最近、乃木若葉の師匠だとか一部(2525)で言われているから滅亡寸前の四国にメロンニーサンを送り付けてみたお話   作:アルクトス

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 SAOの新刊の為にユナイタル・リング編を読み直していたら、投稿が遅れたので多分初投稿です。



異常なホモ・サピエンス

 バーテックスとの二度目の戦いから早数日。

 当然のように病院を抜け出したことがバレた友奈は入院期間の延長と相成り、ようやくと退院したその翌日のことだ。

 いつも通り、丸亀城内に設立された学校に登校し、朝のHRを向かえた勇者たちは担任を務めていた大社の職員からとあることを告げられた。

 

 

「新しいセンコーが来る?」

 

 

 そう、新しい先生がこの学校に着任するというのだ。

 

 

「センコー……って、タマっち先輩……」

 

 

 いの一番に反応した球子だったが、その言葉遣いの悪さを杏に咎められる。

 「悪い悪い」などと球子が返す横では、友奈が千景にニコニコと呼び掛けていた。

 

 

「新しい先生! 気になるね、ぐんちゃん!」

 

 

「え、ええ……そうね……」

 

 

 千景としては特に気にするほどでもなかったのだが、友奈の無邪気な笑顔にあてられ、彼女にしては珍しく仄かな微笑を浮かべていた。

 またその裏では、ハッと何かに気づいた様子の若葉が隣に座るひなたに問い掛けていた。

 

 

「このタイミング……まさか、ひなた!」

 

 

「若葉ちゃんの想像通りだと思いますが、ここは楽しみにしてる皆さんのために黙っておきましょう」

 

 

 ひなたは「しーっ」と唇に指を当てる仕草をする。釣られた若葉もワイワイと盛り上がる教室内の様子に肩を竦めた。

 

 

「……そうだな」

 

 

 やがて、教室内の盛り上がりも落ち着いた頃。

 まだかまだかとの期待の視線が教室の扉に注がれる中、ガラガラと扉が引かれた。

 

 

「私だ」

 

 

「いや誰だよ!!」

 

 

 現れたのは黒のスーツの上下に緑のチーフをポケットに挿した、怜悧な印象を与えてくる……そんな男性だった。

 無論、勇者たちはそんな彼のことは知らない。それを代弁するかのように、球子が鋭く男へ突っ込んだ。

 

 

「……上里に教えられてないか?」

 

 

 怪訝そうにひなたの名前を出す、男。

 一瞬、教室内の視線がひなたに集まるが、いやいやと球子は彼に向かって叫ぶ。

 

 

「いや知らないね! アンタみたいな《いんてり》知らないね!」

 

 

 教室内の若葉とひなたを除く全員に頷かれる。

 男はようやくと自身の存在が知られていないことを知って、チョークを手に取ると黒板に自身の名前を書き出した。

 

 

「私は呉島貴虎だ。これから、君たちの授業全般を受け持つことになった」

 

 

 

 

 

 ――さて、沈黙はどのくらい続いただろうか。

 さして長くもないであろう静寂を破ったのは、唯一貴虎の存在を知っていたひなただ。

 

 

「あの……すみません?」

 

 

「なんだ、上里」

 

 

「確かに私は勇者たちへの指南役を勤めて頂きたいとお願いしましたけど、先生までお願いした訳では……」

 

 

「問題はない。高校生までなら、全教科を指導できる」

 

 

 しれっと、貴虎はひなたの質問にそう答える。

 

 

「え、えっと……」

 

 

「元の世界でだが、私は中学と高校の主要学問の教員免許を所持している」

 

 

「は、はあ……」

 

 

 教員免許というのは、小学校では全科という形で全教科を担任することが可能だが、中学校以降では専門性がますので学科ごとでの取得になると、ひなたはどこかで聞いたことがあった。

 つまり、主要科目だけといってもそれらを取得しているというのは並大抵のことでは無い。

 嘘か実か、訪ねようとする前に貴虎から先に答えを与えられた。

 

 

「一応、こちらの世界での適正試験を受けたが特に問題は無いとの事だ」

 

 

「な、なら大丈夫です」

 

 

 そもそも大社が担任することを認めた以上、能力はあるということだし、本人の弁ではこちらの世界での試験も受けたということになる。

 であるならば、そこにひなたの意思が介在する余地はない。

 

 

 

 

 

 ひなたからの質問が途絶えたことを確認した貴虎は、早速と手にしていた封筒から人数分の紙束を取りだし、宣言した。

 

 

「よし。では授業の前に君たちの学力を測るべく、軽いテストを用意した。時間はこれから50分、全員に行き渡り次第始めてくれ」

 

 

