昨日、小説の情報を覗いたら、投票やお気に入り登録がぐぐっと増えててびっくりしました。
スランプ明けにこれは本当に嬉しいです。応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。
ちなみに評価のバーに赤いのがつくようになったんですよね。
いつもはアレを見て、いいなぁと思っていましたが、まさか僕の所にも来てくれるなんて(語彙力)
これからも精進続けて参ります。では。
「ねえ、これって夢なのかな」
「これが夢なんだとしたら俺は自分の夢力の無さを呪うよ」
「どうして、こんなことになっちゃったのかなぁ」
「だれの責任かと言えば、俺だね」
白石さんの問いかけに俺は自虐的に答える。彼女が責める意味で言っているのではないと分かっていながらも、そう言わざるを得ない。
まるでけだるげのユートピアだった景色が悲惨な姿に変わり果ててしまったのだから。
「世紀末の人の絶望もこんな感じなのかな」
「あはは……」
もちろん俺たちのいる世界が壊れたとかそんなことはない。場所はさっきと変わらない北海道の牧場。ただ、目の前にはバケツどころか湯釜をひっくり返したような大雨が降っているだけだ。
ついでに乗ってきたはずのバスも、志村も加藤も教師でさえ、いない。
すぶ濡れの俺と白石さん二人だけで小一時間雨宿りをしているだけ。絶望するには、十分だよね?
どうしてこうなったかと問われるなら、やっぱり俺が原因なわけで。
一時間ほど前
「乳搾りをしたい人は集まってくださーい。全員にしてもらうことはできないので──」
牧場に着いた俺たちは牧場の説明と施設の中をザックリと案内されて、メインイベントの乳搾りの今に至る。
「田中くん、大丈夫?」
「……たぶん」
たぶん大丈夫じゃない。飛行機の集合時間に遅れないために莉乃に五時間くらいはやく起こされて(それでもギリギリだった)飛行機のめんどくさい手続きやらバスへの乗り込み、極めつけは止まったり歩いたりするシャトルランに似たこの施設内の移動。もう膝が笑ってきた。
「顔色良くないよ、ちょっと休もうっ。 せんせー! 田中くんバスで酔っちゃったみたいなんで休憩してきまーす!」
おおざっぱな報告をして俺と白石さんはクラスの群れから離れていく。
「……あ、うん。りょうかい……」
手をユラユラ振って応える担任の教師も顔色を悪くして壁にもたれかかっていた。アンタもか。
あっちのほうがやばそうだけど、引率の先生が休んでいるわけにはいかないんだろう。いつものキリッとした姿はなくても、そこには踏ん張る大人の姿があった。
「先生ってすごいね」
「ほんと、尊敬する」
施設を出てすぐ隣に、干し草が大量に積まれた場所に腰を下ろす。
陽気な日差しと草の匂い。そして日陰。ここにある全てのものが俺を落ち着かせてくれる。
「白石さん、ありがと。もう大丈夫だからみんなのところに戻って」
俺に付き合ったせいでせっかくの体験ができないなんて、申し訳ないどころじゃない。
しかし彼女はフルフルと首を振る。
「別にいいよ。中学の時も来たんだ、北海道」
ここじゃないけどね。と付け足す白石さん。
「あれ、牛さんのストレスにならないように人数制限あるから、経験者の私は譲らないと」
「そっか」
なんて損な性格なのだろう。白石さん、いい人通り越して聖人かもしれない。
「それに好きだから」
「……は?」
時間が止まったような気がした。
「好きなんだ~。この北海道の空気」
「─────────あ、言ってたね」
たっぷりと考えて理解する。
びっくりした、危うく変な勘違いをするところだった。
この人は世話好きというだけで、俺が特別だとかそんなことはないんだから。
でも他の男子なら絶対に勘違いしてただろうな。俺で良かったね、白石さん。
「えいっ」
彼女は背中を干し草に預けると、んーっ! と伸びをする。
思いっきり反り上がるもんだから、普段から大きいアレがさらに強調される。どんだけ無防備なの……。
「わ、これ気持ちいいね」
視線を悟られないように、彼女のマネをして干し草に身を預ける。
「なにこの最高感……」
場を和ませる程度の気持ちでやってみたら想像以上だった。
草がふんわりと俺の身体を支えてくれて、優しい匂いが鼻腔をくすぐる。この場所はまさしく俺にとってのオアシス。メッカ。アルカディア。
これが北海道の実力というやつか。ごめん、舐めてたよ北海道。
「あはは、田中くんの顔草まみれ」
「……ほんとだ」
顔を触ると草がたくさんついてるのが分かる。
でもいちいち取るのもめんどくさい。
「このまま草と一体化しちゃおうかな」
そして俺は春の一部になるのだ。意味わかんない。
「牛さんに食べられちゃうよ?」
「そのとき、は、そのとき──」
春の陽気に当てられ、疲労が和らいだ安息感からか、とんでもない睡魔が襲ってくる。
いけないとは分かりつつも俺の意識は草よりも簡単に刈り取られてしまった。
白石side
「ふう……」
田中くんが寝たのを確認してため息をつき、彼を起こさないように静かに心の中で叫ぶ。
さりげなく告っちゃったああああああ!!
はず! はずかしいよ私! なんであなたは北海道が絡むといろんなこと忘れちゃうわけ!? そんなに私の事が憎いのか!? まあ私なんだけど!!
「ほんとよかったあ、すぐにごまかせて」
彼は見かけ通り鈍感だし、前に恋愛に興味ないって言ってたから、たぶんそっちに結びつかなかったんだろう。 それはつまり
「異性として見られてないってことだよね、あはは……」
自分でごまかしたくせに自分で自虐する面倒くさい私はどうすればいいでしょうか……。
「ほんと綺麗な顔してるなぁ」
私の心を知る由もない彼はすぅすぅと可愛らしい寝息を立ている。
女の子でさえ羨む白い肌に、小さい顔のパーツに反して大きい目は見惚れて止まない。
「この寝顔、すごく安心する」
でも、ドキドキもする。
「なんか私も眠くなってきた……」
そういえば、近しい人が寝てると自分も眠たく、なるんだっけ……。
「すぅ……」
今が修学旅行の課外授業中なんて事は一切忘れて私も眠りに落ちた。
巨大な暗雲が近づいている事もに気づかずに。
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