妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件   作:江波界司

86 / 94
祝総アクセス数580万件突破!
祝コミック版配信開始!
書籍1〜3巻好評発売中!

新年明けましておめでとうございます(遅刻)
うん、色々あったんや……。




#サイレント・Vっち

 憂鬱と書いて、げつようびと読む。

 そんな週明け初日ではあるが、俺は割と機嫌がいい。

 清々しいまでの定時帰宅、その真っ只中だ。

 先週までの残業強調週間も終わり、業務は緩やかなペースに戻って来ていた。

 それに、昨日の件もある。

 あのやべぇ奴ら大集合イベントが平和に終わると誰が予想できたか。

 結果的に、ほぼ丸一日を家事ゼロで休んでいたことになる。

 これも看病ってことになるんかね。

 予想外にもP.Sライバー共の成長を感じられた日だった。

 感心と感動が少なからずあるし、俺の気苦労もこれからは減っていくってことだろう。

 いつもより軽い足取りで車を降り、玄関まで歩く。

 

「……やけに静かだな」

 

 昨日から八重咲と甘鳥、それとスミレさんは家に泊まっている。

 例のオフコラボに関しては夜通しやっていたようだ。

 音無と姉御、夜斗は配信の予定もあって当日解散している。

 今日一日予定のない三人は、愚妹に巻き込まれながら騒々しくしていると予想していたんだがな。

 まぁ、これも成長の証かね。

 

「たでぇまぁー」

 

 家の扉を開けた。

 廊下はピカピカになっている。

 ……いや、ピカピカというかテラテラしてる。

 何これ、ローション? だとして何故こんな大量にぶちまけてある? 

 困惑しながら視線を奥へやると、俺のバスケットボールが転がっていた。

 その周りには散乱する十本のペットボトル。中身は水だろう。

 そして壁際に、なぜかベトベトのスミレさんが体育座りしている。

 極まったカオスのせいでうっかり監獄でサッカーしそうになるわ。

 元バスケ部だけども。

 

「あ、兄者くん……おかえりなさい……」

「本当に何があった」

「えっと、話せば長くなるんだけどね……」

「いや、まず先にシャワー浴びてくれ」

「──うん、ありがとう」

 

 メシアに導かれたような顔で、スミレさんは風呂場へと歩いて行った。

 まぁ、あの状態なら誰でもあんな顔するか。

 そんな可哀想な人を生んだ原因であろう三人は、リビングで死んだ様に眠っていた。

 いっそ全員を燃えるゴミで出してしまおうか。

 いや、明日はペットボトルか。

 運のいい奴らめ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜体痛い〜」

「筋肉痛に床掃除させるとか鬼ッスよ〜」

他人の家(ひとんち)でローションボウリングする奴らに言われたくねぇ」

「言い出しっぺは桜先輩ッスよ!」

「だとしても自業自得だろ」

「筋肉痛は昨日のアドフィットのせいなんですけどねー」

 

 叩き起した三馬鹿は、文句タラタラで床を掃除している。

 なんで被害者ヅラしてんだよ。

 一番の被害者はソファで寝てるスミレさんだっつの。

 家主が寝ているせいでシャワーを借りれなかった善人は、どうやら盛大にすっ転んであの結果になったらしい。

 誰だよ、人の家の廊下にローションぶちまけた奴。

 三馬鹿(こいつら)だ。

 

「やっちゃったものはしょうがないッスよね〜」

「そ〜そ〜やりたくなっちゃったんだもんね〜」

「家の中でボウリングとか、誘われても普通やらねぇだろ」

「我ながら、あれはもう深夜テンションのランナーズハイで狂ってましたよ」

「八重咲先輩、超ノリノリで準備してたッスよ」

「ルール決めてたし〜ペットボトルの水とか〜わざわざ測ってたもんね〜」

「八重咲先輩さんよ」

「盛り上がっちゃったんですよ! しょうがないじゃないですか! こちとら徹夜でアドフィットした直後だったんですから!」

「むしろ大人しく寝てくれよ」

 

 そう、このバカ共は愚妹の素晴らしい提案を真に受け、本当に鬼になった。

 それはもう鬼神の如き勢いだっただろう。

 廊下にペットボトルを並べ、物置から他人(ひと)のボールを引きずり出し、ボウリングを始めた。

 最初こそ普通にやっていたらしい。

 うん、やる時点で既に普通ではないがね? 