 配られ始めたのは五教科が入り交じった小テスト。

 あんまりだ、と球子は机をバンッと叩く。

 

 

「いきなりテストかよ! 普通、赴任して来たセンコーのやることって言ったら自己紹介だろ!」

 

 

 懇願するような球子の叫びだったが、貴虎は無慈悲にもテストの実施を告げる。

 

 

「採点の際に、その時間は設ける。今はテストだ」

 

 

「くっそぉーー!! 逃げらんねぇ!!」

 

 

 項垂れる球子に、苦笑するように杏が言葉を漏らす。

 

 

「やっぱりタマっち、テストから逃げようとしてたんだ……」

 

 

 あまりにも情けない様子に、千景は呆れるように呟く。

 

 

「……浅はか……」

 

 

 全力で落ち込むので、友奈は何とか励まそうと言葉を尽くす。

 

 

「ほ、ほら頑張ろうよ! 大丈夫、私も勉強苦手だし!」

 

 

 なんとも言えない励まし方をした友奈に、思わず若葉は突っ込みを入れる。

 

 

「友奈、それは自信を持って言うことではないぞ……」

 

 

 そんなやり取りが終わる頃、テストが配り終わった。

 貴虎は時計を確認すると、テスト開始の合図をする。

 

 

「行き渡ったか? では始めてくれ」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 五十分が経ち、テストを終えた勇者一同。

 あれ程にテストを拒否していた球子であったが、テスト後の様子はというと――

 

 

「ダメだ……ぜんぜんわからんかった」

 

 

 燃え尽きたかのように机に突っ伏し、問題用紙と睨めっこをしていた。

 

 

「大丈夫だよ、タマっち先輩……私もあんまりわからなかったし……」

 

 

 テスト前は球子の様子に苦笑していた杏だったが、彼女もテストであまり振るわなかったようで意気消沈としていた。

 

 

「だよな! だよな!! 難しかったよな、今日のテスト!」

 

 

 そんな杏の様子に同調する球子。

 対するように千景は充実したようで、友奈にテストの結果を聞かれても普段の調子のままだった。

 

 

「……余裕……」

 

 

「おぉ〜! ぐんちゃんすごい!」

 

 

「……高嶋さんは、どうだった?」

 

 

 聞き返された友奈だが、テスト前に言ったように勉強はあまり得意ではなかった。

 

 

「あんまり解けなかったよ……」

 

 

 友奈が落ち込む裏で、若葉はテストへのそれなりの自信とともにひなたに結果を尋ねる。

 

 

「余裕と言い切った千景ほどでは無いが、私は程々に解けたな。ひなたはどうだ?」

 

 

「そうですね。私も程々に、でしょうか」

 

 

 にこやかに答えるひなた。

 それを聞きつけた球子が愕然と呟く。

 

 

「ウソだろ……タマなんか三分の一は分からなかったぞ」

 

 

 球子の嘆きに答えたのは貴虎だった。

 答案用紙に赤ペンを入れながら、今回のテストの概要について話し始めた。

 

 

「今回のテストは、君たちの学年がバラけていることを考慮して、中一か中三までの内容を織り交ぜている。学習範囲外の部分に関しては、加点はしても減点はしない」

 

 

「なんだよ! そういうことなら最初に言ってくれ!」

 

 

「言えば君は、学習範囲外の部分を解こうともしなかっただろう。途中式等も採点に加味する」

 

 

 確かに、そんな姿は簡単に想像できた。

 何も言い返せなくなり、球子は地団駄を踏む。

 

 

「ぐぬぬ……」

 

 

 

 

 

 少しして、ようやく球子は諦めもついたのか、貴虎がテスト前に時間を設けるといった質問についての話題を持ち出した。

 

 

「……んでさ、採点の時に質問の時間を作るって話だったけど、もう質問していいのか?」

 

 

「ああ、問題ない」

 

 

 貴虎が了承したことで、勇者一同の質問タイムとなる。

 

 

「じゃあさ、歳はいくつなんだ?」

 

 

「33だ」

 

 

「えっと……出身は……?」

 

 

「東京だ」

 

 

「好きな食べ物は何ですか!」

 

 

「……メロンだな」

 

 

「メロン! おいしいですよね! じゃあ次はぐんちゃん!」

 

 

「わ、私? ……そうね……なら、趣味は?」

 

 

「趣味か……そうだな、最近は神道について学んでいる」

 

 

 球子、杏、友奈、千景と投げかけられるとりとめのない質問たち。

 続くのは若葉だ。どんな質問をするのかと、期待の視線が教室のあちこちから向けられる。

 しかし、若葉の質問は最初から決まっている。この時を待って、この時を狙って、温めてきた質問だ。

 

