童貞守護戦記<東方あべこべ>   作:アシスト

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※本作品はアルコールに頼って書いた部分が多いため、かなり酷い部分が多いと思いますがご了承ください。

※本作品は私の他作品とは一切関係はありません。




卯月・彼

  

 

 

 

卯月 〇日 (晴)

 

 

 異世界へと迷い混んだ。

 

 決して中二病に目覚めたわけではない。本当に迷い込んでしまったのだ。たまげた。

 あと1年で三十路の寂れたサラリーマンである私が異世界へ至る日が来ようとは、人生もわからないものだ。

 

 事の発端は、私が仕事の帰り道トラックに轢かれそうになった時のこと。脳内に走馬灯が駆け巡る私を、八雲紫(やくもゆかり)と名乗る女性が異世界『幻想郷』に引き込む形で助けてくれたのだ。

 

 八雲殿は私を要注意人物として以前から監視していたらしい。何故かと聞くと「……知らないほうが幸せなこともあるのよ」と俯きながら言われた。私の身に一体何が起ころうと言うのか。

 

 とにかく今日はいろいろありすぎた。頭も体も疲労感が酷い。八雲殿のご厚意によって人里の空き物件を借りられたので、早めに床に就くことにする。

 

 願わくば、今日の出来事が夢オチでないことを願う。

 

 

 

 

卯月 ◇日 (晴)

 

 

 夢ではなかった上に久しぶりによく眠れた。

 あらゆるストレスから解放されたのは大きい。

 

 朝起きると八雲殿が朝食を作ってくれていた。私を元の世界に戻せないことへの罪滅ぼしだと本人は語る。

 

 昨日書きそびれた事だが、幻想郷と私のいた世界は結界で隔てられているそうな。しかし今、その結界に異常が発生しているようで、八雲殿の力を持ってしても自由に結界を通り抜けることができないらしい。そんな事情がある故、私は未だ帰れていない。

 

 だが私としては、命を救ってくれたことに感謝こそすれど、帰れないことに対して恨む気持ちは全くない。寧ろこちらに永住しよう考えているところだ。両親も数年前に天寿を全うしているし、元の世界に帰れないことへの不都合は特にない。

 幻想郷で第二の人生を歩む方がよっぽど好都合だ。

 

 八雲殿の料理はとても美味しかった。特にみそ汁は亡きお袋の味を思い出させ、涙が出そうになるほど。きっと紫殿は良い母親になるだろう。

 

 

 日中は人里内を案内してもらった。

  

 八百屋や茶屋、寺子屋などが立ち並ぶ光景を見ると江戸時代へとタイムスリップした気分になる。

 

 妙に視線を感じたのは、私が人里の新参者だからだろう。こちらで暮らしていく以上お世話になるのだ、良い人間関係を築けられるよう心掛けねばな。

 

 夕飯も八雲殿が用意してくれた。

 非常にありがたいのだが、自身の家には帰らなくていいのだろうか。

 

 

 

卯月 □日 (曇)

 

 

 今日も起きると朝食が用意されていたが、八雲殿の姿はなかった。

 

 代わりに書置きがあり、要約すると『朝から仕事で日中会えないけど、必ず帰ってくるわ!』。仕事とは結界の異常調査のことだろう。

 

 八雲殿がいないとやることがない———わけはない。問題は山のようにある。

 一番の問題はお金だ。幻想郷で暮らすために財布に入っていたお金は八雲殿に頼んで換金してもらっだが、端金(はしたかね)だ。飯も八雲殿に甘え続けるわけにもいかん。

 

 働かざる者なんとやらだ。迅速に職を探そう。

 

 ちなみに夜になっても八雲殿は帰ってこなかった。

 きっと仕事が忙しいのだろう。料理は得意じゃないが、簡単な夜食を作って待つことにする。

 

 

 

 

卯月 ×日 (晴)

 

 

 昨夜は夜遅くまで八雲殿の帰りを待っていたのだが、眠気に負けてしまい机に伏して眠ってしまっていた。

 八雲殿の姿は変わらずなかったが、私の肩に毛布が掛かっていたり、夜食に使っていた食器が綺麗に片付けられている所を見るに帰っては来たようだ。お勤めご苦労様です。

 

 で、問題の職探しだが。

 とりあえずバイト先は見つかった。

 

 昨日見かけた寺子屋の前を通ったら『教員アルバイト募集』と書かれた張り紙があったのだ。なんと狙いすましたタイミング、幸先が良い。

 

 寺子屋内にいた先生にバイト希望者ですと名乗ったところ、いきなり面接をしてくれた。履歴書が必要ないのは楽で良い。その分いろいろと質問されたが。

 

 結果として面接は合格。早速明日から来てほしいと頼まれた。尽力しよう。

 

 

 今日の夜は八雲殿が帰ってきた。夕食の準備をして出迎えたら何故か泣かれた。ホワイ。

 

 

 

 

卯月 ◎日 (晴)

 

 

 今日の八雲殿は休日のようで、バイトに行く私を手を振って見送ってくれた。「行ってきます」「行ってらっしゃい」のやり取りは久しぶりで、なんとなく嬉しかった。

 

 バイト初日と言うこともあり、先ずは子供たちへの自己紹介から———なのだが。

 

 今更だが、私は昔から目付きが悪い。

 

 「どこの組の長?」

 「不思議な粉をやっておられる?」

 

