妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件 作:江波界司
ふぁ!?っとなって桃源郷かここは。
そして、祝兄者アンケート一位(2022/01/08現在)
まさかパイセンを抜く日が来ようとは。
流石兄者だぜ!
サンタクロースをいつまで信じていたか、なんて話はとっくにシーズンを過ぎた。
名作は廃れないが、ウチのポンコツサンタは愚妹が小3で正体を察するレベルで駄作だった。
アホは親父譲りらしい。
さて、聖夜が過ぎると早々に明けるのが年ってやつだ。
正月は誰もが休み。
我らが……じゃねぇわ。
かのP.Sとて例外ではなく、最低でも三賀日は配信なし。
その分録り溜めの企画動画は上がるが、本人達は完全なおやすみモードだ。
当然ながら、配信がなければ『兄者』もまた休みになるのだが。
「新年あけおめ!今度はちゃんと鍋食うぞ!うめぇのを!」
「あけおめッス!」
「いえ〜い!」
「明けましておめでとう。今年もよろしくね、みんな」
「おめでとうございます!今年もよろしくです!」
……どうやら正月だろうと休みだろうと、『兄者』さんは忙しいようだ。
ウチの正月はまぁ実家帰りが恒例行事になっている。
大晦日前から移動して三賀日を過ごして再び我が家へ。
年休含めて五日まで休みだし、全力でだらけよう。
何せ休みだからな。
スケジュールは違うにしても、実家帰りはするのが一般的だろう。
ましてP.Sのメンツは一人暮らしの奴もいるし。
配信もない、ちゃんとした休みが来るわけだ。
夜斗は、めんどくさいからこっちにいるという。ゲームできん環境に帰るのも嫌だとか。
気持ちは分かる。
菫さんの実家は、電車に乗れば一時間もかからないらしい。こっちにいるのは何かと便利だからだろう。
まぁ分かる。
八重咲家のルーティンは年明け後の実家帰りだという。あけおめをいう知り合いもこっちの方が多いだろうしな。
分からんでもない。
甘鳥は、一人暮らしだが年が明ける前に戻って来たとか。なんでも、田舎過ぎて暇なんだと。
分かるか分からんかで言えばギリ分かる。
「二日にみんな遊びに来るから兄者も残る〜」
「うん、分からん」
この愚妹は何を言っているのだろう。
日本語のはずなのに理解できない。
しかもそれを聞いた両親は二つ返事でそそくさと実家へルーラした。
あまりにも迅速すぎて魔法かと思ったぜ。
情報が多過ぎて処理に困る。
そんな最強の展開した領域にいる気分になってから、はや当日。
俺は鍋を作っていた。
まだ領域解けてないな。
「正月早々に、
「ごめんね、兄者くん。迷惑だったよね」
「はい」
「即答なんだ。しかも、はい、なんだ」
「そりゃそうでしょ」
「いいじゃねぇか兄者!年明けから楽しいだろ!」
「うっかり鍋がそっちにひっくり返るかもしれん。気をつけろ、事故だ」
「それは故意じゃねぇか!?」
「兄者先輩!手伝うッスよ?」
「それは鍋を作ることか。それとも返すことか」
「ふっ、両方に決まってるッスよ」
「だから、鍋を人に投げんなァ!」
新年早々うるさい凶運ゲーマーだな。
そんな勿体ないことしねぇわ。
せめて鍋を触らせるくらいで。
最低限の野菜と肉を用意して鍋にぶち込む。
味が染みるまでは待ちだな。
そろそろ歩かせた買い物部隊も帰ってくる事だろう。
「ただいま〜……うぅ、さむ〜」
「あ、おかえりなさい」
「おかえりッス、春先輩、サキサキ先輩〜」
「おお!?やけに買ったな、二人とも!」
「わたし達的には、ジュースは必要不可欠ですから」
「八重咲、おつかれ。罰ゲームだからそれ以上は言わんが」
「まさか夜斗先輩にジャンケン負けるとは思いませんでした」
「今年のおみくじは大吉だったからな!」
「じゃあ効力切れたんで、もう大凶と変わんないッスね」
「オレの大吉ってジャンケン一回分なのか!?」
「兄者〜さむい〜こたつ〜」
「ねぇよ。欲しけりゃ実家まで歩いてけ」
「鬼〜!鬼畜〜!」
「誰のせいで飲み物無くなったと思ってんだお前。買い出し枠は固定だ」
「クソ兄者〜!!!」
クソなのお前だろうが。
なんで準備した飲み物空にすんだよ。
おかげで冷蔵庫は野菜とプリンしかねぇよ。
飲めってか?あの黄色い甘さを溶かして固めた準液体を飲めってか?
