妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件   作:江波界司

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タイトルからわかる脳筋具合。

ここからしばらくツバキのターンです。
ある意味新章みたいなものなので、つばきち多めでお送りします。


#痛いのは嫌なので攻撃力に極振りしたいと思います

 P.S本社のスタジオ。

 そろそろお馴染みになって来た。

 おかしいんだよな。

 今日はオフなんだかオンなんだかよく分からんコラボがあるらしい。

 つか俺、ここの会社とは縁もゆかりも無くはないけど部外者なんだが。

 愚妹ごと呼ばれて来たが、帰っても問題ないのでは? 

 

「おおっ!兄者先輩〜!」

「帰る」

「ひどくないッスか!?」

 

 パタパタと駆け寄ってくる少女が一人。

 リアル甘鳥だろう。

 初対面だが、兄者を捕まえて先輩と呼ぶサイコパスを俺は奴しか知らん。

 

「つばきち〜」

「桜先輩も!ウィッス!」

「それは素なのかよ」

「元々こんな感じッスよ。今日はよろしくお願いしますね、兄者先輩!」

「聞いてないよ? つか共演NG出したはずなんだが」

「まぁまぁ、そう言わないで下さいよ。事情もあるんッスから」

 

 事情ねぇ……。

 俺また何かしちゃいました? 的なノリならまだ笑えたわ。

 何かしらの事情ありきで配信とか、身内がやらかしたイメージしか湧かねぇ……。

 

「つか、よく俺って分かった上で話しかけたな。顔合わせ初だろ」

「めっちゃ目付き悪かったんで!」

「よし帰る」

「えぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【NGワード】ゲーマーファミリーと対戦するッス【甘鳥椿、吹雪菫、春風桜、兄者】

 

「はい、帰るぞ」

「だからなんで帰るんッスか!?」

「共演NGだっての」

「兄者先輩は無所属だから別にいいじゃないッスか〜。あ、P.S三期生、甘鳥椿ッスよ〜。ウィッス!」

「桜だよ〜」

「適当かよ。あー、兄者でーす」

「あ、え、っと、P.S一期生、吹雪菫です」

 

 コメント:コラボきちゃ

 コメント:パイセンは初じゃん

 コメント:ゲーマーファミリーは草

 コメント:父・兄者 母・菫

 コメント:娘・愚妹

 コメント:愚妹は愚妹やろw

 コメント:あれ? またハブられてる? 

 コメント:ペット 八重咲

 八重咲紅葉:誰がビーストやねん

 コメント:本人www

 

「はい!ってことでッスね。今日はこのメンバーでゲームしてこーと思います!」

「待ておい。結局俺が呼ばれた事情を聞いてないんだが」

「あぁ、はい。それはッスね、スミスミ先輩が呼びたいって言ってたんッスよ」

「……何故そうなる」

「兄者くん!」

「あ、はい」

「私が……私が初対面の人とまともに話せると思うのかな!」

「過去一の勢いでコミュ障宣言されてもな」

「今も凄い緊張してるからね!」

「二人挟んでその慌てようなんですね」

 

 まぁ、わからんでもないわけじゃなくもない。

 なんだそれわからん。

 もともとは三人でやる予定だったんだろうが、愚妹にそういうフォローはできんし、なんなら甘鳥と共鳴して騒ぎまくりそうだ。

 で、出入りが自由な俺を選んだと。

 迷惑な。

 

 コメント:てぇてぇ

 コメント:旦那の召喚

 コメント:デーモンの兄者

 コメント:コミュ障宣言w

 コメント:パイセンを嫁に貰う前に言いたいことありそうw

 コメント:ひきこもりランデブー(物理)

 コメント:兄者もコミュ障だっけ? 

 コメント:陰キャゲーマーだけどコミュ力高いゾ

 コメント:コミュ障パイセンかわええ

 

「今日やるのは、NGワードゲームッス〜」

「よくあるやつだな」

「あ〜あれでしょ、言っちゃだめなやつ〜」

「そうッス!」

 

 NGワードゲーム。

 道具を使わない系のゲームでも割とシンプルなルールだな。

 プレイヤーそれぞれが一人一つNGワードを決める。

 本人にそのNGワードは公開されず、他のプレイヤーに見られる。

 会話の中でそのワードを言ったやつが負け。

 順番から、甘鳥が愚妹、愚妹が俺、俺がスミレさん、スミレさんが甘鳥にワードを設定する感じだな。

 

