反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど   作:コロリエル

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どうも、龍が如く結構好きなんだよねって言ったら、ものすごく意外そうな顔されました。真島さんかっこええやろがい。


夜の通話と赤メッシュ

 

 夜が怖いと思っていたのは何歳の時までだっただろうかと、勉強もそこそこにベッドに五体投地した俺はぼんやりと考えていた。

 

 ガキの頃は段々と沈んでいく太陽を眺めながら、蘭とさよならまた明日をしなければならないことを嫌がり、夜の帳に怯えていた。

 

 バカみたいに騒がしいウチの両親を持ってしても、俺の夜嫌いは中々解消しなかった。

 

 しかし、今ではどうだ? 全く持って怖く……夜道を歩くのは怖い……が、昔ほどは怯えなくなった。

 

 見えないものに怯えていた当時の無知な俺。色々と知ってしまったからこそ、見えた先に恐怖の対象が無いことを理解してからは全く怖くなくなった。お化けなんてないさ、お化けなんてないさ……居てくれたほうが、面白くはあるんだろうけど。

 

 しかし、今の俺は恐怖こそ感じなくなっていたが……寂しさというのは今でも健在のようだ。

 

 普段は蘭に、やれうさぎかよだの甘えさせたいだのグダグダ言っているが、俺だって蘭ともっと触れ合いたいと常々考えている。

 

 

 ……女々しいな。辛くは無いけど。

 

 

 最近おかしいのだ。合う度にいちゃいちゃしてるし、休日になったら確実に二人で過ごしている。回数こそ多くないがデートだってするし、お互いに何度も好きだ好きだと言い合っている。

 

 

 なのに、何故だろう。

 

 

 

「もっと蘭と話してぇなぁ……一緒に居てぇなぁ……」

 

 

 

 漸く想いが通じたところでの、別の学校への進学。バンド活動の充実化に華道の修行。

 

 会う時間は、中学の時までの何分の一だろうか。寂しく感じるのも当然で、それはどうやら蘭も同じ。

 だからこそ、蘭は普段中々会えない分会ったときにこれでもかと甘えてくるのだろう。

 

 

 可愛い奴め。もっと可愛がりたいんだけど、なんでここに居ないんだよ。

 

 

 頭の中が蘭のことでいっぱいになってきた所で、俺の我慢が限界を迎えた。おもむろにスマホを手に取り、普段使いの通話アプリを立ち上げる。通話相手は、当然愛しの恋人。

 

 一コール、ニコール、三コール、ガチャッ。

 

 

『もしもし? 亮、どうしたの?』

「すまん蘭、寝るとこだったか?」

 

 

 声色が普段よりも舌っ足らずでふわふわしていた蘭。もう眠たいのかな、なんて推察してしまう。

 最近頑張っている彼女のことだ。夜は疲れて眠たくなってしまっても当然だ。まだ十時なんだけどな。

 

 蘭は俺の質問に、んーん、と子供っぽく答えてみせた。

 

 

『眠たいけど……亮の声聞いたら、もう少し起きてられそう』

「はぁ……相変わらず可愛いな、蘭」

『か、可愛くなんて無いし……っ』

 

 

 なんて、可愛い反応を見せてくれる蘭。スマホ越しではあるが、彼女はやはり『いつも通り』。変わってしまったものこそあれド、大事なところは何にも変わらない、大切な幼馴染の一人で、大事な恋人。

 

 先程まで感じていた寂しさも、彼女の声を聞いたらすっかり薄れてしまった。

 

 

『それで、何の用?』

「いやぁ……特に用があるわけじゃ無いんだよ」

『……?』

 

 

 美竹家の彼女の部屋。そのベッドの上で彼女がこてん、と首を傾げた様子が思い浮かぶ。意味が分からない、といった感じか?

 

 まぁ、それもそうか。普段は用もないのに電話をするということがお互いに無いし、連絡だって最小限。友人に話すと『ホントに付き合いたてホヤホヤのカップルか?』と散々言われた。まだ付き合い始めて五ヶ月程度。

 

 

「ほら……あれだよ。声が聞きたくなったってやつ」

 

 

 若干恥ずかしさを覚えながら、俺は小さな声で呟く。

 

 格好悪いだろうか、びっくりしただろうか、なんて考えてしまう。蘭の前では常に格好いい恋人で居たいんだけどな。

 

 暫く、二人の間に沈黙が流れる。ただでさえ夜は音が少ない。より沈黙が痛い。

 

 

『……ふふっ』

「……笑うなよ……こっちだって恥ずかしいんだから」

『いや、ごめんごめん……昔は、こんなことしたくても出来なかったのになぁって』

 

 

 途端に機嫌が良くなった蘭。声色も心做しか弾んでいた。

 

 ……確かに、子供のときはスマホなんてものは持っていなかったし、夜遅くに電話するなんてことも出来なかった。

 

 大人になるって、悪いことばかりじゃないぞピーターパン。許されることがだんだん増えるからな。その分責任も増えるのだろうけど。

 

