妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件

#人を2D化するな

Q.一日で300お気に入りが付いたらどうしますか？

A.書くしかねえだろい！


はい、ありがとうございます！
高評価、お気に入り、感想貰ってテンション上がってます。
行き当たりばったりですが続けてみますので、もう少しお付き合い下さい。

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「兄者、配信しよ」

「意味がわからん」

　我が愚妹は馬鹿である。名前は桜（仮）。

　バカであるが故にその個性を発揮できるのか、VTuberとはこいつらしい天職もあったものだ。

　その天職をうっかり廃業させかけたのは俺だが、まぁ色々やって持ち堪えた。

　で、なんでそうなるのん？

「勝手にやれよ」

「兄者も出るんだよ」

「出ねぇよ。事故の処理はしたし、これ以上出る理由がない」

「あるよ」

「何？」

「今日の配信、立ち絵披露だもん」

「誰の？」

「兄者の」

「なんで？」

「ママが描いたから」

「なにやってんのおふくろ」

　妹曰く、別人らしい。

　ママというのはVTuberのデザインを担当した絵師を言うんだと。

　んで、春風桜を生み出した絵師さんは、何故か事故で乱入してしまった俺のイラストを描いたらしい。

　は？

「なにやってんのママさん」

「この前の配信見てくれたんだって〜。でね、気に入ってくれたみたい」

「その人は気に入った名も顔も知らない人物を描く癖でもあるのか」

「顔も名前も知ってるよ」

「え、知人なの？」

「だって兄者の写真渡したもん」

「おい個人情報。もっと危機管理して？危機感持って？」

　昨今は写真ひとつで住所まで特定してくるんだぞ。身バレしたらどうすんだ。

　多分事務所には俺身バレしてるんだろうけど。

「兄者が出るって告知もしちゃったしさ〜。ね？出よ？」

「事後承諾もいいとこだなおい。事務所さんはOK出したのか？」

「もち！じゃなきゃ立ち絵描かないよ〜」

「それもそうだが。俺の意思は無視されてないか」

「兄者はノリノリだよってマネに言っておいたから大丈夫」

「何も大丈夫じゃないし何をしてくれてんだおどれ」

　妹のスマホを強奪してマネさんと連絡を取る。

　返ってきた返事は、「YouTube見れば分かります」だった。

　何も分からんし、できれば分かりたくもない。

　仕方なしに検索欄に我が愚妹の別名を入力した。

【切り抜き】春風桜 兄者 DV【姫虐】

　とんでもないワード出てきたんだけども？

　仕方なしに配信に出たら勝手にDV男にされてるんだが……。

　動画は100万再生までのカウントダウン状態。

　開いてコメ欄を見るに、新たな扉を開いた紳士達が兄者なるエセVTuberについて熱く語っているようだ。

　はっはー、誰なんでしょうね兄者って。

　……やめよう、虚しいだけだ。

　マネージャーさんに詳しい状況説明を求めた。

　現在、多方から春風桜の兄者に興味が集まっている。らしい。

　人気（？）VTuberの兄者（一般人）が配信に3時間をゲームで埋めるという事故から始まり。

　事務所からオファーされて配信に公式参戦。

　二度ともス〇ブラしただけだが、魅せプレイや虐待プレイが思いのほか客受けした。

　だが、これ一般人なのよ？リアルビックブラザーなのよ？

「いいんですか？契約も何もしてない奴が配信に出て」

「面白いからいい！だそうです」

「上司さん、頭おイカレになられているのでしょうか？」

「ネジの4、5本は飛んでると思います」

　大変ですね、マネージャーさん。

　そう、我が愚妹の所属するVTuber事務所『プリズムシフト』通称P.Sは頭がおかしい。

　だがそれも上層部がそうなだけであり、このマネージャーさんは至って常識人だ。それが余計に可哀想……。いっそ狂えたら楽なのにな。

　そんなイカれた事務所だからこそ、問題児の権化たる我が愚妹もVTuberを続けられている。

　普通、あんな事故やらかしたら即アウトだもんな。

　P.Sのボスさんは放任主義らしく、自由にやらせるのが信条なのだとか。

　流石に身内を出させるのは自由にしてもやりすぎだと思うが……。

「は〜い、おはる〜。P.S二期生、春風桜だよ〜」

　そんなこんなで、配信は始まってしまった。

　コメント：おはるー

　コメント：おはるー

　コメント：そしてー？

　コメント：来るよな

　コメント：そら告知してるし

　コメント：結局兄者はライバーなん？

　コメント：公式の非公式ライバー

　コメント：矛盾の権化w

　前は気にならなかったが、めっちゃ人見てんのな。

　観覧5000人って、なんかもう怖い。

「は〜い、もちろんいるよ〜。兄者ど〜ん」

