妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件   作:江波界司

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祝総アクセス数360万件突破!
いつも本当にありがとうございます。

新年あけましておめでとうございます。(やや遅い)
今年最初の更新です。
今回は日常成分多めでお送りします。



#Vの恩返し

 この世には2種類の人間がいる。

 センスがある人間とそうでない人間だ。

 そして残念ながら、俺は後者だ。

 センスの善し悪しは人それぞれだが、少なくとも俺はセンスが光るタイプじゃない。

 流行とかオシャレとかよく分からん。

 これも主観だとか考えることもあるかもしれんが、実際に比較してみると凄くわかる。

 

「うん。今日は寝てるわ」

「買い物行くって言ったじゃん〜!」

「お兄さん……?」

「なんや、今になってキャンセルかいな」

 

 玄関で待つ三人を見て思うが、オシャレだなこいつら。

 その辺の飯屋とかカラオケなら別に気にすることもない。

 だがモールを練り歩くとなれば流石に目につくもんだ。

 愚妹はそういうのがもともと好きなタイプだし、音無も中々の服装をしている。

 音無の外行き用の服は大体、姉御セレクションだとか。

 当然、姉御はオシャレ番長と呼んで差し支えない。

 それも気合を入れた様なやつじゃなく、普段からこんな感じなのだろうと察せられるようなもの。

 なんだろうな、この場違い感。

 一緒に歩きたくねぇ。

 

「悪いな。急用ができた」

「配信以外は暇って言ってた〜」

「だから急用ができたんだよ」

「それなに〜?」

「ちょっと神機使ってアラガミを捕食しに行く必要がある」

「兄者なに言ってるかマジでわかんない」

「まぁあれだ、ゴッドをイートするワークをナウにプレイするだけだ」

「だからなに言ってるかわかんない〜!」

「アンタ、もうちょい分かりやすく言ってくれんか?」

「俺、部屋、帰る。帰って、ゲーム、する」

「なんか山のやつ〜?」

「どうして、カタコト……?」

「要はただ行きたくないだけやんか!」

 

 そうとも言う。

 そもそもの話、俺はこのメンバーと買い物に行く予定はなかった。

 本来は音無と姉御だけの買い物に愚妹も急遽参加することになった。

 いつもの思い付きだ。

 で、車を出すついでに荷物持ちもやれということらしい。

 

「よくよく考えたらこっちが先約だからな。急用は諦めよう」

「なんかあったんか?急に気が変わっとるみたいやけど」

「男心は秋の空って言うだろ」

「女心やろ!」

「今春だし〜!」

「気が進まんのは分かったけど、今日は付き合ってくれんか?」

「なんだ、地雷でも仕掛けてきたのか?あんたの足跡辿るぞ」

「誰が用意できんねん!ちゃうわ、アンタの服見てやろうと思ってな」

「余計なお世話だな」

「お世話やなくて趣味やな」

「趣味?」

「いい素材は磨きたくなる質やねん」

「悪趣味な」

「我ながら、ええ趣味しとる自負あるけどな」

 

 いい趣味してるよ。

 音無をVTuberに誘ったのは姉御とか言ってたが、この人の性格的な面もあったんだろうな。

 実際、人気も才能もあったし。

 俺の一身上の都合ならともかく、ただでさえドタキャンした予定を誘われ直しているなら断れん。

 出発前から迷惑かけた分は、払うとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうや!」

「あ、うん、かっこいい……」

「服が、な」

「どうせならもっと、爽やかな顔して欲しいんやけどな」

「どんな注文で整形したらなれんだ、それ」

「サクラは、どう思う?」

「う〜ん?兄者っぽくない〜」

「俺っぽいって何だよ」

「よく分からん柄入ってんのは嫌なんだが〜とか言う」

「まぁ言うな」

「言うんかい!」

 

 恋をすることがありえない着せ替え人形になって既に一時間。

 多種多様なジャンルを持ってくる姉御と今ひとつ納得のいかないらしい愚妹の押し問答が続く。

 その間で発言者を交互に視線で追う音無。

 何を言ってるのか分からないんだろうな。

 俺もだ。

 まず俺はここで何してんだろうって話だが。

 

