アークナイツ.Sidestorys Day After Day 作:Thousand.Rex
それは年末のある忙しい時期だった
ドクターの執務室、書類の山が重なった地獄絵図、クリスマスすら休めなかった理性をなくした男の部屋
そこにはいつも通り死んだ顔でペンを動かす男がいた
「……………………」
「あの、ドクター」
本来ならその隣にはアーミヤがいる、だが彼女はCEO、けして秘書で落ち着いていられる立場ではない、表のリーダーとしての務めがある、彼女はいない
代わりにリスカムが秘書を務めていた、BSW関連の報告は終わり後は年を越すだけ
胡坐をかいて休んでてもいい状況なのだ、だが彼女は秘書に立候補した
何故か、このフルフェイスの男の惨状を見ればまるわかりだ
「ドクター、仕事はまだ残ってますよ」
「……いやだ、みたくない」
意気消沈している、これは理性がマイナスに傾いている、手だけは動いているのが救いか
だがこのままでは終わらない、心の中で謝りながらアーミヤから託されたものを取り出す
「ドクター、失礼」
「……あ?――――っ!?」
後ろに回り何かを突き刺す、中身を注入する
ドクターが震えだす、バイザーの奥の目が赤く光る
「おおぉぉぉぉぉ!!」
「成分、なんなんですかね、コレ」
陸にあげられた魚のように震えながら咆哮をあげる、打たなければよかったような気がする
だがこれで正気に戻る、それは確信できている、何故ならこれで十本目だから
「はっ!? 私は何を?」
「書類のサインをしていました、どうか続きをお願いします」
「ああ、わかった」
正気には戻るのだがなんというか失ってはいけないものを失っている気がする、気のせいだろうか
そのまま仕事に戻ろうとして、あることに気づく
「…………?」
「どうしたリスカム? 急に辺りを見回して」
「いえ、こう、振動音がするといいますか、なにか音がするんです」
先ほどから微かに音が聞こえる、何かが震えているような、そんな音
聞き違いではないと思い周囲を見回す、だが何もない
するとドクターが
「ああ、多分これだな」
「それは、携帯端末ですか」
「そうだ。預かってくれと頼まれた」
「誰にです?」
「ストレイドに」
机から見覚えのある端末を取り出した、それは画面が光り震えている
受け取って画面をみてみる
「……マギー、ファットマン、フォグシャドウ、ジナイーダ、ジノーヴィ、フラジール、ワイルドキャット、シンカイ、ウォルコット、ピスケス、アップルボーイ――」
「多いな、随分」
そこには着信履歴、おびただしい数の人の名が映されていた
「――スティンガー、グッドラック、ネオニダス、興(弱王)……最後、どういう意味です?」
「さあ、わからん」
とりあえず電源を切りドクターに返す
しかしどうしてあんなに着信があるのか、そもそもドクターがなぜ彼の端末を持っている
「どうして預かっていたんです、何かあったんですか?」
「いや、特別何も言われていない、強いていうなら出なくていいぐらいしか言われてない」
「出なくていい? こんなに沢山かかってきてるのに?」
「なんでもそれが嫌だと、返答に時間がかかるから今日が終わるまで預かってくれと言われた」
「今日?」
今日だけ限定で預かれ、ということは今日なにかあるのか
思考を巡らせる、そうして
「あっ、そうでした」
「? 何かわかったのか」
今日の日付はなんだったか
「……はあ」
「どうしたの、いきなり溜息なんか吐いて」
「別に、なんでもない」
応接室、そこにはいつも通りストレイドがソファに寝そべっていた
その様子を対面のソファに座り眺めるフランカ
「珍しいわね、人目も気にせずそんな事するなんて」
「そうでもない、お前が気づかないだけだ」
どこか疲れた様子を隠さないストレイドと会話を交わす
普段飄々としているこの男がこうしているのは珍しい
いつもは適当に口説いてくるのに今日はそれもなかった
何かあったのだろうか
「どうしたの、あなたらしくないわよ」
「そうだな、だからこうしてらしくあろうと振る舞っている」
「……何が言いたいの?」
「別に、非情であろうとしてるだけさ」
ホントにおかしい、確かに非情な面が目立つ男だがこうも表に出すようなことは普段しない
そもそも彼のそういう面が出てくるのは戦場と一部の状況下だけ
こんな日常の最中でそんなことはしない
「悩み事でもあるの?」
聞いてみる、いつもと変わった様子の彼を見て放っておくのが少し心配になった
これで一応先輩なのだ、どれだけ無情で女癖が悪くて皮肉が過ぎる男だろうと放置するほど嫌ってはいない
それに
「こんな日にそんな暗い顔しなくていいでしょ?」
「……こんな日、ねえ」
今日は確か、彼女の誕生日だったはず
「リンクスが張り切ってたわよ、一緒にお祝いするんだって」
「なら、お前らとすればいい」
「あなたもお祝いされる側の一人じゃない」
「どうでもいい」
「勝手ね、もう……」
彼女の誕生日なら彼もその筈