「はーい、どうもー、兄者でーす」

　コメント：恒例の棒読みw

　コメント：通算二回で恒例になるのか

　コメント：元気な姫と元気ない兄者がマリアージュ

　コメント：おかわわわ

　コメント：姫はともかく兄者はかわいいなのか

　棒読みで許されるとか、俺の評価低いなー。別にいいけど。

　つか、俺はライバーじゃないんだよな。

　公式のサイトに掲載もないし、チャンネルもリスナーも機材もない。

　あるとしたら、コネ？

「はいは〜い。もうまえこーじょー？とか要らないよね。今日は兄者の立ち絵を公開するよ〜」

「お前から前口上という単語が出るとは思ってなかったわ」

「兄者、アタシをバカにしすぎじゃないかね」

「バカにしてねぇよ。バカだと思ってるだけだ」

「ドヤ顔でいうことじゃない〜」

　コメント：仲良いな

　コメント：これ仲いいの？兄弟いないからわからん

　コメント：兄妹て大体こんなもん

　コメント：リアルだと特にな

　コメント：兄姫カップルあり？

　コメント：そこまで範囲広くない

　とんでもないこと言い合うなよリスナー共。

　リアル妹とカップルにされるとか、唐揚げに唐突にマヨネーズかけられるくらいには嫌なんだが。美味しいけどね？ビックリするじゃん。

　並んで歩いてパッと見カップルかなー？とか思われるのは仕方ないとか思わんくもないが、知ってて言うのはどうなのよ。

　コメント：立ち絵って誰が書いたん？

　コメント：リスナーとかファンアートじゃね

　コメント：公式だったらド肝抜く

　コメント：公式はさすがにないだろ

　コメント：リスナーに一票

　お？なんかソース談義が始まっている。

　俺らが変な会話している間もあっちは待ってるもんな。

　ちなみに、このコメントにはスーパーチャットなるものがある。

　いわゆる投げ銭だ。

　週とか月の上限があるものだが、マジのファンはサブ垢まで使って投げるとか。

　そしてこれはVTuberの貴重な財源。

　つまり、事務所の財源だ。

　正直、俺はこのよく分からん状況を続ける気は無い。

　いい感じに事務所を儲けさせて下山するとしよう。

「さてね。俺なんかの絵を誰が描いたんだか」

「え？さっき言ったじゃん」

「リスナーは聞いてないだろ」

「あ、そうだね〜。描いたのは──」

「まぁまて。せっかくだしクイズにするか」

　コメント：兄者が仕切り出した！

　コメント：これ誰のチャンネル？

　コメント：チャンネル名変える時が来たか

　コメント：春風兄妹チャンネル【登録】

　コメント：クイズって、当たったら何かあるんか？

　コメント：ファンアートに一票

　なんかある、ねぇ。

　他人の配信に賞品とか求めるのか。

　何も用意してないし、こういう得しないコメントは無視しよう。

「当たったら？そうだね〜。当たった人には兄者への挑戦権を与えよ〜」

「与えるな。そして挑戦するな。判断もつかんから無理だ」

「否定が強くない？え〜、じゃあほら、名前覚えればいいじゃん」

「はぁ……。はい、テキトーに予想してくれ」

　コメント：兄者への挑戦権？地獄への片道切符では？

　コメント：あれとやり合うのは相当の手練じゃないと無理

　コメント：公開処刑じゃんよ

　コメント：公式に一票

　コメント：ファンアートに賭ける

　コメント：2000円 通りすがりの神絵師に賭ける

　コメント：ガチの賭博w

　コメント：500円 姫が描いた説を推そう

　コメント：姫の画力ェ……

　油取り神：公式に花京院の魂を賭けよう

　コメント：マジモンの公式絵師来た！？

　コメント：偽物かと思ったら本物やんけ

「あ、ママだ〜」

　どれよ。

　てかママだじゃねぇ。

　その人が言ったのがもう答えじゃん。

「あー、んじゃそろそろ出せ。頃合だろ」

「兄者がわがまま〜。まいいや。みんないくよ〜。兄者ど〜ん」

　PCをカタカタと弄り、配信の表示画面に新たに男性のイラストが貼られた。

　ちなみに見るのは俺も初である。

　黒髪はボサボサで、目付きは鋭い。赤い瞳はクマのせいでより悪役感が出てる。

　灰色に黒のラインが入ったTシャツを来ていて、首からは見た事のある形をしたペンダントしていた。

　なんだろ、あれだ。ガノンの額についてるやつに似てるわ。

　コメント：かっけぇ！

　コメント：これはかなり完成度高いのでは？

　コメント：動かんの？

　コメント：立ち絵やしな

　コメント：この絵、姫とタッチが似てない？

　コメント：画家ニキ解説求む

　コメント：姫のイラストに寄せたファンアートか同じママ説

「なんつーか、イケメンだな」

「めっちゃ盛ってるよね〜」

「それな」

「兄者こんなに優しい目してないし」

「この目が優しげとか正気か？そして俺そんなに目つき悪い？」

「悪いよ〜？兄者、鏡見たことない？」

「そんな致命的なレベルで悪いのかよ」