 

「では私からは……あなたは先日の『仮面の戦士』で、いいのか?」

 

 

「そうだ」

 

 

 なんでもないように、貴虎は答える。

 しかし、勇者たちにとって彼の答えはなんでもない訳がない。

 球子や友奈などは、かの戦士の正体なのだと想像すらしていなかった。故に驚く。何を言い出していいのかも分からず、動揺を隠すので精一杯だった。

 杏や千景は、ひなたの様子から薄々と正体に勘づいていた。故に納得する。だからといって、流暢に言葉が紡げるでもないのだが。

 ひなたは、元より存在を知っているので驚きはない。納得もないので、特段言葉を尽くす必要が無い。

 若葉は、既に答えをひなたから示されていたとはいえ、もたらされた言葉を飲み下せていない。

 教室内が困惑と当惑が入り交じり、シンと静まる。

 

 

「質問は以上でいいか? では、テストを……」

 

 

 教室内が静まったのを、質問が尽きたのだと解釈した貴虎が採点を終えたテストを纏めはじめた。

 ――この状況でテスト返却を行うのか。

 愕然とする勇者一同の思いを代弁するのは、もちろん球子。

 

 

「いや、待て待て待て!! この空気でテスト返すのかよ! ていうか採点早いな!!」

 

 

「…………」

 

 

「てか、何が「そうだ(イケボ)」だよ! 一言で終わらせちゃいけないやつだよ! 若葉の質問は!!」

 

 

 ここまでを一息。ぜぇぜぇと息を切らせる球子を見て、貴虎は配布しようと思っていた今回のテストの解答を手元に戻す。

 

 

「……では、もう少し質問を受けよう」

 

 

 言うことはそれだけか、と球子は呆れやら疲れが交じったヘトヘトの様子で椅子にへたり込む。

 

 

「タマは疲れたからあんずにパス……」

 

 

「タマっち!? え、じゃあ……どうして、前回から急に参戦したんですか?」

 

 

「私は異世界から神樹によって召喚されたらしい。召喚されたタイミングが前回だった、それだけだ」

 

 

「えっと……召喚って?」

 

 

「私は、君たち勇者の指南役としての役割を見込まれて召喚されたんだそうだ。それ以上のことは、恐らく上里の方が詳しいだろう」

 

 

 教室内の視線がひなたに集まる。

 しかし、ひなたの方も詳しい事情を知る訳では無い。

 

 

「残念ながら、私も詳しいことは……神樹様から神託を受けこそはしましたが、呉島さんを召喚するということを告げられただけで……」

 

 

「だ、そうだ」

 

 

 全てを知るのは神樹のみ。

 理由を問いたいのは貴虎も、ひなたも、引いては大社も同じである。しかし、神樹からのコンタクトは神託という一方的なものでしかない上に、はっきりとしたことは伝わってこない。

 故に杏からの質問への回答は、以上となる。

 続いて、貴虎へ質問を投げかけるのは千景だった。

 

 

「……異世界、というのは……?」

 

 

「SFの概念ならば、異世界ではなく並行世界、という言い回しの方が正しいかもしれないな」

 

 

「……なるほど、並行世界……」

 

 

 ゲームの設定等でSFに触れる機会の多い千景は、貴虎の回答に納得する。

 しかし、他の勇者たちはそうではなかった。

 友奈が、そんな教室内の空気を察知してか、首を傾げた。

 

 

「へーこうせかい?」

 

 

「……そうね。パラレルワールド、って言えばわかるかしら? 私たちの世界とは殆ど同じで、少しだけ違う世界……」

 

 

「なるほどー!」

 

 

 パラレルワールド。並行世界とも、並行宇宙とも、並行時空とも言われる、もう一つの現実を指す言葉。

 似たものとして、異世界という言葉でも表されるが、厳密には違うものとされる。異世界ーーつまり異界は実在しない存在として認知されているが、パラレルワールドについては、理論物理学の世界において時折存在の可能性について論議されていたりする。

 などと思考して、貴虎は目の前の会話に意識を戻す。

 

 

「その少しだけ違う、というのが……あの『仮面の戦士』というわけか。では先生、『仮面の戦士』について、詳しく教えてもらえないだろうか?」

 

 

 先生、という耳慣れない単語が自身を指すのだと気づくのにやや時間を要した。

 思えば、担任を自称したのだから『先生』と呼ばれることは当然のことなのだが。思い返せば、そもそも球子に『センコー』とも呼ばれていたが、あまり意識することはなかった。彼女の人徳だろうか。

 さて、あまり意味の無い思考に時間を割いた後、貴虎は若葉からの質問に答える。

 

 

