妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件

#あの日見たサムネの配信を僕達はまだ知らない

祝総アクセス数80万件突破！
100万件までもう少し……！？

さてさてさーて。
本日は誰の回でしょう。
あの方です。

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　今年も冬が来た。

　久しぶりに、こたつを出した。

　うちではこたつ廃止条例が可決されてから3年が経過している。

　毎年出す度にコタツムリが発生してしまうからな。

　その愚妹ツムリを排除すべく出された約束だが、俺も普通にこたつに入りたい。

　ってことで、自室に設置し愚妹の入室を禁じた。

　しかし今日は色々あってそれも解除した。

　スミレさんが遊びに来ている。

「んぐ……くっ、ひぐっ……ぐすっ……めんまぢゃぁん……！」

「パイセンガン泣きだよ。ヤバいよ」

「お前の涙腺はそこまでもろくないか？」

「いや〜、隣でこんだけ泣かれたらさ〜」

「まぁ、確かに」

　で、何故かこうなった。

　こたつに入りながら、俗に言う『あの花』を視聴中である。

　スミレさんからアニメについて教えて欲しいと頼まれたのがつい先日。

　なんか俺や八重咲の話についていけない事が多くて申し訳ないとかなんとか。

　別について来なくていいし、なんなら来れる方がおかしいまである。

　そんなわけで、まずは見やすいやつからと見てもらったんだが、これだ。

　ちなみに愚妹を入れたのはモラル的なアレのため。

「ごめんね……ぐすっ……私、こういうの、弱くて……」

「いえ、全然」

「なんかアタシが冷たい人〜みたいになってない？」

「いや、話を理解できなくて戸惑ってる奴に見えるから大丈夫だ」

「アタシそんなにバカじゃないんだけど！」

　バカだと思うぞ。

　しかし、年越しまでもう２週間もないのか。

　早いような、え、まじ？　

　半年ってそんな早く過ぎるもんなの？　

　俺、通算どれだけの配信に参加したのだろう。

　一般人なのに……。

　スミレさんが落ち着くまで小一時間使い、山積みのみかんも皮だけになった頃。

「そうだ、兄者くん。来週の土曜日って予定入ってない？」

「予定は未定で暇ですね。……なんで俺はこんな悲しいことを」

「……？　なら、ゲーム配信しない？」

「俺はいいんですけど、いいんですか？」

「もちろん。私が誘ってるんだし」

「いいならいいですけど」

「ゲーム配信すんの〜？　アタシも出てい〜？」

「お前は土曜に枠取ってるだろ」

「あ、そだった。って、なんで兄者知ってんの？　こわい」

「ストーカーと断定したように俺を見るな。普通に告知してるしお前」

　前科と余罪が多数ある為、そこら辺チェックする習慣がついた。

　いやな習慣だな。

　にしても、スミレさんはともかくファンの方はいいのかねぇ。

　まぁ結構、穏健派な雪精ってイメージ強いし大丈夫か。

【パーティー大戦】魔王とタイマン勝負【吹雪菫、兄者】

「夜分遅くにこんばんは。P.S一期生、吹雪菫です。そして、兄者ど〜ん」

「気に入ってますねそれ。どうもー兄者でーす」

「うん！　なんかこう、いい！」

「語彙力が……愚妹に毒されてませんよね」

　コメント：夫婦配信きちゃー

　コメント：この日ってのがもう夫婦

　コメント：てかはよ付き合え

　コメント：式まだ？　

　コメント：兄者は相手がいなかったんだろ

　コメント：目の前におるやんけ

「ゲームやる前に聞きたかったんですけど、なんでいきなり？」

「前々から思ってたんだけどね。兄者くんって、実はツンデレ？　みたいなところあるでしょ？」

「ないっすね」

「だから、え、ないの？」

「ないっすね」

「あー、えっと、話を戻すと。その、私とまだ距離を感じるというかね」

「先に距離あけたのスミレさんの方だった気がするんですが」

　コメント：お？　

　コメント：けんか？　

　コメント：痴話喧嘩

　コメント：出だしから不穏

　コメント：これは離婚案件？　

「それは、ちょっと誤解とかあって、面と向かって話したくなかったというか」

「それだけ聞くと俺嫌われ過ぎでは」

「でもほら、こうして話せるようになったから」

「あー、この人コミュ障だった」

「で、さっきの話だけど。兄者くんのいじわるって親しい人にしかしないじゃない？」

「いじわるをした覚えがないですねはい」

「春ちゃんもそうだけど、夜斗くんとか八重ちゃんにするのって、愛情の裏返しみたいなところがあるじゃない？」

「わー無視だー」

