【未定】SaintSnow+back-stabber 作:灰流うらら
「すみません、来る店を間違えました。」
俺は彼女たちにそう言って、回れ右をし、早急に店から出ようとする。しかし、彼女達は当然のようにそれを許そうとはしなかった。
「待ってください、お客様。」
サイドテールの女性……確か、隣にいるこのツインテールの子のお姉さん……だったか?が、俺の肩を掴む。
「そうよ。入って早々、店を出るなんて非常識じゃない?」
今度はツインテールの子が、俺の事をすごく睨みつけながらサイドテールのお姉さんが掴んでいる方とは逆の肩を掴む。これによって、完全に俺がこの場から逃走することは不可能になったわけだ。
どっちみち、大量の荷物を持ってるから彼女たちが俺の肩を掴んでなくて逃げようとしてもすぐに捕まることだろう。俺の足の速さに余裕でついてこれるぐらいだし。
「はぁ………。分かった分かった。逃げないし、ちゃんと注文して何か食べるから。だからとりあえず、肩から手を離して席を案内してくれ」
「なによ、あんた。上から偉そうに!!」
いや、偉そうにって………。確かに俺は昨日、君たちを不快にさせるような言動をしてしまったけど、この場においては俺、お客様だよ?この子、短気すぎないか?自分の立場、把握してる?
「こら、理亞。少し言葉がキツいですよ。一応、私たちは店員だということを忘れないように」
「………ごめんなさい、姉様。」
サイドテールのお姉さんの方はツインテールのこの子と違って、常識を弁えているようだ。元々、聞いてた限り言葉が丁寧だからしっかりとしていると分かる。
「席、案内するから着いてきて!ふん!」
ツインテールの子は八つ当たりするかのように俺にそう言って、ぷんぷんさせながら先に行ってしまった。
「…………あれ、本当にアンタの妹なのか?」
「紛れもなく、私の大切な可愛い妹ですよ。決して腹違いとかではありませんから。」
「あぁ、そう。」
とりあえず、俺は先に行ったツインテールの子の後を急いで追っかけ、彼女の傍へと向かう。恐らく、近くにある2人用のテーブルが設置されているため、そこが俺の席なのだろう。
「はい。これメニュー表。また決まったら注文して」
彼女は俺にメニュー表を渡し、俺の傍から離れる。ふぅ、ようやくうるさいのが離れたな。さて、ゆっくりとメニューを決めようかな。
「前、失礼しますね。」
「は?」
メニュー表を見て、注文する商品を決めようとしたら、何故かエプロンを外しながらサイドテールのお姉さんが相席に座り始めた。どういうこと?
「アンタ、仕事は?」
「休憩を貰いました。」
「じゃあ、なぜ……ここに?自分の部屋に戻れば?」
「昨日の貴方の発言についてです」
やっぱ、そうなるか。はぁ………、なんか面倒くさいな。余計なことを口に出した俺のせいなんだけど。
「まずは自己紹介をしましょう。私の名前は鹿角 聖良です。あの子は妹の鹿角 理亞です。函館聖泉女子高等学院に通っています。」
おいおい……。函館聖泉女子高等学院って……。ここ辺りじゃ、めちゃくちゃエリート学校じゃねぇか。偏差値がとんでもない学校だって前に母さんが言ってた記憶がある。
「そして、私達は4月からスクールアイドルを結成してしました。グループ名は"Saint Snow"です。」
「"Saint Snow"………」
そのまま日本語訳に直すと、『聖なる雪』……ね。ここで活動するなら、とってもピッタリなグループ名だ。
まるで、あいつらが決めたあのグループ名のように………。
「簡易的ですが、私たちの自己紹介はこんな感じです。貴方の名前を聞いても?」
サイドテールのお姉さん………、いや鹿角が俺に自己紹介をお願いする。彼女達の情報を教えられたんだ。俺も教えなきゃダメか。
「雨宮 晴人。○○高校3年。」
「あ、同い年なんですね。」
同い年なのかよ。大人っぽくて全然見えないわ。
「まぁ、特に趣味とか特技とかはあるっちゃあるけどどれもそんな大したことはない。強いて言うなら足が速いってことぐらいだ。」
「そうでしたか?」
そうでしたか?じゃねぇわ。高校は部活入ってないけど、50m走はいつも5秒台だし、陸上部のエースとかといい勝負できるぐらいだぞ?毎日の勧誘がしつこく止まらなくてノイローゼになりかけた時期があるぐらいだ。
「足の速さについてはこれぐらいにして。昨日の俺の言葉だろ?それについては謝る。すみませんでした。」
俺は両手を膝につけて、頭を深く下げる。少なくとも、俺の発見で不快になったことは間違いないからな。
しかし、俺はもう謝った。これで彼女達も満足するだろ
「いいえ。別に私たちは謝罪の言葉を欲しいわけではないんです。」
「へ?」
謝って欲しいんじゃないのか?