ずっと前からリンクスが言いふらしていた、ロドスの人々に誕生日だと
「失礼するよ」
「ええ、どうぞ」
そのせいか、今日はいつもより応接室に人が来る
誰も彼も一言、こう言いに来るのだ
「やあ迷子君、誕生日なんだって?」
「……………………」
「凄い顔だ、祝言がそんなに嫌いかい?」
入ってきたのはペンギン急便のトランスポーター、モスティマ
リンクス曰く、彼と友人らしい
「モスティマさん、何かいる?」
最近部屋の主と化してきている誰かの代わりに何か淹れようと立ち上がる
「いや、すぐにお暇するから大丈夫」
「あらそう」
長くはいないらしい、そのままモスティマがストレイドに近づいていく
「なんだ、堕天使ちゃん」
「何、どんな顔をするのかと思ってきただけだよ」
「そうかい、で、ご要望には応えられたか?」
「そうだね、悪い意味で応えてくれた」
いつもと変わらぬ笑みを浮かべて、ストレイドに手を伸ばす
「…………どうした」
「別に、随分酷い顔をしてると思って」
何故か彼の頭に手を置く
そうして撫で始める
「……………………」
険しい顔をさらに険しくしてストレイドがモスティマを見つめている
それもそうだろう、撫でられる理由がわからないのだ
「……どうしたの? いきなり」
何も言わず、何も聞かずの二人の代わりに聞いてみる
「そうだね、なんでもないよ」
だがその一言で終わってしまう
そのまま二人、見つめ合い始める
「その、私、席外した方がいいかしら」
もしや何かの合図だろうか、こう、イエスノー的なものかと思って焦ってしまう
この二人、結構怪しいのだ
何が怪しいか、誰に対しても知人で通すストレイドが友人と明言する
あの男が、友人だと認めている
「大丈夫だよ、そんな関係じゃないから」
「なら、いいけれど……」
基本一人で居たがる彼が傍にいることを許す、そんな人物
しかも彼女のどこか希薄な人間性を考えるとどんな関係でも正直おかしくない
不釣り合いなくせして合点がいきそうな二人組、そんな組み合わせ
自分だって知人の枠から出ているのか正直わからない
リンクスのことも一応特別扱いしているようだが友人とは言われていない
実際あの子は勝手にここに来て勝手にくっ付いているだけ
強引にでも組み付かねばずっと一人で居る、それがストレイド
「大丈夫だよフランカ、彼は私よりも君の方が好みだろうし」
「よくわかるな、確かにお前ら二人ならフランカに軍配が上がる」
「聞きたくなかったわ、そんな事……」
恋人とかではない、先ほど言われたがそれを抜きにしても怪しい
そも一体いつ知り合ったのか、聞けばロドスにコンタクトをとる前からの関係とか
BSWから消えた後の彼と会っている、とか
「ほら、いい加減満足したろ、手を退けろ」
「ああごめん、これ位でいいね」
「何が」
「ちょっとした嫌がらせ」
多分、彼の噂も知っているのだろう
もしかしたら見たのかもしれない、何より彼女は彼の扱い方に馴れている
只の友人、そう言うには親しい
「……嫌がらせ、か」
「ああ、普段とはまったく逆の立場になるね。どうだい、人に戻れといわれる気分は」
「最悪だ」
「どういうこと?」
「フランカには関係ないよ」
最後の発言の意味に頭をかしげつつモスティマの動向を見守る
撫でていた手を引き、どこか優しく笑う
「ストレイド、とりあえずはおめでとうとか、そういう事は言わないでおくよ」
「ああ、そうしてくれ」
「だから代わりに、こう言っておく」
ストレイドから離れ、出口に向かう
扉を開けて去り際に言い残す
「君がいつか、人に戻れたなら、誘いに応じてあげるよ」
「へっ?!」
そこそこ大きな爆弾を残して
「ちょっと、あの人とどういう関係なの?」
「いや、奇妙な友人だが」
少し動揺してしまう、あれだけ怪しい雰囲気を出してる二人があんな事を言うのだ
慌てるなという方が無理だ
「何? やっぱりそういう関係?」
「そうならなー、気軽にパイタッチとか、膝枕とかさせてくれるのになー」
「うわ、サイテー……」
言い残した本人はとうに消えている
言われた当人は適当に流していく
答えが開示されない、仕方なく悶々とした疑問を内にしまう
「……まったく、言ってくれる小娘だ」
「……………………」
代わりにもう一つの疑問を聞いてみる
「ねえ、人に戻るって?」
「別に、お前には関係ない」
だが同じように流される
正直、これがどういう事か見当はつかない
人間性の事を指しているのだろうが人なのに人に戻れという理由がわからない
何か、この二人でなければわからない事象なのだろうか
「……偶には教えてくれていいんじゃないかしら」
「教えられるようなことじゃない、それだけだ」
「彼女には教えるのに」
彼女とはリスカムの事
恐らく一番彼を理解している、彼にとっての例外
「あいつは、ほら、しつこく聞いてくるから仕方なく」
「ならここで私が同じように聞いたら答えてくれるの?」
けして特別でなく、規格外などという劣化品でなく
