先日、田中くんと誤解と解消の一悶着があった。あの日ははからずも、私と田中くんの関係に変化をもたらす出来事となった。
「でもなぁ」
その変化は決していい物とは言いえない。なぜなら──。
「あ、おはよ白石さんおやすみ」
朝会えば素早く挨拶して、自分の席で速攻居眠り。
「授業のノート? 大丈夫やったから」
授業中寝ずにきっちりと、ノートを取って。
「じゃあね白石さんまた明日」
帰りに話し欠けようとしたら、そそくさと帰られてしまう。
これはあれかな、避けられてるってやつなのかな……。
いやいや、そうと決まったわけじゃない。田中くんが時折おかしくなるのは今に始まったことじゃない。きっとあれだ、また虫歯が痛くて喋りたくないとかそんな感じだ。
けれど次の日もその次の日も変わらなかった。
「なんでなのぉ……」
田中くんが帰ったあと、一人で机に突っ伏してため息を漏らす。
「嫌われちゃったのかな……」
あの時は許してくれたけどやっぱり気が変って嫌になったとか、田中くんならなさそうでありそうだ。
「どうしたの白石? ため息なんか吐いて。全米が泣くよ?」
「そんな軽い全米は滅んでいいよ。きっちゃん」
突っ伏していた顔を上げると私の机の前に、ボーイッシュな友だちのきっちゃんが立っていた。
「で、どったの?」
直球に聞いてくるきっちゃん。余計なことは言わずに、本題だけ聞こうとしてくれる。
「それがさ……」
そして私はそんな優しいきっちゃんに甘えることにした。
「なるほど……急に仲良くなったと思ったらよそよそしくなったと……」
「うん、やっぱり嫌われちゃったのかな」
「確認だけど、その相手って女の子じゃないよね?」
「なんでそうなるの!?」
「いやー、それどう考えても好き避けじゃないかなって。白石は経験ない? かっこいい人とか優しい人に近づきにくかったり、逃げちゃったりとか」
「経験はないけどわからなくはないよ」
女の子特有の好きになった相手に対してとってしまう行動。
確かにこの条件だときっちゃんの思う相手が女の子になるのも頷ける。男の子にあるのかは知らないけど。
「でもそれじゃ相手は私のこと好きってことになるよ。確かに距離は縮んだかもしれないけど、それはないと思うなぁ」
田中くんの性格を考えたら余計にそうだよね。まあ私の想い人が田中くんということを話していないきっちゃんに分かってもらうのは無理だろうけど。
「でも脈ありだとおもうけどなぁ。田中」
「そうなのかなぁ。自信ないや」
「ははは。人気者の白石も自分の恋愛には弱いか」
「もー、からかわないでよ。」
「ごめんごめん」
二人であははと笑い合う。こういう時の友だちってほんとに頼りになるなぁ。
「……きっちゃん、さっきなんて言った?」
「ん? 私の友だちが恋愛下手女子だけどどうしたらいい? って話?」
「そんなラノベみたいな話してないよっ。さ、さっき、わわわ、私の好きな人が、ち、ちゃなかくんって……」
「とりあえず落ち着きなよ」
これが落ち着いていられるか。
「な、なななんでっ。言ってないはずなのに」
「いや、バレバレだし?」
「……本日は閉店します」
落ち込む私を放置してきっちゃんはあっけらかんと話しを続ける。
「まあ決めてはこの前の修学旅行決めだよね。あんなにイチャラブされて気づくなって方が無理だよ」
今までずっとバレてないとおもってたのに……。
……みんなが知っている……?
「ま、まって。みんなってだれ?」
「みんなはみんなだよ。少なくともクラスの中で気づいていないのは田中とか志村辺りくらいじゃないかな? 白石ファンクラブはなんとか理由をこじつけて否定しようとしてるみたいだけどね」
私の恋愛は漫画の考察かなにかなのだろうか。
「……もう死にたい」
「生きろそなたは美しい」
自分の事をそんなにかわいいと思えない私は死ぬべきか。
「でもそんなに伝わってると空気になって、やっぱり田中くんも分かるよね……。だから避けられてたんだ。あ、あは、あはははは」
「だからそれこそ好き避けでしょうに」
「……」
正直そうだったらいいなとは思うけれど、私は昔と変わらない。自分に自信が持てない。
「なんなら本人に聞けばいいよ」
「なに言ってんの」
「うわあ、その顔よそでしちゃだめだよ」
いけない、ダークサイドに落ちかけてる気がする。
「べつに告りにいけって言ってんじゃないよ。ちょっとジャブ入れるだけ。反応はきっちゃん様が直接見て確かめてあげよう」
普段ならここで断っていたかもしれない。でもそれじゃあ今までどころか、マイナスでしかない。
「うん。やってみるよ」
「お、決断早いね。かっくい♪」
私の返事にきっちゃんはニッと笑う。かっこいいのはどっちだか。
「じゃあ実行は修学旅行だね~」
「え、そ、そんな先なの?」
てっきり明日にでもいくものとばかり。
「んー、もし本当に好き避けならちょっと時間空けた方がいいと思うよ。仮にいまから行ってこれ以上拗れたら大変だよ? 修学旅行」
「あー……」
良くない結果が簡単に想像できる。
「だから、その時までちょっと距離を開けるべきだよね。近くなったら離れるに限る!」
「分かったよ、きっちゃん! 私頑張ってみる!」
「応援してるよ。じゃあ私は部活に戻るね」
そう言って、颯爽と教室を出て行く彼女に私は深くお礼を申し上げるのでした。
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