「貴方は言いましたね?『まだまだ』だと。どこがまだまだだったんですか?」
鹿角は真剣な表情を浮かべて俺に問いかける。
「自分達で言うのもアレですが、私達は他のスクールアイドルに比べて、クオリティは高いと思っています。貴方が見た時だって、そんなにおかしな所は無かったはずです。」
「結成して間もないくせによくそんなことが言えるな。」
「事実なので。それに、それぐらいの気持ちがなくては勝てませんから。」
彼女の言葉に俺は「あっそ。」と言って手にしていたメニュー表に視線を落とす。
「教えてくれないんですか?」
「焦るな。こちとら、買い物帰り疲れで甘いのを食べたくてここに足を運んだんだ。注文する商品を選ぶ権利ぐらいあるだろ。」
「…………そうですね。ごめんなさい」
俺の言葉が正しいと判断したからか、鹿角は俺が注文を決めている間は特に何も口にすることはなく、お茶を飲んでいた。
「注文いいですか?」
「…………はい」
俺が手を上げると、鹿角の妹が凄く嫌そうな表情を浮かべながらやってくる。なんだろ……。ちょっと嫌な気分になるな。
「とうふ白玉パフェとお茶ください」
「………かしこまりました。」
鹿角妹はそう言って、厨房へと向かう。
「なぁ、あれは俺だからあぁいう態度なんだよね?他のお客さんに対してはやってないよな?」
なんだろう………。少し心配になってきた。
「恐らく………。普段はしっかりと接客しているので。でも、今のも接客態度が悪いと思うので、後で私から言っておきますね」
「別にいいよ。俺が悪いんだし。」
「お待たせしました。とうふ白玉パフェとお茶です」
少ししたら、鹿角妹がトレンチの上に俺が注文した商品を乗せて戻ってきた。そして、そのまま俺の目の前に置いていく。
「…………なんで近くにいるの?」
商品を置いたのにも関わらず、この場から離れない鹿角妹。
「私も聞きたいから。この時間帯はそんなにお客さん来ないしいいでしょ?」
「そうですかい。」
よく考えたら、鹿角だけじゃなくてこいつも気になるわな。なら、隠すことなく言いますか。言ったら2人はどっか行ってくれそうだし。
「まず誤解が無いように言うけど、俺が見たときのお前らのパフォーマンスは鹿角が言ったように間違いなく良かった。ライブとかも出たら盛り上がるとは思う。けど、確実に勝てないことも事実だ。なぁ、鹿角」
「はい」
「お前はさっきこう言ったよな?『勝てませんから』と。つまり、お前らの目標はあの"ラブライブ"に出場して頂点を獲るという認識でいいか?」
「その認識で間違いありません。そのために、私と理亞はスクールアイドルを始めたのですから。」
"ラブライブ"
ラブライブとは陸上部でいうインターハイ。バレーボール部でいう春高。野球部でいう甲子園。簡単にいったらスクールアイドルの全国大会みたいなもの。
昔はそこまでメジャーなものでは無かったが、数年前にある2組のスクールアイドルの活躍によって爆発的にスクールアイドルに注目が増え、現在でもそれは耐えないほどに人気なものとなった。
そのため、ラブライブで頂点をとるというのことは何十、何百………もしから何千を超えるスクールアイドルの中から1番になるということだ。
それを視野に入れるとなれば………
「なら、もう一度はっきりと言わせてもらおう。今のままだったらお前らは確実に勝てない。ラブライブの頂点なんて以ての外だ。なんなら、本線にさえ出場できるかさえ怪しい」
「その根拠は?」
彼女の言葉に、俺は手にしていたスプーンをとある人物に堂々と向けてこう言葉を出した。
「お前がいるからだ。鹿角妹。」
なぜ、理亞がいるから勝てないのか!?理由は次話にて!