「前に会った時も思ったんやけど、もうちょい明るい色の服着んの?」

「いついかなる時もカレーうどんを食えるようにしときたいんだよ」

「どんなこだわりやそれ。白はともかく、他の色は問題ないやろ」

「まぁそうだが。あれだ、思考停止で選ぶと似た色が揃うだろ」

「兄者はね〜、そういうの気つかわないから〜」

「ほっとけ」

「ほっとけんなあ。よし、これ着てき」

「へいへい」

 

 何度目かの試着室へ。

 どうせ買わんのなら早く終わってくれ。

 俺が出てきた頃には、音無が愚妹の着せ替え人形二号となっていた。

 いや、慣れたように試着室の中で全体を見せるあたり、彼女が一号なのだろう。

 音無曰く、珍しく愚妹と姉御の意見が合わないらしい。

 長引くと声量も増えて本性が出てきそうだ。

 折衷案として、両方買うことでこの戦争を終わらせた。

 安いもんさ、諭吉の三人くらい。

 重ぇ……。

 今は音無に専属のオバカリストがついている。

 俺と姉御は離れて休憩だ。

 

「アンタ身長あるから着せがいあるわ!」

「そりゃどうも。楽しそうでなによりだ」

「逆にアンズは、ウチと違って可愛いからな!そういう服似合うのがええわあ」

「さようで。音無にアドバイスしたのもそうだが、プロデュースが上手いんだな」

「あんましそういう考え方はした事なかったな。今からでも裏方に回ろか!」

「そんだけ口達者じゃ、すぐに表に出されるな」

「違いないわ!」

 

 一応、P.Sの顔といえばこの人だ。

 最近は愚妹もだいぶ名が知れ渡ってるらしいが、半数は悪名だろう。

 一期生にしてイメージカラーは赤もとい紅。

 そして唯一ユニット名を持たない存在。

 理由は神だから。

 真面目なのかギャグなのか分からん。

 実は誰かのツッコミ待ちか?

 意外とボケ属性なのかもしれない。

 意外といえばだが……。

 

「そういえば、あんたって絵うまいんだな」

「ん?あぁ、まあ、人並みには描けるなあ」

「人並みの基準高ぇなおい」

「金は取れんいうことやな。これでも芸術大出とるし」

「そうか、音無と同じ大学って言ってたな」

「そうそう。あと、ボスの妹も同じ大学出とる。ウチの先輩やな」

「へぇ、そういう繋がりなのか。それ、本当の姉妹だよな」

「どういう意味やそれ」

「いや別に」

 

 ボスと知り合ったきっかけもその辺か。

 始まりの一期生、夜斗とスミレさんをプロデュースしたのも存外この人かもしれない。

 つか、この人自分も描いたんじゃねぇのか?

 神は自分すら生み出すのか。

 

「てか、あのイラスト出した理由はなんだ?」

「ん?ああ、単にスミレから頼まれただけやで」

「頼まれた?」

「なんかアンタとごたついてたらしいやん?んで話聞いたらLIMEブロックされてたとか言うてな」

「知ってたのか」

「聞いたんは後日談やったけどな。んで、それってウチきっかけかもしれんってな」

 

 姉御が言うには、歌謡祭の打ち上げ前に俺を呼び止めた際、スミレさんのスマホから呼び出しをした。

 その後掛けても繋がらなくなったらしく、もしかしたらその時にブロックされたのでは?と考えたらしい。

 多分、それはあってる。

 実際にやった気がする。

 で、その落ち度を解消すべく連絡をしたところ、姉御のイラストが見たいとのことで久々に筆を取ったらしい。

 春風兄妹を指名した理由は不明だそうだ。

 

「ウチからもええ?」

「ああ」

「気になっとったんやけど、アンタって喋る仕事とかしてるんか?」

「口数が多い方じゃないぞ」

「うそやん。なんでぶっつけ本番であんな喋れんの。正直、歌謡祭の時とかビビってたで」

「まぁ、昔からあのバカのせいでトラブルから逃げられない生活送って来たからな」

「なんか想像つくなあ」

「だろ?」

「そうか。……なんか、すまんな。色々誤解しとって」

「誤解?」

「正直なところ、最初はかなり危ない奴やろって警戒しとってな」

 