 既にイカれた遊びの中で、彼女らはバウンドしてしまう挙動が気に食わなくなった。

 どうにかしようと考えた結果、何故か愚妹が企画用にと買っていた大量のローションを何故かぶちまけたと。

 こいつらは何を言っているんだろうか。

 

「てめぇは何する気でこんな量を買ったんだよ」

「ローション相撲とか〜なんか面白そうじゃん〜」

「家でやるな、事務所とかに行けバカ」

「ちゃんと片付け用に、廊下にラップを貼りましたよ?」

「気遣いを使う方向が間違ってるのは理解してるんだろうな」

「ところで、なんでこの家、こんな大量にラップがあるんッスか?」

「いつか愚妹が商店街のクジで当ててたな」

「ラップ一年分〜とかだっけ〜?」

「それは当たりなんですか……」

 

 当時は喜んだ気もするが、今では消費できるのか怪しい。

 かといって、こんなことに使えても喜べる訳がない。

 室内ローションボウリングをプライベートでカメラも持たずに完遂って何? 

 頭が、というかもう全部がおかしい。

 お前ら人間じゃねぇ。

 モンスターはボールに封印させてくれよ。

 そのままゴミ箱にダストシュートするから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【兄者相談室】何回目か忘れたやつ! パイセンもいるよ! 【春風桜、吹雪菫、兄者】

 

「いえ〜い!」

「兄者相談室〜!」

「いえ〜い!」

「うるさい騒がしいうるさい」

「は〜?」

「もうすでに色々ミスってるけど大丈夫なのかこれ」

「だ、大丈夫だと思うよ?」

「兄者ど〜ん!」

「いやダメだろこれ」

 

 コメント:夫婦配信きちゃ

 コメント:春風家すこ

 コメント:姫の喋り方なんかおかしくね? 

 コメント:姫テンション高い? 

 コメント:定期配信来たな

 コメント:ミスとは? 

 

 まぁ、まだバレてなさそうだし続行か。

 シリーズ化してしまったこの相談室という配信用の個人番組。

 俺と愚妹でやるのが基本だが、ゲストを呼んでの開催も少なくない。

 ただし今回はイレギュラーがあってスミレさんに出てもらっている。

 急な申し出を受けてくれたのはありがたい。

 シャワーを借りたお礼とは言われたが、愚妹のせいでほぼほぼマッチポンプなんだよな。

 ……今度こそ晩酌配信か。

 

「まぁ気を取り直して、だ。今回はスミレさんに来てもらいましたと」

「夜分遅くにこんばんは、吹雪菫です」

「スミレさんをこの番組呼んだのは、実は初か?」

「だね〜」

「説明とか要るか?」

「配信見てるから大丈夫だよ」

「見てんのかよ」

「あ、うん。二人が話してるの面白いから」

「左様で」

「いえ〜い!」

 

 コメント:嫁と旦那と娘

 コメント:レギュラー化してくれてもいいんだよ? 

