【未定】SaintSnow+back-stabber 作:灰流うらら
一体、俺はこの夢をこれから先、何度見ることになるのだろうか。最初は数えていたが、50を超えた辺りで数えるのをやめた。
あれから、2年という月日が経ったが、今でも鮮明に覚えている。
あの日、あの時、あの瞬間。
忘れたくても忘れられない記憶がべっとりと脳内に残っている。
"この裏切り者ぉぉぉぉぉ!!"
自由人でいつもジョークや悪ふざけをして友達を困らせる癖に、よく周りのことを観察していて心情を察したり、思ったことや言いたいことを隠すことなくズバッと言えるような俺にとってかけがえのない彼女が涙を流しながら怒りの感情が孕んでいる声で彼女から………、いや彼女たちの前から去っていく俺に向かって叫んだ言葉が未だに俺の頭の中で響いている。
仕方がなかった……、なんて言わない。例え、どんな理由があろうが俺は彼女の言う通り裏切り者だ。俺のせいで彼女たちから何かも奪ってしまったのだから。
あいつらの壊れることの無い厚い信頼、あいつらの大切な夢、そして………あいつらのかけがえのない絆を。あのグループを。
「起きるか………」
ムクリとゆっくりと上半身を起き上がらせた俺は近くにあったスマホを手にして時間を確認する。すると、画面にはAM6:08という時間を表示させたとても綺麗な海の景色の画像が映し出される。
幼馴染の1人の実家が経営しているダイビングショップのウッドデッキで撮った景色のやつだが、ちょうど夕日が落ちようしていて、誰が見てもロマンチックだと口にするであろうものとなっている。俺の数少ない好きな写真のひとつだ。
まぁ、もうこの景色をこの目で見ることはもう無いのだが。
「ワンワン!!」
時間を確かめていると、部屋に1匹の銀色の毛色が目立つシベリアンハスキーが入ってきた。こいつは俺達家族が昔から飼っているペットで名前はウィルだ。
俺は撫でながらウィルに声を掛ける。
「おはよう、ウィル。散歩に行こうか」
「わーん!!」
まるで『やったー』と言うように吠えたウィルはとても嬉しそうな表情を浮かべていた。可愛い奴め
ちょっと待っててな、と言い俺はベットから降りる。そして、今着ている寝巻きを脱ぎ、運動用のジャージへと着替え部屋をウィルと共に出てリビングへと向かう
リビングに向かうと、テーブルの上にラップが巻かれているおにぎりが3つとウィンナーや目玉焼き、サラダが乗っているお皿に弁当箱が置かれていた。
『朝食と弁当作っておいたから食べてね。行ってきますByママとパパ』
と、書かれているチラシの裏も置かれていて相変わらずうちの両親は働く場所が変わっても社畜として頑張ってくれているようだ。
散歩から帰ってきたら食べようと思い、そのままリードを持って玄関へと向かう。
靴を履き替え、ウィルの首輪にリードを繋げたら扉を開けて外へと出る。
「うっ、さむ」
4月になったばかりだというのに風の冷たさに思わず体をこわばせる。ここに来て2年経つが、未だに環境に慣れない。元々、こことは真逆で暑い環境で育って来たからかもしれないけど。
「わんわん!!」キャッキャッ
俺に反して、ウィルはとても嬉しそうにしている。こいつの犬種が寒い地域で生息しているから血が騒ぐのだろう。地元にいた時は常に死にそうな感じだったもんな
「っし、行くか!」
「わん!!」
少しばかり準備体操をしたあと、俺とウィルは一緒に歩き出す。準備体操をして身体がぽかぽかになったからか、今は外の冷たい風がちょうど良いものとなっている。
俺とウィルとの散歩ルートは少し長く約2キロの道を40分ほどかけて歩いている。その間にウィルに小便や大便を済ませてもらう。あとは、ストレス発散かな。ウィルは大きいし、力も強いから基本的には室内で放し飼いをしている。部屋の中では暴れないように躾けてあるため、大人しいがそれでも少なからずストレスは溜まってしまうはずだ。そのため、朝と夕方と夜の散歩でなんとかウィルのストレスをたまらせないように気をつけている。
ウィルが電柱に向かって足を上げて用を足しているのを眺めながら俺はぼそっと呟いた
「もう2年も経ったのか」
今朝見た夢を改めて思い出す。ずっと暮らしていた内浦から離れ、両親の転勤がきっかけでここに………函館に引っ越してからもう2年が経過したのか。長かったような、短かったような………。なんか、もう分かんねぇや。
あいつら、今頃何やってんだろうか。元気にやってんだろうか………。って、何を考えてるんだ俺は。そんなの気にする資格なんてもうないはずなのに。
「……………」
ふと、俺はジャージのポケットからAi〇Podsを取り出して片耳につける。そして、スマホを取り出して音楽アプリを開き、とある曲をタップする。