文字通りの例外、イレギュラー
「ないな、お前には聞かせることが出来ない」
「…………どこが違うの、私と彼女」
「どこも変わらない、リスカムは只、運に恵まれただけだ」
運、とは昔の関係の事だろうか
教官として彼女についたストレイド、普段とは違う二人組の関係
「確かに、恵まれていたわね……」
話す機会は幾らでもあったのだろう、実際彼の隣にはいつも彼女がいた
訓練中も、彼が他の職員にちょっかいかけている時も
鉄と火薬が支配する、彼の戦場の中でも
「お堅く見えて結構詮索好きだったぞ、何か質問してくる度人の顔色伺って、奥底の感情を見抜こうとする」
「あなたの事、信用したかったのよ」
「上の評判を聞けば信用ならない類のモノだと理解出来たろうに」
そこに在ったのは、一種の羨望と殺しすぎる男への不信と
きっと、時折見せる空っぽな表情への心配があったのだろう
「……………………」
「なんだ、お前まで人の顔覗き込みやがって」
こんな日ぐらい、訝しむようなことはしたくない
どれだけ悪評が目立とうと彼が誰かの為に生きる人だということは変わりない
ただ、どうにも真意がわからないのだ、どうしてそんな風に生きることにしたのか、発端がわからない
じっと彼を見つめる、それに気づいた彼は何も言わず、目を閉じる
すると
「あの、ストレイドさん、いますか?」
「ん? クランタのお嬢さんか」
今度はフェンがやってきた
「失礼します、あ、フランカさん」
「どうしたの、ストレイドに何か御用?」
「ええ、その、ちょっと……」
その手には小さな紙袋がある、まあ用件はわかっている
他の人と変わらない、祝いに来たのだろう
「ストレイドさん、その、今日は誕生日と聞きまして」
そう言って彼に近づく、袋の中身を渡す為だろうか
緊張してるのか声が上ずっている、彼は寝そべったままそんな彼女を見つめる
「こちらを、僭越ながら用意させていただきまして……」
「自分の為に金を使え、こんなのにかまける必要はない」
「いやでも、普段お世話になってますし」
どうやら見ていないところでコンタクトをとっているらしい
そういえば彼女の事も彼は気に入っている
「お世話か、ならお返しに『私がプレゼントです♡』ぐらいはやってほしいな」
「ひゃっ、そ、それは、その、えっと……」
こうして彼女を狙うぐらいには
「この変態」
「なんだ、まだ序の口だろうに」
顔を赤くしながら狼狽する彼女の代わりにぶつけるべき言葉をぶつけておく
この下品な嗜好は昔から変わらない、どれぐらい手を出したのだろうか
というかフェンも恥ずかしがってないで反論すればいいだろうに、だからこの男が調子に乗るのだ
「ほうら、今なら俺の腕は空いてるぞ」
こんな風に
「へ、その……ああ、ああああああ……」
「フェン、正気に戻って」
思考がオーバーフローを起こしたのか、正常な判断が出来ずに腕を広げる彼に近づいていく
煙を噴き出しながら傍にいく、それを確認した彼は起き上がり
「捕まえた」
「ひゃい!」
彼女を引っ張り腕に納める
「こら、流石に黙認するほど甘くはないわよ」
「大丈夫大丈夫、性的な悪戯はしない」
そう言いながら紙袋をそっと回収してテーブルに置く
そして膝に乗せて抱きしめる
「うむ、睨んだ通りの抱き心地だ」
「いやらしい」
「失礼だな、言葉通りだぞ」
「あわわわわわわわ…………!」
特に何をするでもなく、抵抗をしないまま抱き留められている
赤くなった顔は紅蓮の領域に到達しようとしている
その様が面白かったのか
「ほれ」
「ひんっ!」
指を動かし首筋にそっと触れる、それに反応したフェンがビクンと跳ねる
更に軽く突く、脇に手を入れくすぐったり軽く耳に息を吹きかけたり
ギリギリどころか完全にアウトな行為に勤しみ始める
「あっ、んん……やぁ…………ひぁっ!……あ……ん…………!」
彼が弄る度フェンが小さな悲鳴を上げる
カチコチだったその顔も段々柔らかくなっていき、終いには蕩け切った表情へと変わっていく
その反応に怪しく笑いながら更に攻め手を増やすストレイド
「ひぃっ…………らっめ……しゅとれいど……さん、このままじゃ……わたひ……!」
「はいストップ!!」
「ふえ?!」
色々危ない領域に到達する前に無理やり剥がす
「なんだよ、せっかく盛り上がってたのに」
「盛り上がってたのはあなただけ」
「はあっはあ…………はあっ……!」
息を荒げるフェンを背に回し護るように不服そうな顔をするストレイドの前に立つ
あのまま放っておいたらどうなっていたか、子供には見せられない惨劇が広がっていた所だろう
腰が砕けたのかフェンが座り込んでいる、どうしてこういらない技を極めているのか
「フェン、立てる?」
「はい、一応……」
よろよろと立ち上がる、まだ顔が赤いが大丈夫だろうか
「やれやれ、ちょっと遊ぶだけでも駄目なのか」
「そうに決まってるでしょ、あまりここの人達に悪影響を与えないで」