「一応言っとくが、意味のあるワードにしろよ」

「兄者〜、どゆこと?」

「『あ』とか『ん』とかだったら勝負にならん」

「あそっか〜」

「今気付いたらしいな」

「あ、ちなみに罰ゲームもあるんで、本気でやりましょう!」

「なんだそれ」

「これッス!」

「え、つばきち〜?」

「これ、って……」

「カップ焼きそば激辛MAXエンドッス」

「正気か」

「人数分用意したんで、スタッフさんよろしくッス〜」

「何、甘鳥、辛いの好きなのか?」

「好きッスよ!リアクションとか特に」

「ああ、食わせる前提な」

 

 コメント:味の話だろw

 コメント:サイコパスw

 コメント:こわいこわいw

 コメント:つばキチ

 コメント:闇のゲームじゃん

 コメント:兄者ボーイ

 

 誰だよ。

 こんな誰も救われないゲーム考えたやつ。

 意地でも食わすぞ。

 俺のNGワードはわからんとして。

 愚妹『わかんない』

 スミレさん『ありがとう』

 甘鳥『アンタッチャブル』

 ……いや、おい

 

「スミレさん、やる気あります?」

「だって、意味のあるワードって」

「意味はあるけど意味が分からんでしょ」

「兄者〜、あれど〜ゆ〜意味?」

「それ言ったら詰みだからな」

「あ、そ〜じゃん」

「はぁ……」

 

 スミレさん、テンパリ過ぎだろ。

 ……まぁ、実はこの人ド天然に隠れてるけどポンコツだからな。

 愚妹はシンプルにバカ。

 甘鳥はよく知らんし。

 まともなのは俺だけか。

 

「さてさて。じゃあゲームスタートってことなんッスけど。トークテーマとかはこっちで用意してるんで、スミスミ先輩、引いて下さい」

「その前に、気になってたんだが、スミスミって何だ」

「スミスミ先輩ッスよ?」

「あだ名か。え、初対面だよな」

「仲良くなるには、まず距離感近付けないとッスよ」

「もはや交通事故だろ」

「スミスミ……あだ名……」

「本人も困惑してるし……」

「いい、それ」

「えー」

「でッスよね!」

「うん、なんか、いいね」

「スミスミ先輩イエーイ!」

「い、いえーい」

 

 コメント:陽キャのノリ

 コメント:うっ頭が……

 コメント:あだ名でテンション上がってんの草

 コメント:チョロ

 コメント:スミスミパイセンチョロい

 コメント:友達いないからなパイセン

 コメント:陰キャってかコミュ障やし

 

 まぁ、確かに。

 スミレさんそういうのに耐性無さそうだからな。

 あだ名とか友だちに飢えてそう。

 銀髪のハーフエルフかっての。

 

「つばきち〜トークテーマは?」

「ああ、はい。最初のトークテーマは、ずばり『好きな異性のタイプ』ッス!」

「え〜恋バナ〜?」

「桜先輩、苦手ッスか?」

「あんま考えたことな〜い」

「まぁ、縁は無さそうだしな」

「あぁん? は〜、兄者がそれ言うんだ、は〜」

「なんだよ」

「兄者だって彼女いない歴=年齢じゃん〜」

「兄者先輩の好みは綾波〇イッスもんね!」

「それだと俺が二次元に恋してるみたいになるからやめろ」

「じゃあ、彼女に求める条件とかないッスか?」

「条件とか付けたくねぇんだが。俺みたいなやつでもいいって人ならまぁいいんじゃねぇの。知らんけど」

「なるほど、つまりスミスミ先輩ってことッスね」

「何がなるほどで何がつまりなんだよ」

「スミスミ先輩はどうッスか?」

「わ、私もあんまり考えたことない、かな……?」

「じゃあじゃあ、好きな仕草とか!どうっスか?」

「あー……うん、逃げられないみたい」

「逃がさないッスよ〜」

「えっと、うん……あ、ネクタイ緩めるとか?」

「あるあるッスね〜」

「アレっていいの〜?」

「なんだろう、ほら、ちょっと気を抜く感じとか、親近感が湧く、のかな?」

「いや俺に聞かれても」

 

 コメント:ちょっとネクタイ買って来る

 コメント:今緩めた

 コメント:兄者も緩めな? 

 コメント:俺のネクタイどこー? 