「うぅ……本当はお酒も準備してたのに……」
「今日はウチの決まりで一日禁酒なんで」
「へぇ、そんなのあるんッスね」
「あー、あるよな!その家独特のルールとか」
「え、そんなんあったっけ〜?」
「いやねぇけど」
「ねぇのかよ!」
「ないんだ!?え、じゃあ飲んでもいいじゃん!」
「今この家の主人は俺だから俺がルール」
「暴論じゃないかな!?」
「一応、嘘は言ってない、んですかね?」
「つーか、そもそもこの時期に集まるか普通」
「ちゃんと約束したから」
「あ、パイセン鍋したいとか言ってたっけ〜」
「このタイミングとは言ってねぇ」
「でももう二ヶ月くらい前の話ッスよ?」
「二ヶ月前なら忘れろよ」
「まぁまぁ。ほら兄者さん、肉取ってあげますから」
「おお、サンキュ」
「今日の肉はオレの奢りだからな!感謝して食えよ!」
「うま〜!え、うま〜」
「本当に美味しいですよこれ!人の金で食う肉だからですかね」
「美味いな、リスナーから巻き上げた金で得た肉」
「美味しいッスね〜。スパチャで買った牛肉は〜」
「言い方に悪意しかねぇ!」
鍋というかすき焼きというか。
限りなくすき焼きだが、入ってる具材が独特な上にメイン張れる奴らもいるから名前が決まらんな。
そもそも鶏も豚もつみれも入ってる時点ですき焼きは名乗れんか。
食えるごちゃ鍋〜卵を添えて〜をすき放題につまんでいく。
第一次牛肉争奪戦は突如始まった『マジカルビーフ』で噛んだ夜斗の敗北に終わる。
「……なんで買ったオレに肉ねぇんだよ!」
「つみれあるだろ」
「牛を食わせろ!」
「夜斗先輩、お前は、今までに食った肉の枚数を覚えているのか?」
「ゼロだわ!」
「というか、なんで鍋食べてるのにゲームしてるんッスかね」
「職業病だろ」
「あはは、それはあるかも」
「ありますね。なんか会話の中でボケたくなったり」
「あるのか?」
「え、さ〜?みんなけっこうボケてるとは思うけど〜」
「いや、春先輩が一番ボケてるじゃないッスか」
「え〜?」
「え?」
「甘鳥、こいつは天然ボケじゃねぇ、天然アホだ」
「なるほどッス」
「なにがァ〜!?」
その後も賑やかな鍋パーティー(?)は続いた。
もはや鍋が主役じゃなかったけど。
だって肉が無くなった辺りから鍋パーティーはスマ〇シュブラザーズになってたし。
何を言っているか分からねぇと思うが定期。
夜斗がコントローラーを持って来たせいで、牛肉分配枚数の恨み晴らし大会が始まったわけだ。
ま、そんなわけないが。
「なんか、平和だな!」
「このふざけた日のどこがだよ」
「違うくて、今の試合の話」
「あー、この4人だしな」
「ちょ、パイセン〜?一回落ちて〜」
「落ちたら死んじゃうんだけど!」
「アハハハハ!あの電気ネズミ、流石に死んだんじゃないッスか?」
「主人公補正舐めんな!」
「え、この人しぶと!モテないッスよ」
「うっさいわ!」
ピンクの球体も女剣士もオルタじゃないガノンもサトシのペットも実力は大して変わらんからな。
まして乱戦なら余計に誰かが群を抜くことは無いだろう。
さっきから愚妹が三回くらい漁夫の利で生き残ってるけども。
夜斗と俺は実質レギュレーション違反だなこりゃ。
愉快な仲間たちが遊んでる間に、食器を片して洗っておく。
昼飯を食ったばっかであれだが、こいつら泊まるとか言いかねんテンションだし。
いや、流石に帰らすぞ。
じゃねぇと俺の貴重な休みが消えてなくなる。
正月くらいゆっくりさせろ。
夜斗に手伝わせるのは俺が怖いので断った。
小一時間してリビングに戻ると、なんか空気が重かった。
というかゲーム画面の動きとその前に座る人らがガチだった。
え、そんな肉食べたかったの?
