妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件   作:江波界司

65 / 79
祝総アクセス数380万件突破!
ありがとう……ありがとう……本当に……


またちょっと空いたのは気にしない気にしない。
うっせぇ!(本編へ)いこう!


#Vをたずねて三千里

「兄者〜お腹すいた〜」

「…………」

「ね〜お昼〜」

「…………」

「無視すんな〜!」

「いっ……!?……おい、てめぇ」

「クッションだから痛くないでしょ〜」

「スマホが顔に当たってんだよ」

「兄者が無視するからじゃん!音ゲーしてても、いつも返事するくせに〜」

「あのなぁ……」

 

 文句を言いかけたが、出てきたのはため息だった。

 仕方ないものは仕方ない。

 運が悪かったと思おう。

 個人的には、イベランでもなければ大会でもない音ゲーは止めてもいい。

 一曲リタイア確定と嫌な部分もあるが、ゲームにのめり込み過ぎるほど人間をやめてはいない。

 しかし今回の一戦は、少し事情が違う。

 スマホを見返すと、音無からスクリーンショットが送られて来ていた。

 最高難易度のはずなんだが、フルコンだ。

 精度もかなり高い。

 

 LIME

 

 音無『お兄さんはどうだった?』

 俺『リタイアで0点だ』

 音無『え?』

 音無『何かあったの?』

 俺『邪魔な通知が来てな』

 

 通知(物理)が来た。

 メッセージとかじゃなく肉体言語に近いものが。

 音無とやっていた計5曲一発勝負。

 高難易度曲をランダムに決めて同じ曲をそれぞれプレイし、トータルのスコアを競うレギュレーションだ。

 使用キャラはちゃんと揃えたからキャラスペックやレベルでのポイント差は無い。

 ここまでの200ポイントのリードが水の泡だ。

 まぁ元々あってないような差だしいいけど。

 音無はやり直しを提案してくれているが、負けは負けだ。

 一発勝負と言っておいて、やり直しするとは言えん。

 それにやり直しで勝ったとしてもカウントしたくない。

 なんなら通知の件も負け惜しみにしか聞こえないだろう。

 勝負は時の運とも言うしな。

 潔く負けを認めよう。

 いい事あってもやな事あっても変わらない美味さ。

 今日の昼は、我流こだわり特製ビーフカレーだ。

 なお愚妹のはレトルト。

 

 

 

 

 

 

 

 

【切り抜き】兄者に勝ったのに魔王の強さに動揺する音無【P.S/音無杏】

 

 コメント:ついに兄者を超えたのか

 コメント:なっしーならできると思ってた

 コメント:音ゲー始めて3ヶ月とかでは……?

 コメント:強すぎる

 

「ただ、最後は通知が来てリタイアになったからなんだよね。フルコンできないから続けても負けてたって、お兄さんは言ってたけど」

 

 コメント:あるあるw

 コメント:あれはキレる

 コメント:どっかの元魔王みたいな負け方してる

 コメント:通知が来てなかったら危なかった?

 

「もしちゃんとやってたら、負けてたと思うよ。あたし、まだあの曲オールパーフェクトできたことなかったから」

 

 コメント:兄者はできるのか

 コメント:慣れもあるからしょうがない

 コメント:兄者は人やめてるから

 コメント:ゴリラ魔王は伊達じゃない

 

 コメント:兄者って音ゲーやる時は通知とかは切ってるんじゃなかったっけ?

 

「え?そうなの?」

 

 コメント:明言はされてないと思う

 コメント:公式発表はない

 コメント:やってそう

 コメント:マジで勝負するならやってると思う

 コメント:まだ本気じゃなかった

 

「じゃあ、手加減してくれたんだ」

 

 コメント:勝ちは譲るスタイル

 コメント:僅差でも勝ってたから満足したのかな

 コメント:弟子に花を持たせてくれたのかも

 

「そっか。優しいね、お兄さん」

 

 コメント:それはない

 コメント:勘違いしないでよね(ガチ)

 コメント:俺はまだ変身を残している

 コメント:兄者はドS定期

 

「えー?優しいと思うんだけどなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きょ、今日は、よろ……しく……」

「んで何でコミュ障モード?」

「緊張してるんとちゃう?」

「アニメ作品見に来るのってもしかして初か?」

「ちゅーか、まず映画館が初やな」

「まぁ、ウルトラインドア派だろうしな」

「人混みむっちゃ苦手やし」

「う、うん……」

 

 本日は仲良し姉妹(仮)とモールに来ている。

 本来ここにいる予定はなかったんだがな。

 映画を見に行く時は一人が多い。

 洋画を除けばほとんどがアニメ作品目当てということもあり、愚妹とすら一緒に行くことはそんなにない。

 車で送るついでが精々。

 故に、姉御と音無に同行して映画を見る今回は中々にレアケースだ。

 元々見ようと思っていた作品だが、これを見るとなるとできればTVシリーズを知っておきたい。

 初見でも楽しめるようにできてはいるだろうが、その辺はファンの潜った深さによって味わいが変わりそうだ。

 その辺は流石に担任が八重咲だからだろう。

 音無は綺麗にテスト範囲を終わらせて本番に臨めるようだ。

 対して姉御はノー勉。科目を選択していないのだから仕方ない。

 そんな、やべー俺テスト勉強全然してねーな姉御のため、修学旅行の引率よろしく同行することになった。

 役割的には家庭教師に近いけど。

 