 コメント:ネクタイ緩めるだけで釣りに行ってて草

 コメント:パイセンならなんか釣れそうw

 コメント:スミスミはチョロイン

 

「ツバキはあれッスね、どんなツバキでも受け止めてくれる人がいいッス」

「条件厳しめだな」

「いやいやいや、格安物件ッスよ?」

「それもそれでどうなんだよ」

「あ、そいえばさ〜、パイセン前にしっかりした人がいいとか言ってなかったっけ〜?」

「あ、言ったかも」

「ほうほう、ずばりその理由はなんッスか?」

「え、あ、ほら、私、自分が自分がってできないから、その、引っ張ってほしいというか」

「なるほどッスね〜」

「パイセンを引っ張るの〜?」

「引っ張るというか、私が間違ったらちゃんと言ってくれる人? がいい?」

「知りませんて」

「……実はスミスミ先輩って、Mなんッスか?」

「え、えぇMっ!?」

「いや〜なんか攻めて欲しいみたいな話してましたよね?」

「してないけど!?」

「というか、この条件って兄者先輩まんまじゃないッスか」

「……えっ?」

「兄者先輩、ネクタイしますよね?」

「あー、まぁ、一応、仕事あるし」

「しっかりしてますよね?」

「……まぁ、相対的に」

「スミスミ先輩が間違ったら言いますよね?」

「言うってか、ツッコミ?」

「つまり、兄スミてぇてぇッス!」

「やかましいわ」

 

 コメント:ご唱和ください

 コメント:兄スミてぇてぇ

 コメント:兄者やんけ

 コメント:間違ったら何でも言いそう

 コメント:兄者のネクタイ緩めは効く

 コメント:え、兄者やん

 コメント:つばきち兄者好きなんじゃないの? 

 

「あ〜、兄者先輩は大好きッスけど、兄者の嫁はもうスミスミ先輩なんッスよね。そこんとこ解釈違いッスわ」

「違うの!兄者くんがたまたまそうだっただけで!」

「スミレさん、言い訳になってないですから」

「兄者くんがいいって言ってないからね!」

「なんで俺告ってもないのにフラれてんの?」

「あ、ちが、そうでもなくて、えっと……」

「とりあえず落ち着いて下さいって」

「パイセン顔赤〜」

「やっぱ時代は兄スミッスね〜。こう、スミスミ先輩は結婚してもずっと初心なんッスよ。で、兄者先輩は弄られても事実だから動じなくて、スミスミ先輩だけ照れるって感じがもう、……最高ッスね」

「陽キャでオタクでサイコパスとかキャラ盛り過ぎだろ」

「えっと、兄者くん? 別に兄者くんが嫌って言いたかったんじゃないからね? その、ね?」

「あー、はい」

「言葉なしに通じ合うとか、完璧夫婦じゃないッスか〜」

「じゃねぇよ。つか、俺スミレさんの連絡先すら知らんし」

「……はい?」

「あ〜、兄者ディスコードしかパイセンに連絡できないよね〜」

「そうだね。それに兄者くんってあんまりディスコード開かないし」

「基本PCはゲーム用なんで」

「え、え?あの、マジッスか?会ってから半年以上経ってますよね?」

「ああ」「うん」

「なのに、え、連絡先知らない?」

「おん」「うん……」

「なんッスか、コミュ障なんッスか?」

「別に」「……うん」

 

 コメント:パイセン……

 コメント:兄者そういうとこある

 コメント:え、知らんの? 

 コメント:パイセンェ……

 コメント:そこは聞けよ兄者

 コメント:これだからゲーマーは

 コメント:実は兄者からの嫌がらせ説

 

 普通に知らんでしょ。

 オフというか、飲みに行ったことは何度かあるが、それも別に二人でって訳じゃないし。

 ……いや、流石にか? 

 確かに一応曲がりなりにも半年話してる仲ではあるし。

 

「じゃあ、後で交換しますか」

「あ、うん、よろしく……」

「あ!兄者先輩〜ツバキともして下さいね!」

「おう。……なぁ愚妹、何故こうなった?」

「わかんない」

「あ」

「あ〜!」

「愚妹、罰ゲームな」

「へ? ……あぁ!ゲームしてたじゃん!」

「もろ忘れてんじゃねぇか」

「は〜い、桜先輩、罰ゲームの焼きそばッス!」

「うへぇ……」

「テンション高ぇな甘鳥」

「兄者くん、春ちゃんって辛いのは大丈夫なの?」

「普段からプリンを主食にするようなやつです」

「あ……」

「かっ、やァァァァァァ!!!」

「桜先輩、食レポ食レポ」

「むりむりむり〜!から……痛い!痛い口痛い舌痛い〜!!!」

「アッハハハ」

「春ちゃん、お水お水」

 

