童貞守護戦記<東方あべこべ>   作:アシスト

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※本作品はアルコールにモノ言わせて書いているのでキャラ崩壊が酷いです。ご了承ください。





皐月・慧音

 

 

 

 

皐月 @日 (晴)

 

 

 

 計画は順調である。

 

 

 全ては一ヶ月前、人里内で八雲紫が見知らぬ男と歩いているのを見かけたことから始まった。

 

 それだけでも有り得ぬ光景ゆえ驚いたが、何より驚いたのは彼の態度だ。嫌な顔一つせず八雲紫の隣を歩き、微笑みながら話をしている。その瞳は何時襲ってくるかわからない肉食獣に怯えるようなものではなく、まるで八雲紫を一人の女性として見るような瞳だったのだ。

 

 脳裏に『ブス専』という言葉がよぎる。美人ではなくブサイクを愛するという、小説の中でしか見たことのない幻の存在。その可能性が彼にはある。

 

 身なりから彼が新参の外来人であり、人里で働き口を探すことは容易に想像できた。だから徹夜で『従業員アルバイト募集』の釣り針、もとい張り紙を作成した。

 

 狙い通り彼はやってきた。そして予想通り、彼は私にも同様の瞳で接してくれた。そして彼と話していくうちに、私は大きな勘違いをしていることに気づいた。

 

 面接中、私は調子に乗って好きな異性のタイプを聞いた。

 そして彼は真剣な顔でこう答えた。

  

 

 「心が綺麗な人」

 

 

 聖人。彼こそが聖人。聖徳王などいなかった。

  

 なんて恥ずかしい思い違いをしていたのだろう。彼にとって外見の美醜など些細なものなのだ。生物の本質は心であることを彼は悟っているのだ。だからこそ、彼は妖怪も人間もブサイクも区別することなく接することができるのだ。

 

 女として、妖怪としての本能が同時に叫ぶ。

 『彼が欲しい』と。

 

 それは間違いなく邪の念。彼の言う『綺麗な心』とは程遠い感情。そんなものを心に宿す私に、彼を好きになる資格などない。

 

 一緒に働けるだけで幸せ者なのだと、そう自分に言い聞かせて私は彼のことを諦めた。

 

 

 

  

 ———などと思ったら大間違いだ。

 

 良いじゃないか別に。私だってブサイクとなじられ続けてまで、寺子屋の教師として人間社会に貢献してきたのだ。少し位欲を出したって良いじゃないか。むしろ、ここまで禁欲生活を続けてきた私を褒めてほしいものだ。

 

 『妖怪』としての本能のまま彼を我が物にするのは簡単だが、私にも立場がある。だからここは『人間』として、彼の心を掴むことにする。

 

 恋愛とは長期戦であり頭脳戦だ。大事なのは日々の積み重ね。歓迎会に始まり、週一で行う懇親会、授業の打ち合わせと呈した適度なセクハラスキンシップ。彼と出会って一ヶ月、友人と呼べる程度の間柄にはなれただろう。

 

 寿退社計画は順風満帆と言っていい。

 今月は、彼に私を恋愛対象として意識させることを軸に計画を進めよう。

 

 

 

 

 

 

皐月 ψ日 (雨)

  

 

 今日は休日なので、明日行う作戦について復習(さら)っておく。

 

 寿退社計画第二段階『アメとムチ作戦』。

 具体的には、彼に『教師』として授業をしてもらう。

 

 当然、初回から思い通りに事を進めることはできないだろう。相手はお年頃の子供たち、思いがけない質問や言動をすることもある。長年教師を勤めてきた私でさえ、児童たちに驚かされることは今でも少なくない。

 

 彼は明日のために一週間かけて練習をしてきた。その頑張りは私も充分に見ている。故に『あれだけ練習したのに上手くできなかった』と、彼は落ち込んでしまうだろう。

 

 私も教師の先輩として、彼に反省点と課題点などを告げる。その中には彼にとって厳しい言葉もあるに違いない。彼の気分は最底辺まで落ち込むはずだ。

 

 ここまでが『ムチ』。不安に押しつぶされそうな彼の顔……想像するだけでそそる心が痛むが、後は『アメ』と言う名の甘美な言葉で甘やかすだけ。

 

 人間、追いつめられたところに優しくされるとコロッと相手に惚れてしまうもの。仮にならなくても良い雰囲気には持っていける筈だ。そのまま押し倒してアダルトな展開へ持っていきたい持っていくのも一興だが、目的を見失ってはいけない。私の今月の計画は、あくまで彼に私を意識させることだ。

 

 急がば回れ。彼には茨の道を歩かせることになるだろうが、許してほしい。その先にある私のバージンロードに辿りつくまで———! 

