アークナイツ.Sidestorys Day After Day 作:Thousand.Rex
一羽、果物大好きフェン隊長
「……んー」
「えっと、ストレイドさん」
「ああ、どうした」
「……いえ、やっぱりなんでもないです」
「そうか」
応接室、来客者用のソファの上、フェンとストレイドは一緒に座っていた
「その……」
「なんだ、聞きたいことでもあるのか」
「いや、そういうわけじゃないというか、でも聞くべきなのかなーと」
「言ってみろ」
一緒に、座っている
「……やっぱいいです」
「そうか」
一つのソファに、一緒に座っている
応接室のソファは三つ、対面に二つ、その間に一つ
三つの真ん中にはテーブル、主な内装はこうだ、後はティーポッドなど、客人に対して応対できるような設備が置いてある
「…………」
「しかしまあ、クセ毛の割にサラサラしてるな、お嬢さん」
「あ、ありがとう……ございます……」
三つあるのに一緒に座る必要はない、しかもよくわからない状況になっている
いまストレイドはソファの片側に詰めて、胡坐をかいて座っている
その前に背中を向けるようにフェンが座っている、人のいない方に足を投げ出した状態で
「……手慣れてますね」
「ああ、リンクスの髪をとかすことが多かったんでな、そのせいだろ」
そして何故か、ストレイドがフェンの髪をといている
「……どうしよ」
「何が」
何故こうなったのか、少し前に遡る
…………………………
「ストレイドー、もっとやってー」
「はいはい、好きだなお前」
「休日のパパですね」
用事で偶然応接室の近くを通り、声がしたので覗いてみたのだ
そうしたら二人がいた、ストレイドとリンクスが仲良く座っていた
「おいおい、こんなやんちゃな娘、俺は欲しくない」
「む、ストレイドがお父さん……」
「意外と前向き?」
「……いいかも。でもなぁ、お父さんに申し訳ないし」
ストレイドが胡坐をかいて座り、足の上にリンクスが背を向けて乗っかる
「こんな奴、父親なんぞに仕立てあげるな、人間性が疑われるぞ」
「ははは・・・」
そうして櫛を取りリンクスの髪をとかしている姿はどうみても親子に見える
そんな平和な様子を対面に座り眺めていた
「ほら、もういいだろ」
「えー、もっとー」
「断る、それにあんまりやると毛が抜けるぞ」
「大丈夫、すぐ生える」
動こうとしないリンクスを退かそうとストレイドが苦戦している
手伝おうか、そう考え近づいたとき事件は起きた
「ん、フェンの髪、ぼさぼさしてる」
「え? ああ、クセ毛なんだよ」
「そうなの?」
ふーん、といいながらフェンの髪を凝視する
そして何か思いついたのか、にっこりと笑顔を浮かべ
「ねえフェン」
「なあに?」
「ストレイドにといてもらおう」
「「は?」」
そう言ってフェンの腕をがっつり掴む、そして引っ張る
「え、いや、ちょっ」
「リンクス、あまり強引に誘うな。迷惑だぞ」
「えーでも気になるでしょ?ストレイドも」
「お嬢さんのクセ毛か。まあ気にはなるがどうにかなるものじゃないからな」
「そ、そうだよリンクス、私は大丈夫だから」
「やってみなきゃわからないよ」
男らしいセリフを言われてしまった
リンクスが位置を動きつつストレイドの前に座らせようとする、子供の力だ、抵抗は簡単にできる
だが無理に振りほどくとリンクスが怪我をするかもしれない、仕方なく引っ張られるままに引っ張られる
そしてたどり着く、ストレイドの前に背を向けて座らされる
「リンクス、お前はもう少し節操というものをだな」
「でも直るかもしれないよ」
「直らねえよ。一時はマシになっても元に戻るのがクセ毛なんだ。寝癖と同じにするな」
「すいません、すぐ退きます」
「駄目」
退こうとして押さえつけられる、何がこの子をそうさせる
「……仕方ないな、悪いお嬢さん、少しでいいから付き合ってくれ」
「ええ、そうですね……じゃあ、お願いします」
このまま抵抗しても時間ばかりがかかって意味はなさそうだ、だったらやってもらって結果を見せた方が早いかもしれない
ストレイドも同じ考えだろう、お互い同意の上で始めることにした、すると
「ストレイド、ちょっといいかしら」
