田中くんはけだるげをやめない   作:早見瞬

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脱毛の広告ってウザいですよね。とくに動画のほう。


白石さんって中学までは地味で目立たないって設定でしたが、わりとテンション高めですよね。
動かない主人公より動かしやすくて楽しいです。


白石さんの暴走

 白石家

 

 放課後、私は先日みたいに田中くんを待つことはなく、足早に家に帰った。

 太田くんがいたから一緒に帰る口実を見つけることができなかったていうこともあるけど。

 どっちにしろ今日は早く帰りたくて仕方なかった。勢いよく玄関を開けて自室に逃げ込む。

 ベッドに身を投げてようやく言える。

「私のばかやろーーー!! なに!? あの演説! キモいにもほどがあるよ、ばっかじゃないのばっかじゃないの! ていうかばーーーーーーかっ!」

 

 

 田中くんには呆れられて同情票入れられるし、みんなからは生暖かい拍手が送られるし……。

「完全に痛い子じゃん……」

 ずっと一緒にいるとかとくにやばい、あたしゃストーカーかよ。

 ーーやっぱり謝っとくべきかなぁ。

『田中くん、さっきは変なこと言ってごめんなさい』

 メールを打って、気づく。これがそもそも変なことなんじゃい?

 やっぱりやめとこう。うん、気にしてないのを装うのが一番だよ。

「じゃあこのメールも削除してっと」

 指が画面に触れようとしたときだった。

 

 

「ちょっとーさっきからなに騒いでるの?」

「うひゃあ!?」

 急に部屋のドアが開かれてびっくりする。

「もー。ノックくらいしてよお母さん」

「ごめんごめん。彼氏とメール中だったか」

「そ、そんなんじゃないから!」

 お母さんはすこしずぼらな人だけど、さっぱりした性格が私はけっこう好きだ。ときどきうざったいのはどこの家も同じだと思う。

「買い物行ってくるから留守番よろしく」

「うん、行ってらっしゃい」

 ドアが閉まりメールの途中であった事を思い出す。

「……今だけは嫌いになっていいかな、お母さん」

 

 

 再び見たスマホの画面にはメッセージがしっかりと送信され、既読マークがこれでもかという証拠を提示していた。

 

 

 それから夜になるまで田中くんからの返事はなかった。

 やっちまったよ私……。なにがこのままの関係でいいだよ、自分からたたき壊してるじゃん。

「あー、消えたい」

 もう何回この言葉をつぶやいただろうか。相も変わらずスマホの着信音が鳴ることもなく……

 

 

 ピロン

 

 

「うぎゃあ!」

 鳴ったーー! どうしよ怖くて見れない! 見たくないどうしよう!

 でも見ない訳にはいかない。内容がアレ、だったら死のう。

 バッと勢いを付けてスマホを開いてメッセージアプリを開く。そこには

 

『これでアナタもモテモテ! 脱毛半額キャンペーン!』

 

「死ねえ!!」

 スマホがベッドの上で大きく跳ねる。タイミングが悪いにもほどがある。

「なにやってんだろ私……」

 数時間も同じこと考えてたらそりゃ疲れるよね。

 

 

 ピロンッ

 

 

「もー、今度はなんのキャンペーンよ……」

 スマホを拾い、ポチポチと画面をいじる。

「どうせ誰も見ていないんだし」

 公式アカウントには返信はできても相手がそれを見ることはないのだそう。

 私のストレス発散のはけ口になってもらおう。そんな邪な考えで画面を叩き、思いっきり送信ボタンをタップ!

 文面はこんな感じになった。

『うるっせえよ! ばかやろーーー!!』

 はっはっは。我ながらキャラじゃなさ過ぎて笑える一文だ。

 少しすっきりした。今夜は良く眠れそうな気がする。

 

 

 ピロンッ! ピロンッ! ピロンッ!

 

 

「こ、今度はなに!?」

 もしや企業のアカウントでも見ている人はいたの!? そして怒ったとか!? 

 とにかく内容を確認しなきゃ。田中くんのときとは違う怖さで指が震える。

 な、なんか損害賠償とか名誉毀損とか言われたらどうしよう……。

 ああ、神さまっ。数秒前の私の行動をなかった事にしてください。

 おそるおそる開いた画面にはこう記されていた。

 

 

『白石さんどうしたの?』

『おれ、なんかひどいことしたかな』

『もしかして乗っ取り?』

『大丈夫?』

 

 

 返信は全部田中くんから来ていた。今も心配のメッセージがスマホを震わせる。私も震える。

 あ、あはははは。私は信じない、信じないぞ。そんな事があってたまるもんですか。

 画面を下に軽くスクロール。過去の内容がすぐに表示される。

 

 

『田中くん、さっきは変なこと言ってごめんなさい』

 

『なんのこと?』

 

『うるっせえよ! ばかやろーーー!!』

 

 それ以降は何回見直しても文面が変わることはない。

 

 …………………………………………。うん、死のう♪




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