反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど   作:コロリエル

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どうも、ハッピーバースデー蘭ちゃん。

という訳で、誕生日回です。


誕生日と赤メッシュ

 さて、四月十日は何の日だ。

 

 瀬戸大橋の開通? 合ってるが違う。

 百の日? 確かに四月十日は一月一日から数えてちょうど百日だけど、違う。

 ラビット〇ウスのピンクの子の誕生日? 誕生日ってことは合ってる。声も似てるが。

 

 そう、誕生日だ。

 

 誰の?

 

 

「「「「「ハッピーバースデー!!!」」」」」

「…………んぁ?」

 

 

 綺麗に爆睡している蘭の部屋に突入する俺とモカ、つぐにひまりに巴。

 現在時刻、朝の四時十分。普通に近所迷惑である。許可してくれた蘭の親父さんとお袋さん、本当にありがとうございます。

 

 そう。本日四月十日は俺の恋人、反骨の赤メッシュこと美竹 蘭の誕生日である。全人類、宴じゃ宴。

 

 

「蘭〜。誕生日おめでと〜。これはモカちゃんがプロデュースしたやまぶきベーカリーの極上のメロンパンだよ〜。朝ごはんにどぞ〜」

「ん……頂きます……」

 

 

 ついさっき山吹ベーカリーに寄っていたと思えば、そんなものを取っていたのか。後で沙綾にお礼言っとかなければ。

 蘭、未だに目が覚めていないのか、素直にそのメロンパンが入った紙袋を手に取る。

 

 

「蘭ー! これは私から! 最近マニキュア探してるって言ってたよねー!」

「ん……美味しそう……」

 

 

 それはメロンパンに対しての感想では?

 

 明らかに寝ぼけている蘭は、マニキュアの匂いをスンスンと嗅いでいた。危なっかしいので取り上げておいた。寝起きの蘭は、確かに昔っから子供っぽい。

 

 

「蘭ちゃん。これは私から。この前一緒に見て興味あるって言ってくれたバスボム! リラックスできると思うよ!」

「ん……美味しそう……」

「食うなよ?」

 

 

 思わず突っ込んでしまった。同時に、マニキュア同様バスボムを取り上げる。

 瞼がまだ持ち上がっていない模様。しょうがないよね。朝四時だもん。

 

 

「蘭! これはアタシからだ!」

「美味しそう……」

「蘭、起きてるだろ?」

 

 

 夏に向けてということで、巴が選んだのは時期的には少し早いが制汗剤。

 それすら美味しそうと言う蘭。俺は心配だよ。そのうち俺見て美味しそうとか言い出さないよな? 食われないよな?

 

 彼氏としては非常に心配である。本当に大丈夫だろうな蘭。

 

 

「で、これは俺から……」

「……あ、りょうだ」

 

 

 満を持して、約二週間掛けて選び抜いたプレゼントを手渡そうと蘭に近寄ると、何を思ったのか蘭が布団から身を乗り出し、俺にぎゅっと抱き着いてくる。

 背後から湧き上がる黄色い悲鳴。

 

 

「お、おおおおおおおお? ら、蘭さん……?」

「んー……いいにおい……」

 

 

 舌っ足らず蘭可愛いなぁこんちくしょう。

 

 完全無防備な恋人に急に抱きつかれ、俺の心臓はオーバーヒート一歩手前。とくこう二段階下がってしまいそう。いや、混乱してるから「おだてる」か? あれって一段階だっけ。

 

 カシャカシャカシャカシャ。

 

 何やらシャッター音が激しいな、と思い後ろを見てみると、モカとひまりがカメラを構え、一心不乱に俺と蘭を激写していた。モカに至っては床に寝転がって、下からのあおり写真を取っていた。迫力欲しいか? この構図。

 

 巴はそんなモカひまを見て苦笑い、つぐは俺蘭を見て顔を真っ赤にしていた。つぐはどうかそのままでいてくれ。

 

 

「あのー……助けていただけませんかね?」

「あ、お構いなく〜」

「ふっふっふ……『誕生日を口実に寝ぼけ蘭を激写しよう大作戦』、大成功!」

「……後で蘭に殺されそうだなぁ……」

「はわぁ……蘭ちゃん、すっごく幸せそう……」

 

 

 楽しんでるなおい。

 

 確かに、元々誕生日の朝早くに蘭の家に突撃しようと言い出した時から少し嫌な予感はしていたが、ここまでモカ達の思い通りになるとは思わなかった。

 しかし、もっといい作戦名は無かったのかよ。まんますぎるだろ。

 

 

「りょう……頭なでて……」

「…………はい……」

 

 

 若干潤んだ瞳で恋人におねだりされて。断れる男が何処にいるんだよ。

 この場に男は俺しかいないが、俺は無理だ。絶対無理だ。

 大人しく蘭の頭を軽く撫でてやる。寝起きだからか、いつもと違って髪型が乱れているので、それを直すように手ぐしを通す。

 女の子の髪の毛すっげ。指が凄くすんなり通る。これはずっと撫でていたい。

 

 

「……ねぇ。それ本当に蘭? なんか……いつもの威厳が無いんだけど」

「まるでいつもなら威厳があったみたいな言い方だなぁ……」

 

