妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件 作:江波界司
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ハーメルンよ私は帰ってきた!
約一ヶ月間放置して読んでくれる人がいるのだろうか。
そろそろ忘れられてそう……。
八重咲の自作シナリオでTRPGをやることになった俺たちは、絶賛プレイ中である。
訂正、絶賛してる奴いないわ。
鈍足勇者、夜斗。
阿呆賢者、愚妹。
殺戮戦士、スミレさん。
そして、役職ゼロの俺。
無職じゃない。ゼロだ。
「つか、俺らの格好ってどうなってんの?」
「勇者は盾と鎧と兜を身につけてます。戦士は身軽に戦えるような軽装と最小限のアーマー、武器は剣ですね。賢者はもう見るからに魔法使いの服装で、ゼロはゼロです」
「説明責任を果たせよゲームマスター」
「そのままですよ。黒いマントにフルフェイスのヘルメットです」
「お前イラスト出ないからって好き放題だな……」
「ずっと歩いてるけど、港町にはいつ頃着くのかな?」
「あと二日ですね」
「なぁ、早く着く方法ないのか?」
「いや誰のせいよ」
「お好きにどうぞ。それがTRPGですから!」
「よし、という訳で兄者、オレを担いでくれ」
「おーけーそのドヤ顔を殴ればいいんだな」
「会話が成立してねぇ!」
「そういうこともできるの〜?じゃあさ、浮かせる魔法とかアタシない〜?」
「風魔法ならありますけど、これ基本は風の斬撃を飛ばす魔法だから……」
「じゃあこう、風ぶわぁ!ってやって町まで行くとかは?」
「なるほど。でもそれだと桜ちゃんだけそこに残りますよ」
「あ、そっか〜」
「地道に歩くしかないかな」
「もしくは全員で夜斗を引きずるか」
「だからなんで担ぐって選択肢ねぇんだよ!」
コメント:話進まねぇw
コメント:森行ってたら速かった説
コメント:夜斗が邪魔すぎる
コメント:夜斗リタイアさせれば解決
コメント:死因が味方とか不遇すぎるw
実は担ぐにも条件があったりする。
夜斗のサイズに対して筋力ステがないと持てない。
仮に持てても移動速度は下がる。
あとステータス的に担げるのはスミレさんしかいない。
俺と愚妹の筋力ステ低いからな。主に役職補正のせいで。
「近道とかないの〜」
「道は地平線まで続いていて、辺りには草原が広がっています」
「逆に襲われる心配もないってことではあるな」
「それなら安全、なのかな。でも町に着くまで話が進まないね」
「まぁ、すぐに行ける方法ならありますけど」
「え、あるの!?」
「マジ兄者?早く言ってよ〜」
「あと二日で町ってことは、夜斗以外が全力で移動したら1日足らずで着くわけだろ?」
「あ、置いてくのね〜」
「それは、酷くないかな」
「いや、逆転の発想だ。先に夜斗を町まで送ってやればいい」
「おお、さすが兄者だな。で、その方法は?」
「風魔法でぶっ飛ばす」
「いや、おい!!!」
「つーわけで、愚妹、やれ」
「任せい!」
「え、えぇ……」
「まてドS兄妹──」
「風魔法を夜斗さんに撃つので、まぁでも加減はしますよね。ダイス振ってください。40%で吹き飛ばし成功です」
コメント:姫なら余裕だな
コメント:ついに味方からもぶっ飛ばされるw
コメント:ぶっ飛ばす(物理)
コメント:ぶっ飛ばす(魔法)
コメント:ぶっ飛ばす(直訳)
コメント:ぶっ飛ばす(殺意)
コメント:ぶっ飛ばす(フラグ)
コメント:やめて!夜斗が死んじゃう!
コメント:わりとあるw
「えっとね、23〜」
「成功です。風と着地でダメージが入るのでダイスロール。えっと、7ですね」
「攻撃じゃないのにダメージ高いんだ」
「夜斗、恨むなよ」
「それはできねぇなぁ!」
「桜ちゃんの風魔法で夜斗さんは町の門前まで飛ばされました。着地に失敗し、装甲あって2ダメージ。体力は8」
「いててて、オレじゃなきゃ気絶もんだぜ」
「お前じゃなきゃそもそも撃たれないけどな」
「これで町着いた〜?」
「えーっと、特にイベントもないからいいかな。一日かけて、一向は港町に到着しました。大きな門と塀に囲まれた町の入口で、門番をしている兵士に声をかけられます。『旅の者かい?悪いが許可証がないと入れないよ』」
コメント:進行が雑いw
コメント:何気に丸一日外で放置された哀れな奴がw
コメント:通行証ってなんぞ?
