反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど 作:コロリエル
去年書いてなかったバレンタイン回です。
「はい、亮これ。ハッピーバレンタイン」
「……問題。今何時?」
「四時」
「朝のな?」
真っ暗じゃねぇか外。花は暗くて見えないし、小鳥もさえずってねぇし。いや、確かに前蘭の誕生日に寝起きドッキリしたけども。
ベッドのそばに立っているのは、間違いなく俺の最愛の恋人である美竹蘭。部屋が暗いから、いつもの赤メッシュもかなり見づらい。
蘭は綺麗にラッピングされた箱を俺に差し出してくる。いや、嬉しいよ? 本来なら滅茶苦茶嬉しいし今日の事が楽しみで楽しみで仕方なかったよ? 明日、蘭からチョコ貰えるんだろうなぁ、どんなチョコくれるのかなぁって、心待ちにしてたよ。
何故朝。最早深夜。こんな時間に女子高生が外を歩くなよ。
「大丈夫。亮のお父さんに迎えに来て貰ったから。うちの父さんも了承済み。バレンタインの恋する乙女は無敵」
「……あぁ、なら大丈夫……には、ならねぇぞ?」
これ度々言ってるけどさ、なんで俺たちの両親は息子娘の交際に対してここまで積極的なんですかね? 絶対普通の高校生カップルの親の立ち振る舞いではないよ。いや、他のカップルの事情なんて何も知らないけどさ。恋する乙女が無敵なのは……まあ、認めるけど。
まだしょぼしょぼする目を擦りながら、一旦上体を起こす。しっかりと制服を着こみ、手袋マフラー完備。今から学校にすら行けそうである。
「……ふぁあ……」
「眠そうだね、亮。あんまり寝られなかった?」
「……それはツッコミ待ちか? ガチか?」
「ツッコミ待ち」
「蘭が起こしたんだろうがぁ……ふぁああぁ……ねっむ……」
容赦なくツッコミぶちかましたろうと思ったが、欠伸が止まらずなんとも腑抜けたツッコミになってしまう。
しょうがないじゃん。昨日の夜だって寝たの日付が変わる前後ぐらいだし。睡眠時間推定四時間だし。
絶対、俺は悪くない。ん? じゃあ蘭が悪いのかって? おいこら、表出やがれ。俺は出ねぇけど。寒いし。眠いし。蘭居るし。
「とりあえず、一旦受け取ってくれる?」
「あ、はい……こんな朝早くにわざわざ、ありがとうございました……今年も一番最初にくれたのは蘭だったな……過去最速だけど」
バレンタイン。蘭と出会ってから毎年、幼馴染五人プラスいくつかを毎年貰ってきたが、毎年毎年一番最初にくれたのは蘭だった。
ざっくり十年、毎年だ。平日でも休みの日でも、朝になったら家の前に蘭が居て、その手にはラッピングされたチョコ。
今思えば、どう考えたって俺に好意を寄せているからこその行動だったな、と思う。やっぱり、恋する乙女は無敵だ。
「今までは、他の人より早く渡すんだ! って変な意地でやって来たけど……今年は、他の誰にも出来ないような渡し方がしたかったんだ。あたしにしか出来ない渡し方を、ね」
「それがこんな朝っぱらの手渡しか……いや、確かに蘭にしか出来ないや」
モカにもひまりにもつぐにも巴にも、ついでに世界中の女性にも出来ない渡し方。唯一出来るのはうちのお袋くらいだが……親父ーズが一枚噛んでるんだ。今頃リビングで親父とパ〇プロでもしてるんだろ。
もうほんと、理解がありすぎてマジで怖い。マジでそろそろ親父たちから『婚約まだ?』とか聞かれそうで怖い。ってか、目が言ってる。
「さてと……これからどうしよう」
「……流石に帰れ、とは言わねぇよ俺は。まぁ、親父たちがなんていうかは知らんが……」
恐らくこの後のことを何も考えていなかったであろう蘭。今から帰れ、なんて事は流石に言えないし、親父たちに送ってもらうというのも気が引ける。
さてどうしたものか……と考えていたら、突然鳴り響く俺のスマホ。
画面がつき、メッセージアプリの通知。相手は親父。
『蘭ちゃんともう一寝入りしたら?』
「すまん、蘭。ちょっと待っててくれ」
俺はベッドから出て、愛用の半纏を羽織る。これで俺はどんな寒さにも立ち向かえる。
部屋を出て、向かうはリビング。案の定、明かりがついていた。
「おいこらクソ親父。いちいちタイミングが良すぎるんだって、って……」
