反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど 作:コロリエル
あと、後書きに少しお知らせがあります。そちらも是非。
オリ作
ボクは『神様』が大嫌いだけど、『神様』はボクが大好きらしい
https://syosetu.org/?mode=ss_detail&nid=248236
「…………」
「…………」
…………。
「「……………………」」
前にもあったなこんなこと。
何度目か数えることも諦めている美竹家。俺の前には何度目かの神妙な顔の蘭の親父さん。
以前のように彼に呼び出され、挨拶もほどほどにこの沈黙。俺はいったいどうすればいいのだ。
前回から、蘭の親父さんの前で緊張するなどということは無くなった。というのも、なんか、怖くなくなっちゃった。
娘に似て、どこか抜けてるもん。
「……時に、亮君」
「何ですか?」
「蘭の部屋に入ったとき、蘭が何やら犬の耳を模したものを頭に着けていたのだが、何があったか知らないかね?」
「ぶひゅっ」
変な音が口から洩れた。
蘭、何で部屋で着けてんすか。なんで鍵閉めてないんすか。なんで持ってるんすか。
言いたいことや気になることが山のよう。大好きだよだとか愛してるだとか結婚しようとか。
いやほんと、何してはるんですか。
「そ、っれは……あれですよ、そういう歳頃なんですよ」
「そういう歳頃?」
「若い女の子は、一回ぐらいあんな感じの動物の耳を付けてみたくなる時があるらしいんですよ……あ、これ本人達には言ってはダメですよ? すっっっっっっっっごくデリケートな問題なので」
「そ、そうか……遂に蘭が壊れてしまったのかと、少し不安になっていたんだ……分かった。肝に銘じておくよ」
ごめん蘭、変なこと親父さんに吹き込んだ。
ごめん親父さん、騙しました。
何をどう説明したものか非常に悩ましかったが、口からでまかせで何とか乗り切る。あとからめんどくさい事になりそうな予感はプンプンしているが、ここは知らんぷりしておこう。
部屋でそんなもん着けてた蘭が悪い。覗き見した親父さんが悪い。括弧付けて言わせてもらうと、『僕は悪くない』。
俺は嫌われ者でも憎まれっ子でもやられ役でも主役でも無いけど、俺はあのキャラクターが滅茶苦茶好きです。括弧良すぎでしょあの大嘘憑き。
……いやまぁ、今回のはカッコ付けなくても括弧付けなくても俺は悪くねぇけど。どっちかと言うと、生まれた意味を知るRPGの主人公だ。
「それはそうとして……詰まるところ、若い女の子の間では、あのような装飾品は流行っているのかね?」
「どうなんでしょうか……そこは俺もよく知りませんね」
まだ続けんのかよこの話題。
どう考えてもこんなしょーもない話を延々としたくない。一週間以上待った結果がこんな話で、挙句の果てには、新作のオリジナル作品のURL張られる人間の気持ちにもなってみろ。
何とか逃げようとする必死の一手。よく知らないは魔法の言葉だ。知っていても知らんぷりできる。見えないものを見ようとしても見えないのと同じだ。いや、関係ないか。
この目の前の人は、それで前回大暴走を起こしてとんでもない目にあったのだ。いい加減学習して欲しい。
「実はだね……恥ずかしながら流行っているのかと勘違いしてね……通販サイトでこれを買ったんだ」
そう言って親父さんは、その和服の胸元からにゅっと何かを取り出す。
黒色の、可愛らしいネコミミカチューシャだった。
「なんちゅーもんをなんちゅーとこから出してんですか! え? 買ったんですか!? 親父さんが? ネコミミカチューシャを!?」
「Amaz〇nで」
「想像出来ねぇ!」
「お届け先はコンビニにしておいた」
「賢い!!」
想像してみよう。和服を着た華道家が、スマホかパソコンでAmaz〇nのサイトを開き、ネコミミカチューシャをポチってるその様子を。
面白すぎるでしょホント。
いつもいつもお世話になっております運送業の皆様。こんな辛い状況ですが、お互い頑張っていきましょう。
「……で? それをどうするんですか?」
「いや、蘭にプレゼントしようかと」
「間違いなく絶縁言い渡されますって」
どこの世界に、高校生の娘にネコミミカチューシャプレゼントする父親が居るんだ。とんでもねー絵面だなおい。
胃が痛い。なんでこの親子は揃いも揃って少し思考がぶっ飛んでるんだ。