コメント:飛ばされたのに入れないのかよ
「許可証?そんなのあったっけ?王様には貰ってないよね」
「あの王様、そんなこと言ってなかったよな。知らなかったのか?」
「許可証無しで入る方法がないか聞く」
「『むりむり。ここ最近、魔王軍のせいで人が急死する事件が起きてるんだ。怪しいヤツは入れられないよ』」
「ふむ」
「アタシたち疑われてる〜?」
「まぁ武装した上に身元証明なしの奴らだからな」
「強引に入るか」
「この勇者脳筋なんだけど」
「パイセン何かいいアイデアない〜?」
「アイデア?そういえばアイデアってステータスあったよね?」
「アイデア振ります?ダイス次第で攻略の仕方変わってきますけど」
で、振った。
アイデアのステが高い俺と純粋に運がいい愚妹が成功して、情報が貰える。
「どうやら港町は今異常事態に見舞われているらしい。上手く自分たちが魔王軍と繋がりがないことを証明できれば入れてもらえるかもしれない」
「その証明が出来なくて悩んでるんだが」
「あ、私達はその事件を解決するために王都から来たって言えばどうかな?」
「信用してもらえるか分からんが、それでいきますか」
「『何、王都から?……いや、なるほど。だからそこまで武装しているのか。分かった、入れ。だが見張りは付けさせてもらうぞ』」
「あ、入れた〜」
「スミレ、ナイス!」
「いけるもんだな」
「やったね」
コメント:パイセンナイスぅ
コメント:ナイスぅ
コメント:さすが先輩は頼りになるぜ
コメント:どっかの先輩とは大違いだぜ
コメント:これが先輩としての格の違い
コメント:そりゃぶっ飛ばされるわw
入れたのはいいが、なんか腑に落ちない。
怪しいヤツでないことは証明できていない気がすんだよなぁ。
その辺は八重咲の気分か、何か理由があるのか。
警戒はしとこう。
「門を抜け、見張りの兵が後ろから着いてきます。町は思ったよりも賑やかで、とても異常事態には見えません」
「本当に事件は起きているんですか?」
「『ああ。つい先日も、商人が一人死んだばかりだ』」
「具体的にはどんな風に死んだかは分かるのか?」
「『詳しい死因は分からないが、まるで命が吸い取られたように暴れた様子も苦しんだ様子もなかった』」
「ファンタジーなんだかオカルトなんだか分かんねぇな」
「まぁ?イベントが始まってるわけだし、まずは現場だろ」
「現場ってことは、その死んだ所に行くんだよね」
「まぁそうだな」
「そこへは入っても大丈夫なんですか?」
「『構わないが、もう死体も処分してしまっている』」
「意味がない、か」
「てかなんか怖いんだけど……ホラーじゃないよね〜?」
「シナリオが八重咲だし大丈夫だろ。こいつグロ系はいけるやつだからその辺は怪しいが」
「不穏な空気があるね。私も怖いのは嫌だなぁ……」
「つーか普通に行き詰まったな。現場は意味ないし、犯人に心当たりもないし」
「そうだな。またアイデアでも振るか」
「アイデアですね。えーっと、桜ちゃんが成功なんで情報出します。死体の状態を聞くに、病死ではなく他殺の可能性は高い。それも、魔法よりも呪術に近いものを感じる」
コメント:リゼ〇?
コメント:呪術に近いものなのよ
コメント:それだれが出した情報だよw
コメント:魔法といえば賢者……
コメント:姫が出せる情報なのか?w
「ヒント貰ったのかこれ?」
「呪術ってなんですか」
「呪術は魔法とは違い、人間には扱えない類のスキルです」
「ってことは、やっぱり魔王軍的なやつらの仕業か」
「けどよ、ここ周辺の魔王軍って、もう本丸の魔王城しかないんじゃねぇか?」
「また1ヶ月歩くのかよ」
「それとも、魔王以外に魔物とか悪魔とかがいるとか?」
「ね〜いるの〜?」
「少なくとも野生の魔物は存在します」
「だって〜」
「まぁ?野生の奴らが計画的な動きをするって考えにくいよな、普通」
「なら、やっぱ魔王軍のそれってことか」
「魔王城に行くしかなさそうだね」
「でもさ〜、そんな遠くからじゅじゅつ?って使えるの?」
「あ、確かに!」
「てなると、犯人は近くにいる可能性高ぇな」
謎解きか。
……なんだろう。
街の広さとか細かいヒントは動きながら貰うとして、メタ読みでもしねぇとこれ終わらん気がしてきたな。
結構こだわったシナリオ書きやがって。
八重咲の執念とセンスがイカれてるわ。
「んじゃまずは、情報収集だな!」
コメント:お前が仕切るの大丈夫?
コメント:勇者の扱い草
コメント:ホラー展開に期待大
コメント:これは面白くなりそうだ
まぁ確かに、素人の作ったストーリーにしては高クオリティが期待できそうだ。
……。
…………。
「あー、んと、じゃあ蹴る」
「ダイスロールですねー。えっと、ダメージ12でグレムリン的なやつ撃破しました」
「あー、うん、そう。……なぁ、ちょっと時間確認していい?」
「あ、リアルにですか?どうぞどうぞご自由に」
「……SANチェックするわ」
「え!?あ、はい、どうぞ」
「成功したわ……」
「よかったね、兄者くん」
「はは、そっすね……」
ゲーム開始から、6時間が経過していた。
……いやおい。
6時間だぞ6時間。
四半日でクリア見えないとかどんなボリュームのストーリー書きやがったんだこのアマ。
コメント:これいつまで続くん?
