反骨の赤メッシュがでろっでろに甘えてくるんだけど 作:コロリエル
皆様、本当にありがとうございます。
「そういえば、蘭と亮君って、外でデートしたがらないよね? なんで?」
きっかけは、なんやかんやで恒例となってしまったファミレスでの勉強会の最中。蘭に数学の問題で使う公式の使い方を教えていた。正直、こんなもの使い方を覚えてもどこで使えるかがきちんと理解していなければどうしようもない。
そんな感じで若干どう教えたらいいものかと困っていた時に、対面に座っていたひまりからそんな質問が飛んできた。
「ひまり、急にどうしたの? 勉強がヤになった?」
「それはあるけど!」
「あるのかよ」
発案者であるひまりがそれを言ってはダメだろうと思わなくもない。というかガッツリ思う。
お前がこんなこと言い出さなければ、救えた命があったんだぞ。どうしてくれるんだほんと。
……と、思うだけに止めておく。そうしないと、割とマジめにひまり泣く。涙脆いし。
「でも! 普段からすっごく仲がいいのに、殆どデートしないじゃん! もったいなくないの?」
ひまりの指摘はごもっともで、俺と蘭は片手で数える程しか、どこかに出かけると言うデートをしたことが無い。基本的にどちらかの家でくつろいだり、近所の店(羽沢珈琲店)にお茶しに行く位。
普通のカップルの場合、そりゃあもう毎週末デート、デート、デート。あなたと私でランデブーを体現しながら、ピンクのオーラ周囲にまき散らしながら闊歩するのだろう。ああはなりたくない。
「つってもなぁ……俺がデートしない理由は、純粋に蘭がしたがらないからなんだけどな……」
「ちょっと! 言わないでよ!」
俺から言及されるとは思ってもいなかったのか、持っていたペンを落っことしてしまうほど動揺する蘭。使っていたペンは俺が愛用しているものと色違いの赤色のもの。
俺としても一度きちんと理由を聞こうとは思っていた内容なので、この際だから便上して聞いてしまおう、という結論になった。
だって、気にはなってたけど、聞きにくいじゃん。恋人がデートしたがらない理由とか。
これでもし「亮とのデートつまらないし」とか言われた日には、暫く立ち直れないだろう。そのままパッとフラッと消えてしまわないようにだけしなければ……もう少しだけこっちに居てくれても良かっただろ。
「へー? じゃあ蘭! なんでデートしないの?」
「いや……お互いの家でのんびりしてるし、それもデートでしょ?」
「言い方変えるね! なんで外に遊びに行くデートしたがらないの?」
グイっと身を乗り出して、蘭に詰め寄るひまり。相変わらず恋バナとスイーツの話題になったら食い付きが良い。スイーツに関しては本当に食らっている分、より迫力がある。北の侍のようにがっついてはいないが。
うぅ……と、助けを求めるようにこちらを見る蘭。知らぬ存ぜずでコーラを飲む俺。蘭には悪いが、俺も知りたい。
悲しいけど、これ、人間関係なのよね。
言わなきゃ、分かんない。
「うぅ……言わなきゃダメなの?」
「ダメ! 言わなかったら、蘭のあの写真亮に見せるよ!」
「まて、どんな写真だ」
「見たら二人が死んじゃう位の写真!」
「どんな写真だ!?」
とんでもない写真の存在を暴露するひまり。
見た俺も、見られた蘭も死んでしまうような写真ってなんだよ。ドッペル人形でも写ってるのか。ものまねのミニゲーム難しいんだよホント。なんでストーリー上必須なんだよ。面白かったけどさ。
そこまで言われると、逆に見てみたい。つまるところ、蘭が言おうが言わまいが、特段大きなダメージはない……はず。
「さぁ、蘭! 言う!? 言わない!?」
「ひまり、声が大きい……はぁ、わかったよ。言う」
余程件の写真を俺に見られたくないのか、蘭は観念したかのように言う。
さて、そうなると次に俺がすべきは心の準備。万一にも楽しくないなどと言われた日には、お金だけ置いて黙って立ち去る。彼女達の前で涙を流すところを見せる訳には行かない。猫が死ぬ直前に姿をくらますように、黙って家まで走ろう。