 コメント:姫☆虐☆

 コメント:これを見に来た

 コメント:あれはマジできちぃ

 コメント:辛いの無理だわ

 コメント:からいってよりつらい

 コメント:地獄の業火

 コメント:つばキチえげつない

 コメント:過去一重い罰ゲーム説

 コメント:罰ゲームでもないのに黒歴史晒されてる件

 コメント:それが姫だから

 コメント:ボコじゃん

 

「どこに笑える要素があんだよ」

「え、兄者さんも楽しんでるとばっかり」

「人をドS魔王みたいに言うなっての」

「え〜」

「兄者くんって実は優しいところがあるからね」

「だから、何故優しくない前提?」

「いやいやいや、兄者先輩はドSッスよ魔王ッスよ」

「お前そろそろ見えて来てないか? 俺の逆鱗」

「あ、触れるとツバキが死ぬやつッスねそれ」

「まぁ、タダじゃおかんな」

「怖いッスね!」

「だからそろそろやめとけよってことだな。愚妹、わかるか?」

「うぇ……へ?何が〜?」

「触れちゃいけない一線があんだよ。よく英語で言うだろ」

「英語? むり、アタシ日本人」

「アンタッチャブルってことッスか?」

「あぁ、そういうことだな」

「甘鳥ちゃん、アウトだよ」

「え……?……えぇ!?アンタッチャブル!?NGワードが!?普通そんなのにします!?」

「知らんだろうが、この人普通じゃないからな」

「もっと言いやすいやつじゃないんッスか〜!」

「ほれ、焼きそば」

「ドSッス!悪魔ッス!クソ兄者ッス!!!」

「はっはー、ほら、はよ食え」

「……かっっっっっっら!?わぁぁぁ(しら)がぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 コメント:新人に容赦ねぇ

 コメント:それでこそ魔王

 コメント:つばきちすら虐待するドSの鑑

 コメント:逆鱗に触れた

 コメント:パイセンとのコンビプレー

 コメント:さすが夫婦

 コメント:初めての共同作業

 コメント:つばきち入刀

 コメント:それは死ぬw

 コメント:つばきち切られとるやんけw

 

 ゲームで勝つのは楽しいな。

 なるほど、甘鳥が笑ってたのはそういう理由か。

 絶対ちげぇな。

 その後もワードを再設定しながらゲームは続行。

 一口ずつ食べていた焼きそばは、配信終了時点でほぼ完食状態だった。

 愚妹が。

 ちなみにスミレさん、そこそこ辛いのはいけるらしい。

 まぁ、それでもキツそうではあったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、配信は無敗のまま幕を閉じた。

 愚妹が弱すぎただけなんだが。

 ちなみに俺のNGワードは「ごめんなさい」だった。

 愚妹曰く謝らせたかったらしいが、ならもっとない頭使えよ。

 

「まさか、スミスミ先輩とほぼ同時に兄者先輩と連絡先交換するとは思ってなかったッス」

「むしろ、甘鳥がいなかったらスミレさんと交換することすらなかったろうな」

「兄スミにはスマホの連絡すら要らないってことだったんッスね〜」

「何も理解できてねぇのに察するな。……にしても、すげぇ汗だな」

「いや〜、コラボ配信が楽し過ぎてッスね。ついついテンション上がっちゃうんッスよ〜」

「……そうか。ま確かに、出だしから凄かったしな。先輩相手に容赦ねぇし」

「そういうキャラなんッスよツバキは。絡んで行きたいって言ったじゃないッスか」

「絡み方が挑戦的だけどな」

「負けてらんないんッスよ。兄者先輩に!」

「お前は何処の誰の何を目指してんだよ」

 

 余談だが、俺の分の焼きそばは余った。

 

 LIME

 

 夜斗『ファンからのプレゼントって、激辛焼きそば届いたんだけど』

 夜斗『俺嫌われてんの?』

 俺『へー』

 

 本当に余談だが、俺がスタッフさんに頼んで送った。




ご愛読ありがとうございます。
つばきちをもっと知って貰いたい。
でも姫虐したい。
なんというジレンマ(笑)
人が増えるとどうしても空気になりかねない人が出てきちゃうのも悩みどころ。

Q.つばきちは兄者のこと好きなん?
A.大ファンです

Q.つばきちは頭いいの?
A.常識力は兄者>八重咲>パイセン>つばきち≒夜斗>愚妹


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第三回 あなたの推しは?

  • 春風桜
  • 八重咲紅葉
  • 吹雪菫
  • サイサリス・夜斗・グランツ
  • 甘鳥椿
  • 音無杏
  • 紅上桃

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