 

 確かに普段の蘭は無口かつ一本通った赤メッシュと、ビジュアル的にはかなり厳つい。

 だが、俺たちは知っている。蘭が意外と乙女であるということ。意外と恥ずかしがり屋であるということ。意外と仲間思いであるということ。

 

 そして、俺だけが知っている。蘭が世界で誰よりも可愛いということ。

 

 

「……無いね〜」

「……無いな」

「……無いね」

「……無いよ」

「仲良いなお前ら」

 

 

 五人の意見が完全一致。この辺りは流石十年来の付き合いだ。

 

 そんな俺らに目もくれず、すりすりすりすりと頭を俺の胸に擦り付けてくる美竹の蘭。

 

 

「ん……りょう……ちゅーして」

「いい加減目ェ覚まして下さいお願いします」

 

 

 未だに夢の中だとでも思っているのだろうか。蘭はそれはそれはでろっでろに甘えてきていた。

 

 ちゅーて。前々から思ってたけど、ちゅーて。高校生にもなって、ちゅーて。

 

 可愛いよ? 可愛くって可愛くってどうしてくれようかって思ってるけどね? ここは蘭の家だし後ろには幼馴染が四人いるしひとつ屋根の下には蘭の両親まで居るし。

 

 そんな状況で、ちゅーて。

 

 

「亮くん! 男は度胸だよ!」

「巴。ひまり黙らせといて」

「亮! ガツンといってやれ!」

「お前がひまりにガツンと言ってやれ!」

 

 

 恐らく、この状況下で唯一俺の味方になってくれそうな巴すら熱い声援。モカは顔を真っ赤にしてしゃがみこんでいたつぐを介抱している。つぐ、いくらなんでも耐性無さすぎね?

 

 これだけ騒いでいるのに、蘭はキス待ち顔。

 

 

「……蘭?」

「んっ」

「……らーん?」

「んーーーーーーっ……」

 

 

 埒があかねぇ。

 

 しかし、幼馴染の前で不埒な真似をするほど俺は飢えていないし、時と場合を弁える事が出来る。

 さて、どうやってこの可愛い可愛い恋人の目を覚ましてやろうか。

 

 

「……はぁ……目ェ閉じとけよ」

 

 

 俺は蘭に一言そう言って、左手を彼女の後頭部に回し、右手の人差し指と中指を揃え、蘭の唇に優しく触れる。

 

 これは、つい先日教えて貰った誰得知識、「目を閉じた相手に人差し指と中指の腹を揃えて唇にくっつけると、キスしていると錯覚する」と言うもの。

 蘭さん、物の見事に顔が緩み始めてる。いっつもこんなに惚けてるのか。今度からちゅーするときは薄ら目を開けよ。

 

 

「んちゅ……れろっ……ん?」

「おいこら待てや寝坊助」

 

 

 この寝坊助、俺の指とディープキスしようとしてやがった。

 思いっきりれろって行きましたよ。そんなに俺の指は気持ちよかったか。妬くぞコラ。

 

 

「……これ、指……え、ん、え?」

「……おう、やっと目ェ覚めたか」

 

 

 先程までのどこか遠くに焦点の合っていた目ではなく、しっかりと俺を視認している目。どうやら、夢の時間は終わりらしい。

 これから始まるのは、俺と蘭にとっての地獄の時間だ。

 

 

「……えっと……さっきのは、夢……?」

「じゃねぇぞ。蘭、お前俺の指にちゅーしてたぞ」

「……〜っ! って、なんで亮があたしの部屋にいるの!」

「そりゃあ、今日は蘭の誕生日だからな。皆でお祝いしに来た」

 

 

 きょとんとしたり、恥ずかしがって顔を真っ赤にしたり、嬉しそうにはにかんだり。

 ころころ表情を変えていた蘭だが、最後。「皆でお祝いしに来た」の所でぴしり、と固まった。

 

 寝起きの頭でも、何が起きているのか理解出来た模様。

 

 油の刺していないロボットのように、ギギギと顔を俺の後ろへと向ける。

 

 

「……蘭ってば、だいた〜ん」

「蘭……良かったね……」

「……ソイヤソイヤソイヤソイヤッ!」

「きゅう……」

 

 

 薄ら笑いでからかうモカ。

 ほろりと涙を流すひまり。

 忘れようとソイヤする巴。

 顔を真っ赤にして撃沈するつぐ。

 

 皆、本当に「いつも通り」だった。

 

 俺はこの後起こるであろう惨劇に備え、両手で耳を塞いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、悲鳴を聞き付けてやってきた親父さんに、六人揃ってこっぴどく叱られた。

 蘭はその後、ずっと不機嫌だったが俺のプレゼントを見て、少しだけ機嫌を直してくれた。

 

 次のライブ。蘭の首元にはシンプルなデザインのチョーカーが巻かれていた。

 

 

 

 

 




ご閲覧ありがとうございます。指のくだりは、どこかで見た気がするんだけど、どこで見たか完全に忘れました。教えてエロい人。

感想、評価、お気に入り登録等して頂くと、部屋の掃除が進みます。

それでは、また次回。
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