 

 

 

 

皐月 #日 (曇)

 

 

 

 ………彼、教師の素質あるよ………うん………。

 

 彼の授業はとてもスムーズに進んだ。ほぼ練習通りだと言っても過言じゃない。私が初めて授業をしたときは碌に話すら聞いてくれなかったのに。

 何だこの差は。顔か? 顔なのか?

 

 想像をはるかに上回る出来の良さに厳しい言葉も言えず「は、初めてにしては、上出来だな」と震えた声を捻り出すことしかできなかった。だって欠点と言える欠点がなかったんだもん……私が教えられることはもう何もないって言えてしまうレベルだったんだもん………へこむ………。

 

 しかし彼は満足していないようだ。「慧音殿と比べたら私はまだまだです」って。そ、そうだろう! キャリアが違うからな! でも褒めたって下からしか何も出ないからな! けど嬉しいありがとう!

 

 ……いかん。満月が近いせいか、最近どうも筆が暴走してしまう。反省せねば。

 

 

 

 

皐月 +日 (晴)

 

 

 今日の夜は久しぶりに妹紅と飲みに出かけた。

 

 妹紅は寿退社計画の協力者である。妹紅は不死ではあるものの、彼と同じ純度100%の人間だ。私としても心を許せる相手であるため、恋愛相談の相手としても申し分ない。

 

 お酒を嗜みながら昨日失敗した計画について愚痴る。それを聞いた妹紅から、私の計画は少し遠回りすぎるんじゃないかと、もう少しぐらい直球でもいいんじゃないかと言われた。

 

 例えば? と首を傾げると、妹紅から出た案は『手料理』。

 

 

「家庭的な女が嫌いな男はいないだろうし、胃袋を掴めばこっちのものでしょ。上手くやれば彼を家に誘う口実にもできると思うし」

 

 

 天才的発想に開いた口が塞がらなかった。

 

 流石は我が心の友。妖怪の思考回路では思いつかないピュアでナイスなアイデアを出してくれる。ブーケトスは妹紅目掛けて投げてやろう。

 

 思い立ったが吉日、早速明日彼に料理を振舞ってみよう。

 急がば回れ? そんなものケースバイケースに決まっているだろう!

 

 

 

 

皐月 *日 (晴)

 

 

 理性なんてない獣と化したい。

 横で眠ってるを彼を思いのまま貪り尽くしたい。

 まずは優しくフレンチなキッスをするんだ……そして徐々に彼の身体に覆い被さり、彼が目覚めて私に気がついた瞬間、両手両足を無理矢理押さえつけて舌を絡める妖艶でディープなキッス……そこからはもうケダモノの如く彼の身体を欲望のまま舐め回

 

 

 いかんいかんいかんいかんいかんいかんいかん!

 筆が暴走して止まらない! いや、筆を暴走させないと理性が暴走しかねない! どうしてこうなった!

 

 

 今日は彼との定期ミーティングの日だった。明日の授業ではそろばんを教えないか? と彼に聞いてみたところ難色を示された。彼はそろばんを使ったことがないらしい。

 

「なら今晩教えてやろうか? 何だったら泊まり掛けでもいいぞ!」

 

 親しき仲じゃなかったら間違いなくセクハラ発言で訴えられていただろう。

 私もあの時は冗談半分で言ったのだが、

 

「じゃあお言葉に甘えて」

 

 そういって彼は自宅に着替えを取りに帰った。

 

 で、なんやかんやあってそろばんを手取り足取りネットリ教え、なんやかんや夕食をご馳走し、なんやかんや同じ部屋に布団を敷き、今に至る。

  

 スヤスヤと眠る彼。

 隣に私がいるのに、あまりにも無防備すぎる。

 

 これはなんだ? 夢か? 獏の仕業か?

 ドレミー殿は私に彼を襲ってもいいと言っているのか?

 一夜の過ちを夢オチとして処理してくれるとでもいうのか!?