「つーか、俺いる?」

「アンズに解説はムリ言われたからな」

「その……ネタバレとか、すごいしちゃう……と思う」

「八重咲学年主任がおかしいだけで、多少は仕方ねぇだろ」

「なんで急に学校の話?ウチとしては、アンズが楽しめればそれでええねんけどな」

「姉御にも……楽しんで欲しい、から」

「ってなことで、頼むわ。兄者センセ」

「宿題の1クール視聴と感想文500字以内をちゃんとやるならな」

「それ期限いつ?」

「三日後」

「鬼か!」

 

 まぁVTuberなんだし行けるだろ。

 時間の運用自由度高めだし。

 三日で見ろは一般社会人には結構重い。

 何かを犠牲にすること確定だ。

 睡眠とか、睡眠とか、あと睡眠とか。

 寝不足、ダメ、絶対。

 

 件の映画は、やはり良い。

 作画に定評のある会社は違うな。

 手紙というのがまた心に来る。

 同行した二人はガン泣き。

 姉御に至ってはすぐにでもTV版を見に帰る勢いだった。

 上手く解説できたかは分からんが、楽しんでいたので良しとしよう。

 姉御はレンタルビデオ直行ではなく、実際は別件で帰った。

 事務所でのお仕事があるらしい。

 忙しい合間を縫って音無と遊ぶとか、義理ですらないのにシスコンこじらせ過ぎでは。

 俺を呼んだのも音無を送って欲しいってのが本音っぽい。

 そんなわけで残る課題は帰るだけなのだが、総じて難しい問題は後に来る。

 

「多分、あれ迷子だよな」

「え?あ……うん、多分」

「明らかに親っぽい人もいないし、その場を動かないにしては落ち着いてない」

「同年代の、友達を待ってるとか?」

「だとしたらそいつが居そうなところに向かうと思うぞ」

 

 約束の時間と場所だから動けないって可能性もあるか?

 だとしても少し幼すぎる。

 少年の背丈と顔つき的に、小学校の低学年くらいだろうか。

 モール内でも映画以外遊び場がほぼないこのゾーンに、子供が一人でいることなんてそうはない。

 周りの他人があまり気にしていないのは、単純に少年が耐えているからだろう。

 顔つきに焦りはあっても涙はない。

 強い子だ。

 さりげなく隣に視線を向ける。

 うん、無理だな。

 音無は声をかける以前にもうテンパっている。

 焦りたいのは君じゃなくて彼だよ?

 なんで泣きそうなんだよ。

 泣きたいのはあっちの方だろうに。

 仕方ない。

 最悪の場合でも警備員は来てくれるだろう。

 

「なぁ君。どうかしたのか?」

「え……?」

 

 膝を突き、できるだけ威圧しないように問う。

 少年はただただ驚いていた。

 目が合ってすぐに、後ずさり。

 だが、そこから先は俺が予想していた反応ではなかった。

 

「……っ!」

 

 耐えてる。

 本当に、強い子だな。

 ぶっちゃけた話、子どもに話しかけて泣かれなかった記憶がない。

 回数が多いわけじゃないけど、確率は100%。

 打率なら一刀流でも無双な数値だな。

 いや泣きたいの俺。

 そんな可哀想な俺と対峙して逃げないか。

 この可哀想な少年は見込みがあるな。

 将来はヒーローとか火影とか海賊王辺りだろう。

 

「迷子か?」

「……ちがう。迷子をさがしてる」

「そうか。そりゃ大変だ。俺も手伝おう」

 

 返事がない。

 え、なんでそんな意外そうな顔してんの?

 表情筋鍛えすぎだぞ少年。考えほぼ一発で分かるわ。

 まぁ正直なのは悪いことじゃない。

 偉いぞ少年。

 

「音無」

「は、はい!」

「俺にまでキョドってどうする」

「あ、はい、すみません。それで、えっと……」

「とりあえず移動する」

「移動?」

「この子の連れが迷子でな。探すんだよ」

「えっと……」

 

 キョロキョロと俺へ少年へ視線を動かし、数秒してなんとか察してくれた。

 よくやった。

 偉いぞ音無。

 

「それで、あたしは何を?」

「三人で横並びで歩く」

「あ、はい。……え?」

「まぁ聞け。これは必須事項だ」

 

 人を探すために移動する。ここまではいい。

 問題は人数だ。

 念の為少年をここに置いて俺と音無で親を探す。

 分散できれば最高だが、音無は無理だし俺一人で動いてもあまり意味はないだろう。

 ならば少年と音無をセットで置いておく。

 多分、無理。主に音無が気まずさで死ぬ。

 ならば少年とセットで移動するしかない。

 音無セットは会話ができないため更に不安を煽る。

 俺は通報されかねない。

 バカげた想定だが、割とありえる。

 何せ少年のこの距離感だ。

 ギリギリ不審者扱いされていないくらいには壁がある。

 

