反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど 作:コロリエル
なんか少し肌寒さが戻って来ちゃったけど、春の陽気のお話です。
「……春ですなぁ」
「……春だねぇ」
「……春だなぁ」
「すっかり冬じゃ無くなったなぁ……」
「グッバイ冬……」
「フォーエバー冬……」
美竹家にある縁側。そこに並ぶ三人の人間。
一人は、当然俺。一人は、当然蘭。一人は、たまたま来ていた巴。
蘭は俺の膝に頭を乗せて完全に寝転んでいるし、巴も巴で蘭の部屋から拝借してきていたクッションを枕代わりに日向ぼっこ。俺は蘭の頭を撫でつつ、うつらうつら。今すぐにでも瞼が本日の営業を終了させ、シャッターを下ろしてしまいそうだった。
すっかり春の陽気に包まれている縁側で、俺たち三人はのんびりとしていた。普段が激動の日常生活を送っているんだ。たまにはこんなのんびりした日があってもいいだろう。太陽もこんなにぽかぽかなんだ、きっとその方が良いって言ってくれるさ。
「いやぁ……もうこれ春だろ。今年は一気に暖かくなったよなぁ」
「ホント……ポカポカする……」
「蘭……中々尊厳のない姿になってるぞ……」
「巴が言うなよ……ふわぁ……ねっむ……クッション一個貸して……俺も横になる……」
「あいよー……」
昼下がりにこんなポカポカした場所に身を置いて、眠たくなるな、という方が無理だ。今日は特に用事も無いし課題も終わらせたし、このまま昼寝しても誰も何も文句は言わないだろう。
昼寝、最高だ。取り敢えず世界中の企業学校その他諸々は、早く昼休憩の昼寝を義務付けするべきだ。その方が午後からの作業効率も上がるに決まってる。
巴から貰った犬のクッションを頭の下に置き、ゴロンと寝転がる。さぁ、蘭と巴と共にレッツラお昼寝……。
「んー……りょう……あたまなでて……」
「おっと? これ話変わってきたな?」
レッツラ起き上がり。勢いよく体を起こした俺は、俺のシャツの裾を掴み引っ張るねぼすけ蘭ちゃんを見下ろす。
もう瞼ほとんど落ちちゃってるじゃん。お休み中って言われても全然普通に信じるくらいすやすやだよ。
相変わらず、俺の恋人は眠気に弱い。いつぞやの寝起きハピバ然り。今回もそのパターンですな?
「あーはいはい、おーよしよし……おいこら巴。タイマーセットするフリしてスマホ向けるな。無音カメラ起動するな」
「宇田川巴は寝てます。スマホも寝てます」
「寝かしつけれるもんなら寝かしつけてみやがれ」
なんか昔あったよね。ケータイ〇事。うろ覚えだけど、あいつらも寝るのかな?
巴はしっかりスマホをこちらに向けていた。しかし、一切起き上がることも顔を向けることも無い。なんだろう、Afterglowの面々、隠し撮りのスキル上がってないか? 頼むから身内の間だけにしといてくれよ? 俺やだよ、幼馴染が盗撮で捕まるとか。
さて、自分の痴態(爆)を激写されているとは露知らず。俺の太ももにぐりぐりと頭を押し付ける蘭。くすぐってぇ。
「あのー蘭さん? 亮くんもなかなかに眠たいんすけど……寝転んでもよかでしょうか?」
「んー……添い寝……」
「巴。これ以上はさすがにダメだぞ」
「……すー……すー……」
「こいつ……! いつの間に……!?」
蘭だけでなく俺にも危険が及びそうになったことを察知した俺は、巴の撮影を止めようとする。
しかし、その巴は完全に夢の世界へと旅立っていた。赤色の長い髪が廊下に広がっていた。海藻みたい……って言ったらバチで横スマだろうな。イソギンチャク位にしておこう。
しかし、巴が寝ているならなんの問題もないな。どーせ普段から昼寝する時は添い寝してんだし。
「分かったから……一回頭どけるぞ」
「ん……」
俺は蘭の頭をどかして、一旦着陸させる。そのまま彼女のそばに寝転がる。
