反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど   作:コロリエル

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どうも、朝起きた瞬間のアクセス数がおかしい事に気付き、調べてみた結果、日刊ランキングに載っていた事が判明しました。皆様、たくさんの閲覧等、本当にありがとうございました。

看病回です。


風邪引き彼氏と赤メッシュ

 

 

 

 

 ──あ、これやらかしたやつだ。

 

 

 

 朝、いつも通り目覚ましの音で目を覚ました七時。立ち上がっていつもの一日をスタートさせようとして、ふらりとベッドに倒れ込んでしまった朝七時。

 身体に思うように力が入らないし、頭はガンガンする。暑くて、でも寒い。氷と炎が身体の中で大喧嘩しているみたいだ。

 青コーナー、氷。赤コーナー、炎。

 人間の頭の部分が『氷』と『炎』と言う漢字になっている。そのままラウンド一がゴングと共に開始される。

 

 

 

「あー……どっちも頑張んじゃねぇ……俺が代わりに頑張ってやるからよぉ……」

 

 

 

 普段は妄想に対してツッコミなど入れないが、そうでもしないと頭が働く気がしない。

 病は気から。恐らく最近蘭とちゅーしたりぎゅーしたりしてないから、少し精神的に疲れているだけだ。オレ、大丈夫、オレ、強い、オレ、最強。

 

 

 

「よぉ、亮、起きてるか……って、めっちゃ顔赤いぞお前! 蘭ちゃんとのエッチな夢でも見たか!?」

「朝からデケェ声出すなよ……頭痛てぇだろ……」

 

 

 

 ベッドに座って自分を鼓舞していると、そこに入ってきた一人の中年。御歳四十八歳、俺の実の親父だ。

 四十八歳のくせに落ち着いた雰囲気の欠けらも無い、男子中学生がそのまま大きくなったような性格。楽しい事大好きな楽観主義。

 

 最近の口癖は、『孫の顔を見たい』。せめて後十年待てや。

 

 

 

「……あー、お前、風邪引いたか? そうだな……三十八度三分ってとこか?」

「テキトー言ってんじゃねぇよ……」

「ほい、測っとけ」

「なんで体温計持ち歩いてんだよ……」

 

 

 

 懐からおもむろに体温計を取り出す親父に、恐怖を覚える。前にも俺が「爪長いな……」と呟いたら、「流石だな! 蘭ちゃんと会う前に爪を切るなんて偉いぞ!」と言いながら爪切りを渡してきた。渡された爪切りで最初に斬ったのは、親父だった。

 相変わらず気持ち悪い親父にため息一つ。俺のお袋も、よくこんなアホと結婚したものだ。

 

 親父が投げて寄越した体温計を脇に挟み、体温をチェック。

 

 

 

「……三十八度三分……」

「な? 言ったろ?」

 

 

 

 きめぇ。

 

 息子の体温をドンピシャで測れる親父とか、嫌すぎる。俺の体調が万全だったらシバキ回しているところだ。

 しかし、顔が汚れて力が出ない。熱がある、と分かった途端、体の力が抜けていく感覚に陥ってしまった。

 しょうがない、病は気からと言っていたのに、その気が事実を突きつけられてしまって、海水に触れてしまったゴム人間のように緩んでしまった。

 

 

 

「ほら、病人はさっさと寝る! 学校と蘭ちゃんには伝えとくから!」

「……すまん」

 

 

 

 こうなってしまっては、もう俺に反論する権利は残されていない。

 おとなしく出たばかりの布団に入り直す。あまりの暑さに蹴とばしてしまいたくなったが、蹴とばしたら蹴とばしたで今度は悪寒に震えることになる。

 俺が布団に入ったことを確認した親父は、何かを思いついたような顔をし、そのままにやりと笑った。

 

 

 

「ま、今日は大人しくしとけ。食欲は?」

「……気持ち悪くはない……脂っこいもんは無理」

「おーけーおーけー。トースト持ってくるわ」

「ゴミ……」

 

 

 

 数十分後、親父が持ってきたトレーの上には、土鍋に入ったおかゆと市販の風邪薬の瓶が置かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──――――

 

 

 

 気が付いたら眠っていた。よほど疲れていたのか、はたまた季節の変わり目に体調を崩しただけなのか、もしくは両方か。

 目を覚ました時、すでに時計の短針は四を少し過ぎているくらい。かれこれ半日くらい寝ていたのだろうか?

 本来であれば無駄に寝てしまったと後悔するところだが、今回の場合は致し方ないだろう。熱出しちったもん。

 

 

「んー……体温測るか……」

「はいこれ」

「おー……サンキュ……ん?」

 

 

 手渡された体温計をケースから出そうとしたところで、何かがおかしいことに気づく。はて、なぜここに最愛の恋人がいるのだろうか。

 隣を見てみると、俺の勉強机の椅子に座り、普段はしていないマスクをして、こちらを心配そうに見つめてくる蘭の姿。マスクしてまで可愛いとか、俺の恋人はやはり凄い……じゃなくって。

 

 

 

「……えっと……おはよう?」

「昼過ぎてるけどね……うん、聞いてたより元気そうで良かったよ」

 

 

 

 口元が隠れてしまっているので、その表情は分かりづらいが、声色は確かに安堵したような雰囲気が含まれていた。

 心配してくれたという事実が、くすぐったい。申し訳ないのは当然なのだが、どこか心地よさを感じてしまう。

 他人の優しい想いに触れると、どうしても心が温まる。

 

