妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件   作:江波界司

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いつもありがとうございます!

今回は日常(?)回。
配信無しでお送りします。


#兄者さんちの今日のごはん

 自宅。

 最もリラックスできる空間であり、文字通りのホームだ。

 逆に言うと、人んちに居るのは緊張することも避けられない部分もある。

 まぁ、散々やって来ては騒ぎ散らかして帰る連中からすれば我が家での緊張感ってのはほぼ皆無だろう。

 

「んで、なんでお前ら正座?」

 

 そんな連中が今、リビングで正座している。

 なんか悪いもんでも食ったんか?

 

「わたしとしても、まさかこんな雰囲気の中お返しを貰うとは思ってませんでしたよ……」

「この緊張感なんなんだよ」

「兄者先輩が何故か全員集めたせいじゃないッスか」

「面倒だから一気に渡そうと思っただけだが」

「面倒はなくないッスかね!?」

「あーいや、できてから時間置くのは嫌だったって意味でだな」

「ってことは、兄者くんが、手作りするの?」

「まぁ、そうですけど」

「「「えぇぇぇぇぇぇ!!!」」」

「なぜ叫ぶ」

 

 確かに料理が得意とは言えんが、失礼過ぎるだろ。

 

「どれだけ頼んでも絶対に断ってきたあの兄者くんが、手作り!?」

「スミレさん、そこまで頑なに断った覚えないです」

「あの理不尽大魔王がですか!?」

「八重咲、喧嘩売ってんの?」

「まさか、あのドS大魔王系男子の鬼畜裏ボス鬼神MAXエンドクソ兄者先輩が!?」

「よーし、表に出ろ。先制でメギドラオンでございますしてやる」

「即死ですよそれ!」

「兄者くん、よく分からないけど怖いよ……?」

「それはそうと、本当にどういう風の吹き回しですか?」

「お前ら軽くスルーできる罵倒じゃなかったぞおい」

「兄者先輩の料理とか、闇鍋以来ッスね」

「あれを料理にカウントすんな。あれは禁忌黒魔術の類だ」

「いやいや、ハンバーグ作ってくれたじゃないッスか。激辛の」

「そうだったか?」

「あんな劇薬食べさせてよく忘れられますね!」

「あんなイカれた企画に呼んどいてよく言えんな」

 

 スミレさん、八重咲、甘鳥を呼んだのはホワイトデーとかいう半強制型時間経過イベントが原因だ。

 わざわざ手の込んだチョコから値段のするものまで渡された手前、律儀に倍返ししようとすると俺の財布が急速ダイエットで餓死しかねん。

 

「っつーわけで、飯でも作ることにした」

「お返しは2の三乗倍を期待していいんですね!」

「計算式バグってるぞ八重咲。材料費2割、人件費8割でちゃんとトントンにしてる」

「ほぼ人件費じゃないッスか!」

「会社の支出なんてほぼ人件費なんだから変わんねぇよ」

「そんなことはないと思うけど」

「ところで、桜先輩はどうしたんッスか?」

「あー、多分、課題ですよね」

「今絶賛やってるな。部屋に缶詰だ」

「大変だね、春ちゃんも……」

「八重咲は終わったのか?」

「大学から送られて来たやつですよね。三日もあれば終わりますよ」

「そんな量だった記憶なかったッスけど、大学によって違うんッスかね」

「八重咲のスペックが異常なだけだ」

 

 少なくとも愚妹よりはいいとこ行ってるはずだし、ちゃんとするとこはちゃんとするからな。

 ちょっと待っててくれと言い残し、キッチンへ。

 どこぞの体は剣で出来ている系男子みたく料理番組を始める気はない。

 さっさと作ろう。

 

「兄者先輩って、結構料理できるッスよね」

「そうだね。ちょっと前に、焼きうどんとか作ってくれたし」

「ありましたね。夜食と言えば焼きうどんって、スラムダ〇クで相場は決まってますから!」

「兄者くんにチョイスがコア過ぎるって言われてたね」

「待って欲しいッスよ。なんッスかそのおいしい話!」

「えっと、前に春ちゃんの勉強を見たことがあってね」

 

 そんなこともあったな。

 スミレさん、ほぼ役に立ってな……いや、言わんでおこう。

 夜食作るの手伝ってもらったし。

 どうでもいいが、聞こえてくる会話がほぼコラボ配信の雑談だな。

 リラックスしてるのはいいことか。

 

「そんなことがあったんッスか……クッソ、あの時勉強だからと断らなければ……」

「断って正解でしたよ。あれは」

「そんなやばいんッスか、桜先輩って」

「数分置きに二人が頭を抱えてたね」

「言葉を尽くして説明した後に、へ?って言われるダメージはデカイんですよ」

「嫌ッスねそれ」

「私は勉強とか苦手だったから、あんまり力になれなかったけどね」

「桜ちゃんに勉強を教えるのは常人には不可能ですからあんまり気にしなくていいと思います」

「サキサキ先輩、かなり酷いこと言ってないッスかね」

「十何年も教えて来たであろう兄者さんが凄すぎますよ全く」

 

 誰が常人じゃねぇって?

