反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど 作:コロリエル
今回は、ガルパピコ次元の話とでも思っといてください。いやいっつもそうじゃん、ってツッコミは無しで。
「……あのさ、ひまり」
「ん? なに亮君? あ、これ食べる?」
「あ、うん、食べるけどさ……」
「ねぇ、ひまり……」
「あ、蘭にはこれ! あんまり甘くないからおすすめだよー?」
「あ、ありがと……」
「いや、それ俺が持ってきたやつ……」
何やら恒例となってきている勉強会。本日は美竹家での開催であり、各自お菓子など持参、という話になっていた。
というわけで、ビター系のお菓子が好きな蘭と普段からダイエット頑張らなきゃと息まいているひまりが食べやすいようなお菓子を選び、蘭の家へとやって来た。
……勉強会は、つつがなく進んでいた。年内最後の期末試験に向け、皆勉強に気合いが入っていた。
ただ、異常な事態が発生していた。
「……ひまり、お前……食いすぎじゃね?」
大前提、ひまりはかなり甘いものが好きだ。時代が時代だったら、甘いもの早食い対決で天下を取れたであろう逸材だ。そんな時代が存在しないのが唯一の難点だが。
そして、食べたものがそのまま肉体に現れやすい女の子でもある。だからこそ普段から甘いものはセーブしているし、食べちゃった数日後にはダイエットにも励んでいる。
そんなひまりが、ちょっと引くぐらいお菓子を食べている。
俺が持ってきたノンシュガーのチョコやゼリーは勿論、自前で持ってきたお菓子──これもリュックにパンパン入っていてびっくりした──も、半分ほど消費されていた。
おかしい。本当に彼女はひまりなのだろうか。同じピンク髪のキャンプ好きの女の子辺りと入れ替わってないだろうか。ピンクで食いしん坊とか、お前ら星の戦士かよ。
「ん? そうかなぁ……いつも通りだと思うんだけど」
「「ないないないないそれはない」」
二人そろって右手をぶんぶんぶん。もしこれがいつも通りなんだとしたら、その若さで糖尿病すらあり得るレベルだ。
俺ヤだよ? 幼馴染が高校生にして糖尿病なんて。
ちなみに、中には普通の食生活なのに突発的になってしまうⅠ型糖尿病が存在するので注意が必要である。今回俺が言っているのは世間一般で生活習慣病の意味合いで使われている、Ⅱ型糖尿病の方である。また一つ賢くなったね。
「えー? ……普通に晩御飯も食べれてるんだけどなぁ」
「いや、それは流石に本当にまずいって!」
「またダイエット生活だよ!? あたしを巻き込まないでよ!?」
「いやそれはそれで酷い!」
これ、ひまり本格的におでぶちゃんへの道を進み始めているのではないか? いや、確かに成長期なんだから沢山食えよとはいつも言ってはいるが。それは健康で文化的な最低限の生活を送れる範囲だ。
今のひまりは、明らかに食いすぎである。正直、健康的なんかでは全然ない。
お互いに顔を見合った俺と蘭は、一つ頷き行動に入る。これは勉強どころではない。
「俺、ちょっと風呂場から体重計取ってくる。蘭、『上原ひまり体重推移管理ノート』出しといてくれ」
「了解。ひまり、亮が居ないうちにウエスト測るよ」
「待って!? 何そのノート!? というか、なんで蘭はメジャー常備してるの!?」
背後から聞こえてくる悲鳴を背中で受け止めつつ、俺は廊下を早歩き。途中でウマ耳を付けていた親父さんから耳をもぎ取り、風呂場の体重計を入手。
そのまま蘭の部屋へとまた早歩き。途中で鍵の形をした剣のようなものを持っていた親父さんから剣を奪い取り、蘭の部屋をノック。
「蘭、帰って来たぞ。ほれ、体重計とウマ耳とキー〇レード」
「はいはい、そこ置いといて」
「なにそのコスプレグッズ!? なんで二人は慣れてるの!?」
