スランプにかかっていました。小説の形を保てないほどに……。
今は徐々に回復してきています。
ペース上げるとか調子に乗った罰ですね、反省してます。
タイトル『そのいちは』、漢字で書くと罫線(─)かどうか分かりにくいのでひらがなにしました。誤字ではありません。
「田中くん! 見えてきたよ、牧場!」
「ん……もう?」
肩を揺すられて、目を開けるとそこには決して自分の部屋や太田の家でさえ見ることのできない光景が広がっていた。同時に自分の太田家の好きさにびっくりする。
周囲に建物がほとんどないためか、空が本来の姿であるように広々としている。少し視線を下ろせば綺麗な草原が広がっている。
「もうちょっと寝かせて……」
俺は瞳に景色を一瞬だけ入れて、すぐにまぶた裏の暗闇に逃げ込む。
「えぇ……はやいよ……」
気候がいいことは最高のお昼寝日和なり。
「こら田中! 白石さんに面倒かけるな!」
「そーだそーだ! 起きろ田中ー!」
俺が座っているバスの座席をギコギコと揺らす志村と加藤。目覚めたばかりで俺の座ってない首もガクガクと動く。こいつら……。
「ふ、二人とも、無理に起こしちゃかわいそうだよ。まだ降りるまでは時間あるから……」
「いーや! どうせ降りてもコイツは同じ事言うんだよ。太田がいればそれでいいんだけど」
「そ、その時は私が担ぐから!」
「いやいやいや、アレは太田専用だからね?」
「でもさ志村、見たくね? 女子に担がれている田中。で、それを写メって太田に送るの」
「……お前、天才か?」
人が寝ているのをいいことに、なんかすごく失礼な会話がされている。反論はできないけど。
仕方ない、身の安全の為に起きよう。
「あ、起きた」
「ようやく起きたか! 寝ぼすけめ!」
後ろを振り向けばドヤ顔の志村が目に入る。
「志村」
「なんだ? 起こしてやった礼なら夜のポテチでいいぞ」
「今日の志村の枕はないと思え」
「なにその嫌がらせ!? じ、冗談じゃないか田中!」
やいやい言う声を無視して俺は正面に座り直す。
俺が耐えがたい苦痛、枕無し地獄だ。おもしろおかしく人の睡眠を妨害した罪を思い知れ。
「ご、ごめんね田中くん」
「なんで白石さんが謝るの。起こしてくれてありがとう」
隣に座っていた白石さんに軽くお礼を言う。
「こういうとき、太田だと勝手に移動してくれるんだけど、これはこれでいいね」
バスの車窓から見える景色はさっきと変わらず綺麗なままだ。志村への恨みが少し浄化された。
「そ、そっか! それならよかったよ!」
「どうしたの?」
彼女は反対側の窓へと目を向けている。こっちの方が近くて見やすいのに、なにか面白いものでもあったのかな。
「ていうか白石さん、今日ポニーテールなんだね」
「うん。今日は牛の乳搾りもやるらしいから、先に括っちゃった」
「……そっか」
「田中くん?」
咄嗟に窓へと目を逃がす。目の前であまりじろじろ見てしまうのは良くない。
でも女の子の珍しいおしゃれをスルーするのもまた、良くないと思う。
「その……にあって「おー!白石さんポニテにしてる! すっげーかわいいじゃん!」
後ろから志村の声が響く。背もたれにのしかかった衝撃でまた首がガクガクする。まだ座ってないのか。
「志村」
「田中もこんなかわいい子がかわいい髪型して隣にいるってのに、気が使えない奴だな~」
「今日布団で眠れると思うなよ」
「丸裸で寝ろと!?」
「え、お前寝るとき全裸なの?」
志村の寝間着事情を無視するかのごとく、バスは目的地へと着いた。
感想、誤字脱字報告、あればよろしくお願いします。