だるいからしゃべらないなんて人は存外多いかと思いますが、そういう人ほどいっぱい、色んなことを考えてたりしますよね。すごいです。
僕なんてほとんど一つのことしか考えてないというのに(恥ずかしいので言えません)
あのあと白石さんの蘇生に成功して普通に授業を受けた。
俺はいつもどおり放課後まで寝てたのは言うまでもなく。
「田中くん、お昼起こしてくれてありがとう」
「きにしないで、俺いつも助けてもらってるし」
わざわざ俺の席までお礼を言いに来た白石さん。顔色は悪くないし声音も明るい、大丈夫なようだ。
「そ、そう。筋肉痛はもう大丈夫?」
「だいぶなれたよ。白石さんも気絶なんかしちゃったけど本当に大丈夫なの?」
いくら大丈夫そうに見えても俺みたいに普段から眠気を抱えているならともかく、急に意識を失うってなんか怖い。
「だ、だいじょうぶ! 元気だから!」
「そっか……。ねえ白石さん」
「なに?」
「帰らないの?」
白石さんは俺の隣にいるわけだけど、今は放課後。友だちじゃないとかそんなことは言わないけど、白石さんとは放課後ずっとおしゃべりをするような仲でもない。……たまにマックに行くから仲はわるくない、はず。
「うん、でも」
この状況に彼女も違和感はあるようだ。なにか理由があるんだろうか。
「田中くん、いつこっちを向いてくれるかなって」
「……」
気づかずに去ってくれればいいものを。と内心毒づく。
俺は白石さんが話しかけてきてから一度も彼女の方をみていない。それが失礼とは分かっているのだけれど、こっちにだって事情がある。
「もしかして、昼間の……?」
『えっちなこと、しちゃうよ?』
あのおかしなセリフが頭に残って、変に意識してしまう。ていうかなんで白石さんの方が平気そうなの……。
そして悶々とした事情を抱える俺と目を合わせる事を諦めたくない白石さんは一緒に帰ることになった。
太田は特売とかで先に帰ってしまったらしく、やむなく二人となった。おのれ太田……。
「……」
「……」
校舎を出てからお互いずっと無言。俺としてはありがたいけど、いつも明るい人が黙ってしまうとそれはそれでやりにくい。ていうか申し訳ない。
「そういえば、白石さんも家こっちなんだね?」
「う、うん。さっき地図アプリ見たらけっこう近所だったよ」
「そか」
質問はできても俺に気の利いたレスポンスとかは期待しないでほしい。
なので頑張って口を開こうとすると余計な事をしゃべったりする。
「昼間に俺が起きなかったらなにしてたの?」
「ふぁ!?」
聞きたい気持ちは正直あった。俺だって思春期の男子。
だからっていま聞くことでは絶対ないよね……。
「ごめん、忘れてください。ほんとにごめんなさい」
なにやってんだ俺……。普段性欲とか睡眠欲で滅多に顔を出さないくせに、こういう時に限って……。
「たっ! ……田中くんはどんなことされたい?」
「セクハラの処罰方法? できたら警察はやめてほしいかな」
「ち、ちがうよ! そ、その昼間の、ほう……」
真っ赤になる彼女の頬はきっと夕焼けのせいじゃない。こんな時まで恥ずかしさを我慢して俺に気をつかって話しを合わせてくれるなんて、本当にすごい人だ。
「男なら、白石さんみたいな……かゎ……良い子にされるんだったらなんでも嬉しいよ」
セクハラせずに、でも相手も傷つけることもなく、俺にしては珍しく気を使えたと思う。少し危なかったけど。
「じゃあ、俺こっちだから。また明日ね白石さん」
早口に別れを告げて、その場を離れる。
俺にしては珍しく、早足で。なんだかあの空気だと俺はおかしくなる一方だった……。
本当にどうしたんだろうか。睡眠が足りてないのかもしれない、帰ったらゆっくり寝よう。
少し走ったところで一つ思い出す。そういえば……。
「普通に、顔見れたな」
羞恥が羞恥で上書きされたのかな?
閲覧ありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。
少し地の文を編集しました。