 そう言って、一度下げた頭を元に戻す。

 そういや初対面はかなり悪印象を演出した気がする。

 できれば関係者を増やしたくなかったからな。

 まぁ、それも失敗に終わった訳だが。

 

「俺の態度も良くなかったからな」

「それもあるけど、鬼畜だのドSだの聞いてたし、女たらしみたいな噂もあったからな」

「印象操作が酷過ぎる」

「けど、アンズの話も聞いて、そんで実際に話したら、なんやちゃんとした奴やんって分かったわ」

「そりゃどうも」

「まあ、鬼畜外道はウソやなさそうやけどな!」

「ひでぇ言い様だ」

「やから、今日はそういうの含めた礼も兼ねとる。アンズの件も、世話になったしな」

「歌謡祭のことは、本人が決めたことだって言ってんだろ」

「最終的にはそうだとしても、そこにアンタが関わった事実は変わらんやろ」

「いや、だからな──」

「ああ!もうっさいわ!ええからこういう時はありがとう言って受け取っとけ!かわいくないな!」

「よく言われるよ」

 

 かわいくない顔は生まれつきだ。

 言っちゃなんだが、俺何を受け取ればいいんだ?

 この服、自腹だし。

 選んでもらったのも、どちらかといえば相手を尊重した結果なんだが。

 気持ちだけでも的な?

 そういえば、こういう風な扱いを受けるのは初めてな気がする。

 順当に年下として見られているような、そんな扱い。

 表現が難しいが、これが姉なる者の身内に対するスタンスとでも言うのだろうか。

 しかし、最初は警戒してたとか本人の前でよく言えるものだ。

 この人はそういう事をきっちりとしておきたい人なのだろう。

 言いたいことは言う。

 その考えは嫌いじゃない。

 互いに気を遣い合う関係は面倒だからな。

 そんなことを話していると、愚妹が来い来いとジェスチャーしている。

 モーションでかい。

 店内だぞバカ妹が。

 

「へ〜い!見て〜アタシスペシャル〜!」

「頭の悪さ全開のタイトルだな」

「ど、どう……かな?」

「敢えてのクール系か……ええな!」

「でしょ〜」

「すげぇ。ネーミングセンスとまるで合ってねぇ」

「照れる〜」

「五割貶してるんだが、まぁいいか」

「姉御、この人何言ってんの〜?」

「分からんでええわ。ただのツンデレや」

「意訳し過ぎて意味変わってんぞ三流翻訳師」

「ならもっと素直な日本語使いや五割褒めてる兄貴」

「俺は良いものをちゃんと良いと言えるくらいには素直なんだが」

「言ってないやろ」

「すげぇって言っただろ?」

「アレはそっちのことかい!てか結局言ってないやん!」

「二人って、こんな仲良かったっけ〜?」

「……前より仲良いかも……?」

 

 ボクタチハ、モトカラナカヨカッタヨー。

 棒読みってより半角だなこれ。

 そんなことをグダグダと続け、夕方に解散となった。

 ほぼ丸一日服見てよく楽しめるものだ。

 やはりオシャレは分からん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【妄想新衣装】勝手に描いてあとはママにぶん投げよう【春風桜、紅上桃、八重咲紅葉、兄者】

 

 コメント:兄者その画力分けてくれ

 コメント:なんでみんな絵かけるの

 コメント:パイセンの水着はBANされそう

 コメント:もうお前らで新衣装作れるよ

 

 作れねぇよ無茶言うな。

 妄想というだけあって、今回は自分のではなく他メンバーの衣装を描いて見せ合う配信だ。

 多少攻めても許される相手ということで、甘鳥、音無、スミレさんが対象になっている。

 普通は自分のものを見せたり考えたりするもんだし、リスナーもそういうのを見に来るものだ。

 しかし流石は普通じゃないことに定評のあるP.Sライバー。

 知らない奴は調べて来いと言わんばかりに、身内とはいえ別のVTuberの名前が飛び交う。

 これがまかり通るのがプリズムシフト通称P.Sの配信だ。

 