「そう考えると、私にはあんまりそういうことしないなーって思ったんだよね」

　コメント：兄者は基本ドS

　コメント：無自覚なSとか怖いw

　コメント：愛ってなに？　

　コメント：目

　コメント：目の裏返しとか拷問感あるw

　コメント：パイセンってもしかしてM？　

　コメント：いじわるされたいと

「だから距離を感じるというか、気を遣ってるんじゃないかなって」

「まるで俺が気遣いの無いやつみたいに言われてる気が……」

「ということで、今日は忖度なしでゲームしよう！　手加減とかしないでね」

「まぁ主旨は分かりました。で、その台本あとどれくらい続きます？」

「だ、台本なんて読んでないよ！？」

「素直だなこの人」

　コメント：パイセンかわいいかよ

　コメント：真理だな

　コメント：これがシュタインズ・ゲートの洗濯

　コメント：その門洗えるんだ

　コメント：心が洗われる

　コメント：シュタインズ・ゲートの洗濯w

　まぁ実際、会ってちゃんと話せるようになったのは意外と最近だ。

　それまではマジでキョドってる部分がチラホラ見えてた。

　タイマンで話すのは特に苦手そうだったし。

　そういう意味では、愚妹がいい中継役になっていたのだろう。

　本人には絶対に言わないが。

　つーわけでご存知パーティー大戦だ。

　ミニゲームが多いからいくらでも遊べる感じはある。

　最初はポーカーか。

　運要素強めだな。

「ちなみにスミレさん、ルールは大丈夫ですか？」

「一応ね、一通り練習はして来てるよ」

「結構マジですね」

「兄者くん強いからね。ちゃんと準備して来たよ」

「そうなんですね。あ、一つ確認しときますけど、今日は手加減なしでやるんですよね？」

「うん。やったら怒るからね？」

「あんま怖くなさそうですけど分かりました。ちなみに知ってますか？」

「なにかな？」

「ポーカーに裏ルールがあるんですよ。相手の手がジョーカー含んだ役の場合、スペードの3で役なしで出すと勝てるんです」

「そうなの！？」

「結構知られてないですけどね」

「そうなんだ……ルール聞いても書いてなかったから知らなかったよ」

「じゃあ始めますか」

　コメント：それマジ？　

　コメント：聞いた事ねぇ

　コメント：兄者のゲーマー知識ヤバい

　コメント：それ大富豪じゃ

　コメント：そんなルールあるのか？　

　コメント：これは匂うな

「4のスリーカードです」

「ふっふ、兄者くんがジョーカーを持ってるのは分かってたよ」

「え、何そのキャラ」

「それに兄者くんが嘘をついて役なしにさせようとしてるのもね！」

「この人、後輩に悪い影響受けてそうだな」

「だからちゃんとスペードの3は交換したよ！」

「……でもツーペアなんですね」

「うん……」

　コメント：負けるんかいw

　コメント：ちゃんと兄者対策してるパイセンえらい

　コメント：盤外戦法は封じたかな

　コメント：旦那の性格を知ってる嫁感

　コメント：エモい

　コメント：なんでゲームするだけでてぇてぇんだ

　コメント：なんだ夫婦か定期

　メタられてるな俺。

　ちなみにこのルールは嘘だ。

　安心しろ。

　そんなルールないし、あったら説明しろよゲーム運営。

　まずは俺の一勝で、次ゲームはパイセンがセレクト。

　得意の神経衰弱を選んだ。

　この人、記憶力はいいからな。

　ポンコツなところあるけど。

「神経衰弱なら読み合いとかないよね」

「心理戦はあんまりないですね」

「前に勝ったこともあるし、これは結構自信あるよ」

「なんか何言っても疑われそうで発言できないな」

「私を騙せると思わないでね」

「そう言えば、愚妹が引退考えてるらしいんですけど、何か聞いてます？」

「騙されないよ。……え、嘘だよね？　私何も知らないんだけど……春ちゃん何か悩んでるの？　相談に乗るよ？」

「この人チョロいな」

　コメント：チョロいw

　コメント：ほらそうやってすぐ騙される

　コメント：ピュアかよ

　コメント：パイセン心理戦よわよわなの可愛ええ

　コメント：はやくも動揺してる

　コメント：パイセン嘘やからな

　コメント：え、嘘だよな？　

　コメント：虐待されすぎて辞めたりしないよな？　

　コメント：リスナーまで騙されてんの草

「その6、また捲ってるね」

「そろそろこいつも過労死ですかね」

「もしかして、わざと？」

「分からないやつを開くより安牌なんで」

「あ、そういう作戦なの！？」

「まぁ、そうっすね」

「ねぇズルいと思う。私しか新しいの開かないから、間違ったら兄者くんが全部とるじゃん！」

「そういう作戦なので。あ、2貰いでーす」