「えー、同意の上でも駄目なのか?」
「同意って……あなたの誘いに乗る人なんていないでしょ」
「ほう、つまり了承してれば問題ないと」
「いやそうは言ってない」
「…………はふぅ」
ようやく呼吸を整えたフェンを尻目に牽制する
油断も隙もあったものではない、この男は性欲の権化ではなかろうか
「ほらフェン、用が済んだなら早く避難しなさい」
「え、あ、はい」
そのまま背中を押し強制的に部屋から退場させる
どこか名残惜しそうにストレイドを見ていたがきっと気のせいだろう
「なんだよ、後五回位楽しめたのに」
「楽しみ過ぎよ、そういう所、いい加減にして」
「はあ、これだからガードが堅い奴は……」
残念そうに言いながらフェンから渡された紙袋を手に取る
口を開き中を覗く
「……むう」
「何が入ってたの?」
何故か呻いた
彼の反応が気になり隣に座って覗き込んでみる、そこには
「あら、クッキー?」
ロドスの購買部で売り出されているクッキーが入っていた
「よかったじゃない、いつも品切れになってる人気の商品よ?」
クロージャの購買で入荷されるたび秒で消えると噂のクッキー
特別高価という訳でもない、その割には絶品と評判の生産者不明の菓子
売り切れの札が出るとき、必ず黒い猫の影があるといわれている
ちなみに生み出された過程に不穏な噂が漂う代物でもある
なんでも、理性回復剤の制作過程で偶然生まれたとか
「……クッキーねえ」
「なんだか不服そうね」
彼はロドスに関する情報はあらかた知っている
ということはこれが人気商品で入手が難しい物だとも知ってるだろう
その割にはなんだか浮かない顔をしている
喜んでいないわけではないだろうが曇った顔をし始めた、どうかしたのだろうか
「女の子からの贈り物よ、喜んだら?」
「……まあ、喜ぶべきなんだがな」
釈然としない顔を向けてくる、一度袋とこっちを交互に見る
そして
「フランカ、お前、甘いものは好きだったな」
「? ええ、嫌いではないけど」
「そうか」
そう言って無言で袋を突きつけてくる
「……えっと?」
「やる」
「は?」
どうやらこちらに明け渡そうというつもりらしい
「やる」
「いや、どうして?」
「いいから、やる」
「いらないわよ」
「まあまあ、とりあえず受け取ってくれ」
「なんで」
どういうわけか押し付けようとしてくる
正直レアな代物だ、食べてみたいという気持ちはある
これがただの気まぐれや偶然で手に入れた物なら受け取っていただろう
だが、これは違う
「受け取れないわ、これはフェンがあなたの為に用意したものよ」
このプレゼントは彼の誕生日を祝う為の物
受け取ることは出来ない、そうすれば彼女の誠意を無下にすることになる
「大丈夫だ、お前が黙っていれば問題はない」
「あるわよ」
第一彼はそんなことはしない
何をするにしても相手の感情を理解した上で動く、そこに善意があるなら尚更無駄にはしない筈
なのにどうして手放そうとしているのか
「お気に召さなかったの?」
「まあ、そんなところだな」
グイグイと押し付けてくる
これは気に入らなかった、というより嫌がっている
「クッキー、嫌いなの?」
「んー……何というか、甘いものは嫌いなんだ」
「意外、あなた嫌いなものあったのね」
「逆になんでないと思った」
「だって、前にハイビスの料理食べて平気だったから」
「……あれは、ほら、一応健康面に特化したものだったし」
「……どうしてああなったのかしら」
「さあな」
どうやら彼の中ではあの暗黒物質よりこっちの方が敬遠する物らしい
先ほどと変わらずにこちらに差し向けてくる
「ほら、俺は食えないから、代わりに食ってくれ」
「でも、私が貰うわけにもいかないし……」
口に合わなかったのなら嫌がるのはわかる
だからといって受け取るのも違う気がする、どうしたものか
「いいじゃないか、ここで食っちまえばクランタのお嬢さんにはバレないぞ」
「だけどねえ……」
「ならこう考えろ」
「?」
袋の中身を取り出し手渡しながら言ってくる
「ここでコイツを消費すれば誰かが食った、という結果が出来上がる」
「そうね、ええ」
「そして過程を有耶無耶にすれば、結果だけに目が向けられる」
「……………………」
「碌に情報がなければ人は都合のいいように解釈する、それはあのお嬢さんとて例外ではない」
「つまり?」
「お前がここで食えば、少なくともお嬢さんは悲しまない」
言いたいことはわかる、ここで彼が食べたことにして自分が食べてしまえばフェンには真実は伝わらない
彼女のことを想えば正解ではあるだろう、ただ
「……………………」
「いいだろ、お前が損するわけじゃなし」
少し考え、可愛らしい封に包まれたクッキーを受け取る
その対応に満足したのか、ストレイドはソファに背中を預け寛ぎだす
「ねえ、ストレイド」
「……どうした?」
そんな彼に寄りかかる
「お願いがあるのだけど」
「なんだ、いやにしおらしいな」
特別何をするでなく警戒した目つきで見てくる