もう最近将来のお義父さまのことが分からなくなってきました(十六歳)。
見つけるたびに没収してはいるせいで、最近アフグロスペースと若宮イヴスペースとは別に親父さんのコスプレグッズスペースができ始めている。なんなんだ、アフグロ祭壇、若宮イヴ祭壇の横にある親父さん祭壇。早急に対処したい。
一旦ウマ耳とキーブ〇ードを壁に立てかけておく。俺、キーブレー〇マスターじゃないし。
「で、ウエストはどうだった?」
「前回からプラマイゼロ……妙ね」
「妙なのはこの家だよ!」
「いやいや……これだけ食べてプラマイゼロはおかしい。ただでさえ太りやすいひまりだし」
「女の子に太りやすいって言わないで! いくら亮君でも怒るよ!?」
俺だってひまり以外に言わねぇよ。と一言吐き捨てて、地面に体重計を置いて起動。その後、後ろを向く。
「ほれ、これで心置きなく乗れるだろ?」
「乗れるけど……蘭!? もし体重口にしたら本当に怒るからね!?」
「分かってるよ。ほら、乗って」
「言ったからね!? 絶対だよ? フリじゃないからね!!」
俺が扉側を向き、何回も念押しをしながら漸く、ひまりは体重計に乗る。軽く体重計が軋む音がする。
「……どうだ、蘭。プラスいくらよ」
「太ってる前提!?」
「……嘘、でしょ……マイナス五百グラム……!?」
蘭の声が震え、俺も思わず両目を見開く。そんなわけないだろう、と蘭は何度も体重計の表示部を見直しているが、結果は変わっていないらしい。
呆然としている俺と蘭を他所に、ひまりは腰に手を当てぷりぷり怒る。
「もうっ、だから言ってるじゃん! 私は食べ過ぎてなんかない! こんなに太りやすい私が太ってないんだから、間違いないよ!」
「自分で言ってんじゃねぇか……」
「……でも、やっぱりおかしい」
謎の徒労感に襲われた俺と蘭は、思わずその場に座り込んでしまう。が、それでもやはりおかしいと感じるのはお互い同じだ。
何か原因があるのだろうか。しかし、最近バンド練習はいつも通りのペースだし、テニス部での運動以外をやっているという話は聞かない。
何なのだろうか、と頭を捻っていると鳴り響く誰かのスマホ。この着メロは蘭だ。
「……ごめん、モカからだ。もしもし……モカ? なんか元気なくない?」
何やら気になることを口にし始めた蘭。声だけで分かるほど落ち込んでいるのか、と蘭を見やると、蘭はスマホをスピーカーモードにして机の上に置く。
「もしもし、モカ? 亮だけど……」
『あー……りょーくん……ははは、そーいえば今日は勉強会だったねー……』
「モカ? すっごく元気ないけど、どうしたの?」
スピーカー越しに聞こえてくるモカの声色は、確かに聞いただけでテンションがそんなに高くないことが伺える。ここまで元気が無いのは、買ったパンを落としてしまった時以来だろうか。
なんだかんだ、基本的にはマイペースなモカがこの調子だとこちらとしても心配となる。そんな様子での電話だ。ごくりと生唾を飲み、モカの言葉を待つ。
『……久しぶりに体重測ったら……五キロ、太ってた……』
「「「……へ?」」」
完全に想定外だった。あまりの深刻さからとんでもないことが起こっているのではと警戒していたところだ。
まぁ、女の子にとっては体重の増加は地球滅亡とどっちってレベルの大事件だから仕方がない……とは、これまたひまり談。
しかし、これまたタイムリーな話題だな。
「五キロって……太りすぎじゃない? 食べる量増やした?」
『ううん……むしろ最近減ってきてるんだよねー……』
「……どれくらい?」
「パンが三個しか食べられない……」
「「「減りすぎだっ!?」」」
パン魔人のモカが、三個しかパンを食べられないとなると、それはもうハルマゲドンだ……いや、アルマゲドンだったか?