「あ? なんだフランカ」
フランカがやってくる、扉を少し開け、顔を軽く覗かせる
「あら、珍しい光景ね」
「そうだな、こんなことになるとは微塵も思わなかった」
「そう、あなたの事だから喜んでると思ったのだけど」
確かに珍しい光景だ、彼がリンクス以外の人の髪をといている、見る人によっては誤解するだろう
「で、なんだ」
「いえね、リンクスに用があるってドーベルマン教官が言っててね」
「へえ、だそうだ、行って来い」
「えー……」
不満そうな顔でこちらを見る
「ほら、あまり人を待たせるな」
「……わたしがいなくなったらやめるでしょ」
「さあな、わかってるのはお前が結果を見れないという事だけだ」
言いながら櫛を仕舞おうとする、それを見て
「ダメ、ちゃんとやって」
「いやいや、やらんでいいだろ」
「やって」
「まあまあ落ち着け」
「やって」
「……最近、変な方向でわがままになったな」
「そうですね……」
彼女がロドスに迷い込んできた時のことを思い出す、どこか呆然として自我が薄い子、そんな印象だった
何がここまで彼女を変えたかは知らないがいい傾向であるのは間違いない
「ちゃんとやって、戻ってきたら聞くからね」
「えー……チェックが入るのかよ」
「やってね。わたしはすぐ戻るから、やっててね」
「わかったわかった、お前は早く行け」
そう言ってフランカと共に応接室を後にする
「……はあ、今度フランカとリスカムに叱っとけって言っておくかね」
「ご自分では言わないので?」
「言ったろ、さっき、結果がこれじゃあ他に任せた方がいい」
「そうですか」
他愛のない事を言いながら退こうとして
「…………」
サクッ
「え?」
櫛が髪に刺さる音がした
「えっと……ストレイドさん?」
「気にするな」
「いや、気にします」
何故か再開された
「どうしてまた始めるんです?」
「別に、せめて既成事実だけでも作っておくかと思ってな」
「はあ……」
黙々と髪をとき始める
「あの……」
「まあゆっくりしろ、取って食いはしねえから」
「そう、ですか……」
ゆっくり、髪をとき続ける
「えっと」
完全に退くタイミングを失ってしまった
「……どうしよ」
――――――――――――
そして現状に至る
「…………」
「んー、やはり直らんな」
慣れた手つきでとき続ける、なんだか真剣にやっている
「……あの」
「おう、どうした」
何故始めたんですか?、そう聞こうとして
「いえ、いいです」
「そうか」
口を閉じる、先ほどからこれの繰り返しだ
聞きたいなら聞けばいいのに、なぜ聞かない
「……どうする」
「ん?なんか言ったか」
「いえ、なんでも」
いや、聞けないのだ
彼はこのロドスで一番不明瞭な位置にいる
「……これ、形状記憶合金じゃねえだろうな」
彼は元々怪しい人物だった、ある日龍門内でいきなり現れ、とんでもない言動をかまし、そして検閲で対処のしようのない恐怖を見せつけた、正確には片鱗をだが
その後ロドスに忍び込んだらしく、艦内を走り回っていたとか、その時フェンは違うとこにいたから詳細は知らないが
その後の強襲作戦で見せたあの屍の山、それは彼の危険性を如実に表していた
「……駄目だな、こりゃ」
「……ですよね」
作戦終了後、リンクスを置いてどこかに消えたと思ったらある噂が流れてきた
例の黒い男が応接室を根城にしたと
「いや、まだだ、まだ終わらんよ」
「結構、負けず嫌いなんですか?」
「違う、すっきりしないのが嫌いなんだ」
見に行って、本当に居たから驚いた、さもそれが当然であるように寛いでいたから余計に驚いた
何故ここに来るようになったか未だ明らかになっていない
本人は面白そうだからで通しているらしいが
「しかし、どうしてこう女ってのは髪を伸ばすんだ?」
「それは、ほら、オシャレとか、そういうのに合わせるためにですね」
「それはわかるがな、何も腰に届くまで伸ばさなくていいだろ、リンクスといい君といい」
「…………君?」
君、という単語が何故か耳に残った
「ああ、気にするな」
「……そうですか」
彼は人を呼ぶとき、だいたいお前さんとか、お嬢さんとか、そんな風に呼んでいたはず
もしくは名前か、バニラやドクター相手にするように適当な呼び名をつけて呼ぶか
