田中くんの一人称は『俺』ですが、性格としゃべり方からして『僕』の方が合ってるとおもうんですよね。執筆の最中に僕とする事が多々ありま……。
「俺は今日死ぬかもしれない」
「なんだ!? まさか不治の病にでもなったのか!?」
学校に向かう途中、曲がり角で偶然会った太田に昨日の話を聞いてもらうことにした。ていうか不治の病って。
「実は白石さんを怒らせちゃったみたいでさ」
「それとお前の死がどう関係するんだ? ていうかあいつが怒るところなんて想像つかないんだが」
「俺もびっくりした。昨日の夜にこんなメッセージが送られてきてさ」
スマホを開き、内容を太田に見せる。人とのやり取りを見せるのはマナー違反かもしれないけど、今は緊急事態だから仕方ない。
「田中……しっかりと謝るんだ。白石だってもしかしたら機嫌が悪かっただけかもしれない、俺も一緒に謝ってやるから」
さすが太田。持つべきは嫁だね。
「しかしこの文面では怒っているのは確かだが、なにに怒っているのかは分からないな。その後に返信はないし」
「だよね……。自分で考えろって事なのかも」
とくに思い当たる節がないってのがまた怖い。もしも無意識のところで怒らせてしまったのなら自ら気づくことは難しい。
「たしかにそうだな。怒ってる内容を自分から言いたくなんてないし、ましてや向こうは察してほしい女の子ってやつだ」
話しているうちに学校が見えてきた。
彼女に会って一体なにを話せば良いのだろうか。考えただけでお腹が苦しくなってくる。
「…………あ」
「どうした! 心当たりあるのか!?」
なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろう。俺って本当に、ばか。
「休んじゃえばいいじゃん。そうすれば色んな問題は解決して俺は寝るだけでいい」
なんという妙案。いや当たり前の選択肢だけど近すぎるために気づけなかった。灯台もと暗しってやつだ。
「明日はやその次はどうするんだ? 言っておくが引きこもりなんて友人としてさせないからな」
「……」
「空を見上げても同じだぞ。ほら、真面目な白石ならもう来ている頃だろう。一緒に行ってやるから」
次の策を弄する前に小脇に抱えられてしまう。これで退路は完全に断たれてしまった。ぐっばい、俺の人生。
「ふむ、白石はいないようだな……まだ来ていないのか?」
「なんか、すごい緊張するんだけど」
もちろん俺だって本気で死が待っているとは思っていない。けど昨晩の彼女の様子は明らかにおかしかった。これからなにが起こってもおかしくない。
「あー! なにしてるんですかー!?」
「「っ!?」」
急に呼びかかった声にびくりと背中が跳ね上がる。おそるおそる振り返るとそこには宮野さんがいた。
一瞬だれもいないかと思ったがギリギリ視界の端に頭が見えた。ふう、俺じゃなきゃ見逃してたな。
「どーしたんですか? そんなにびっくりして」
「い、いやなんでもないんだ宮野……」
胸を握り絞めて膝を震わせる太田。そういえばホラーとか苦手だっけ。
「宮野さん、白石さん見なかった?」
「自分からいくのか! 成長したな田中!」
さっきのびっくりを一度死んだものとしてカウントしたらかなり気が楽になった。もう一回死ぬのも同じだ。やだやっぱり死にたくない。
結局、宮野さんも白石さんを見ていなかった。白石さんは学級委員の仕事のために少しはやく登校している事が多かった。
そんな彼女を今日はだれも見ていないという。
「癒やしが……俺の癒やしが……」
「あの笑顔のために毎日早起きしてるのに」
クラスでは白石ロスが起き始めていた。主に男子で。
まさか、怒った勢いでグレてしまったのだろうか。そうなると俺が原因だということがバレてしまったらクラスからどんな攻撃を受けるか分かったもんじゃない。今のうちに遺書を用意しておこうかな。
「お前ら、席に着けー」
とうとう彼女が来ないまま、HRが始まる。
「気づいているとは思うが、実は今日は───」
担任が教壇に手をつき、うなだれるように全員に告げる。
「白石は熱で休みだ……」
告げられた瞬間、クラスの温度が五度ほどさがったのが分かる。みんなどんだけ白石さん好きなんだよ。
「あいつがいなきゃ、誰が私の代わりにHRしてくれるんだよぉ……」
お前もか。
ていうか風邪だったんだ、白石さん。なら昨日のメッセージはなにかの間違いの可能性があるし、返信がこないのも熱でそれどころじゃないのかもしれない。
ていうか昨日不安になりすぎてほとんど眠れなかったんだ……ねむ……。
応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。
これからも精進していきたいと思います。