「むぅ……いいもん。私も分からない時は出てるところ開くから」

「今の時点でだいぶ差ついたんでいいですよ」

「もう……もう……！」

　コメント：パイセンが悔しがってるの珍しい

　コメント：得意ジャンルだからか

　コメント：台パンあるか？　

　コメント：姫じゃあるまいし

　コメント：でも結構楽しそう

　コメント：それな

　コメント：普通に楽しんでるw

「いえーい、2勝」

「棒読みで言わないでよぅ」

「ハンデ付けます？」

「手加減は要らないよ。それに、なんだか楽しいし」

「そうですか？　俺、結構容赦なくやってますけど」

「本気でやってくれてるなら嬉しいかな。夜斗くんとゲームするときもこんな感じなの？」

「まぁ基本そうですね。……何故夜斗の話題？」

「兄者くんとゲームするの楽しいって前に言ってたんだよ」

「へぇ」

「凄く興味無さそうだね」

「答えを求めた訳じゃなかったんで」

「あ、独り言だったんだ」

「ただの感想でしたよ」

「……兄者くん、敬語やめよう」

「急に話が変わったぞ」

「そうそれ！　私が距離を感じる理由が分かった。私だけ敬語なんだよ」

「タメ口で話せってことですか」

「うん、そう」

「力強い返事だ」

　コメント：パイセングイグイ行くな

　コメント：これは兄者攻略も近い

　コメント：だから付き合えよ

　コメント：結婚して一週間目の会話で草

　コメント：嫁に敬語はなくてもいける

　コメント：俺が許す（後方腕組

　コメント：雪精の総意だな

　と言われてもな。

　一応年上な訳で、たまにツッコミでブレてるけど意識してタメ口は使いにくい。

　それに俺、キャラでやってるわけじゃないし。

　あくまで一般人だし。

　どうにか言いくるめて、ゲームを続ける。

　色々やって、8対1で俺の勝ち越しは確定した。

　ガチガチの運ゲーで負けたけど、まぁそんなもんだろ。

　愚妹が相手だったらもう二つくらい取られてたろうし。

「次で最後ですね」

「そうだね。あ、兄者くん。オススメのアニメってある？」

「急に？　なにゆえ八重咲みたいなことを」

「前に見せてもらってから、他のアニメも見たいなって」

「そうっすね。涼宮ハ〇ヒの憂鬱っていう、結構有名なやつがありまして」

「タイトルは聞いた事あるかも」

「サンタクロースをいつまで信じていたか、って出だしのナレーションから面白いんでおすすめです」

「サンタクロースをいつまで信じていたか……」

「どうしました？」

「……えっと、兄者くん。今日って、何日だったっけ……？」

「25ですね」

「それって、クリスマス、だよね？」

「そうですね」

「……はぁ──！！！」

「まぁ、だから大丈夫か聞いたんですけど」

「……私、え、クリスマスに誘っちゃったの──！？」

「しかもゲームしようとか、敬語やめろとか言われましたね俺」

「はぁ──！　はぁ──！！！」

「つか、昨日イヴとかそういうので知らなかったんですか」

「……ごめん、もう終わろ……？　なんか全部が恥ずかしくなってきた……」

「さーて、次は何のゲームにしよっかなー」

「もう終わろ……やだ……私、テンションおかしかったよ……」

　コメント：照れスミレてぇてぇ

　コメント：スミ虐じゃねぇか

　コメント：いいぞもっとやれ

　コメント：無限に続けこの配信

　コメント：兄者全開だ

　コメント：手加減なしのドS

　コメント：DV兄者

　コメント：この晒し上げはキツいw

　コメント：これアーカイブ残らん可能性出てきたw

　コメント：切り抜けぇ！　

　心に深いダメージを負ったスミレさんを負かして9対1。

　アーカイブは残したらしいが、それ以上に後半のクリスマス失念トークの切り抜きが瞬く間に広まった。

　きっと彼女はクリスマスが来る度にこのことを思い出すのだろう。

　アーメン。

　後日、帰宅した時のこと。

「くがぁ……〜」

　俺の部屋にコタツムリが居たので、みかんの汁で退治した。

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そうパイセン回でした。
季節ものになったのに時期が……。
無自覚な清楚と無自覚なドSの夫婦でお送りいたしました。


本作の略称案を応募してくれた皆様、ありがとうございます。

わかりやすさと語感から『妹件（いもけん）』とさせて頂きます。

なお作者的には『配ν（はいにゅー）』のセンス大好きです。
その他にもいろいろと案を出して頂けて助かりました。
今後ともよろしくお願い致します。


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