少なくとも君などとは呼ばない、女性を誘う時とかには呼んでいるが今はそんな状況じゃない
「…………」
「……あと一回、これで駄目なら諦めるか」
何故だろう、髪をとき始めたことよりもそっちが気になる
「…………」
聞いてみようか
「あのっ」
「お、どうした、緊張して。押し倒したりはしないから安心しろ」
「いや、そうじゃなくて」
「なんだ」
「どうして、その、君、って呼んだんですか」
聞いてしまった、逆に何故言えた、髪の方は聞けなかったのに
「……ロドスの奴らは、どいつも勘がいいな」
「えっと、お答えできないなら、それでいいんですが……」
何故だろうか、気配が変わった
「そうだな、聞かせることじゃない、やめておけ」
「……そうですか」
いつもの飄々とした感じではなく、どこか重い、悲しい雰囲気を醸し出している
振り向けば泣いていそうな、そんな感じ
「すいません、いきなり」
「いい、俺の落ち度だな、これは」
二人、無言になる、櫛を滑らせる音だけが小さく聞こえる
「……あの」
「なんだ」
質問をしてみる
「ストレイドさんって、昔BSWにいたんですよね」
「ああ、いた、というか無理やり縛られてた」
「どうしてですか?」
「そうする理由があったんだとよ、ふざけてやがる」
意外と正直に答えてくれた、だが聞きたいのはそこではない
「それで、その前は何を……」
そう言って、失策だと気づいた
「……あの、ストレイドさん」
「……なんだ」
あからさまに気配が変わった
「やっぱり、聞きません」
「そうかい」
とても重く、ドロドロとした感情、まるで何か、深淵でも覗かされているような、そんな気配
「……すいません」
「別に、お嬢さんが謝ることじゃない」
死を感じさせる、敵意に近い何か
「忘れてください……」
「安心しろ、大抵のことは忘れるようにしてる」
それは、フェンに向けて向けられたものではない、彼が、彼自身に向けたもの
「……ごめんなさい」
「謝るな、頼むから」
どうやら地雷を踏んだのか、やってしまった
昔のことなどうかつに掘り起こすべきではない。そんなの理解していたろうに
「……ごめんなさい、ストレイドさん」
「だから、謝らないでくれ、お嬢さんは悪くない」
また無言になる、気まずい空気が流れる
櫛が髪をとく音がする、いやにはっきりと聞こえる
「…オーケーだ、もういいぞ、退いても」
「…………」
終わったらしい、クセ毛は消えていないだろうが
「ほら、いつまでもそこいると押し倒すぞ」
軽く脅してくる、多分、本当にやる気はない
こちらに気を使っているんだろう、変に尾を引かないよう
「……ごめんなさい」
「責任感が強いって、言われたこと、あるだろ」
「…………はい、一応、部隊長ですので」
「そうなのか、若いのに立派じゃないか」
こちらが話しやすい話題に切り替えようとする
「なんだ、じゃああの細目の嬢ちゃんとビクついてる嬢ちゃんは隊員か」
「はい、そうです」
「いいな、互いに理解してる、いいチームだ」
これは彼の優しさだろう、変に落ち込んでしまっていることに気づかれている
「ほら、別に俺は気にしてない。大丈夫だ」
「……はい」
大丈夫なら、そんな気丈は振る舞いはしない
動くに動けない、顔に出てる、それを見られたら流石に彼も平気なふりはしないかもしれない
そのまましばらく座ったままでいる
「……まったく、俺はいつまでたっても変わらんな」
後ろで動く音がする、ソファが軋む、ソファの背にもたれかかったのか
「…………?」
背中をつつかれる、それになんとなく反応して
「ぐむっ!」
「ふ、引っかかったな、お嬢さん」
振り向きざまにほっぺに指が当たる
どうやら悪戯を仕掛けられたらしい
「……むー」
「ほう、睨んでくるか。いい心意気だ、若者はそうでなくちゃな」
気を紛らわせようとしたんだろう、よくもそこまで人を気に掛けられる
「ほら、座ったらどうだ、ずっとそんな体制じゃ疲れるだろう」
「あ、……はい」
指を退き、そのまま頭に伸ばしてくる
前髪をかきあげながら優しくなでてくる
「ありがとう、ございます」
「礼などいらん、勝手に撫でてるだけだ」