「今更だが、俺今日必要だったか?」

「兄者さんが描いてるんですから必要ですよ」

「愚妹のオーダーを提出しただけだがな」

「それほぼ絵師やん」

「確かにな。あとで請求書出すか」

「お金は出さないから〜!」

「まぁ金を貰えるクオリティではないからな」

「モミジもやけど十分上手いやろ」

「姉御には負けますよ」

「はい〜じゃ〜ラストね〜」

「おい、三人じゃなかったのか?」

「最後は兄者のだよ〜?」

「そうか。お前の次の新衣装が決まったぞ」

「え、なに〜?」

「クマの着ぐるみ」

「……アタシ見えないじゃん〜!」

「しかも超リアルなヤツ」

「それただのクマじゃん〜!」

 

 コメント:草

 コメント:ま〜た騙されてるよ兄者

 コメント:騙すと言うより説明不足

 コメント:熊逆に見てぇwww

 コメント:兄者に決定権あって草

 油取り神:承りました

 コメント:ママ本人いるぞwww

 コメント:決定したw

 コメント:姫ただのクマになる

 コメント:サクラ熊

 コメント:新種じゃんw

 

「つかお前ら用意して来てんのかよ」

「そりゃあ予定通りですし」

「まあ見てみ。次の新衣装候補やぞ」

「そもそも新衣装は出ねぇんだよ」

「多分頼めば普通に作るぞ?あの人(・・・)

「頼むから止めさせる」

「まずはわたしの一案目ですね」

「紛うことなきルル○シュ持ってくんな」

「あわよくば!」

「声真似させようとしてんじゃねぇよ」

「次はウチやな」

「わ〜オシャレ〜兄者に似合わない〜」

「オシャレが似合わないとかもう救いようねぇなそれ」

「もう髪型すら変えてますね」

「たまにはええやろ」

「いや、誰よこのイケメン」

 

 コメント:八重咲よ……

 コメント:外行き兄者

 コメント:ただかっこいいだけの兄者になった

 コメント:兄者-闇属性って感じ

 コメント:光の兄者

 コメント:デコ出しいいな

 コメント:絵がうまい

 

 その後もしばらくイラストの評論会は続いた。

 こいつらどんだけ用意してきたんだか。

 まぁネタ枠も結構あったが、ガチで採用を狙って来てるのもいくつかあった。

 姉御の描いた和装なんかはリスナーにバカウケしていた。

 そのコメントの大半は兄スミてぇてぇだったが。

 一応言っておくが、愚妹の初期服も和服といえば和服だからな。

 パーカーと合体して分類不明ともいえるけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは少し先の話になる。

 と言ってもわずか一週間後の事だが。

 

【切り抜き】姫の新衣装がまさかの……!?【P.S/春風桜】

 

「クマじゃん!!!」

 

 そこには熊の口の中から顔を出す愚妹の姿があった。

 よかったな、念願の獣耳だぞ。

 

「かわいくない〜!!!」

 

 まぁ、超リアル熊だもんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




初期とやってる事が違うような同じような……。
初志貫徹はしつつも面白いものが描きたいなと思う今日この頃。
人が増えれば関わり方も増えるのが自然の摂理だからしょうがないね。

Q.この作品終わりとかあるの?
A.エンドは何パターンか考えてるけどやろうと思えば無限に書けそう(作者の能力とモチベ次第)

Q.姫ってリアルだと太……丸い?
A.おっとVTuberにリアルの話はご法度だぜ?

Q.やき鳥コンビってどんな配信するの?
A.わりと色々する。5割くらい兄者関連


次回のあとがきは妄想放送局!
本編は本編。


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高評価、誤字報告、コメントもできればよろしくお願いします。

第三回 あなたの推しは?

  • 春風桜
  • 八重咲紅葉
  • 吹雪菫
  • サイサリス・夜斗・グランツ
  • 甘鳥椿
  • 音無杏
  • 紅上桃

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