 

 

「いやぁ……疲れてたのかなぁ……」

「……進級してから色々頑張ってたからね。少し休めってことなんじゃない?」

 

 

 

 

 普段は二人っきりだと擦り寄ってくる蘭も、俺に触れてこようとはしない。

 本当はしたくて仕方ないのだろう。だが、俺が今それを望んでいないことをしっかりと理解している。

 

 お互いに、相手が本当に嫌なことは絶対にしない。そして、何が嫌なのか、言葉にしなくとも分かる。

 

 

 

 

「……三十七度四分……だいぶ下がったな。これなら明日は学校に行けるな」

 

 

 

 

 ぴぴぴ、と無機質な電子音が示す体温。朝に比べてかなり下がっていたので、取り敢えずは一安心。

 二日も学校に行けないのは……嬉しいといえば嬉しい。

 学校は嫌いではない。授業が大嫌い。こういう人は少なくないのではないだろうか? 俺もそうだ。行かなくていいなら、行きたくなんてない。

 

 だけど、その皺寄せはいつか必ずやってくる。悲しいことに、楽ばかりじゃ生きていけない。

 

 

 

「そう……良かった」

 

 

 

 それに、これ以上蘭と触れ合えない時間が長くなってしまうことの方が辛い。

 安堵する恋人を見ると、体を思いっきり抱きしめたくなってしまう。でも、出来ない。

 病気なんて、なるもんじゃない。

 

 

 

「……ありがとな、蘭」

「……心配掛けたのに、お礼?」

 

 

 俺の感謝の言葉に、返ってきたのは皮肉の言葉。

 本来の彼女なら、この反応がきっと正しい。幼馴染み相手だったら、どういたしましてと一言。なんなら、彼女自身が謝罪の言葉を拒否しているところだ。

 

 そんな彼女らよりも深い関係の俺に、あえてその態度。

 

 最早、語るに落ちていた。

 

 

 

「……何責任感じてるのか知らないけど……我慢しなくていいぞ」

 

 

 

 その言葉で、強がっていた彼女はあっさり居なくなってしまった。

 そこに居たのは、本当は臆病で寂しがり屋な女の子。

 

 ぼろぼろと、堪えていた涙が床に落ちて行く。口数の多くない彼女だからこそ、溜め込んでいるものも多いのだろう。

 背負い込む必要のないものも、背負い込んでしまっているのだろう。

 

 

 

「だってっ……あたしが……ずっと甘えて、るからっ……ぐずっ……甘えなきゃ……りょうはっ、楽なのにっ……こんな事にっ……ならないのにっ……」

 

 

 

 いい意味でも悪い意味でも、蘭は人間関係を大切にしている。

 幼馴染みとの関係が崩れないようにと奔走したり、逆にそれに縛られて家族仲が拗れかけてしまったり。

 

 今だってそうだ。たかがその程度で俺が体調を崩してしまったと、本気で思い込んでいる。

 

 

 

「馬鹿だなぁ、蘭は」

 

 

 

 おでこに指をちょんと付ける。本当は泣いている蘭の涙を拭いてあげたいところだが、今ここでそれをしてしまっては、ここまで触れずに来た意味が無くなってしまう。

 風邪を移してしまっては元も子もない。だけど、気持ちは伝えなければいけない。

 

 本当に大切なことは、言葉で無ければ伝えられない。

 

 

 

「恋人に甘えるのは当然だろ? 好きだって言い合ったり、触れ合ったりしてないカップルなんて居るか?」

「……居る……」

「居ても少ないだろ?」

 

 

 納得したくなさげにぐずる蘭に笑ってしまう。誰が悪いという訳でもないのに、自分が悪いと思い込んでしまっている人間ほど扱いにくいものは無い。

 悪くない、と思っているよりも、無理矢理罰を与えて懲らしめられない分タチが悪い。

 

 そこまで言って、ようやく蘭は頷く。

 

 

 

「当たり前なんだよ。お前が俺に甘えるのは。当たり前の事で、俺が疲れるわけないだろう?」

 

 

 

 

 嘘を吐いた。

 

 元々俺だって、蘭と同じで人付き合いが得意だった訳では無い。外付けスキルでどうにかやりくりしているだけで、人付き合いそのものはやはり苦手だ。

 

 それでも、蘭がそれで泣き止むなら。

 

 嘘つきな俺は、閻魔に舌を抜かれてしまうのだろう。どうぞご自由に。その時蘭は、きっと天国だ。

 

 

 

 

「大丈夫だって。俺は、蘭がよそよそしい方が嫌だよ」

「……うんっ……うんっ……!」

「だから……俺が元気になったら、いっぱい触れ合おう。ぎゅーもちゅーも、いっぱいしよう。な?」

 

 

 

 

 最早返事をする事が出来ないほど泣いている蘭は、おでこに触れていた俺の手をぎゅっと握り、ただコクコクと頷くだけだった。

 

 ……早く治さないといけないなぁ。

 

 蘭が泣き止むまで、俺はそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。家を出た瞬間蘭に思いっきり抱き着かれた。

 

 もちろん嬉しかったが、その瞬間を俺の両親に激写された。敵しかおらんのか。

 

 

 

 

 




ご閲覧ありがとうございます。亮くんも蘭も、若干重いです。ただ、お互いにお互いが大好きなのでもーまんたい。二人は幸せなキスをして終了。おーけー?

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それでは、また次回。
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