言われるまま彼の隣で姿勢を正して座る、彼は変わらず撫でてくる
随分暖かい、どこか、誰かに似たような、酷く安心できる感じがする
「さっきの事、気にしなくていい、お嬢さんが気に病む必要はない」
「……ですが、迂闊に聞いたのは私です」
「そうだが、まあ気にするな、これは俺の問題なんだ」
「…………」
「俺が、割り切るべきことなんだ。だから気にするな」
「……はい」
強襲作戦の日、ドクターから聞かされた
この男は、ロドスに警告に来たのだと、そしてそれは、今も続いていると
「なんだ、納得してないな」
「……悪いのは私です、せめて謝罪を通させてください」
「断る。悪いのは俺だ、なのに謝らせる必要はない」
「それでも、私が悪いんです。一言許すと、そう言ってください」
「駄目だ、この件は全て俺が悪い」
彼はロドスに敵対する可能性が、いまもあると
そんな男がこんな顔をするのか
「なら、何か代替案を」
「というと?」
「何かこう、これをやれば許すとか、そんな感じのことを」
「それ、操を寄越せって言ってもいいのか?」
「――っ!?……はい、それで許されるなら」
「マジか、思い切るな」
こんな、善人としか言えない顔をするのか
「……しますか?」
「しないしない。そんな理由じゃやる気は起きん」
言いながら手を離される、なんだか名残惜しい
「なら、どうすれば」
「あー、そうだな、それで気が済むなら……ああそうだ」
「?」
こちらを見る、不敵に笑いながら
「お前さんがどうして戦ってるか、教えてくれ」
「戦う理由、ですか」
「ああ、お前さんがここに来た理由でもいい。話してくれないか」
「……わかりました、じゃあ、その、ちょっとした身の上話から」
そうして話した、カジミエーシュの出身だとか、クルビアの辺境に住んでいたとか
誰かを護りたくて、警備隊にいたとか、クルースとビーグルと会った経緯とか
天災で、感染したこととか、感染者への差別とか、心折れてしまった、あの日の事とか
なにもかもを、話してしまった
「……そうか」
「こういう、感じです」
「なるほど、それでここに来て、またいつかのように誰かの為に戦いたいと」
「はい」
「それで目標はあの教官殿か、なるほど、青春してるじゃないか」
「そう、でしょうか、はは……」
「ああ、随分人らしい目標だ」
そういっていつの間にか煙草を口に咥えている
火もつけず、軽く上下に揺らしている
「ここにはまっすぐな奴が多いな、羨ましい限りだ」
「……えっと」
「ん? どうした」
なんとなく、気になった
「ストレイドさんは、どうして戦うんですか?」
「……ふむ、知りたいか」
「え、あ、言いたくないなら、それで」
「いいだろう、俺は今気分がいい。教えてやる」
「へ?」
意外とすんなりオーケーが出た
「別に、つまらん話さ」
「というと」
「俺はただ、戦うことしか知らないだけだ」
「……その、つまり」
「俺は、最初から兵士だった」
「…………」
衝撃的な事を言われてしまった、軽く、言われてしまった
「まあそれで、他に道がなかった」
「……その」
「謝るな、逆に誇れ。俺にこの話をさせたのはお嬢さんが二人目だ」
二人、となると一人目は誰だろうか
「昔、なんかの拍子に傭兵団に拾われて、少年兵として鍛えられた」
「……少年兵」
「ああ、使い捨てのゴミだ。よくも生き残ったものだよ」
「その、じゃあ家族は……」
「さあ、生きてるかもしれんし、とっくに殺されてるかもしれん」
「それは、その」
「酷い話か、そう聞こえるだろうさ、だが俺には関係ない」
「…………関係大ありです」
「ないよ、家族の絆など、もとよりなかった。そんな奴に悲しめなどといっても意味はない」
そう言う彼の顔は、決意に満ちていた
「そんなもの、俺にはいらない、足でまといになるだけだ、なら捨てる、捨てていく」
「…それは、酷く寂しい事だと、思うんです」
「そうだな、それが当たり前の反応だ。否定はしない」
「そうするだけの理由が、あるんですか?」
「ああ、そうなるだけの理由が、俺にはある」
これが彼の本性なのか、けして振り向くことをしない、そう宣言するのが、そうして成し遂げるのがこの傭兵なのか
