文体がちょっと変わったかもしれないですが、話はちゃんと考えてあるので安心してください。それではどうぞ!
屋上というのは特別な場所だと思う。昼寝するには心地良いし、授業をサボっていてもバレにくいのが最高だ。午前中に授業を受けていたが、さっさと退室して寝転がっていた。気が付いたらお昼休みの時間になっていた。冬場なので結構冷えるが、まだお日様が出ているだけマシだと思う。だが……その考えは幻想だったのかもしれないと考え始めたのが、ついさっきの事だ。
「あ~~! 先輩っ!」
「見つけたっ、シンさん……授業があるんですから」
鷹取と月居さんに屋上でサボっていたのがバレた。サボっていたオレが悪いが、息も白くなるような寒さの中でここまでやって来るとは思わなかった。
「お前らなんで来るんだよ……」
そう尋ねると、二人の顔はみるみるうちに赤くなる。照れや恋愛感情ではない……怒りで赤くなったのだ。授業に出ろだの、勉強しようだの言ってくるが……必要ないくらいにオレの頭の出来は良いものだった。
「そもそも、これから文化祭も始まるんすから先輩もクラスの人を手伝ったほうがいいっすよ」
「今月末にはやりますからね」
後輩に言い聞かせられてしまった。いや、確かにバイトを理由に手伝いもほとんどしていなかったのは事実だ。二人の話し方から、多分オレの学年にいる級友から噂を流されたのかもしれないな。
「はいはい、わかったよ」
仕方なく二人についていく事にする。屋上から後輩二人に連れられて建物の中に入る。傍から見れば美少女二人に手を引っ張られている……のだが、実態はオレの教室まで強制的に連行されていく情けない姿だった。こんな姿を見られたくない……もっと言えば茶化されたくない後輩がいる。
「シン先輩だっ!」
うおおお……と雄たけびをあげながら突撃してくるのは、一年生の後輩……天童悠希だ。可愛いヤツなのだが、嬉しそうにしながらオレの脇腹に頭突きをするのは勘弁してほしい。
「痛いって、天童」
「えーいいじゃん」
「ま、シン先輩も両手に花みたいだし、あたしはこの辺にしておいてあげようかな」
頭突きを辞めたかと思うとそんな言葉を浴びせて来る。両手に花だったらオレも嬉しいが、授業をサボっているツケを払う為に連行されている最中だ。昼休みが終わるまでには、三年生の教室にぶち込まれるのだろう。
「悪いね悠希。いまシンさんを連れていくトコロなの」
「そうっすよ……!」
「わかった。降参だ……」
二人に引っ張られていたのを何とか脱し、自ら教室に戻るよう意思を伝える。ただでさえ他の生徒からの視線が痛いのに、一年生から頭突きをされていたと噂になっては堪らない。溜息をついてから、顔の前で両手を合わせる
。
「オレが悪かった。ちゃんと受けるから許してくれ」
「そう言ってまた逃げないっすか?」
「そーだそーだ!」
廊下で言い合いになってしまう。天童は後ろから文句を言い、鷹取と月居は両隣で攻め立ててくる。後輩ばかりの異性に責められる……シチュエーションとしては好きになりそうだが、内容が平凡であることには変わりない。
「約束は守る……それにほら、もうチャイムも鳴るから」
「それなら、ここにいるみんなで授業が終わったらカラオケ行こうよ」
「……それって、先輩の奢りでってこと?」
天童のカラオケという提案に対して、鷹取が嬉しそうに乗っかる。コイツはオレが生活費ギリギリだということを知っていた上で発言してるのか……?