  

 最終確認として、渾身の力で机に頭突きをした。

 普通に痛かった。机は四散したが、残念ながら夢ではないことが確認できたので良しとする。

 

 しかし、このままでは理性が崩壊するのも秒読み寸前だ。私としても、このまま快楽に身を委ねたくはない。

 

 私は彼”で”幸せになりたいんじゃない、

 彼”と”幸せになりたいんだ。

 

 だから私は今から最低なことをする。

 書くのも(はばか)ることなので、今日の日記はここまでにする。

 

 

 明日の私よ。

 彼でスッキリすることを、精々後悔するがいい。

   

 

 

 

皐月 %日 (晴)

 

 

 朝の私は賢者だった。

 

 なんて清々しい朝。太陽の陽ざし、小鳥の(さえず)り、全てが新鮮で心地が良い。横で彼が気持ちよさそうに眠っている姿を見ても、邪な感情は一切湧き出て来ない。

 

 朝食を作り、彼を起こして共に食す。男性と朝食を共にする日が来るとはな……もう、これだけで心が満たされる。そうだ、これが私の求めていた幸せの形だ。これ以上、何を望むことがあるのだろうか。

 

 ――——そう思っていたのに。

 

 

「慧音殿は本当な素敵な方ですね。頭脳明晰、家庭的で料理もできて、何より清楚。慧音殿ほどの美人を(めと)る殿方はさぞ幸せ者でしょうね」

 

 

 ならば今すぐ私を母親にしろ! と飛び付きかけた私を誰が攻めようか。下唇を喰い千切る思いで噛み締めてまで我慢した私に称賛を贈ってほしい。

 

 外見を褒められたのは生まれて初めてだった。

 お世辞にも私を美人と呼ぶ者はいない。もしかして、彼は聖人でありブス専なのか? いや、それは違う。ブス専はブサイクが好きなだけであって、ブサイクが美人に見えているわけではない。

 

 ……ダメだ、考えても答えは出ない。彼に答えを聞くのが一番早いのだが、それはできない。もう一度彼に外見を褒めらようものなら、今度は我慢できる自信がない。強漢で寿退社なんて外道以外の何物でもない。そこまで落ちぶれてたまるものか。

 

 それに時期的にもマズい。

 明日は満月なのだ。

 

 月に一度の満月の夜、私は半妖から完全な妖怪に成ってしまう。同時に長年溜め込んできた性欲と煩悩が脳内に溢れ出すため、家に博麗印のお札と結界を張って閉じ籠るようにしている。

 

 満月の日は日中でも身体が疼く。彼に危害が及ばないよう、挙動不審と思われようとも距離を置かねば。

 

 念のため、今から自慰行為賢者になるための儀式を行おう。できることなら何でもやっておくべきだ。

 

 とある天狗から買い取った彼の写真よ。

 先に謝っておく、だらしない先生ですまない………。

 

 

 

 

 

皐月 ¥日 (晴)

 

 

 (空白)

 

 

 

 

皐月 &日 (晴)

 

 

 

 無事に満月を乗り越えた。

 乗り越えた先は、更なる地獄だったがな!

 

 

 昨日の私の態度は、やはり彼に気を使わせたようだ。

 私の挙動不審な態度は自分に非があるんじゃないか? と昨日妹紅に聞いたらしい。

 

 私の満月事情は妹紅も知っている。

 「まさか包み隠さずバラしたのか!?」と私は焦燥したが、妹紅は笑顔で横に振った。

 

 

「大丈夫! 女の子の日って誤魔化しといたから!」 

 

 

 もこおおおおおおおおおお!?

 おお、おま、お前ぇぇえええええ!!?

 

 誤魔化すにも別の言い方があっただろう! 何故よりによって女の子の日なんだ! 「いやーごめんって。他に良い言い訳が思いつかなくてさー」じゃない! もっと深刻に事態を受け止めろ! 明日どんな顔で彼に会えば良いのだ!

 

 はっ! も、もしかして妹紅の奴……彼に気があるんじゃないか!? 私が邪魔者だから彼との好感度を下げるようなことをわざと言ったのか!? 

 いやまさか……こうなることを全て見据えた上で『手料理』と言うアイデアを出したのか? 全ては妹紅の掌の上だったとでも言うのか!?

 

 な、なんて恐ろしい……。灯台下暗しとは正にこのこと。協力者の中に恋敵が居るとは思っていなかった。今思うと、私が恋愛相談を持ち掛けたとき「私? 私は自分の恋愛に興味とかないから。慧音の応援を全力でするよ」と笑顔で言ったのは演技だったんだな……くっ、親友だと思って油断した。

 

 恋は戦争。いいだろう、受けて立つぞ妹紅。

 昨日の友は今日の恋敵、私のバージンロードを阻むものは、全て頭突いて砕くまでだ!

 

 

 

 

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