 コメント:常に漫才してる兄妹

 コメント:もっと番組増やして

 コメント:家族チャンネル未だに待ってるよ

 

「んじゃ、さっさと相談行くか」

「兄者ど〜ん!」

 

『モテたいです! 来年から高校生になるので、高校デビューを華々しく飾る方法を教えてください』

 

「難しいことを相談されたね」

「まぁ恐らく男子中学生だしな、共感はムズいだろう」

「あれ、男の子って書いてあった?」

「いや、モテたいという衝動に駆られてる時点で男子中学生だ」

「すごい偏見だ!」

「とりあえず、女性ライバーの配信を見てる時点でモテないから今すぐブラウザバックして受験勉強に戻れ」

「偏見、でもなかったね。勉強はした方がいいかも」

「この時期じゃまだ推薦とかも決まってねぇだろうしな」

「だね〜」

 

 コメント:ド正論パンチ

 コメント:なんで俺らを殴った? 

 コメント:サラっとディスられるリスナー

 コメント:どさくさに紛れに俺らを殴るスタイル

 コメント:被害者続出で草

 コメント:全方位正論パンチやめて

 

「でももしかしたら、すごい勉強できるからそこは余裕なのかもね」

「すげぇ頭の悪い相談だけどな」

「高校に入ってからのことを聞きたいんじゃないかな?」

「自己紹介タイムで宇宙人と未来人と超能力者を募集するくらいしか思い付かねぇな」

「それって、モテるの?」

「宇宙人と未来人と超能力者からはモテるんじゃね」

「うわ〜兄者うわ〜」

「多分普通の人にモテる方法が知りたいんじゃないかな」

「んじゃ女性視点でどうぞ」

「はい〜次ね〜」

「無視通り越して無理矢理流されたぞ」

 

 コメント:姫ェ

 コメント:こいつら相談乗る気ねえw

 コメント:パイセンを庇った? 

 コメント:姫なんか食ってる? 

 

 配信用の画面に、他のページからコピーを貼り、画面共有に入れる。

 なんで俺がこんな作業をせにゃならんのか。

 動作自体は単純だから覚えるのに苦労はなかったが、雑談しながらコメントを見つつやるってのは中々のマルチタスクだ。

 VTuberって忙しいんだな。

 なんでこんな事してんだろ俺。

 やめよう、こういう時は現実逃避に限る。

 

『異能力バトルにかなりの高確率で出てくるコピー能力。絶対に強いのにラスボスにはならないのが不思議です。やはり作者の都合でしょうか? 見解を聞きたいです』

 

「……相談? これ相談?」

「報告でも連絡でもないから、相談じゃないかな?」

「社会人を基準にし過ぎでは」

「なんで〜?」

「いやホウレンソウの説明とかどうでもいいだろ」

「コピー能力のラスボスっていないの?」

「いや、ゼロとは言わねぇけど、確かに少ねぇな」

「なんでなんだろう」

「意外性がねぇからとかじゃねぇかな。分かりやすく強いし」

「だね〜」

「むしろ能力自体が強すぎて作者から無理矢理弱くされる代表みたいなイメージだな」

「無理矢理?」

「なんで〜?」

「発動条件とか、体力消費とか、時間制限とか色々だな。まぁそういうの無くせば確かにラスボスらしいとは思う。大量の能力を一人で使えるとかバケモンだし」

 

 コメント:コピーは強キャラ多い

 コメント:ロマン枠

 コメント:強すぎて消される

 コメント:ラスボスはコピーよりも上位互換のイメージ

 コメント:チート能力がラスボス

 コメント:むしろ主人公陣営の能力

 

 相談(?)文にもあるが、よく出てくる要素の一つである以上、作品の一番の見せ場とも言えるラスボスの能力には相応しくないってのがあるんだろうな。

 コピーは強いけど扱いが難しいみたいな側面から、主人公に付けて工夫を魅せるって形の方が余程映えると思う。

 つか、環境依存だから周りが弱いと本人も弱くなるし、絶対的な強さって見せ方ができないんだよな。

 そう思うと、コピー能力って実はクソ雑魚スキルなのでは? 