「あのあの、わたしカラオケ行くの久しぶりで……」
「自分なんかチビどもと言った一回だけっす」
「それでもいいからさ」
さっきまでいがみ合っていた筈なのに和気藹々と話し出している。オレには理解しきれない。まあ……生まれてこの方、カラオケなんて上等なモノは行ったこと無いのだが。そのことをどう伝えればいいのか頭を悩ませる。後輩……それもちょっと気になってきた異性を誘うには、オレ自身の経験値が足りなさすぎる。
「ああ……実はオレ」
事情を言おうと口を開いたのだが、それを無理やり舞花に遮られる。身振りや手ぶりを大きくして無理やり話題を逸らし始めた。
「カラオケ楽しみだな~、それに自分としては制服で寄り道するの好きっすから」
「……この前はマクドとかいったしな」
「マックでしょ」
「略さないですよね、普通」
略称を気に入らないのか突っかかってくる。ま、その辺は気にしない方がいいかもな。三人をそれぞれの教室に返すためにも階段まで四人で歩いて行く。
「カラオケなら分かったから、ほらもう解散するぞ」
「りょーかい」
「また放課後に」
三人が階段を降りていく中、鷹取が立ち止まってくるりと振り返る。
「今度の文化祭、一緒に回って先輩は自分にカッコいい所を見せるのも条件っすからね」
「鷹取、お前何言って」
「先輩の事、自分はほのかや悠希に盗られたくないんで」
そう言いながら笑う鷹取の姿は、どこか大人びて見えた。その言葉にオレは何も返せないまま、ただ彼女の背中を見送っていた。
***
カラオケに到着して早々、オレ以外の三人のテンションは上がっていた。こういう集まりは同性で盛り上がると思っていたが、後輩たちはまた世間とは違っているらしい。初めて入った部屋の内装をまじまじと見ながらソファに座る。慣れた手つきで曲を入れていく後輩たちに合わせて、オレもそれぞれの順番で歌うことになった。
鷹取はドリンクバーから三人数分の飲み物を持って来てくれていた。見知った中である月居と天童にはそれぞれお茶と炭酸飲料を目の前に置き、座っていた自分には謎の色をした液体を手渡してきた。
「先輩には鷹取家の特製ジュースっす!」
「……混ぜたやつかこれ」
「先輩には特別……ですから」
怪しいなと思いながら口を付けると案外美味しい……。意外と感心していたら鷹取が持ってきた飲み物には普通の色をしていた。
「それじゃあまずは……あたしから!」
天童が前に出て歌い始めるが、その歌に耳を傾ける余裕はなく……オレはカラオケ機械の操作に苦戦していた。物凄く熱い歌詞を言っているのだろうが、目の前の画面のさわり方もイマイチ分からない。
「シンさんもしかしてカラオケ初めてですか……?」
「まあ、入ったことが無かったからな」
「それなら教えますよ。わたし、結構詳しいので」
月居さんが付きっきりで教えてくれることになった。曲を検索する必要があるがそもそも歌える曲がそもそも無い。
「……じゃあこれで」
「分かりました。あ、次は歌いますね」
天童が歌い終わり、次の曲が流れ始める。この曲はほのかが歌うモノらしい。席に戻ってきた天童は満足したのかどこからともなく取り出したマラカスを振り始めている。今思えばオレも含め年上ばかりなのに、コイツは気負いしないし元気だな……。
「聞いてくださいっ!」
「おお~」
月居さんが歌い出す。爽やかなメロディーに乗せて力強い歌声が耳に心地いい。その後に歌う自分がちゃんと歌えるか不安になってきたな。月居さんが歌い終わった後にマイクを握る。
「それでは……国歌斉唱」
「国歌歌うんすか!?」
「ふふっ……おもしろすぎるって」
何故かみんな面白がって笑っている……それでも何とか歌いきる。音楽の授業は苦手だったが、これくらいなら俺でも歌えられる。そうして、何とか盛り上がったカラオケは二時間ほどで解散となった。後輩たちへの奢りという名の寄り道は無事、幕を下ろしたのだった。
「……意外と上手かったかも」
「自分たちって先輩と違う学年だから聞いたことないっすからね」
「シンさん、今度は曲覚えて一緒にデュエットしましよう!」
差し迫る文化祭の影に、オレたちの関係は変わろうとしていた。夕焼けに染まった帰り道の中で、鷹取の言葉を思い出しながら、静かに確信を持つのだった。
千紗「……私もカラオケに行きたい」
まほろ「混ざれる訳ないでしょ」
千紗「次回予告にも新しい試みが必要だと思うの……そう、主題歌を歌うとか」
まほろ「どれだけ歌いたいの……?」
千紗「文化祭で、私たちでユニットを組んで出場するなんてのも……」
まほろ「はい! この話はおしまいだからやめやめ!」
千紗「はあ、次回アオゾラ・フェスティバル‐2‐」
まほろ「別の世界線の文化祭なんて、まほろは出ないからね」
千紗「……ケチ」