「ん、どうした亮。蘭ちゃんのチョコ、美味かったか?」
「いや、まだ食ってないけど……そうじゃなくて……なんでサカ〇くなんだよ……」
「私たちの思考を読もうだなんて、十年早いんだよ!」
寧ろ何かゲームしているんだろうってところまで予測した俺を褒めてほしい。そこまで当てれたら、もう野球かサッカーかなんて誤差だろ誤差。
しかし、この両親なら俺の行動を分単位で言い当てることができると考えると、俺もまだまだ未熟……いや、認めちゃだめだなこれは。
自然と溜め息が零れる。この二人に今何を言っても無駄だな、うん。
「んじゃ、俺もう一寝入りしてくるわ……客用の布団出すぞー?」
「んなもん、羽沢さんとこに預けてきた! 蘭ちゃんが風邪拗らせたらいけないからな、しっかり抱きしめて寝るんだぞ!」
「蘭ちゃん用のパジャマ、あんたの部屋に置いてるからね!」
「俺、大学生になったら絶対に一人暮らしするからな」
そう言い残し、俺はリビングから足早に立ち去る。決めた、家から通えないような大学に行こう。敵なんだか味方なんだか分かんない存在の多いこの商店街から一回離れよう。
なんだろう、このままじゃ俺、駄目な気がする……そんな気がした俺は、一人決意を抱いた。
────────────────
「……亮、暖かい」
「蘭は逆に冷てぇなぁ。寒かったろ、今日」
「うん……しかも眠たい」
「一体何時に起きたんだよ……」
「三時半……」
「うわぁ……頑張ったな、蘭」
「ん、もっと褒めて」
「でもさ、亮があたし達以外からチョコ貰ってるところ見たことないんだけど」
「あー……それ、おんなじこと中学の時に言われたんだけどさ、そん時の同級生が、『あんなに可愛い幼馴染五人と毎日一緒に居て、毎年五人から貰ってるところ見たら、誰だって諦めるに決まってる』って言ってたな」
「あー……やっかみ多かった?」
「そりゃそうだろ……いつか刺されるんじゃないかって思ってたんだからな……」
「さてと、俺もホワイトデーのお返し考えないとな……蘭、何がいい? 男子高校生にできる範囲で頼むぞ?」
「んー……子供、とか?」
「落ち着いてくれ蘭。確かに俺はお前のことを愛しているしゆくゆくはお前との子供だってほしいと考えている。愛する女にそう言われて嬉しくない男なんていないさ、あぁ。だけどな? 俺たちはまだ高校生、一人の子供を育てる事なんてできる訳もないしそんな責任なんて持つこともできない訳で……」
「もう……冗談に決まってるじゃん。あたしだって、その辺はきちんと理解してるよ。でも……そこまで考えてくれてるんだね」
「……蘭、今度覚えとけよ?」
「そういえば、亮って貰ったチョコ直ぐに食べないよね。なんで?」
「いやだって、七年前に一回直ぐに食おうとしたら、蘭が駄目って……」
「あ、あれは……! あんまり出来に自信が無くって、恥ずかしかっただけで……」
「そうか……まあ、あの時は蘭が初めて作ったチョコだもんな。自信が無いのも当然か」
「今年のは……うん、上手に出来てると思う」
「おう、楽しみにしてる」
「……すぅ……すぅ…………」
「……亮…………大好きだよ…………おやすみ…………」
────────翌日────────
「だああああああああああああああああ寝坊したああああああああああああああっ!」
「嘘っ、十時半!?」
「親父! お袋! なんで起こしてくれなかったんだ!!」
「朝からうるせぇぞぉ……美容師の貴重な月曜日を邪魔するな……いや、どうせ昨晩はお楽しみだったんだろ? 邪魔しちゃ悪いかなって……」
「お楽しみじゃ無かった! それだけは言っとく! しっかり休み満喫しとけクソ親父! いろいろとありがとうなこん畜生!」
「お義父さん、ありがとうございました! 行ってきます!」
「……罵倒するのか感謝するのかどっちかにして欲しかったなぁ……」
ご閲覧ありがとうございます。今回はちょっと雰囲気違いましたね。ボクも色々と勉強中ということで……。
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それでは、また次回。