反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど 作:コロリエル
猫カフェ編、最終話です。
追記
そういえば、三十話&十万字突破しました。今後ともこの作品をよろしくお願いいたします。
「えっと、こちらの赤メッシュの彼女は、私の友達の美竹蘭ちゃん! ガールズバンドAfterglowのギターボーカルの子なの! 皆よろしくね!」
「……あの、可能であれば俺のことは触れずにいてくれますか?」
「? 君はAfterglowの専属マネージャーでしょ? 関係者だしセーフ!」
「うーん、違いますね。確かにAfterglowのライブには欠かさず行ってますけども」
やはり微妙にズレた認識をしているトチり丸山。俺のことを微妙にずれた目で見ていた。ちらり、とアイドル二人の背後に目を向けると、カメラマンさんや音響さん等のテレビスタッフがそれはもう山ほど。
あの、本当に勘弁してくださいね? 「猫カフェに居た猫まみれの男」程度の扱われ方ならまだいい。「Afterglowのギタボの彼氏」なんて扱われ方したら、俺今後表参道歩けなくなってしまう。俺はまだお天道様の下を大手を振って歩いていたいんだ。
今、俺がどんな表情をしているのかは分からないが、それでもきちんと伝わっていたらしく、やたら甘いものの早食いが得意そうな、髭を蓄え眼鏡を掛けた小太りのディレクター三は笑いながらも頷いてくれた。
「それじゃぁねぇ丸山くんに大和くん。そこの彼はただのマタタビ人間だとでも思って接してくれよ」
「失礼だな? テレビマンおい」
「分かりました! よろしくお願いしますマタタビ人間さん!」
「おうおうピンクツインテールぅ。君は今後も俺と会うことあるんだからねぇ? 言動には気をつけてくださいよぅ」
ただでさえこちとら中々中々のピンチで気が立ってるんだ。あんまりふざけたこと言ってたら俺の至高のボヤキが出るかも知れないぞ。
もうね、セリフの後に拗音付けまくっちゃうよ? そこのアイドル二人より目立っちゃうよ? 今ちょうど頭に居るの凄いくせ毛の黒猫だ、まるであの人みたいな天パに見えるだろう?
「亮さん、本当にすいません……ジブン、精一杯フォローしますから!」
「麻弥さん……! 本当にありがとうございます……!」
「あたし、少し離れたところに居るね」
「蘭、マジでありがとう……後で目一杯甘やかすからな!」
「頑張ってね……ぷふっ、マタタビ人間、さん……っ、くふっ」
「今から俺泣くぞ? 高校生の男が大泣きするところ見せてやるからな?」
笑いをこらえながら話そうとする蘭可愛い。
……じゃねぇんだよ。なにマタタビ人間にツボってるんだよ。あれか? 自分にとって俺がマタタビみたいな存在だから納得しちゃったみたいな感じか? 自分で言っててキモイなこれ。
おろおろと、困惑した様子で俺から離れていく蘭と、寝転がる俺と、やけに張り切っている彩さんとをかわりばんこに見る麻弥さん。これは彼女の心労が心配だ。今度若宮さんに麻弥さんを癒してもらおう言っておこう。
「それじゃあ、入るところからやり直そっか。丸山くん、大和くん、頼むよ? 絶対にマタタビ人間くんのことは美竹さんの彼氏とか言っちゃだめだからね? 絶対言うなよ? ほんとに言うなよ?」
「分かりました!」
「頑張るっス!」
とくせい:はりきり
じぶんの こうげきが たかくなるが めいちゅうりつが さがる。
とくせい:ぶきよう
もっている どうぐを つかうことが できない。
とくせい:こんじょう
じょうたい いじょうに なると こんじょうを だして こうげきが あがる。
嫌な予感しかしないんだけど。はりきりキッスとはりきりパッチラゴンとか、はりきりアイアントとか、出てくるだけで蕁麻疹ものだ。
今俺の目の前には、とくせいはりきり、ぶきよう、夢特性こんじょうの丸山彩が居る。絶対なんかやる。確実にやらかす。もう想像が容易だもん。ってか、丸山彩(アイドルポケモン)、さては攻撃高いな?