「ちょっと、ちょっとの間だけでいいの」
わざと顔を近づける、お互いの息が吹きかかるほど近く
彼が少し動けば簡単に唇を塞げそうな距離、かなり危険な行為をしている
その様子に何かを察したのか
「……なんだよ」
どこか観念したように言ってくる
「あら、素直なのね」
「何をしようとしてるか、なんとなく理解した」
「そう、なら、目を閉じてくれるかしら」
優しく、彼の耳元で囁く
彼は言われた通り目をつむる
「じゃあ、はい♪」
「……………………」
そして軽く口を開ける
その中に封から出しておいたクッキーを放り込む
「……あまい」
「そういうものだから」
意外と抵抗せずに受け入れる
「あなた、結局女の子には甘いのね」
「まあ、男なんてそんなもんさ」
さっきはああ言っていたが彼も気は進まなかったのだろう
普段からよく話している間柄の様だった、彼が彼女を気に入っているのは真面目な姿勢が可愛いから
「どう? 年下の子からのプレゼントの味は」
「己の甘さが体現したかのようだ、気分が悪い」
「そ、なら教訓にしなさい」
「へいへい」
彼がフェンにちょっかいを出すのは彼女があまり詰めすぎないように、といった所か
やり方はともかくとして面倒見がいいのは昔から変わらない
自覚はしているのだろう、しかめっ面で口に放られるクッキーを平らげていく
「お前はそういう所、アイツよりちゃっかりしてるな」
「そう、ありがとう」
「まったく……」
クッキーの袋が空になる
これで誰も負い目はないだろう、贈り物は収まるところに収まった
彼が吐きださずに完食したのを確認し隣に座り直す
「……喉乾くな、これ」
「自分でいれなさい」
「面倒くせえ」
口元を手で拭い今度こそ寛ぎだす
その顔は少し、柔らかい
「なんだかんだ美味しかったのね」
「そうでもない」
「ふーん」
甘いのが嫌いなのは事実だろう、でなければあんな策は考えない
だけど、多少機嫌が良くなったのは
「誕生日を祝ってくれる、意外と悪くないんじゃない?」
「……そうだな」
善意を向けられていることに気が付いたから
普段から人との関わりを彼は避けている
それは、彼の立場が原因だろう、ドクターが呻いていた
どうにも味方と断言してくれない、と
彼はここにはただの傭兵としてきている
ロドスに雇われたのではなく、個人として
そこに在るのは黒い鳥としての彼が彼自身に課した役割
本来、馴れあうつもりはない
リスカム曰く、そんな感じとの事
「本当、大きく出たわね……」
「何の事か、わからんな」
世界の敵になる、それが彼の目指す道
その結果に次いで生まれる可能性を見出すために彼が見つけた外道
「辛いわね」
「お前には関係ない」
いつか、彼に起きた出来事が関係しているという
その全貌は、誰にも話していない
彼女も少ししか聞かされていない
わかっているのは、不条理に見舞われた、たったそれだけ
隣で寛ぐ男を見る
黒い髪に、紅い目、耳も羽も、輪っかもない
どの人種か判別できない男
その表情は、どこか虚しく見える
「ここは、あなたのお眼鏡に適ってるかしら」
「さあな、少なくとも、
「そう、それはよかった」
どうせならそのまま居ついてくれればいいのに
だけどその気はないのだろう、渡り続ける事こそ彼の在り方だと聞かされた
邪魔はしてはいけない、自由に飛んでもらわなければいけない
それが、かつて彼の隣に立っていた少女の答えだった
「…………フフ」
「なんだ、気味が悪い」
よく思いきれたものだ、彼も、彼女も
いつかここからいなくなる、それがはっきりしていても尚、未練を残そうとしない
強い繋がりがそうさせるのか、それとも、もっと大事な、二人にしか見えない物があるのか
「ねえ、ストレイド」
返事はない、だが視線は向けてくる
何を言い出すのか、待っているんだろう
なら、言わせてもらおう
スカートのポケットからあるものを取り出す
「お誕生日、おめでとう」
「……ふん」
彼の手を取り強引に握らせる
「どいつもこいつも無駄な金を使いやがって、自分の為に使えよ」
渡されたそれを眺め始める
そこにはライターがあった
「いいじゃない、誰かを想って贈る為なら出せるものは出すものよ」
「わからんな、俺には」
ライターにはとある彫刻が彫られている
「ほら、あなたにピッタリ」
「そうだな」
黒い翼を広げる大柄な鳥
渡り鴉、そう呼ばれる生き物
「ま、アリじゃないか」
「素直にお礼を言ったらどう?」
受け取ったそれを上着のポケットに仕舞う
日の目を見ることはあるだろうか、彼が使ってくれることを祈ろう
立ち上がる、そのまま出口に向かって歩く
「なんだ、もうお暇か」
「ええ、この後バニラ達と一緒にロドスの年越しパーティに参加しようって約束してるの」
「そうか、楽しんで来い」
「あなたも来ていいのよ」
「遠慮する」
「そう、だと思った」
扉を開いて部屋を出る
「……ストレイド」
「なんだ」
「一つ、我儘を言っていいかしら」
