反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど   作:コロリエル

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どうも、大体三週間ぶりですね。なんで朝七時に起きて家に帰るのが十二時みたいな生活してるんですかね……(学生)。

さて、今回は時間を遡り、二人が付き合いたての頃のお話です。


ファーストキスと赤メッシュ ─前編─

 

 

 

 

 さて、蘭と付き合い始めてから、かれこれ二ヶ月が経過した。

 

 二ヶ月だ、二ヶ月。二ヶ月という事はつまり約六十日ということであり、約六十日という事はつまり、二ヶ月ということだ。

 

 二ヶ月もあれば、それはさぞ進展したと思うだろう。あぁ、俺だってそう思ってたよ。元男子中学生、現男子高校生。股間と脳みそが直列接続している連中だ。やましい妄想の一つや二つ。蘭とあんなことやこんなことする妄想したさ、あぁ。

 長い間ずっと一緒に過ごしてきた幼馴染と結ばれたのが二か月前。お互いずっとずっと想い続けてきて、ようやく恋人同士になれたのだ。

 

 そりゃあ、進展が無いほうがおかしいと思うでしょうねぇ、初見さん。

 

 

 

「え!? 亮君蘭とちゅーすらしてないの!?」

「ひまり、うるせぇ」

 

 

 

 はい、二人してヘタレまくってちゅーまで行ってないです。ぎゅーまでしか行ってないです。

 

 いや、タイミングがなかった訳では無いのだ。四人が気を使って俺と蘭を二人っきりにしてくれる事は何度かあった。

 実際、ちゅーは無くてもぎゅーは何回もした。小さい時から数えれば軽く三桁超えてる。こちとら、十年来の幼馴染。そんじょそこらのカップルとは格が違う。ぎゅーの熟練度はかなり高い。

 

 ちゅーの熟練度はゼロだけど。ひとっつも成長して無いけど。

 

 

 

「あんなにらっぶらぶで、私たちにすっごく見せ付けてくる半バカップルの二人が、ちゅーも!? ちゅーも!!?」

「煽ってるだろ? 絶対煽ってるだろお前」

「えへへ……」

「照れるな。褒めてないんだよ」

 

 

 

 日曜日の、午前十時。ひまりに呼び出されて羽沢珈琲店にやってきてみれば、ひまりとつぐ、あとパスパレの若宮イヴが居た。ビックリした。マジでビックリした。ホントにビックリした。

 彼女が載っている雑誌は全部コンプリートしているくらいには彼女のファン。そりゃあもう、震えた。喜びと、どこかで見ているかもしれない彼女のファンから襲われるのではという、恐怖で。まぁ、しっかりとサインを貰い、握手までさせて頂いた。これって浮気になるのかな。

 

 若宮さんとはコンゴトモヨロシク……ときちんと挨拶を済ませ、ひまりと二人で席に着いた。

 

 そしたら、このザマ。マジで帰っていいかなホント。

 

 先ほどまでテンションがモカチャッカファイヤーしていたのに、今では悲しいほど儚くなっていた。意味わからないかもしれないが、それくらい高低差があった、ということだけ分かってほしい。

 

 

 

「亮サン! 据え膳食わぬは、男の恥デス!」

「若宮さん? 合ってるけど合ってないことわざ言うのは止めようね?」

 

 

 

 据え膳だけど。食ってないけど。恥だけど。

 

 この状況で言わんといてつかぁさい。いい? イヴ。あなた、アイドルなのよ?

 

 ほら、つぐが顔真っ赤にしてるもん。お盆で顔隠しちゃってるもん。そんな目で俺を見るな。俺が卑猥なものになっちゃったみたいだろ。

 

 いや食うよ? いつかは食うけどさ。メインの前には前菜があるでしょう? 今は前菜を楽しんでるんだよ。次は……スープだっけか。いや、蘭は頭の天辺から足の先まで全部メインだ。勘違いするなよ葉加瀬 亮。

 ……なんで自分の例え話に自分で突っ込んでるんだ俺は。一回落ち着け。

 

 頼んでおいたレモンケーキを一口。甘さの中にさっぱりとした酸味があり、かなり美味しい。最近のお気に入りだ。

 

 

 

 

「このままじゃ、蘭が寂しくて死んじゃうよ!」

「うさぎかよ……」

「この前だって、蘭のノートに亮とのキスシーンの描写が事細かに書かれてたよ? だから、てっきりキス済みなのかと……」

「うさぎかよっ!」

 

 

 

 年中発情してる的な意味で。

 

 なんで恋人のとんでもない秘密を幼馴染の女の子から聞いてんだよ。

 拷問かよ。拷問だな? 拷問なんだよな? 不甲斐ない俺への当てつけなんだよな?