「あー……その、えっと……笑わない?」
「「笑わない」」
「なんでそういう所だけ息ピッタリなの……」
顔を赤くし、恐る恐るといった様子の質問を一刀両断。笑うか笑わないかは俺たちの自由だが、こうでも言い切らないと、蘭はいつまで経っても言わないだろう。
恥ずかしがり屋だもんな、蘭。お揃いのペンだって、中々中々渋って渋って、ようやく買ったお揃いの品だったし。
「はぁ……えっと、デートしたくない、理由だよね……それは……その……」
意図せずして高まる緊張感。もじもじと、恥ずかしがる蘭の横顔を覗き込みながら、俺とひまりは、ゴクリと生唾を飲み込む。
意を決したのか、蘭は重たい口を漸く開く。
「……外で、亮とくっつくのが……恥ずかしくって……でも、くっついてたくて……家の中なら、誰にも見られないから……」
ひまりが盛大にずっこける。
蘭が机に突っ伏す。
俺が固まる。
ツッコミ力の高い三人が、揃いも揃って行動不能。だけど、無理もない気がする。
「……ら、蘭……いつの間にそんな乙女に……」
真っ先に立ち直ったひまりが、上体を起こしながら呟く。最早軽く引いているんじゃないかというその口調。
無理もない。美竹蘭と言えば、『反骨の赤メッシュ』。女の子ではあるが、乙女ではないと言うのが皆の意見。それは、幼馴染たちの間でも共通認識だったようだ。
しかし、それが目の前でぶっ壊れた。恥ずかしいて、恥ずかしいて。
「うぅ……だから言いたくなかったのに……」
「恥ずかしいことじゃないよ! 好きな人とくっついてたいって、当然の事だもん! 恥ずかしいなら、仕方ないよ!」
アフグロ内でもっとも暴走するひまりがフォローに回らねばならないほど、今の蘭は弱気。その証拠に、チラリチラリと、俺の表情を伺っていた。
まぁ、その、なんだ、思考が追いついてない。
「……はーっ、可愛いかよ」
「へうっ!?」
思わず口から出たセリフは、言おうとしていたセリフと大きくかけ離れていた。確か、『そうそう、恥ずかしいなら仕方ない』とかだった気がする。
正直、今日は俺が暴走してる。暴走している自覚はあるが、止められる気がしない。
この道を行けばどうなることか、行けば分かるさ、迷わず行けよ。コースだけは外れないように。
「ごめん、ひまり、今日もうお開きでいいか? もうたっぷり蘭甘やかしたい。いっぱいぎゅーしていっぱいちゅーしていっぱい(自主規制)して、死ぬほど甘やかしたい」
「亮君! ここ! 昼間! ファミレス!」
普段の俺なら、絶対に幼馴染の前で口にしないようなワードすら飛び出てしまう。あーこれ、完全にブレーキ壊れてますわ。焼き切れてますわ。
しょうがないだろ? 恋人が俺とくっついていたいからって外でのデート嫌がってたんだぜ? 外でくっつくのが恥ずかしいんだぜ?
たっぷり甘やかしたい。
「蘭、今日はいっぱい甘やかしてやるからな。最近お互いにバンドやらバイトやらで忙しくて二人っきりの時間取れてなかったもんな。寂しかったろ? 何して欲しい?」
「待って! 私無視されてるよね!?」
なんか、ピンク髪が何か言ってる気がする。ごめん、今、余裕ない。今度コンビニで甘いもん買うから許して。
俺の頭の中は、もう蘭一色。ダブル役満でどうだと言った感じだ。
「……なんでもいい?」
「なんでも良いぞ! 子供以外なら!」
「ねぇ!? ホントにあの亮君!? 紳士だった亮君!? 」
「……じゃあ……」
蘭が少しだけ言葉を躊躇う。しかし、俺の満面の笑みを見たからか、おずおずと言った具合で口を開く。
「……ちゅーしたい」
その後のことは、よく覚えてない。気が付いたら、隣にふにゃっふにゃになった蘭が居た。服はきちんと着ていた。
一言言えることは、おっさんの妄想する暇すら無かった。
ご閲覧ありがとうございます。リハビリがてら書いてました。蘭ちゃん、亮くんの前だと乙女です。
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それでは、また次回。