「三人で固まってた方が目立つからな。向こうからも見つかりやすいだろ」

「あの、よく考えたら、警備員さんを呼べばいいんじゃない?」

「どうしても見つかんなかったらな。少年」

「は、はい!」

「……。迷子になったのはどんな人だ?」

「え?あー、えーっと、髪長くて、あと、えーっと……」

「焦んなくていい。ちゃんと見つかるから大丈夫だ」

 

「いた!」

 

 轟く声の先を、俺たち三人だけでなく、おそらくその場にいたほぼ全員が見つめた。

 少年は、すぐにその女性の名を呼んだ。

 

「……ほらな、見つかったろ?」

「うん!」

「……え、あの、お兄さん?」

「まぁわかる。音無、お前の言いたいことはまぁ分かる」

 

 そこには、俺らのよく知る酒豪もとい人物──リアル吹雪菫さんがいた。

 

「迷子が見つかってよかったな、少年」

「え!?兄者くん!?あと迷子は私じゃないよ!?」

「どう考えても迷子はお前だ」

「断言するんだ!」

「少年。頑張ったな。お前はすげぇ強いヤツだ。これからも努力を惜しむなよ」

「ねぇ、兄者くん?いつの間にそんなに仲良くなったの?」

「あなたが迷子になってる間に」

「まだ言うんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後少し話したあと、スミレさんと少年もとい甥っ子とはすぐに別れた。

 服を見てる間に居なくなっていた、と迷った本人は言っていた。

 小さい頃は特にそういうの待つのって苦手だよな。

 俺は今でも苦手だし。

 

「まさか少年のセリフが強がりじゃなかったとはな」

「それは、強がりだったと思うけど……」

「ちょっと早い昼にするか。この時間ならわりかし空いてるだろ」

「ねぇ、お兄さん。一つ、聞いてもいい?」

「ん?」

「警備員さんを呼ばなかったのって、なんで?」

「つまらん理由だが、少年にもプライドがあるんだよ」

 

 男ってのはめんどくさい生き物だからな。

 まぁ俺はそんなもんだいぶ前に犬か猫の餌に作り替えたけど。

 

「はほぉ……」

「それはどういう感情なんだ」

「えっと、多分、感心?」

「そうか。ほら、二郎系いくぞ」

「え!本当に!?いいの!?」

「P.Sでは俺にゲームで勝ったやつの願いを叶えなきゃならんシステムがあるからな」

「初めて聞いた……」

「姉御には言うなよ」

「どっちを?」

「面倒だからどっちも」

 

 やたらテンションの上がった音無を本店か本元か元祖かよく分からん店に連れていった。

 まぁ味は保証する。

 わざわざご丁寧にご所望された全増しを前に出した「えっ……!」は、過去に例を見ないくらいには低かった。

 そらドン引きだわ。

 ちなみにスープ以外は完食しやがった。

 ドン引きです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 LIME

 

 菫『どうしよう!』

 菫『甥っ子がプロゲーマー目指すって!』

 俺『まさか人生の迷子になるとは』

 菫『うまくないよ!』

 




今回はQ&Aの予定でしたが、ちょっと予定変更。
楽しみにしていたみんな、申し訳ない。
というのも少し話しておきたいことができました。

実はこの作品、某小説大賞で二次選考を突破しました。
「え?」「は?」なのは分かります。
実際、私もなりました。
なんなら応募したのも忘れてました。
本当にいつ出したのか……。

最終結果はまだですが、それにしてもビックリですね。
だってパロディしか取り柄のないこの作品、書籍化は無理が過ぎるんですよ?
版権と著作権の殴り合いが始まるのでは……。
開幕からすでにピー音入るレベルですし。
ある種、超リアル路線という意味ではそれもありなんでしょうか。
民度とか運とかかなりファンタジーしてますけど……。

と、色々言いましたが。
それでも、欲望と本能のままに描き続けているこの作品が、過大ながらも評価されて嬉しい次第です。
やっぱり面白い、好き、愛してる、結婚しようと言って貰えるのは気持ちがいいですね。
最近の悩みと言えば、深夜テンションでもないと登場人物達との解釈が合わないことくらいかな!
あいつら頭おかしいんよ。

本編に全く関係のない話でしたが、たまにはいいでしょう。
後書きも前書きも本編も、これまで同様好きにさせていただきます。
よし。
これだけ予防線張っておけば落ちても大丈夫でしょう。
私の精神衛生的に。
でもあわよくば……。
と控えめにネガって、もとい願っておきます。

これからもどうぞよろしく気軽に読んで下さい。

P.S(ちゃんとした意味で)
感想貰えると励みになります。


妄想も大募集中です!

マシュマロ、妄想募集↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=253518&uid=229168

ファンアート募集↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=253648&uid=229168

高評価、誤字報告、コメントもできればよろしくお願いします。

第三回 あなたの推しは?

  • 春風桜
  • 八重咲紅葉
  • 吹雪菫
  • サイサリス・夜斗・グランツ
  • 甘鳥椿
  • 音無杏
  • 紅上桃

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。