コメント:タイトルに耐久って書いてあったっけ?
コメント:終わりが見えん
コメント:港町くらいまでは楽しそうとか思ってたのに
コメント:すでに二人リタイアしてるんだが?
そう、すでに二人リタイアしている。
港町にいた中ボスをシバいた後、なんやかんかやで森の盗賊に用ができた。
結果、盗賊団を壊滅させた。
そしてその道中、夜斗が力尽きた。
死因、蜂に刺された。
ゲームブックの初心者みたいな死に方だったわけだ。
んで、愚妹は力尽きた。
リアルで。
寝落ちだ。
何やってんだろ俺たち……。
「つか、冷静に考えてこの配信時間はおかしくないか」
「あれ、兄者くん、もしかして聞かされてなかったの?」
「いや何も」
「八重ちゃん、それは流石に」
「あの、わたし、ちゃんと桜ちゃんに長くなることは言ったはずなんですけど」
「ほう?」
「ま、まぁまぁ、忘れることは誰でもあるから」
「百歩譲って伝え忘れてたとするが、このレベルの長さになるなら普通に一言連絡くれよ」
「桜ちゃんが、兄者明日ずっと暇だし大丈夫だよ〜って言ってたんですよね」
「おーけー、ちょっと待ってろ今油性マジック持ってくる」
「落書きする気なの!?」
コメント:これは姫が悪い
コメント:つか眠い
コメント:これだけ眠い中先に寝落ちしてるの腹立つなw
コメント:やっちゃえ兄者
コメント:額に肉でも描こう
コメント:キン肉マンメソッド草
PCの前で突っ伏して寝ている愚妹を転がして、額にペンを走らせた。
満足したし、早くこのゲーム終わらせよう。
体力お化けから火力お化けにジョブチェンジしたスミレさんを引き連れて、どうにか魔王城に到達した。
正直、ゼロという役職の戦闘能力はカスだが、スミレさんのダイス運がとち狂ってて助かる。
これ愚妹が寝落ちしてなかったらナーフかかるレベルのパーティーだったな。
盾もいたし。
「『来い、勇者共。ここで灰塵としてやろう』さぁ、ラスボス戦です!」
「ずっと気になってたが、このギアスってスキルはなんだ?」
「そのものですよ。対象一人につき一回のみ成功率100%で何でも言うことを聞かせられます」
「チートじゃん」
「それ、最初から使ってれば戦闘とかもっと楽だったんじゃないかな」
「少なくとも人間相手なら即勝ちしてましたね」
まぁ、だから使わなかったってものあるが。
なんの面白味もないからな、俺TUEEEEとか。
コメント:最初から使ってくれ
コメント:なおこの長さはストーリーのせい
コメント:これ使ってても夜斗は助けられなかった模様
コメント:悲報 夜斗はどう足掻いても死ぬ
コメント:つか夜斗は配信どうなってんの?
コメント:個人の方でコメンタリーしてるぞ
コメント:天国配信w
「つまり、魔王にも効くんだな?」
「そこまでは使ってみないと分からないですよ」
「先に聞いておくが、後出しはすんなよ」
「そこはゲームマスターとして守ります」
「兄者くん、なんか悪いこと考えてない?」
「そんなことないですよー」
「すごい棒読み……」
「んじゃ行くか。名乗り的に決まらないが、この俺兄者が命じる」
「うおおおっ!!!」
「八重ちゃん、テンションがおかしくなってるって」
「復唱しろ『コ〇ドギアスは駄作のクソアニメだ』」
「……は。……はぁ!?」
「どうしたゲームマスター。登場人物のセリフはお前がやるんだろ?ほら、早く進行しろよ」
「くっ……ぬぅ……」
「兄者君……」
「ほら、早く。もう眠みぃからさっさと進めろよ」
「……『コ〇ド……ギアスは、駄、作の……クソアニメ、だ……』」
「どうだ。演技とはいえ好きな作品を罵る気分は」
「ぬぁぁぁぁぁぁ!!!魔王は怒りに任せて全てを闇に葬った!!!ゲームオーバー!!!」
「ええ!?」
「よし、終わったな、解散」
コメント:強制終了www
コメント:八重虐たすかる
コメント:長かった夫婦の旅もここまでか
コメント:ビーストハントしてて草
コメント:上げてから落とすスタイル
コメント:鼓膜無いなった
どうにか終わった。
後で知ったが、配信時間は8時間を超えていた。
2時間くらいのつもりで始めてるわけで、さすがに眠い。
さっさとPCその他を片付けて眠りについた。
翌朝、洗面所でぜい肉と書かれた額を洗いまくってる愚妹の姿がそこにはあった。
長くなりそうだったので強制終了しました(笑)
後編お待たせしました。
この一ヶ月忙しかったんですよね。
新世紀がシン世紀になったり映画館にパンツァーフォーしてたらトレーナーになってうまぴょいしたりと。
一応これからもボチボチ書いてくつもりなので暇つぶしに読みやがれ下さい。
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