「それじゃ……ハイ、キュー!」
ディレクターさん、手がカメラに被ってまっせ。
なんてツッコミ入れようかとも思ったが、本番中なので静かに様子を伺う。一旦部屋の外に出ていたアイドル二人が、キャッキャうふふと中に入ってくる。
「わぁ! 可愛らしい猫さんが沢山います!」
「彩さん、猫カフェ内では静かに……って、なんなんすかあの猫の山は!?」
まるで初めて俺の今の惨状を見たかのようなリアクション。流石腐っても芸能人(超失礼)。その辺確かに鍛えられてる。千聖さんの苦労が身を結んでる。
盛大、しかしにゃーんちゃん達がびっくりしないギリギリの音量で叫び、俺の方を見る麻弥さん。つられて彩さんも俺……というか猫の山を見る。
「あ! Afterglowの専属マネージャーでギタボの美竹 蘭ちゃんの幼稚園からの幼馴染で彼氏さんの葉加瀬 亮さんだ!」
「丸山ぁ!!」
思わず今までにない音量で叫んでしまう。それでも退かないにゃーんちゃん達。君たち誰かに指示されてやってるな? さては。
遠くで蘭が爆笑している笑い声が聞こえ、ディレクターさんが絶対カメラが音拾ってるよねってくらい大声で笑い、麻弥さんがありえないものを見るような目で彩さんを見て、等の本人はきょとんと首を傾げていた。
「え? さっきのディレクターさんのあれって、そういうフリだよね? 三回繰り返した訳だし」
「ダチョウさんたちじゃあ無いんだからさぁ! 一般人相手なんだから考えろよこの脳内までピンクちゃん! ってか、情報の半分が間違ってるんだよ! 情報番組なんだからせめて情報くらいは正しく伝えやがれ!」
「いやぁ、やっぱり期待を裏切らないねぇ、丸山くんは! どぅおははははは!」
「あんたは笑うんじゃねぇ! お昼の情報番組なんだろ?これ。 どこぞのローカル深夜番組じゃねぇんだからさぁ!」
ブチギレである。もう大人相手とかにゃーんちゃんいるとか関係ない。これが横暴だと噂のテレビ局のやり方か。
蘭は、ローテーブルに突っ伏して笑っている。あんなに爆笑している蘭は久しぶりに見たかもしれない。それだけだ今のこの状況で良かったことなんて。
「とにかく! 俺はたまたま猫カフェにいたただの一般マタタビ! いいな!?」
「わ、分かりました、マタタビさん!」
「ついに人間であることを諦めた!?」
ちなみに余談だが、俺はこの日の出来事を「人生最悪クラスに酷い目に合った」と評価するのだった。
──一週間後──
「あの番組見たわよ。リサが教えてくれた」
「」
人って、本気で驚くと喋れなくなるんだね。
いつも通りのCiRCLE。何故か勝ち誇った様子の湊さん。嫌な予感がしながらも促されるままに席に付いたところ、彼女が見せてきたスマホ画面。
そこには、直撮りされたテレビの画面が映っており、そこには先日オンエアされた例の情報番組。
彩さんと、麻弥さんと、マタタビ人間と、遠くに蘭。
『えっと……あなたは?』
『マタタビです』
『……ね、猫に好かれやすいんですね!』
『そうですね。友人に見せてやりたいくらいですよ』
度重なるリテイクに付き合わされ、完全にメンタルがぶっ壊れた俺が壊れたラジオのように同じ言葉をうわごとのように呟いていた。
オンエア当日は恐怖のあまり一切の情報を遮断し、そのまましばらくSNSを目にしなかった俺。目を逸らし続けてきた代償がやって来た瞬間だった。
「……昨日トレンド入りしていた『マタタビ人間』ってあなたのことだったのね……その、気を落とさないで?」
「……俺は大丈夫です……致命傷で済みましたから……」
「死んでるわよねそれ」
即死してないからセーフだ。まだ一番の飛んでも情報である蘭との関係は一切ノータッチだ。それが唯一の救いだ。
ちなみに、ちゃっかり出演した蘭はしっかりとコメントを残していた。自分たちのライブの宣伝をしないあたりが解釈一致だ。
普段は俺のことを敵役と認定し、煽りまくってくる湊さんも、この時ばかりは慰めてくれるようだった。泣けるぜ。
「……で、どうやったら私もマタタビ人間になれるのかしら?」
「知らねぇよ……知らねぇよぉ……!」
涙返せ。
結局、湊さんはどこまで行っても俺の敵役だと思い知らされた俺は、がっくりと項垂れるしかなかった。
その後、二週連続で蘭に慰めてもらうために美竹家へと足を運んだ。あんなに俺のことを慰めてくれる蘭は、この十年で初めてでした。
ご閲覧ありがとうございます。多分蘭ちゃんは自分から積極的に宣伝とかはしないと思うんですよね。
感想、評価、お気に入り登録等してくれると、資格試験の勉強頑張れます。
それでは、また次回。