてしまいそうなので、仕方ない。最近は少し暴走気味だったので、戒めの意味を込めるという意味では、丁度いいだろう。
「……つぐってさ、意外と交友関係広いよな」
「急にどうしたの?」
「あぁ、いや……この店自体に色んな人が来るだろ? だからさ、バンド仲間全員と仲がいいんじゃないかなって」
事実、この店に居たらたくさんのガールズバンドの女の子達が来店してくる。やまぶきベーカリーにも来店するが、滞在時間は羽沢珈琲店の方が長い分、出会う人物も当然多くなる。
事実、俺も今をときめくガールズバンドの大体のメンバーと顔見知りにはなっていた。時々クラスのダチに「紹介してくれ!」と懇願されるが、綺麗に流す。彼女らには彼女らが望む青春を送らせてやろうという、俺の心意気だ。その内刺されそうだなうん。
「あーうん、そだね。つぐって聞き上手だから、どんな相手でも大体仲良くなれるからね」
俺の言わんとすることを汲んだ蘭は、どこか納得したように頷く。
今日も元気に接客を頑張るつぐ。その姿を見て二人して優しく微笑む。
この穏やかな時間も、言ってしまえば『いつも通り』。
──しかし、段々とつぐの様子が変わってきた。
接客しながら、何度か時計をちらちらと見たり、窓に映る自分の姿を確認して髪の毛を弄ったり、入り口や窓の外の景色を見ていた。
まるで、誰かを待っているようだった。ずっとそわそわしてる。
「……なぁ、蘭。つぐって今日何時までよ」
「パートのおばさんが来たから、多分二時で終わり」
「……あと十五分だけど……この後のつぐの予定は?」
「多分無いはず」
二人で声のトーンを落とし、顔を近づけてひそひそと会話をする。あっ、めっちゃいい匂いする。シャンプー変えたのかな。後で確認しよ。今シリアスっぽい雰囲気だからね、我慢しないとね。
一人理性と戦っているなんて気付いていない蘭は、心配そうにつぐの事を見る。以前の大学生のようにお近付きになろうとする不届き者が現れたのだろうか。
「……ん?」
すると、つぐが急にぱあっと顔を輝かせ、窓の外へと目を向ける。その目線の先を追って窓の外へと目を向けると、そこにはギターケースを背負った、水色の髪の女の人。
彼女はカランカランとドアベルを鳴らしながら、店の中へと入ってくる。
「あ! いらっしゃいませ、紗夜さん!」
「羽沢さん、こんにちは。今日もお店のお手伝い、お疲れ様です」
彼女はガールズバンド『Roselia』のギタリスト、『サッドネスメトロノーム』こと氷川 紗夜。そのギターの正確性には定評がある。双子の姉で、妹もギタリストなのだとか。
噂で聞く限りでは、規律に厳しく生真面目で冗談の通じない堅い人物と聞いていたが……つぐに笑顔を向ける彼女は、とてもそうとは思えなかった。
「……紗夜さんって、この店よく使うのか?」
「……そう言えば、つぐが最近紗夜さんが店に来るって話してたような……」
意外すぎる組み合わせ。接点欠片もないだろこの二人。
学校も違う、バンドも違う、楽器も違う、学年も違う……ほんとにどこで知り合ったし。
「今日も練習だったんですか?」
「ええ。午後から今井さんがバイトでしたので、午前中だけ」
「お疲れ様です! いつもの席でいいですか?」
「ありがとう、羽沢さん」
「……いつもの席って言ったな、つぐ」
「いつもの席で通じるくらい通ってるの……?」
二人の様子を眺めながら、関係性について考察を始める。蘭はいつの間にやら作曲ノートを開き、二人の会話をメモし始めている。ノートの端に書かれている『亮との子供の名前 華乃 咲希 咲久? 三人くらい欲しいなぁ』という文章にはスルーさせてもらおう。家族四人養うだけの稼ぎを手に入れないとなぁ。
「ご注文は……いつものでよろしいですか?」
「そうね……今日は少し疲れたので、カフェラテにしましょうかね。あと、ケーキセットを」
「かしこまりました!」
「……いつもので通じた、だと?」
「相当通ってるね……」
「つぐの笑顔、眩しすぎない……?」
「というか、つぐのあんな笑顔、見た事ないんだけど……」
さっきからつぐの笑顔が、柔らかすぎる。例えるなら、そう……二人っきりで俺のそばに居る時の蘭の笑顔に近い。
明らかに今のつぐはツグっている。しかし、普段とは様子が違いすぎる。普段は言語化するとしたら『張り切っている』が一番しっくりくるが、今のつぐは『ときめいている』が一番しっくりくる。
なんか、違う。あんなつぐ、見た事ない。
まるで、恋する女の子のような雰囲気のつぐは、初めて見た。
「お待たせしました! カフェラテとケーキセットです! あと、その……今日はこれで上がりなので、ご一緒してもよろしいですか……?」
「……既に羽沢さんの分のケーキを用意されたら、断れないじゃないですか」
「あっ、えっと! その……嫌でしたか?」
「ふふっ、そんな訳ないですよ。どうぞ」
「……! ありがとうございます!」
「……あれ、間違いなくね?」
「……あれ、間違いないね」
紗夜さんに少し呆れられた瞬間、一気に落ち込んでしまう様子。しかし、許された瞬間にぱあっと顔を輝かせ、うっきうきの様子で紗夜さんの対面の席に腰を下ろすつぐ。
その様子を見ていた俺と蘭は、二人で同じ結論を出す。最早俺と蘭の仲ならば、言葉にしなくても通ずることはいくつかある。
──つぐ、紗夜さんのこと好きなんじゃね?