 こっちからすりゃお前らの方がよほど常人超えてるってのに。

 

「というか、毎日兄者先輩の料理食べれてる桜先輩ってズルくないッスか」

「兄妹だからね」

「実は案外食べれてないかもしれないですけどね」

「そうかな?」

「めんどくせー、とか言って作らなかったりしてそうじゃないですか」

「ありそうッスね」

「確かに。自分の分は先に食べて、自分でやれ、って言ってそうだよね」

「「めっちゃ分かります!」」

 

 ……なんでこの人ら、やたらと解像度高いの?

 兄者検定2級とか持ってるだろ。

 まぁ、愚妹が普通に愚痴ってる説濃厚だけど。

 

「桜先輩の料理の腕だと、……まともに生きていけるんッスかね」

「……無理じゃないですかね」

「不安、だね」

「カップラーメンが主食になるッスね」

「実体験じゃないよね、それ」

「……はっはー、まっさかー、そんなわけないじゃないッスか」

「間がすごいあったけど」

「主食はウ〇バーイーツッスよ!」

「結局作ってないですね!」

「でも、毎日作るのって面倒じゃないッスかね」

「う〜ん、私も毎日はしないかな。お惣菜が最近多いし」

「それもそうですけど」

 

 俺も最近は惣菜が多いな。

 高校入ってからは飯担当は俺だったし、数はこなしてたと思う。

 入学式の次の日、おふくろに「自炊するのと食べ物買う金がなくなるのどっちがいい?」と聞かれた時には流石にツッコんだ。

 うちの親父、いいもん作るけどそれ以外が絶望的だったからな。

 何してくれてんだバカ親父。

 おふくろがマネージャーに専念してからは安定してる辺り、専業主婦期の苦労が忍ばれる。

 家にいる時間がまだ長かった親父は、印象ほぼニートだったし。

 

「できたぞー」

「待ってました!」

「……いや、え、なんッスかこれ」

「米、みそ汁、生姜焼き、肉じゃが、ほうれん草の胡麻和え、麦茶だな」

「定食みたいだね」

「てっきりステーキでも出てくるかと思ってたッスけど」

「焼くだけならいつでも出来るからな。ステーキ屋行けって話だし」

「というか、メニューあざとくないですかね!」

「何がだよ」

「なんですかこの結婚して半年くらいのメニューは!若妻ですか!」

「性別は守れよ。何も合ってねぇ」

「こういう料理って、家庭の味がでるよね」

「まぁ、そうですかね。あ、食えないものとか聞いてなくて悪い。アレルギーとかあったらよけてくれ」

「問題ないッスよ!」

 

 家庭の味か。

 こういうのって刷り込みだしな。

 自分ではよく分からん。

 

「「「いただきます」」」

「……めちゃくちゃ美味いッスね!」

「そうか」

「肉じゃが最高ですね。兄者さん、いい嫁になりますよ」

「なりたくねぇな」

「生姜焼き、味が濃いね」

「口に合わなかったですか」

「あ、そうじゃなくてね。こう、濃いのにしょっぱ過ぎないから凄いなって気になって」

「米と食う前提で味付けしてますからね。ただ塩は控えめにしてリンゴをすりおろして混ぜてるんですよ」

「リンゴ!?隠し味に果物入れてるんだ」

「甘じょっぱくなって、米に合うんですよ」

「そうなんだ!今度試してみるね」

「なんッスかこの夫婦、てぇてぇんッスけど」

「え、普通だと思ってました、リンゴ」

「スペック高すぎて話題消えるなんてあるんッスか」

「調べたらすぐ出てくる情報ではあるしな」

「あと、蜂蜜とかもいいですよ。砂糖減らせますし、とろみと甘みが一気に出るので」

「なるほどな。それは試したことなかったわ」

「あの、料理できないメンバー置いてけぼりにすんの辞めてもらっていいッスかね」

 

 好評で何よりだ。

 甘鳥も料理すりゃいい。

 一人暮らしだろ。

 八重咲にでも教えてもらえよ。

 腕は俺より遥かに上だろうしな。

 

