アークナイツ.Sidestorys Day After Day   作:Thousand.Rex

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序章

それは、ある日の出来事だった

 

「ストレイドー、遊ぼー?」

 

「嫌だ」

 

ロドス・アイランド、鉱石病から世界を救うべく世界各地を渡る方舟

より多くの人を救う為、けして命を見捨てぬために日々奔走する医療組織

 

「遊ぼうよー、ねえねえ」

 

「面倒だ」

 

その船の一室、本来なら客人を迎え入れるための部屋

応接室と呼称されるけして私室ではない場所、そこで

 

「遊んでよー」

 

「子供は子供同士で遊んでろ」

 

一人の傭兵と少女が戯れていた

 

「ダメ―?」

 

「駄目」

 

「どうしても?」

 

「どうしても」

 

傭兵の名前はストレイド、いつしかロドスに渡ってくるようになった男

応接室のソファに横になり、グラビア雑誌を読みふけっている

 

「もう、そんな本読んでないで遊んでよ」

 

「ほう、この叡智の結晶を馬鹿にするのか、リンクス」

 

リンクスと呼ばれた少女はストレイドの胸の上に跨り跳ねている

遊んでくれと催促しつつ的確に彼の肺にダメージを与えている

 

「裸の女の人が映ってるだけじゃん」

 

「それが結晶なんだよ、これを考えた奴は天才だ」

 

「意味わかんないよ」

 

「わからなくていい、お子ちゃまにはな」

 

正論ではある、だが子供の前でそんなものを眺めている方が悪い

 

何故こんな状況になっているか、理由は複雑

この傭兵、応接室を私物化しているのだ、許可なく占領している

とある事件を境にロドスに現れるようになったこの男はあろうことか部屋を勝手に改造しあらゆる場所に隠し棚を用意した

その中には酒や菓子、雑誌の類が隠されている、その内の一つにとても子供に見せられないものが含まれている

いま彼が読んでいるのがその問題の代物だ、何故誰も捨てない

 

「ほら、しまってしまって」

 

「おいこら、丁度見開きのタイミングなんだ。勝手に取るな」

 

「こんなの見なくていいでしょ。ここには綺麗な人沢山いるんだから」

 

「むう……そうは言うがな、リンクス」

 

リンクスが強引に奪いソファの隠し棚を開ける、外側、丁度手すりの下辺りのスイッチを押す

側面が開く、そこに雑誌を入れる

 

「……覚えましたよ、その位置」

 

「リンクス、こいつの前で開けるなと言ったろうに」

 

「でも収納には使えるよ?」

 

「そうじゃない、そうじゃないんだ」

 

「後で中身を確認させていただきます」

 

そういって対面から恨めし気にストレイドを見るのはリスカム、BSWから派遣されているオペレーター、過去に彼と面識のある人物でもある、あまり人には話さないが

 

「やれやれ、また増やさないとか」

 

「やめなさい、ここの人が迷惑します」

 

「大丈夫大丈夫、俺とこいつぐらいしか位置は把握してないから」

 

「うん、わたしとストレイドぐらいしかわからないと思うよ」

 

「そうですか、ならリンクス、今度何かお菓子を買ってあげましょう」

 

「ホント!?」

 

「ええ、その代わり棚の位置を教えてください、全て」

 

「いいよ!」

 

「待てこら、物で釣るとは感心せんな」

 

「それよりもあくどい事をしてるのによくそんなことが言えますね」

 

ストレイドが抗議しながら身を起こす、一見真っ当に聞こえるがどう考えてもリスカムが正しい

彼が起きるのに合わせてリンクスが上から退く、そのまま彼の横に座る

 

「まったく、もっとこう優しい考えは出来んのかお前は」

 

「ここを立ち退かせていない分優しいと思いますが」

 

「一理ある、このソファを失くすのは惜しい」

 

「あなたのではありません、客人用です」

 