確証は何も無いけれども、つぐの様子を見る限り、そうとしか思えなかった。
「どうする、蘭。『守る会』に報告する? 血祭り? 血祭り??」
「いや……今回はつぐが好意を寄せている形……紗夜さんが詰め寄っているって訳では無い。報告はするけど、手は出すな……ってとこじゃない?」
「了解」
スマホを取り出し、『羽沢さんとこの娘さんを守る会』のグループにメッセージを打ち込む。
『つぐが好意的に接している存在を確認。一つ上の女子の先輩。暫く様子見』
メッセージにはすぐさまメンバー全員の既読が着き、一様に『了解』のコメント。あんたら仕事中だろ。良いのかおい。
「……美味しいですよ、羽沢さん」
「!? えっと……分かったん、ですか?」
「えぇ……羽沢さんのお父様のカフェラテと比べて、少し酸味が強く出ていましたので」
「……蘭、お前違い分かる?」
「……ぜんっぜん分かんない……紗夜さん凄すぎない……?」
なんだかんだ言いながら基本ハイスペックな紗夜さん。どうやらコーヒーの違いすら感じ取れるらしい。それなりにこの店に通っていて、つぐの練習に付き合ってコーヒーを飲んできた俺たちですら分からない味の違いに、一瞬で気付いた。
──待て、それはおかしい。
つぐの親父さんはこの店のマスター。つぐのコーヒーについてはある程度認めつつも、まだお客さんには出せないな、と厳しく言っていた。
しかし、お客さんである紗夜さんに出したのは、つぐの淹れたカフェラテ。これはつまり、つぐの親父さんが許可したということで。
はたと気づいた俺は、『羽沢さんとこの娘さんを守る会』のグループを見てみる。
全員が『了解』と返している中、つぐの親父さんとつぐのお袋さんだけが返信していない。
ばっとカウンターを見てみる。いつも通り親父さんがカップを拭いていた……が、俺の視線に気づいたのか、こちらへと向き直る。
──ピロン、とスマホにメッセージが届く。
『彼女に淹れるコーヒーに関しては、お客さんに出せるレベルなんだ。不思議だよね』
「──っ!」
「どうしたの、亮……なっ!」
思わず動揺して机にスマホを落としてしまう。その画面を見た蘭も、同様に動揺してしまう。おっと、これは事故ね。
そのつぐの親父さんのメッセージで、先程の疑惑が確信に変わる。
──つぐ、紗夜さんのこと好きじゃん。
「……どうしよ、亮……紗夜さんを思いっ切り剣山で刺したい……!」
「蘭、落ち着け……! 俺だって今、紗夜さんのことを詰問したくて仕方ない……っ!」
『そうだね。俺も紗夜ちゃんに色々話を聞きたいかな』
俺たち三人の気持ちが、一つになっていた。何故かつぐの親父さんの声が聞こえた気がしたが、気にしてはダメなのだろう。
悩みに悩んだ結果、『暫くは三人で見守ろう』と言う結論になった。なお、俺たちがずっと怒りに肩を震わせている間、つぐと紗夜さんはずっと楽しそうに談笑していた。
その時のつぐは、正直今までで一番可愛かったと、断言出来る。
──後に、つぐ本人から恋愛相談を蘭と二人で聞くことになるとは、この時の俺は知る由もなかった。
ご閲覧ありがとうございます。この作品は頭空っぽで読むのが丁度いいです。内容が無いようですので。
……部屋が寒い。
感想、評価、お気に入り登録等してくれると、ちょっとはりきります。
それでは、また次回。