床にそのまま寝かせるのもアレなので、俺が使っていたクッションを……。
「うでまくら」
「アイ」
……頭の下に置こうとしたが、お姫様から直々に命令が来たのであれば仕方ない。
俺は彼女の頭の下に自分の腕を入れ込み、クッションは自分で使う。さて、これで添い寝フォーメーションの完成だ。
すりすりと、俺の腕に頬擦りするお姫様。ほんと、これ世間では『反骨の赤メッシュ』なんて言われてるんですよ? 信じられないですよね、ホントなんですよ。
……あかん、眠たくなってきた……やっぱり横になると一気に来るなぁ……。
「……りょう……ねむたいの……?」
「んー、まぁな……ちょっとひるねするか……」
「わかった……おやすみ……」
「ん……おやすみ……」
最愛の人に一言告げて、俺はゆっくりと目を閉じた。
将来的には、こんな事を毎日言い合う生活が来るのかなぁ、なんて考えながら、俺は眠りについた。
────一時間後────
「……ぐるじぃ」
お腹に何やら圧力を感じ、思わず目を覚ました。
お腹の上に、ボウリングの玉くらいの大きさの何かが乗っている感じがした。いや、大体なんとなくは分かるけどね?
「……なんか、巴がこれやってんの久しぶりに見たな……」
ちらりと目線を下にずらすと、俺の腹を枕にするようにして眠る巴の姿。
昔から、巴は俺と昼寝する時いつも俺の腹を枕に眠っていた。理由を聞くと、毎回毎回「亮の腹いい高さなんだよなー」なんて口にしている。苦しいけど、少しだけ懐かしい。
俺の隣には、相も変わらず蘭の姿。眠りについた時よりもより俺にピッタリとくっついていた。
完全に廊下を占拠している形になってしまってるが……今日は俺たち以外誰も居ないし、まぁいいか。
「ふぁあ……もう一寝入りするか……」
巴の頭を腹に乗せた状態で寝れるかな……なんて考えながら、俺は再び目を閉じる。まだまだ全然眠たいし。
……。
…………。
………………。
……………………パシャッ。
「……!? なにっ!?」
「ひぎっ……いってぇ~!!」
「おっ!? りょ、亮くん……起きていたのか……」
突然鳴り響いたシャッター音に思わず飛び起きる。ゴトッ、と床に何が固いものが落ちた音が響いたが、恐らく巴の頭だろう。実際、巴の悲鳴が聞こえてきた。
そんな俺たちに、最近買い換えたという新品のスマホを向けるのは、出かけていたはずの蘭の親父さん。
「えっと……撮りました?」
「い、いやぁ……昔はこんな感じでよくウチで昼寝してたなぁって思ってだね……すまないね」
「あー……俺は大丈夫ですよ、俺は……」
「痛たたた……あたしも大丈夫ですよ……ただ……」
頭を擦りながらも起き上がる巴。その視線の先は、俺の隣でゆっくりと起き上がっている存在へと向いていた。
俺は、隣に目を向けない。だって、絶対鬼の形相なんだもん。目の前にいる親父さんの顔を見てたらわかるもん。完全にビビりきっちゃってるもん。
「亮……家族でも、盗撮で訴えれるっけ」
寝起きの少し掠れた声ということもあり、その声は俺と親父さんと巴を震え上がらせるのに十分な破壊力を持っていた。
もうオチをいちいち言うまでも無いとは思うが、その後、俺と巴の必死の説得により、何とか蘭による警察への被害届の提出は免れた。
しかし、親父さんは暫く蘭と一言も会話が出来なかったらしい。今回に関しては正直蘭の親父さんも可哀そうだなぁと思ってしまう。だって娘の微笑ましい姿だもん。獲りたいに決まってるけど……そんなこと、思春期ペタマックスの蘭には通用しないのだった。
ご閲覧ありがとうございました。遅れましたが、バンドリ五周年おめでとうございます。こんな素敵なコンテンツに出会えて、幸せです。今後も全力で応援したいと思います。
感想、評価、お気に入り登録等していただけると、内定が出ます。就活しんどい。
それでは、また次回。