ならもっと準備したよ?
夜斗が。
「何があった。愚妹はともかく、なんかガチじゃね?」
「ああ、さっき桜と紅葉が買い物行ったろ?あれでクジ引いたらしい」
「あー、町内のやつか。毎年この時期にやってるからな」
「で、桜が温泉旅行を当てたんだ」
「またか」
「またってなんだ!?」
「いや、毎年当ててんだわ」
「毎年当ててるってなんだよ!?」
「特賞はいつも違ってたけどな。去年は大量の米だったし」
「いや、なんで平然としてんのか分かんねぇ」
「最初は運営のおっちゃんのやらせとか思ってたけどな。10年連続はサービスの域超えてるし」
「異常だろその運!?」
「お前もある意味異常だとは思うが。つか、それでなんであんな殺伐としてんだ?」
「あぁ、あの券、5人までらしい」
ウチは両親に俺と愚妹の4人暮らし。
なるほど、残り一枠を賭けてるわけか。
いや、他人の家の旅行に付き合うってどうなんだ?
そもそもこのこと知ってんのかウチの親。
「てか、枠争うなら愚妹じゃなくてお前がやるんじゃねぇの普通」
「オレは旅行はあんまりだし。それに行くに行けねぇだろ」
「あー、ファンとかもうるさいのかその辺」
「うっしゃァァァ!勝ッちィ〜!」
「つばきちやる〜。てかうまくない?」
「これでもやりこみましたから。これでツバキの勝ち越しッスね!」
「くっ……なんでわたしが……」
「あ、でも、ほら、一位は春ちゃんだから、多分あんまり変わらないよ、きっと」
「でもスミレ先輩は真ん中ですよね」
「え、あ、うん」
「くっそぉ!」
「そんなに落ち込むことかな!?」
「待て、なんか話噛み合ってなくないか」
「ん、兄者〜どしたの?」
「いや、夜斗から聞いた感じとなんか違うんだが」
「あ、兄者さん。今ちょうど終わったところなんで発表します」
「おう、頼む」
「助手席が桜ちゃん、その後ろがわたしで、真ん中にスミレ先輩。で、その右隣にツバキちゃんです」
「まてまてまて、何の話だ」
「え?席順ッスけど」
「何の」
「車のッス」
「誰の」
「兄者さんの」
「何で」
「兄者が車だして〜」
「いや、まさかとは思うが……5人ってこの5人なのか?」
「「「「うん」」」」
「うんじゃねぇよ」
どうやらこのカオスレディースに混ざれということらしい。
言われるまでもなく地獄じゃねぇか。
流石に夜斗に行けともいえんしなこの状況。
だから、なんで正月から忙しいんだよ。
これのおもりとか、アベンジャーズ必要なレベルだろ。
全員ハルクみたいな危険度だし。
八重咲の用意が良すぎて、既にこっちの親には話がついてるらしい。
まぁ、職業的に旅行はしてるしな。それに時間も取れんだろう。
期限的に考えると、正月休み後の土日を使う感じだな。
こいつらの配信業はどうなるのか知らんが、まぁ大丈夫だから行けるわけで。
はぁ……なんでこうなるんだか。
使わないのも勿体ないし、しゃーないな。
行くだけ行くか。
そして、旅行当日。
「んじゃ、楽しんでこいよ」
「「「「え?」」」」
送るだけ送って、旅館に置いて来た。
帰ってゲームしよ。
「「「「クソ兄者〜!!!」」」」
温泉イベントすると思った?
悪いな、ここから先は通行止めだ。キリッ
沢山のマシュマロありがとうございます。
ネタ切れといえばリクエストが、
クソマロを読めば更なるクソマロが届く。
流石VTuberが好きな読者様だなと思いました。
これからもよろしくお願いします。
Q.つばきちの持ちキャラは?
A.キャプテン・ファル〇ン
Q.兄者のアンケート一位なった感想は?
A.「推すんじゃねぇよ」
感想、高評価、誤字報告、マシュマロ、ファンアートありがとうございます!
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第三回 あなたの推しは?
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