兎に角それくらいの大事件。
「なんか体調悪いの? びょ、病院? 病院??」
「お、落ち着け……そ、そうだモカ! ひまりへのカロリー転送は? 上手くいってないのか?」
「……え、亮君、本当に信じてるの?」
「んなわきゃねーだろ。冗談だよ冗談」
普段からモカは、食べたもののカロリーをひまりに送っているという冗談を口にしていた。そのおかげでいくら食べても大丈夫、だということも。
まぁいつものモカの冗談だ。気が紛れたらそれでいい。
『……おー、そー言えば、最近送ってなかったやー』
しかし、俺のそんな冗談を真に受けてしまった人間が一人。電話相手のモカである。
は? と俺たち三人がスマホを凝視していると、むむむむむー、と急にうなり始めるモカ。
『……えい、えい、むんっ!』
どこのタンホイザだ、と突っ込みそうになったがぐっとこらえる。先程までの真剣な雰囲気が嘘のようなモカの立ち振る舞い。
なんなんだよ、と溜め息を付こうとした、その時だった。
「……ちょ!? 亮、ヤバイ!」
「なした!」
「ひまりの……ひまりの体重が!!」
突如として叫びだした蘭に呼ばれ、俺は思わず散々見るなと言われていた体重計の表示を見る。
表示部分の赤い針が、前回測定より五キロ重たい部分を指していた。
「……はぁ!?」
『よーし、てんそーかんりょー。あーでも、もうちょっと送っとこうかなー……えい、えい、むんっ!』
もう一度モカが息む。針がまた五キロ分重くなる。
目の前で起こっている現象が、まるで理解できない。
『もういっちょー、えい、えい、むんっ!』
また体重が増える。ひまりのウエストラインが、目に見えて太くなっているのが分かる。
『えい、えい、むんっ!』
また増える。
『えい、えい、むんっ!』
また増える。
『えい、えい、むんっ!』
また増える。
『えい、えい、むんっ!』
また増える。
──電話の向こうから、モカの声が聞こえなくなった。
「……モカ? おい、モカ!?」
突如として反応の消えたモカ。急にブクブクと太り始めたひまり。
これが意味するものは……。
「えい、えい、むんっ!」
ひまりのお腹から、聞きなれた声が聞こえてきた。
「……はっ」
「亮、起きた?」
「うなされてたけど、大丈夫?」
体を起こすと、目の前には蘭とひまりが座っていた。いけないいけない、どうやら居眠りしてしまったらしい。
「あぁ、すまんすまん。なんか夢見てた気がするんだけど……どんな夢だったかな……忘れちゃった」
「そう? はい、お茶」
「サンキュー」
何やら良からぬ夢を見ていた、という覚えはあるのだが、完全に忘れていた。まぁ、悪夢なんて覚えていたって良いことないし、気にしない方がいいだろう。
うーんっ、と軽く伸びをし、凝り固まっていた身体を伸ばし、蘭が渡してくれたお茶を一口。だいぶ目が覚めた気がする。
と、ここでひまりに目を向けると、相変わらず美味そうにお菓子を頬張るひまりの姿。全く、また太るぞお前。
一口、二口、三口。食べ終わったかと思うと、次の袋へ……。
……おかしい。
「……あのさ、ひまり」
「ん? なに亮君? あ、これ食べる?」
「あ、うん、食べるけどさ……」
「ねぇ、ひまり……」
「あ、蘭にはこれ! あんまり甘くないからおすすめだよー?」
「あ、ありがと……」
「いや、それ俺が持ってきたやつ……」
何やら恒例となってきている勉強会。本日は美竹家での開催であり、各自お菓子など持参、という話になっていた。
というわけで、ビター系のお菓子が好きな蘭と普段からダイエット頑張らなきゃと息まいているひまりが食べやすいようなお菓子を選び、蘭の家へとやって来た。
……勉強会は、つつがなく進んでいた。年内最後の期末試験に向け、皆勉強に気合いが入っていた。
ただ、異常な事態が発生していた。
「……ひまり、お前……食いすぎじゃね?」
ご閲覧ありがとうございます。信じられっか? 今回の話、前回の一周年より文字数多いんだぜ?(前回……3474文字、今回……4471文字)
いやー、ギャグ回は筆が進む進む。なんでなんでしょうねホント。
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それでは、また次回。