【未定】SaintSnow+back-stabber   作:灰流うらら

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4話「悲しそうな表情を」

 「………え?」

 

 まさか、1番最初に自分の名前が出るとは思ってもいなかったのか、俺が指摘した瞬間にポカンとした表情を浮かべる。

 

 「わ、私のどこがダメなのよ!!」

 

 そして、直ぐに俺の事を睨みつけて立ち上がり、大声で俺に向かって怒りの孕んだ言葉を出す。

 

 「理亞!!声を控えなさい!!他にもお客様がいるんですよ!!」

 

 鹿角妹の行動に、鹿角が声をかける。それによって、鹿角妹は歯を食いしばりながらも席に座る。この光景を何度見ればいいのだろうか

 

 「まず、そうやってすぐに怒って短気な所。マジで気をつけた方がいい。この御世代、誰もが撮影してSNSとかに投稿してもおかしくはないからな。」

 

 俺がまず1つ目の指摘を言うと、鹿角妹は「あ」と口をこぼす。いくら知名度が上がったり、人気者になったとしても、1つ何かをやらかし、それが世間にバレた時点で一気にそれは水の泡と化する。

 

 それの代表例がSNS。例えば、今の鹿角妹の行動を誰かが撮影しSNSに投稿すればどうなるか。

 

 案の定、"Saint Snow"は地の底まで堕ちることになるだろう。2人の心が折れるまで顔も知らない奴らに罵られ叩かれる。それによって、消えた人たちを俺は知っている。

 

 それが今の時代だ。

 

 「鹿角」

 

 「はい?」

 

 鹿角妹が顔を青くしている中で、俺は鹿角に声をかける。

 

 「練習の動画とかってある?」

 

 「え?あ、はい。スマホ、取ってくるので少し待ってて下さい」

 

 そう言って、鹿角は一旦、席を外す。そして、1分も経っていないところで、片手にスマホを持ちながら戻ってくる。

 

 「結構な数あるんですけど………」

 

 「何でもいいから、1つ見せてくれ」

 

 「わ、分かりました」

 

 鹿角は画面をタップし、2人がいつもの公園で踊っている動画を俺に見せる。動画で踊る彼女達はキレもあるし、息もピッタリ。一般の人が見れば、十分に完成度の高い踊りとなっていると思われるが…………

 

 …………うん、俺の想像通りだ。

 

 俺は動画を止め、とある場所をピンポイントにしてズームし拡大させる。

 

 画面に映るのは………

 

 「鹿角妹、お前の表情が死んでんだよ」

 

 「……!!?」

 

 俺は画面いっぱいに映る鹿角妹の表情を見せながら彼女に告げる。

 

 「……?一体、どういうことですか?現にそれに映っている理亞は可愛らしく笑っているじゃないですか」

 

 鹿角の言う通り、スマホの画面に映っている鹿角妹は確かに笑っている。しかし、これは笑っているように見えるだけのただの偽りのもの。

 

 「こんなの作り笑いに決まってるだろ。無理やり、表情作ってるんだ」

 

 一見、本当の笑顔と偽りの笑顔は同じように見えるが、意外と見比べてみると違いが分かる。目元とか表情筋とかが本物の笑顔に比べて、偽りの笑顔はしっかりとできていない。

 

 「え………?」

 

 「スクールアイドルにとって、笑顔は必要不可欠。例え、ダンスのパフォーマンスのクオリティが高くても、基礎中の基礎である"笑顔"を出来てない時点でお前は姉の足を引っ張ってんだよ」

 

 「………!!」

 

 「鹿角妹がそれを乗り越えない限り、お前らは一生勝てない。それが、俺が言った『まだまだ』の意味。…………それじゃあ、俺はこれで」

 

 言いたいことを最後まで言えた俺はテーブルの上に注文した料金分のお金を置いて荷物を持って立ち上がり、出口へと向かう。

 

 その際、鹿角妹がまるでこの世の終わりみたいな表情を浮かべていたのかが、はっきりと俺の脳内に焼き付けながら。

 

 もしかしたら、俺は余計なことをしてしまったかもしれない。これで、もし"Saint Snow"が活動をやめてしまったら、俺の原因だな。

 

 もし、そうなってしまったら、またしても俺はアイツらと同じようにスクールアイドルを壊してしまったことになる。

 

 「はぁー」

 

 俺は深い溜息を吐きながら、片手を顔面につける。流石に考えすぎだと思うが、それでも意外と心にくるものがある。

 

 「ちょっと待ってください!!」

 

 「え?」

 

 店を出て、すぐに後ろから声をかけられたため、振り向くとそこには鹿角がいた。

 

 「なんだよ……。妹をボロくそ言った俺に何か仕打ちでもする気か?」

 

 「違います!少し気になったことがあって……」

 

 「気になったこと?」

 

 「はい。貴方のスクールアイドルに対する観察力についてです。」

 

 「………」

 

 「いくらなんでも、観察力が優れすぎています。例え、ファンだったとしても、異常に感じてしまう程にです!!」

 

 俺の今までの発言からして普通じゃないと思ったのか、鹿角は的確すぎる発言を俺に向かってする。

 

 「……………」

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 『晴人〜!今の私のperformanceはどうだったかしら〜♪』

 

 『うん。Congratulationだったよ、× × 。』

 

 『ん〜♪Thank you♪』

 

 『晴人さん、私はどうでしたか?』

 

 『× × × はまだ緊張してるからか、表情が固いな。もっとリラックスにいこう』

 

 『分かりました!』

 

 『晴人、私は私は?』ダキッ

 

 『えぇい、いちいち抱きつくな、アホ× × !!』

 

 『ちょっと、××!!私のfianceに抱きつかないでよ!!』

 

 『あはは………』

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「もしかして、貴方は以前にスクールアイドルとの何か関わりが………」

 

 鹿角の発言に対して、俺は………

 

 「…………お前の考えすぎだ。俺はただの男子高校生だよ。」

 

 「ーーーー!?」

 

 と、彼女に発言して俺は再び前を向いて歩き出した。もう………、この付近には近づかないと心の中で誓いながら。

 

 

 「どうして、そんな悲しそうな表情を浮かべるんですか………」

 

 前へどんどんと歩き続けている俺の姿を見ながら、鹿角がそう発言したことに、俺は気づくことは無かった。

 


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