 

「あぁ……そうだな。小学校の時だっけ? 公園で遊んでて帰りたくないっつって遊具の中に二人で隠れたのって」

『懐かしいね……今じゃあ、また明日って言っても我慢できちゃうもんね』

「……我慢できなかった男がここに居るんだけど?」

『そ、そんなつもりで言ってないって……』

 

 

 あ、今の俺めんどくさいやつだ、と察知。

 

 定期的に情緒や気持ちが落ち込み傾向に向かってしまう状態。やる気アップスイーツ食べても、調子は上向きにならない。

 

 これは程々にして電話切り上げて寝るかな……と考える。こういうときは、寝るのが一番。

 皆も騙されたと思って早く寝てみてくれ。次の日世界が晴れてるよ。

 

 

「ごめんごめん……所でさ、次の休みはどうする? 親父とお袋はデートするから家に居ないけど」

『相変わらず仲いいよねお義理父さまとお義理母さま』

「いま明らかにおかしかったのはスルーしとくわ」

 

 

 気が早い。付き合い的には十年来だが、関係が変わってからは五ヶ月だ五ヶ月。五ヶ月でできることなんて、五ヶ月分の歳を取ることしか出来ない。

 

 式場選びを初めているというお互いの両親を見たときはちょっと引いた。あと十年は待っていて欲しい。その頃には色々と覚悟もきちんとできるだろうし。

 

 

『……久しぶりにさ、どっか行く? その日はモカと巴とひまりがバイトだから、バンド練習無いんだよね』

「あらら……皆忙しそうだなぁ」

『亮だって……バイトしてるし、最近父さんによく呼び出されてるじゃん』

「そりゃあ……まぁ、色々とな。ほら、蘭だって俺の親父との会話聞かれたくないだろ?」

 

 

 言えない。親父さんが定期的にAmaz◯nで買う商品の処理に付き合ったりしている。本題はそこではないが、それについてもまだ言わないほうがいいだろう。

 

 俺が親父との会話の話を出すと、蘭は『確かに……』と納得してくれたようだった。

 

 お互いに、隠したいことの一つや二つはある。そこまでズカズカ行くのもなにか違うだろう。

 

 

「っと、どっか行くって話だったな……そうだ、ちょっと遠いけど、水族館行ってみないか?」

『へぇ……割とちゃんとしたデートするつもりなんだね?』

「まーな。たまにはいいだろ?」

『たまには、でいいけどね』

 

 

 俺たちの『いつも通り』は、少しずつ少しずつ変わっていた。

 これからも本質はそのままに、俺達が何もしなくても変わっていってしまうのだろう。だけど、この半年ほどで俺たちは学んだ。

 

 本当に変わってほしくないなら、そのために一歩を踏み出さなければならないことを。

 

 ゆっくりでいい。だけど、この『いつも通り』を守るために。

 

 大げさに聞こえるかも知れないけど、俺達にはそれが何よりも大事だから。

 

 

「ははっ、そうだな……なぁ、蘭。好きだ」

 

 

 何度も何度も口にしてきた、単純な、だけど何年も伝えられなかった三文字。

 

 ふとした時に、大切なときに、想いが溢れたときに……こんな感じに、気楽に、だけど真剣にこの気持ちを伝えられる関係。

 

 それが、俺の望む『いつも通り』。

 

 これを生涯を通じて叶うのならば……俺はどんな努力だってできるだろう。

 

 大切な人が居るのなら、きちんとその想いは伝えておいたほうがいい。報われようが報われなかろうが、その感情はきっと人生の財産になりうるから。

 

 

『……あたしも、亮が好き』

 

 

 幸せな響きだった。

 

 この言葉を聞くことより幸せな事を、俺はまだ知らない。下手したら、死ぬまで現れないかも知れない。

 

 ぽかぽか、ふわふわ。

 

 形容するのも難しい、くすぐったい、だけど嫌じゃない雰囲気に包まれる。

 

 

「好きだ。大好きだ」

「好き。亮が好き。すき」

「好きだ、好きだっ……!」

「大好き、すきっ……!」

 

 

 お互い、溜まっていたものを吐き出すように、うわ言のように熱の籠もった言葉を届ける。

 

 もっと、もっと、もっと。

 

 今は目の前に居ない、少し歩かないと会えない距離。もどかしい、煩わしい物理的な距離。

 

 しかし、今の俺と蘭は、間違いなく抱き合っていた。

 

 馬鹿な話に聞こえるかも知れないが、本当にそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、お互いに夜中の三時頃まで通話を続け、二人揃って寝坊した。

 

 こんなに幸せな寝坊は、生まれて初めてで、寝る前に感じていた不安や寂しさは、すっかり消えていた。

 

 

 




ご閲覧ありがとうございます。ちなみにボクが一番幸せを感じるのは、マクドナルドのポテトを頬張っているときです。あれ食べるために一ヶ月頑張ってる。

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それでは、また次回。
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