「きっと、辛い道だと、そう思うんです」
「ああ、もう、言われた、それでも行くのさ、進む道はそれしかないんでな」
「……強い、ですね、あなたは」
「そうでもない。強いなら、きっと割り切れている」
もう、割り切っているだろうに、こんなに芯が強い人だとは思わなかった
「あの、一つ、謝らせてください」
「あ? 謝るなって言ったろ」
「いえ、許しは請いません、ただ一度、あなたに謝りたいんです」
「……何を」
「私は、あなたを誤解してました。きっと、その、もっと非情な人だと、そう思っていたので……」
「非情だと思うが」
「いや…いえ、とりあえず、謝罪だけどうか、させてもらえれば」
「……ほら、早くしろ」
「すいませんでした」
立ち上がり、彼に向けて頭を下げる
「……綺麗なお辞儀だな、誰に仕込まれた」
「あ、その…教官に」
「なるほど、厳しくされてるクチだな。確かに期待するだけの器はある」
「へ?」
頭を上げようとして抑えられる、両手で
「いいだろう、ちょっとした激励だ」
「いやあの、なにを――」
するのか、そう聞こうとした瞬間、視界がぶれた
「あばばばばばば!」
「おら、あの聞かん坊も納得する最高級のなでなでだ。光栄に思うといい」
頭が揺れる、髪がぐちゃぐちゃになる
まるで犬を撫でるようにわしゃわしゃされる
「ちょ、髪が……」
「あっと、これじゃといた意味がないな」
「ああ、さっきより酷い……」
「あー、これじゃあリンクスにどやされるな」
「ですね」
手招きしてくる、ソファの上で胡坐をかく、さっきと同じように
何をするのか、察して同じように前に座る
「さて、手早くやるか」
「はい、お願いします」
櫛が流れる音がする
「あの、そういえばさっき、どうして始めたんですか」
「ん?何を」
「これ、さっきはやる必要なかったじゃないですか」
「ああ、そうだな」
「どうしてやったんですか?」
さっき、既成事実とはいっていた、その割には長くやってた
随分真剣に、何かと向き合うように
「……そうだな、まあ、いいか」
「はあ」
少し考え、答えてくれる
「昔、ちょうどお嬢さんぐらいの頃か」
「はい」
「よく話してた奴らがいたんだ。今のお嬢さんぐらいの背丈で、よく会ってた」
「……会ってた」
「そいつの片割れがな、たまにせがんできたんだ、髪をといてくれって」
それは、いつのことだろうか
BSWにいたときか、それともずっと前の日常か
「その後姿がな、重なっちまった」
「……そう、ですか」
「そうだ、ただ、それだけだよ」
髪をすく音が響く、こするような、そんな音
「気にするな、昔のことに思いふけってただけだ」
「……はい」
「ほら、あいつが戻ってくる前に済ませちまうぞ」
慣れた手つきで櫛を流す
「……ストレイドさん、聞いてもらっていいですか」
「何を」
「ちょっとした意思表明です」
「あ?」
多分、意味はわからないだろう、突拍子に過ぎて
「私、決めました」
「何をだ」
きっと、笑われるだろう
「戦います、私は」
だけど言っておきたい
「最後まで、私は戦います」
「……そうか」
これは、ちょっとした決意だ、さっきの激励に報いるための、ちょっとした意思表示
「いつか、この病に打ち勝つまで、戦います」
この人の優しさに誇れるように
「きっといつか、終わりに導く為、私は戦います」
「そうか、いい顔だ、フェン」
「はい、私は成します、成し遂げます」
「ああ、いい調子だ」
「そうしていつか、叶えられたら。また、撫でてもらって、いいですか」
「……さっきのか?」
「はい」
いつかきっと、平和を取り戻す為
「ま、いいだろう」
「はいっ!ありがとうございますっ!」
「何が嬉しいのかね。どいつもこいつも」
そうしていつか、皆で笑うために
え、これなんの話?
まあそう思うでしょう、こんなんいきなり見せられたら私もそう思います
これ、いわゆる没案です、鵬程万里の
あれホントはフェンと組ませるつもりだったんですよ、ストレイド
だけどまあ、話が軽くなるしどうしようかなって思ってやめました
それでこれはミニマム版です、没の話の
せっかく考えたんだし形を変えて出そうと思いましてこうなりました
楽しんでくれたなら幸いです