「兄者〜、お腹すいた〜。あとめっちゃいい匂いするんだけど〜」

「おん?あぁ、呼ぶの忘れてたわ」

「え、ひど〜!ご飯何〜?」

「そこに緑のたぬき置いといた。お湯も湧いてるぞ」

「なんでアタシだけカップ麺なの〜!?」

「これ、一応ホワイトデーの分だし」

「アタシもチョコあげたじゃん!」

「チロルチョコ返しただろ」

「ホワイトデーは倍返しって兄者言ってたじゃん!」

「だから、そこに天そばあるだろ。5倍以上で返してんだから感謝しろ」

「アタシも肉食べたい〜!」

 

 このアホが課題溜めすぎて、ここ最近付き合わされてんだよな。

 手伝いに徹するのって、意外とストレス溜まんだよ。

 自分でやった方が早いし。

 勉強したいとは思わんが。

 

「相変わらず、仲いいッスね」

「こういうやり取り見てると、春風家の日常を見た気分になりますよ」

「配信でもいつもこんな感じだから、兄者くんって本当に素なんだって思うよね」

「キャラを演じれるほど、俺に演技力ねぇよ」

「またまた〜。兄者さんの声真似スキルとか演技力の極地じゃないですか」

「うるせぇっての。つか、お前らも大概素だろ」

「最近はそうかも。デビューしてすぐの頃のこと、初期スミレなんて言われてるし」

「まぁ、デビューから素の先輩がいるッスから、後輩としてはやりにくいッスよ」

「お肉お肉〜。……?なんでこっち見てんの〜?」

「愚妹は別として、八重咲は一貫してオタクしてんじゃねぇの」

「割とそうかもですね。どちらかというと、限界化を素にカウントされてる節がありますけど」

 

 まぁ、確かに。

 甘鳥はその辺悩んでた時期があった気がするが、最近は聞かんな。

 相談しにくい話題ってだけかもしれんが、知らせがないのは何とやらか。

 まぁ、叩けばなる先輩共がいるからな。

 騒ぎ甲斐もあるだろう。

 

「この後、ゲームしない〜?」

「お前は課題あるだろ」

「え〜、休憩したい〜」

「今してる」

「息抜きって大事じゃん〜」

「常時息抜きしながら生き抜いてる奴が何を言う」

「兄者さんのツッコミセンスって、改めて思うと凄いですよね」

「リアルボケが身近にいるせいだろ」

「誰がリアルボケだ〜!」

「鏡見てこい、写ってるから」

「アタシじゃん!」

 

 そんなこんなで、日が落ちる前にはお開きになった。

 長居させると夕食まで出させられそうだったし、うっかり酒を持ち出しかねん人がいるからな。

 後半は本当にゲームするような流れになって来たが、愚妹の課題を手伝ってもらう交換条件を飲むものはいなかった。

 そりゃそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、夜斗が遊びに来た。

 日付は違うが、わざわざホワイトデーイベントをしに来たらしい。

 

「兄者、倍返ししに来たぜ」

「プリンかよ」

「27こ貰ったからな。わざわざ揃えてきたぜ!」

「そりゃどうも。そういや、駄弁りに来た時、菓子とかジュース貰ったよな」

「ええ?いや、あれはバレンタインとか関係ないやつだし」

「安心しろよ。プリンなんて甘いもん贈らねぇから」

「おいやめろよ!すげぇ嫌な笑顔すんなよ!」

 

 夜斗は変なところで真面目だからな。

 贈ったもんはちゃんと自ら消費するだろう。

 

 そしてそれから一週間後。

【地獄】激辛焼きそばを消費する配信part1【サイサリス・夜斗・グランツ】という、シリーズが始まった。

 

 全part10か。

 頑張れ、自称魔王(笑)。

 

 

 

 

 




虐待するとほのぼのしたくて、ほのぼのしてると虐待したくなる……。
しょうがないよね。
こいつら面白いから。


Q.兄者は本命チョコもらったの?
A.自己防衛のため、兄者は触れないようにしてます。

Q.夜斗が激辛焼きそばで配信してるのは何故?
A.少しでも食べるモチベを上げるため

Q.配信のネタ貰って夜斗は感謝してる?
A.夜斗「してる訳ねぇだろ!」



感想、高評価、誤字報告、マシュマロ、ファンアートありがとうございます!
メンバーの専用ロボのファンアートを頂きました。
ロボット系も好きなので嬉しかったです!

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第三回 あなたの推しは?

  • 春風桜
  • 八重咲紅葉
  • 吹雪菫
  • サイサリス・夜斗・グランツ
  • 甘鳥椿
  • 音無杏
  • 紅上桃

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