　コメント：兄者涙吹けよ

　コメント：俺たちは気にしないぜ

　コメント：これより悪いとか完全に悪魔か魔王な件

　コメント：ところでソースはどうなったん？

　コメント：姫ママじゃね？

　完全に悲しい事実を突きつけられたんだが。

　それはそれとして、クイズにしたし答えはいるか。

「あ、うん。ママだよ〜。ママに頼んだらね〜、描いてくれた〜」

「ん？今なんて言った？」

「ママに頼ん……あ」

「おい」

　コメント：？

　コメント：？

　コメント：なにごと？

　コメント：兄者の様子が……

　コメント：なんと、キング兄者になった

　コメント：兄者はスライムだった？

　コメント：村人で魔王のスライムってこれもうわかんねえな

　俺はママさんが勝手に描いたって聞いてたんだが。

　今こいつ、頼んだって言ったよな？

　それはお前が能動的に俺をこの配信に呼んだってことになるわけで。

「詳しく説明してもらおうか」

「あ〜、は〜い。それじゃあ今日はこの辺にしよっかな〜」

「逃がさねぇぞ愚妹」

「はっはは〜……」

　コメント：姫ー！逃げて！超逃げて！

　コメント：魔王からは逃げられない

　コメント：しかしまわりこまれた

　コメント：愚妹てw

　コメント：何気に兄者が姫を呼んだの初では

　油取り神：姫、がんば

　コメント：1500円 姫、がんば

　コメント：3000円 身代金

　コメント：500円 身代金

　コメント：兄者のDVに身代金払うの恒例化しとるw

　事情聴取の始まりだ。

　俺は手の準備運動をしながら愚妹に向かう。

「さて、話してもらおうか」

「……はい」

「お前が依頼した？」

「……しました」

「なぜ？」

「……みんな見たいかな〜って」

「それで？」

「……ママに聞いたら、いいよ〜って言うから」

「これお前のチャンネルだよな？」

「……はい」

「俺VTuberでも事務所の人でもないよな？」

「……はい」

　コメント：ガチ説教始まった

　コメント：姫虐助かる

　コメント：姫涙吹けよ

　コメント：兄者の前で正座してる姫が見える見える

　コメント：立ち絵も相まって怖ぇw

　コメント：兄者来てから姫の素を見れた希ガス

　コメント：姫は常に素なんだよなあ

　コメント：初配信10分でキャラ崩壊してたな

　コメント：2000円 身代金

　コメント：800円 姫虐代

　どうしてくれようかこのアマ。

　折檻は後でやるとして、もう動画閉めてしまおう。

「ほれ、さっさと配信終わるぞ」

「待って待って、スパチャ読まないと」

「何それ？」

「せっかくスパチャしてくれたから〜、最後に名前とか読むんだよ」

「ほーん。ほれ、はよやれ」

　コメント：過去一終わって欲しくない配信来た

　コメント：これが終わったら姫が……

　コメント：200円 これを投げれば延命できると聞いて

　コメント：スパチャ投げろー

　コメント：ガチの身代金感出てきてるの草

　続々とコメ欄にスパチャが投げられる。

　すごい絵面だ。ここは正月の神社か？

「みんな〜！助けて〜！兄者に殺される〜！」

「おいモラル。安心しろ、命までは取らん」

「いや〜！」

　コメント：1200円 姫逃げてー

　コメント：セリフが魔王

　コメント：スパチャが途切れたら最後

　早く終わらせまいと永遠にスパチャが飛び交いそうだ。

　そろそろ本当に終わりにしようか。

「これ以降のスパチャは読まんぞ。ほれ、さっさと読み上げて終わらせろ」

「みんなもっと見たいんじゃないかな〜？」

「…………」

「焼きもやしさん、虹オタクさん、じいやさん──」

　コメント：こんな悲しいスパチャ読み初めて見た

　コメント：声震えてるやん

　コメント：天国へのカウントダウン

　コメント：地獄では？

　コメント：おいその先は地獄だぞ

　コメント：愉悦

　泣き泣きスパチャを読み上げる愚妹。

　俺はデコピンの準備を終え、配信の終了を待った。

　過去一哀愁に満ちた「ばいば〜い」の後、ボコボコにした。

　ゲームで。デコピンもしたけど。

　散々だ。

　出る気もない配信に強引に出され、印象操作され、VTuberの世界に片足どころか下半身くらいまで突っ込んでしまった。

　立ち絵を用意された段階でだいぶ外堀埋められた気がする。

　どうにかして俺の日常に戻らんとな……。

　後日、妹のスマホに連絡が来た。

　相手はママさん。

　俺に見せて欲しいとのことでメッセを見る。

『2Dで動きたいって？』

　スマホを投げた。

　妹のを。

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神絵師求む。
兄者の立ち絵はノ〇ゲーム・ノ〇ライフの空をイメージして頂ければ。

読んで貰えるのが嬉しいので続けてみます。
感想、高評価貰えると嬉しいです。