『〜♪』
タップすると、片耳から聞き覚えのある彼女たちの綺麗な歌声が聞こえてくる。恐らく、もう俺しか聞くことの出来ない唯一の曲だ。
ここだけの話、俺は幼馴染3人と一緒にスクールアイドルというものをとある理由でやっていた。もちろん、男である俺は実際に歌う踊るとかではなく、裏方で主にマネージャーとして働いていた。
あの頃は楽しかった。作詞や作曲、振り付けなどを4人でわちゃわちゃと、そして必死こきながら考え、作り上げたものをサイトにアップし知名度を少しずつ少しずつと上げていたものだ。その結果、それなりに有名なスクールアイドルへとなることができた。そして、有名なイベントとかで売名する機会も増えた。
あと、もう少しで俺たちの目標が成し遂げられるかもしれないという状況のなかでーーー
俺はーーー「わふ!!!」
「ウィル……」
自分だけの世界に入っていたところで、用を足すのを終えたウィルは俺に『早く行こうぜ』と言うように吠える。どうやら、俺はウィルを放っておくぐらいまでに自分の世界へと入っていたらしい。
「ごめん、ウィル。続き行こっか」
「わん!」
そして、俺とウィルはいつもの散歩ルートの道を歩き続けた。
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「ウィル?」
あと、もう少しで散歩ルートが終わるところで、唐突にウィルがお座りし始めた。本来なら、目の前にある分かれ道の右を進めば我が家があるのだが、一向に進もうとしない。リードを強く引っ張っても無駄だった
もしかして、今日は左に向かいたいのか?
でも、確かここを左に曲がってもあるのは1度も入ったことがない甘味処が1軒と大きな公園ぐらいだったはずだ。
どうして、ウィルが左に向かいたいのかは分からないが行かない限りこいつは動かないと思うので観念した俺は左へと足を進める。すると、頑固として動かなかったウィルはすっと俺と一緒に歩き始める。こいつめ………。
まぁ、いつもと違う景色を楽しめると割り切ればいいか。
そう思いながら、散歩を進めると
「………ん?」
前の方から何かが聞こえてくる。これは…………曲?それだけじゃない。誰かの歌声も聞こえてくる。しかも、声を聞いた感じ1人だけじゃなく、2人いる。
まさか、ウィルはこれを聞いて気になったから左の道に来たかったのか。納得した。
しかし、こんな朝早くから曲を流して歌うやつなんて、一体、何を考えているんだろうか。1歩間違えたから通報もんだぞ?
そう思いながら俺はウィルと共に前に進み、そして恐らく曲を流して歌っている者がいるであろう公園にたどり着いたところでーーー
公園にいた2人の女性の姿を見て目を奪われた。
制服を着た2人の女性はただ、曲を流して歌っているだけでなく激しく身体も曲や歌に合わせて動かしていた。この2人まさか…….どこかの学校のスクールアイドルなのだろうか。歳も俺とそんな変わらないように見えるし。
サイドテールにしている正しく母性を感じさせるようなおっとりとした女性が顔に反してとてもパワフルな歌声を出し、その合間にツインテールにしている少し目付きが悪い女性がラップを交えながらダイナミックな振り付けをしていてとてもバランスの良い形へとなっていた。見ていて、とても心が踊っているのを感じる。
けど、なんでだろうな。完璧とは言わずともとても完成度は高いはずなのに。これを実際にライブとかで披露したらかなり盛り上がるのは間違いないはずなのに。
それなのに、あいつらに比べたら…………
「まだまだだな。」
「「ーーーーーー!?」」
「あ………」
無意識にそう口にしてしまっていた。
俺の失礼極まりない一言が彼女たちも聞こえてしまったからなのか、2人は動きを止めて俺の方に視線を向ける。ツインテールの方はかなり怒っているように見える。
これは………、うん。死んだわ。確実に。
当時、そんなことを思っていた俺、"裏切り者"の
・天宮 晴人(17)
誕生日…7月19日
見た目…銀色の髪型でまるで狼の耳のように髪の毛が跳ねているため、周りから『狼くん』というあだ名をつけられていた。容姿は整っていてイケメン。普段は裸眼だが、家の時だけはメガネをかける。身長は179と高め。オシャレとかに興味はなく、いつもパーカーで過ごしている。
趣味……特になし。しかし、幼馴染が稽古や趣味でやっていたことに付き合わされていた結果、幼馴染同様にそれらをできるようになった。
得意教科…英語。普通にペラペラで話せる。
ウィル…天宮家で飼われてるシベリアハスキー。元々は捨て犬で父親が拾ってきた。もふもふで周りからの人気者。地元のとき、とある旅館に飼われている1匹の雌犬に恋をしていたらしい(母情報)