「言ってみろ」
最後に、言い残していく
「お願いだから、長生きしてね」
………………………………
「ストレイドー!!」
「飛びこむな、危ないだろ」
応接室の扉を開ける、ソファに転がる彼に飛びつく
「えへへー」
「まったく、少しは遠慮を覚えろ」
「はーい!」
「返事だけはいっちょ前だな」
そのまま彼の胸に顔をこすりつける
特別意味はない、ただ落ち付くのだ
まだここに彼がいるという現実を認識できて
「ほら、剥がれろ、邪魔だ」
「はーい」
彼が自分を退かして起き上がる
そのまま膝に座ってみる
「どうした、上機嫌だな」
「そりゃそうだよ、今日が何の日か覚えてるでしょ?」
「まあ、一応」
彼に体重を預ける、その体は暖かい
「わたしたちの誕生日!」
「正確には、違う」
「いいのー、今日は、リンクスの、誕生日なのー」
「そうかい」
彼は自分の頭に手を置き、軽く撫でてくる
その感触が気持ちよくて、つい目を細めてしまう
「相変わらず猫みたいだな」
「いいの、これで」
そのまま何も言わず撫で続けてくれる
このまま彼の膝の上で寝こけても構わないが今日は大事な話がある
彼の手を掴み退かす
「どうした、珍しい」
「あのね、渡したいものがあるの」
「まあ、だろうな」
そうしてずっと握っていたものを渡す
「お前もか、物好きどもめ」
「いいでしょ、これはわたしがしたいからしてるんだから」
「はいはい」
少し前、彼の為に買ってきたちょっとした贈り物
「懐中時計か、御洒落だな」
「でしょー、色々考えたんだ」
「ふーん」
懐中時計、蓋には月の印象が彫られている
「満月か、俺は月光なぞ持ってはないぞ」
「知ってるよ、でも月に由来するものはあるでしょ?」
「まあ、アナザーがあるが、あれはどっちかって言うと新月だ」
「でも月だよ」
「黒く塗りつぶせってか?」
「ダメ―、そのままー」
彼が時計を眺める様子を見ながら抱き着いてみる
「随分甘えるな」
「いいのー」
「よくない、邪魔だ」
口ではそう言うが無理やり退かしにはかからない
いつも通り、彼は優しく接してくれる
いつかの日常に近い暖かさを流し込んでくれる
「ぎゅ~」
「誰だ、お前をここまで甘やかすのは」
「リスカムとフランカ―」
「だろうさ」
そうして時計を仕舞いこむ、受け取ってくれたという事は気に入ってくれたらしい
その内、彼らに指摘されるんだろう、見慣れない時計を覗く彼を見て、誰から贈られた、とか
それで適当にはぐらかすのだ、お前達には関係ないと、そう言って
「楽しみだなー」
「何が」
「みんなが時計の事に反応するの」
「意地悪だな、勘違いさせるのが狙いか」
「うん」
「……誰に似たんだ、この意地悪な趣向」
いったい誰だろうか、きっと近くで嘆息してる人だと思う
「まあいい、で、用件は終わりか?」
「うん、わたしからは、おわり」
「ほう、お前からは、か」
「そう、わたしから、は」
少しあくどく笑ってみる、彼がいつもしている様に
ちょっと圧をかけつつ、だけど凄まぬように
「いいね、やるようになった」
「ふふん、でしょ?」
彼は満足した笑みを浮かべる、そして
「だがお前へのプレゼントはない」
「だよねー……」
ある意味期待通りの発言を返してくれた
「悪いな、元より今日は来るつもりはなかったんだ」
「知ってる、今日はガレージにローチないもんね」
彼は普段、車で移動する
それはここに来るときも変わらない、基本はローチを乗り回す
理由は
『エンジン音が心地いい』
とのこと
車が好きと、いつか言っていた気がする、ネーミングセンスが死んでいるが
なんでも都合がいいとか、愛着も湧いてくるとか
「はあ、これで結構、期待してたのに……」
「誕生日二つあるんだ、片っぽは放っとかれても仕方ないだろ」
「そうだけどさー」
そんな彼だ、あの車を放置することはあまりない
多分、今日もどこかに隠しているだろう、もしかしたらネストの誰かが見張ってるのかもしれない
そこまで考えて思い出す
「ネストのみんなはいいの?」
今日は彼の誕生日、それは彼らも知っている
特に彼と親交のある初期の面子は連絡しているだろう、あとはリンゴ少年とか、その辺りが
「いいんだよ、あいつらの相手してたら一日無駄にしちまう」
どうやら事前に策をとったらしい、ということは単純に逃げてきたのだろう
いつかのように飛んでここに来たのだ、緊急避難先ぐらいにはロドスを気に入っているらしい
なら、まだ彼とは会えるだろう
「そっかー」
「そうだ、ま、気にするな」
そのまましばらくくっ付いている
「……ねえ、ストレイド」
「おう、なんだ」
「いつか、いつかだよ」
「ああ」
「あなたの名前が取り戻せたら、その時はどうするの?」
「名前?」
「そう、あなたの、本当の名前」
こちらの質問に少し考え込む
彼の名前、いつか、誰かが名付けたはずの、彼の本名
それが何か、誰にもわかっていない
自分も、ネストも、フランカも、リスカムも
彼の名を知る者は、今のところ存在していない