「客人だよ、俺は」

 

「誰がですか、勝手に来てるだけでしょう、もう」

 

プンスカしながら視線を手元に落とす、その手にはクリップボードがある

 

「で、なんの報告書だ?それ」

 

「別に、バニラの修練状況とジェシカとフランカの作戦報告書ですよ」

 

「なんだ、別れたのか、珍しい」

 

「いつも同じ組み合わせでは戦法が偏ります、その分臨機応変に動けません」

 

「馴れさせておきたいと、真面目だねえ」

 

「あなたが不真面目なんです」

 

紙をめくり内容に目を通していく、それを何も言わずにストレイドが見守る

 

「……なんです、じっと見て」

 

「別に、お前のしかめっ面を眺めてるだけだ」

 

それを聞いてさらにしかめる、よくあることだ

 

「ねえねえストレイド」

 

「お、どうした」

 

その様子を眺めていたリンクスが声をかける、彼を見上げ笑顔で話す

 

「座らせて?」

 

「いいぞ、ほら」

 

「わーい!」

 

催促され膝を叩く、それを見たリンクスが膝に座る

 

「~~~♪」

 

「何がいいのかわからんな、俺には」

 

そう言いながら口に煙草を咥える、火は点けない

はたから見たら仲のいい親子だろう、実質そのような関係の二人だ

随分と、平和な光景だ、こんな光景が続いてくれるならいいのに

 

「…………」

 

「なんだ、じっと見て」

 

「……なんでもないです」

 

二人のそんな姿をリスカムがじっと眺める、それに気づいたストレイドが声をかける

 

「用がなきゃ見ないと思うが」

 

「なんでもありません、気にしないでください」

 

「……ふむ」

 

何か考えた後、リンクスを横に少しずらす、膝が片方空く

 

「なんのつもりですか」

 

「見りゃわかるだろ、ほら、来いよ」

 

「……行きません」

 

膝を叩く、座れと促すように

 

「遠慮するな、来いよ」

 

「行きません」

 

「先輩に甘えられるチャンスだぞ」

 

「行きません」

 

「誰も見てないぞー」

 

「……行きません」

 

これはからかってるだけだ、けして本気ではない

いざ座ろうとすれば彼はリンクスを使って邪魔するだろう、そして笑うのだ、引っかかったなと

 

「リスカム、一緒に座ろう?」

 

「断ります」

 

「ほらほら、いまならなでなでが付いてくるぞ」

 

「あなたにされても嬉しくありません」

 

意味の解らない攻防が繰り返される、それを扉の隙間から覗く誰か

 

「……先輩、行きませんね」

 

「そうでしょうね。恥ずかしいのよ、多分」

 

「恥ずかしいからじゃないと思いますが」

 

ジェシカ、フランカ、バニラの三人がそっと見守っている

 

「先輩、これが家族愛というものですね」

 

「ええそうよジェシカ。娘二人とコミュニケーションをとろうとする父親、天真爛漫で彼を疑わない次女、反抗期で甘えるのが恥ずかしい長女、そんなところね」

 

「違うと思うなー……」

 

これはとある世界の物語

 

「先輩、頑張って……!」

 

「……フランカ先輩、この場合母親は誰に……あっ、フランカ先ぱ――――」

 

「死にたいのかしら」

 

「ナンデモアリマセン」

 

いつかきっとありえるかもしれない、そんな日常の一ページ

 

「カモン、リスカム」

 

「嫌です」

 

「こっちにおいでよー」

 

「嫌です!」

 

あたり前な小さな平和、いつかありえてほしい、そんな平穏

 

 




こんな感じの話です、基本アフターはこっちに来ます
平和なものから再びシリアスなものまで書くことになります

本当はそのまま繋げるつもりでしたがあっちはあっちで終わらせておいた方がいいかと思いましてこうなりました
設定はあちらから引き継ぎます

楽しんでいただけると幸いです
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