これが将来の『お義父さん』かぁ……と苦笑い。中々に笑えないぞこれ。
「そうか……では、これはどうしようか? 捨てるのも勿体ないし……」
「……いや、返品すればいいのでは?」
「せっかく買ったのだから、誰かに使ってもらいたいのだけどな……」
いらないいらないいらないいらない。そんな気遣い、いらないいらない。
もう既に嫌な予感がする。
こんな感じで変に渋り始めた親父さんは、本当に怖い。恋人の父親への萎縮というより、神話生物に感じる恐怖に似た何かを感じる。
「……そうだ」
こういう時の嫌な予感は大体当たる。
親父さんは、さも妙案を思いついたと言わんばかりの晴れ晴れとした表情。
いい人なんだよ? 娘のことを本気で考えていて、選んだ道を全力で応援しているいい親父さんだ。
ただ、ちょぉっと考えがぶっ飛んでるだけだ。
「亮君が付ければ解決じゃないか!」
「誰得だ! 誰が! それ見て! 得すんだ!!」
一体何をどうしたらそんなところに落ち着くんだ。
なんで俺なんだよ。想像しただけでゾッとする。
野郎のケモ耳とか、夢の国の中だけにしてくれ。俺はノーセンキューだ、ははっ。
……夢の国チキンレースに挑戦するのは程々に。時々大変な事になるからマジで。
「蘭とペアルックじゃないか。名案だとは思わないかね?」
「もっとマシなペアルックにしますよ……ネコミミカチューシャペアルックとか、拷問じゃないすか」
お揃いのパーカーとか、そこまで行かなくてもシャーペンとかなら分かるよ。
ネコミミカチューシャて。ネコミミカチューシャて。
そんなカップル見たくねぇ。ファンタジー世界でくらいだろう。そんなカップルが存在するのは。あいつら産まれた時から生えてるから、種族ルックだけど。
「……ちょっとだけ着けてみない?」
「みません!」
「じゃあ誰が着ければ良いんだ!」
「俺じゃねぇ誰かだ!」
「じゃあ誰が着ければ良いんだ!!」
「だから俺じゃねぇ誰かだ!!」
畳をバシンと叩きながら膝立ちになる親父さん。売り言葉に買い言葉で俺も膝立ち。
問答ほとんど変わってないけど。
ぐぬぬぬぬ、と二人して睨み合う。このままじゃ埒が明かない。何か打開策を──。
──閃いた。
「そうだ! じゃあ親父さんが着ければいいじゃないですが! 親子でペアルック、いいじゃないですか!」
この時ばかりは、俺の中の悪魔に全力で敬礼。
俺以外の誰か。
居るじゃあないか、居るじゃあないか。
最近の流行り廃りに滅法弱い、将来の何かの間違いで壺買わされないか心配な父親が一人。
「おお、それは名案だ!」
勝った。
これで俺がネコミミカチューシャを着けるなどという羞恥プレイに晒されることは無い。残念だったなどこの誰とも知らない貴方!
例え神様だろうがそのお仲間だろうが、この俺を陥れる事など不可能なのだ! ざまぁみやがれこんちくしょう!!
「では早速……どうだい?」
「…………うおえっぷ」
恨むぞ神様。
あまりに見れたもんじゃないので詳しい描写は控えさせていただくが、控えめに言って吐きそうになった。
思わずえずいていると、後ろでどさっと何かが床に落ちる音。
片手で口元を押さえながら振り返ってみると……いつかと同じように、なんというバッドタイミングで帰ってきた我らが美竹 蘭。
俺と同じように口元押さえていた。両手で可愛らしく、その表情は明らかにドン引き。
「……ごめん、父さん。これから亮の家にお世話になるから」
結局、蘭が美竹家に帰ったのは、一週間後の事だった。
なお、初日にうちの親父が蘭の親父さんをからかいに日本酒片手に美竹家へ向かった。その時に『酔っ払い親父共のネコミミカチューシャペアルック』と言う生物兵器の写真が送られてきたのだが、それはまた別のお話し。
ご閲覧ありがとうございます。お知らせですが、この作品の投稿を週一程度にさせて頂きたいと考えています。いやもうやってるんですけど。何故かと言うと、私生活が忙しいというのもあるんですが、少しオリジナルの作品に力を入れようと考えたからです。勝手な判断、申し訳ないです。それでも、この作品にも全力で取り組ませて頂きますので、今後ともよろしくお願いします。
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それでは、また次回。