「別に、いまさら気にしなくていいだろ」
彼は特別気にしてはいない、だけど正直、残酷だと思う
親は子に名をつけるとき、必ず願いを託すのだと、そう言っていた
それは彼とて例外ではない、彼には託された願いがあるはずなのだ
今はいない誰かが、彼を想って付けた名が
「特別俺の名前がわからなくて困ってる奴はいない」
「困るよ、少なくともわたしが」
多分、ほとんど諦めているんだろう
彼だって一度は疑問に思ったはずだ、自分がどこで生まれたか
自分がどうして、独りになってしまったか
「いいじゃないか、そもそも名前なんか必要ないぐらいには考えてたんだし」
「だけど、だけどさ、怖くない?」
「何が」
きっと、厳しい現実がそこにはあるんだろう
いつかの自分に起きたように、けして優しくはない結果があるはずだ
「自分がどうしてここにいる、とか、そういうことがわからないと怖いと思うの」
彼は恐らく、調べはしたのだろう
すっきりしないのが嫌だ、そう言うぐらいには几帳面な節がある
解決できない事象を解決できないからで放っておくほど杜撰ではない
だけどそれでも、はっきりしなかったのかもしれない
「恐ろしいと、思うんだ……」
彼は自分で決めた名がある、だからまだ耐えられるのかもしれない
だけど、これは怯えていい事象なのだ
いつかの自分のように、誰とも、なんの繋がりのないという現実がはっきりしている
それが無名という、一種の病状
そこにあるのは酷く暗く、寒くて、空っぽな心象
温もりなど感じる余裕のない、周りから隔絶された状態
彼は今、そういう状況なのだ
「……ねえ、ストレイド」
「なんだ」
「ストレイドは、怖くないの?」
彼はいつか、名をくれた
そこにあったのは同情ではなく、哀れみでもなく
確かな善意が存在した
「なんのことはない、名無しなど、今に始まったことじゃないからな」
そしてそれは、同じような状況だから気づけたはずなのだ
名を持たぬ者同士だから、一時的な治療薬を用意できた、対策を知っていた
その薬は、前例を知らなければ作ることすらままならない
「……だけど、さ、今は平気でも、いつか壊れちゃうと思うの」
「そうだな」
彼は理解している、これがどれだけの問題か
きっと鉱石病より恐ろしい、より無残な死に近づく病気だと
「無理は、してないんだよ、ね?」
「していない」
「ホントに?」
「ああ、ホントだ」
彼は普段と変わらぬ顔をしている
その奥底に何があるかは、今の自分では見切れない
「……そう」
見切ることなど、できはしないだろう
「……わかった」
「? 何を」
彼は弱音を吐くつもりはない、そんなことはわかっている
こんな問答、最初から無意味だったことを忘れていた
「ねえストレイド」
「なんだよ、改まって」
彼に対してできることはいつも一つしかないではないか
ならば、そうすればいい、いつかと同じように示せばいい
「わたしね、夢があるの」
「ほう、どんな」
「いつか叶えたい、そんな夢」
答えを示す、それが彼とわたしの、ただ一つの関係だ
「いつか、あなたの名前を取り戻す」
「そうか」
「それで、呼んであげるの」
これから先、けして変わらない彼との関係
あの日から繋いでくれている、小さな繋がり
「きっといつか、呼んであげる」
「そうかい、期待してる」
少し変わった、親子関係、わたしが追い縋るかぎりは切れない絆
「うん、だから、待っててね」
いつかきっと、本物に迫れるように
………………………………
「さて、彼はいますかね」
いつの間にか暗くなった甲板に出る
艦内は既に年越しモードに入っている、まだ数時間はあるというのに
「寒いですね、ここは」
独り言を呟きながら周りを見渡す
先ほど応接室を見た時は誰もいなかった、もう消えてしまったのかと思ったが恐らくそれはないだろう
手に握っている端末を見る、そこには変わらず通知が来ている
朝からずっと鳴りっぱなしだった、なんだかんだで必要な人脈は作っているらしい
効率とか仕事の都合だろうが悪いことではない、特に彼にとっては
人影が見当たらぬ甲板を見て周る、すると
「何やってんだ、リスカム」
「あ」
ガードレールに寄りかかっている男がいた
「捜しましたよ、まったく」
「それは悪かったな、ここの奴らが意外とうるさかったもんでね」
うるさかった、とは今日の日付の事だろう
彼の事は結構な人数が知っている、それもそうだ、初日にあんな追いかけっこしたんだから
あれのせいでロドス内での知名度はそこそこある、顔を見て名前が思いつくぐらいには
「それで誰が来ました?」
彼の隣に同じように寄りかかる、金属が軽くきしむ音がする
いつかのように同じ景色を眺め始める
「色々」
「例えば?」
「フランカ」
「後は」
「チビ」
「他」
「ジェシカと金ヴルちゃん」
「何を貰ったんです?」
「ジェシカからは銃のアタッチメント、金ヴルちゃんはよくわからんムシのプロマイド」
「プロマイド?」