 などとおちょくられる程度に悪い。

 故に子供たちから怖がられないか心配だったが、意外にもあっさり受け入れられた。

 

 先生にも聞いてみたが「男らしくてカッコいい目だ」と返してくれた。社交辞令でもありがたい。 

 

 私に教員経験はないが、寺子屋の年齢層は小学生低学年ほど。今日の授業は漢字の読み書きであり、私にもサポートはできた。この分ならこれからもやっていけるだろう。

 

 家に帰ると「お帰りなさい! ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ、た、し?」と八雲殿にベタな出迎えをされた。冗談に乗るつもりで八雲殿がいいと返したら、真顔で布団に引きずり込まれかけた。

 

 正気に戻った八雲殿に「独身女性をからかうものじゃありませんわ!」と注意されたが、あの時の野獣のようなギラギラした目は本物だったと思う。元居た世界じゃないからと油断した私も悪い。軽はずみな発言は控えよう。

 

 

 

卯月 ▲日 (晴)

 

 

 衝撃の事実が発覚した。

 

 今日の寺子屋は歴史の授業だったのだが。この幻想郷、妖怪なる異形が蔓延(はびこ)るようだ。しかも、妖怪は人間の精を好むため、人間は人里の外に極力出てはいけないとのこと。

 ”精を好む”とは子供向けの表現であり、実際には精魂と精根が尽き果てるまで襲われ犯されるそうな。

 

 国が違えが文化も異なる。ましてや世界が違うのだから、妖怪が存在しようと不思議なことではない。が、精を好むという点は気が気でならない。私は三十路になるまで童貞を守らねばならないのだ。

 

 私の世界の男は三十路まで童貞を守り抜くと、人間から『魔法使い』に身体が生まれ変わる。箒で空を飛んだり杖から炎を出したりと、人を超えた存在になれるのだ。

 

 男に生まれたものならば誰もが魔法使いになることを夢見るが、そう簡単に叶う夢ではない。何故なら女性の性欲が異常発達している上に、男女比も2:8と絶望的。毎日が精死をかけたリアル鬼ごっこ故、魔法使いになれる男はほんの一握り。

 幻想郷の女性はそうでないことがわかったとき、それはもう私のムスコも安心したものだ。

 

 幸いな事に、人里から出ない限り妖怪と遭遇することはまずないようだ。妖怪の中には人間の姿を持つものも多数いるようだが、その異形さと醜さは隠しきれないようで。『妖怪=ブサイク』だと思ってもいいと先生は語る。身も蓋もない言い方だが、その方が子供たちには伝わりやすいのだろう。命に関わることだしな。

 

 余談だが、ブサイクと言う単語に「先生みたいな?」と悪戯な質問をした男子児童が頭突きを喰らっていた。反省するのだぞ少年、先生は美人だろうに。

 

 

 夜、夕食を食べつつ八雲殿に今日の寺子屋の話をしたら、何故か頭を床に叩きつけるように土下座をし始めた。なぜゆえー……。

 「私のこと、嫌いになってないの?」とも聞かれたが、寺子屋での出来事と八雲殿を嫌いなることの関連性が未だにわからない。

 

 八雲殿の様な美人を嫌いになるわけないだろうに。

 

 

 

 

卯月 ▼日 (晴)

 

 

 子供の相手をするのは意外にも身体を使う。初日から子供たちとは鬼ごっこや蹴鞠などの相手をしていたのだが………鬼ごっこは兎も角蹴鞠をやるのは初めてであり、普段使わない筋肉を使ったせいか今日になって筋肉痛がやってきた。これが歳か……もう少しの辛抱だ私。魔法使いになれば身体も強化される。筋肉痛とは無縁の生活を送れるだろう。

 

 腰を摩る私の姿を見兼ねたのか、八雲殿がマッサージをしてくれた。一時間ほどか、ゆっくりと時間をかけられて腰回りを揉まれたのだが、これがかなり効く。柔軟かつ力強い手使いは素人のそれとは思えないものだった。過去に整体の仕事をしていたことがあるのかもしれない。

 

 

 そういえば、先生から親睦会を兼ねて食事に行かないかと誘われたのを八雲殿に話すのを忘れていた。さほど重要な事でもないが、明日の朝にでも伝えよう。

 

 

 

 

卯月 ●日 (曇)

 

 

 再び八雲殿の書置きが置いてあった。『出張でしばらく帰れない』との事が力強い筆跡で書かれている。

 

 しばらく一人暮らしと思うと少し寂しいが、八雲殿は幻想郷でもお偉いさんなのだと本人の口から聞いていたし、やはりご身分的にも忙しい方なのだろう。そんな中でもここまで私に良くしてくれた御恩は必ず返すと心に誓う。

     

 親睦会の件は明日行う予定だそうだ。2人だけなのか聞くと、先生の友人も来るとのこと。

 私も幻想郷に来てまだ日が浅いし、友好関係は広げおくに越したことはない。先生の友人ならば安心しても大丈夫だろう。

 

 

 

卯月 ◆日 (晴)

 

 

 ふむ、その、なんだ。なんと書けば良いのだろうか。

 

 心の整理がまだついていない。

 心臓の高鳴りも未だ最高潮。

 顔も焼けるように熱い。

 

 とりあえず、今日書けることはただ一つ。

 

 

 この歳になって一目惚れをするとは思わなんだ……。

 

 

 

 

つづく

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