「……ああ。君たちが仮面の戦士と呼ぶものの正式名称は『アーマードライダーシステム』。私たちの世界において、世界を蝕もうとした存在『ヘルヘイム』に対し、人類が用意したシステムだ」

 

 

「……へる、へいむ?」

 

 

「北欧神話における死者の国、だったかしら……?」

 

 

 耳慣れない単語に友奈が首を傾げ、既知であった千景は記憶を掘り起こすようにトントンとこめかみを指で叩く。

 

 

「名称はさて置き、このヘルヘイムという植物は人類に最悪をもたらそうとする存在だった」

 

 

「最悪……?」

 

 

 貴虎の物騒な物言いに、杏がやや怯えるような声を出す。

 

 

「ああ。ヘルヘイムは私たちの世界に侵食し、その根を地球に下ろそうとした」

 

 

「えっと……」

 

 

 続く言葉は「何がそんなに危険なのか?」だろうか。杏が言葉を探る間に、貴虎は先に答えを提示した。

 

 

「ヘルヘイムが生み出す果実には、あらゆる生物の食欲を掻き立てる作用がある」

 

 

 それは例え肉食獣であっても関係はない。

 

 

「はぁ……」

 

 

「果実を食らうと、生き物は『インベス』と呼ばれる怪物へと変貌する。無論、それは人間も例外ではない」

 

 

「えっ……」

 

 

 今まで、どこか貴虎の言う『最悪』に対し、疑問を抱いていた勇者たちは一斉に言葉を呑んだ。

 

 

「……変貌すると、どうなるんだ?」

 

 

 若葉が、恐る恐ると問う。

 答えはわかりきっていて、それでも聞かずにはいられなかった。

 

 

「……森の果実を媒介するだけの死体のようなものだ。理性なく暴れ、襲われた人間は体内に種を植え付けられる」

 

 

 予想通り、いや予想以上の答えが返ってきた。

 

 

「……ヤバくね?」

 

 

 呟いたのは球子。

 神に滅ぼされかけている自らの世界こそが最も不幸と思っていたが、最悪というのは比べることでは無いのだと思い知らされた。

 

 

「それに対抗するべく作られたのが、アーマードライダーシステムというわけだ」

 

 

「なるほど……」

 

 

 そんな世界であるならば、バーテックスをいとも容易く斬り裂いた、あの仮面の戦士の力にも納得がいく。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 勇者一同が、貴虎の正体についての折り合いをつけた頃を見計らったように、彼は紙束を机で軽く叩いて整え始めた。

 

 

「――では、もういいな? テストを返却する」

 

 

「良くない! タマは心の準備を済ませてないぞ!」

 

 

 

「そんなに自信ないんだ……」

 

 

「……見苦しい……」

 

 

「タマちゃん、ファイト!」

 

 

「普段から勉強をしないツケだ。甘んじて受けろ」

 

 

「球子さん、諦めましょう」

 

 

「ちっきしょぉぉぉ!!! ってか、さらっと千景酷いこと言ったろ!!」

 

 

 無論だが、球子のテストの結果は悲惨だったという。

 




テスト結果

※点数配分は学年により変わる。
全問正解で、3年生が最大100点、2年生が最大150点、1年生が200点となる。


・若葉 137/100点

若「100点オーバー……滅多に見ない点数だな」

貴「乃木は全教科で、学習範囲以上の問題に正答やもしくは加点があった。これからも勉学と、武技に励んでほしい」


・ひなた 142/100点

ひ「凄い点数をとってしまいました……」

貴「上里も乃木同様に、学習範囲以上の問題の正答や加点があった。平和な世なら、進学校への推薦を考えるほどだ」


・千景 96/100点

千「……あの二人の点数を見てしまうと、満点近いことを頭で理解できても、物足りなく見えるわね……」

貴「テストの形式上、郡には申し訳なく思うところもある。しかし、満点近い点数であることは事実だ」


・友奈 76/100点

友「あれ? 思ったよりも点数がいい」

貴「高嶋は理数科目で少し点数を落としているな。明日プリントを用意する。それでもわからなければいつでも質問を受け付けよう」


・杏 127/100点

杏「私も……100点オーバーですか?」

貴「伊予島は文系科目、特に国語の点数が伸びていたな。他の教科も平均点レベルで取れている。趣味が本を読むことと聞いたが、それがいい影響なのだろう」


・球子 56/100点

貴「さて……問題は土居か」

球「なんだよ! 勉強がダメで何が悪いんだよぉ!! タマは勇者だ! 勉強なんかできなくたっていいんだよ!!」

貴「勇者は勉強を疎かにする言い訳にはならない。明日以降で補習を行うので、参加するように」

球「……はい」
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