 

 もやもやと溜まった感情を、空気の塊にして吐き捨てる。少し心情的にマシになったところで、コーヒーひと口。先ほどのレモンケーキを食べて残っていた甘味や酸味を、コーヒーの香ばしい香りと苦味で押し流す。相変わらず、ここのコーヒーは美味い。

 

 ……蘭にうさ耳って、似合うだろうか。まあ、蘭は何着ても可愛いから、問題ないだろう。

 

 

 

「で、でも……蘭ちゃん、寂しそうだったよ?」

「……そうか」

 

 

 

 未だに顔が赤いつぐに、恐る恐ると言った様子で告げられる。そんなもの、俺が一番分かっている。以前ほど合わなくなった分、会ったときは比喩抜きでずっとくっついている。あの『反骨の赤メッシュ』が黙ってもたれかかっているんだぜ? 襲っていないだけ褒めてほしい。

 

 まぁ、襲うどころかちゅーすらしていないんですけどね。だって、唇と唇だぜ? 神様は何も禁止なんかしてないかもしれないけどさ、こう、ね? ハードル高すぎやしませんか。

 

 

 

「亮君! 今から蘭と会うんだよね?」

「なんで知ってるんだよ……」

「今すぐ蘭とちゅーしてくること! しなかったら、暫くこの店立ち入り禁止だから!」

 

 

 

 お前に何の権利があるんだよ、と立ち上がりながら宣言するひまりに言いたくなったが、その後ろで顔を赤くしながら頷くつぐと、どこからか取り出した竹刀を構える若宮さん。俺を殺す気かよ。

 しかし、これについて素直に首を縦に振るわけにはいかない。

 

 

 

「いや……ちゅーって、誰かに強制されるもんじゃないだろ? もっとこう、夕焼け空を学校の屋上から眺めながら、お互いの愛を確かめつつ、こう、惹かれ合うように……」

「亮君……」

「す、凄くロマンチストだね!」

「あれ? お二人は別の学校では……」

 

 

 

 呆れるひまり、慌ててフォローするつぐ、マジレスする若宮さん。

 

 少なくとも、俺の味方は居ないようだ。そんな可哀想なモノを見る目で俺を見るなよ。割と真面目にこんなこと考えてるんだぞ俺は。

 

 彼女と、どんな状況で、ちゅーするか。

 

 ここ最近の、俺の悩みだった。登下校中や授業中。飯食ってるときや風呂入っているとき、寝る直前等々……気を抜いたら、ずっと蘭の唇が脳裏をよぎる。ハイそこ。欲求不満言わない。

 

 

 

「真面目にさ、お前らに彼氏彼女ができたとする……初めてのちゅーが、クッソ狭くて薄暗い路地の中だったら、どうよ?」

「「「……」」」

 

 

 

 俺の例え話に、女の子三人は完全に押し黙る。あ、『彼氏彼女』には突っ込まないのね。

 それはともかく、一回想像してみよう。薄暗い路地。目の前には、自分の恋人……便宜上、蘭としよう。

 

 狭い路地の壁に押し付けるように彼女に迫る。ただでさえスペースがない場所が、更に狭く感じる。物理的な近さだけでなく、心と心の距離すらも近くなっているような錯覚を覚える。

 大通り側に何度か目線を向ける蘭の頬にそっと手を添え、自分に向き直るように仕向ける。俺の事を、見てくれよ。こんなに想っているんだから、さ?

 

 熱に揺れる彼女の瞳。そこに映る俺の顔もまた、熱に侵されていた。

 

 

 

『ちょ、亮……ここ、そと……』

『……そんなこと気にならないようにしてやるよ』

 

 

 

 怖気付く彼女を黙らせるため、その可愛らしい唇に……。

 

 

 

「……アリだな」

「亮君!? なんで自分で納得してるの!?」

 

 

 

 自分で例えておきながら、自分で否定。だって、周りにばれないように声を押し殺す蘭とか、絶対可愛い。多分、その内もっとと言って、自分から俺の首に抱き着いてくる。間違いなく可愛い。

 ……と、いかんいかん。これじゃあ本来の目的からかなり逸れてしまう。

 

 何かいい例えは、と思考を巡らせる。

 

 

 

「例えば……大勢が見ている、街のど真ん中とか」

「『蘭は俺のモノだ!』って、他の人に見せつけるようにキスするのデハ?」

「……アリだな」

「もう何でもアリじゃない!」

 

 

 

 脳みそやられている。恋とはこれほどまでに盲目なのか。それとも、そうさせるだけの魅力が蘭にあるのか、はたまた両方か。

 絶賛恋の病発病中の俺を女の子三人(うち一名現役アイドル)は、なんとも言えない表情で眺めているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、つぐの親父さんに『他にお客さん居ないけどさ……もう少し静かに、ね?』と注意された。ごめんなさい。

 

 

 

 




ご閲覧ありがとうございます。亮くんこんなんだったっけ(おい)。後編は、できる限り早いうちに。

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それでは、また次回。
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