「らしいぞ、金ヴルちゃん曰く」
応接室に現れた客人を並べていく
その中には身近な人物も交じっている
「他には、あの猫のお嬢さん、とか」
「アーミヤさんも行ってきた、と話していましたね」
「ああ、どいつもこいつも変わってるな、ここの奴らは」
そう言って煙草を咥える、懐からライターを取り出す
鳥の彫刻の入ったライター、誰かが真剣な目で選んでいた気がする
「何か悩み事ですか?」
「いや、こいつらの使い心地を確かめてみようと思ってね」
今度は懐中時計を取り出す、蓋を開き時刻を確かめる
年明けまではまだ時間がある、ロドスの人々はパーティに夢中だろうか
「それで、使った感じは」
「悪くはない、使ってやるさ」
「上から目線ですね、貰った側なのに」
「寄越せなどとは一度も言っていない」
時計を仕舞い煙草をふかし始める
その様子をなんとなく眺めている
「なあ、リスカム」
「なんです」
「これ、後で渡しといてくれ」
すると、菓子を一つ取り出し手渡してくる
どこかの会社の製品だったか、チョコバーの類だったはず
「誰に渡すんです?」
「チビ、お返しがないことにご立腹だったんでな」
「自分で渡せばいいのに」
「んな事したらそのまま件のパーティに持ってかれちまう」
「でしょうね」
了承して菓子を受け取る
お返しとはプレゼントの事だろう、彼女も一応誕生日なのだ
リンクスとして、彼と共に祝えるようにと決めたもう一つの誕生日
「まったく、わざわざ祝う理由などないだろうに」
煙を吐きだしながら不満げに言う
その割には、口元は笑っている
「いいじゃないですか、大切な人の大切な日なんです、祝って当然ですよ」
「ほう、つまりはフランカとクランタのお嬢さんは脈アリという事か」
「そういうことではありません」
これで結構、嬉しかったのかもしれない
そうでなければこうも口が軽いわけがない
「しかし驚きました、あなた、誕生日あったんですね」
ついでに聞いてみる
昔、彼がBSWにいた時、今日が誕生日などとは聞かされたことがなかった
「一応、適当に決めといたんだ」
「決めた、ですか」
「ああ、不便だろ、いつ年を食ったかわからないと」
「そうですか……」
正しい日付ではないのだろう、そもそも彼自身の出生がはっきりしてないのかもしれない
恐らくの出生地はアタリがついてるが情報があまりなかったのか
それでとりあえずの日付は決めた、といった所か
「まあ、無いよりはいいですが」
「ああ、ただちょっとした弊害が起きてるがな」
「弊害、ですか」
そう言う彼に手に持っていたものを突きつける
「なんだ、あいつらまだ連絡をあきらめないのか」
その画面は発光し、小さく振動を続けている
「出てあげればいいじゃないですか、知り合いなんでしょう?」
「まあ、そうなんだが」
それを受け取り画面を見つめる
そこには五十を超える人の名が表示されている
「正直、ここまで掛かってくるとは思ってませんでした」
「そうだな、こうも多くの馬鹿どもを抱えることになるとは思わなかった」
端末の電源を切る、出るつもりはないらしい
そのまま煙草を吸い潰しにかかる
その様子に何も言わずに傍に居ることにする
「……まったく、今日は厄日だ」
「そうですか」
お互い無言で景色を眺め続ける
「…………はあ」
そして、その内彼が何かに観念する
「わかったよ、行きゃあいいんだろ」
「ええ、そうしてください」
煙草を投げ捨て艦内へと向かって行く
その後ろについていく
「こんな寒空の下で珍妙な抗議をしやがって」
「いいじゃないですか、皆さん喜びますよ」
「せめて一言言ったらどうだ、中の騒ぎに混ざらないかって」
「言うよりはこうした方が効果的かと思いまして」
「悪い育ち方しやがって、どいつもこいつも……」
一人文句を言いながら歩く彼を見て、あることを思い出す
「そうだ、一ついいでしょうか」
「ん、なんだ」
小さな小包を取り出し、彼に握らせる
「誕生日、おめでとうございます」
ナイトメア が 公開堕ち しましたね
引け(威圧)
タグは 術師 遠距離 火力 減速 治療
二重人格のちょっと情緒不安定な可愛い女子高生女子大生。普段は専属の医師にかかっているヴィクトリア出身のフェリーンの女の子。表はおとなしい性格の殺生が苦手なオペレーター、裏は不穏な言葉が目立つドクター殺しにかかってるある意味ツンデレ。そんな彼女はロドスのオリジウムを狙ってるけどなんだかんだで阻止されているっぽい。諦めてはいないようだが何度もトライしてる姿を想像すると中々萌える。彼女は一部のドクターを暗く優しく温かい深淵に包んで安眠させてくれる。彼女は我らの闇であり――
『次回以降、本文に関係ない事項を記すことへの制限を掛けさせていただきます。理由は、お分かりですね? 今度は客観的、かつ簡略的に本文に関する内容を後書きに書いてください』
ナイトメア、引こ?
アークナイツの勢力診断、ロドスしか出てこねえ……(何度もやり直した馬鹿者)