 

「まぁ何となく弱点が分かるのが良くないんだろうな」

「なんで〜?」

「コピーする先がなかったら無能力と変わらんだろ」

「だね〜」

「ラスボスは倒せない位が丁度いい」

「倒せないとダメだと思うんだけど……」

「最後に救急車で轢いとけば解決するし」

「そんな倒し方でいいの!?」

 

 コメント:ラスボスは最強がいい

 コメント:救急車www

 コメント:やめとけやめとけw

 コメント:どこぞの会社員で草

 コメント:兄者くらい強くていい

 コメント:そんな情けないラスボスいるわけないじゃないですかw

 

 ……意外と気付かれないもんなんだな。

 スミレさんが上手く回してるって事だろうか。

 あるいは、本人が普段からこんな感じだからとか。

 もう少し内容のある話をしてると思いたいが、まぁ愚妹だしな。

 

「はい〜次ね〜」

 

『友達ってどうしたらできますか?』

 

「…………ふむ」

「……あー、えっと……」

「これはね〜兄者が悪い」

「なんでだよ」

「あ、ちが、じゃなくてね」

「ぎゃ〜! 足つる〜!」

「何をどうしたらそうなった」

「あ、兄者くん! 落ち着こうね!」

「いや落ち着くのはあなたですよ?」

「うんうん〜」

「雑な相槌だな」

 

 コメント:兄者が絶句したw

 コメント:なんて残酷な質問なんだ

 コメント:姫宛てかな? 

 コメント:兄者が悪いは草

 コメント:なんでパイセンが焦ってるん? 

 コメント:兄者何したんだよw

 

 まだなんとかなってるのか。

 てかなんで足つってんだよ。まぁいいけども。

 スミレさんが軽くミスったせいでテンパってるし、軌道修正はするか。

 つって、友達ねぇ。

 友達はなるもんじゃなくてできてるものだって偉い人も言ってたんだよな。

 そもそも学生時代から今日まで、どうやって作ったかなんて覚えてる奴いないだろ。

 

「俺も別に友達多くねぇし、今いる友達を大事にすればいいんじゃねぇの?」

「だね〜」

「正直ね、私もちょっと知りたい相談なんだよね」

「俺らで掘り下げても何も得るもん無いだろこれ」

「兄者くん、私よりお友達多いと思うよ?」

「ゲーム仲間はいるが、じゃあゲームすりゃいいんじゃねぇのとしか言えねぇぞ」

「私もゲームしてるけど、友達、増えてないよ……」

「なんで自ら地雷踏んだんだこの人。爆弾魔? ラスボスなの?」

「これはね〜兄者が悪い」

「悪いが俺は被害者だろ」

 

 コメント:P.Sはこれだから……

 コメント:兄者友達いるの? 

 コメント:誰も救われない相談

 コメント:パイセンがボマーは草

 コメント:第三の爆弾起爆しなきゃ(使命感)

 

 スミレさんも大概拗らせてるんだよな。

 対人になると口下手になるタイプだし、その内うっかり無詠唱魔術とか習得しそう。

 それ最強クラスでは? 

 俺の事にしても、ここ最近で遊んでる友達ってほとんどがP.S関係者だ。

 その知り合い方もかなり特殊だし。

 取り合えず身内の配信に紛れ込んで放送事故しなよ、なんてアドバイスにならんよな。

 これで無事なのが奇跡みたいなもんだ。

 いや、無事か? かなりの度合いで平和を脅かされている気がする。

 週一で怪獣が来るウ〇トラマンの世界くらいには危機感ある。

 なんなら怪獣と一緒に生活しながらもう一体出現してくるような状態じゃね。

 セブンでもストレスマックスでちゃぶ台返すわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして約一時間、救われる命はないであろう質問に、俺たち二人(・・)は答え続けた。

 そう、二人である。

 最後にネタバラシをしたが、今回愚妹は配信に参加していない。

 奴は筋肉痛と寝不足のダブルパンチで盛大に寝込んでいる。

 しかし配信予告はしているからと、何故か録音だけを残して夢の国へ旅立った。

 これでやれと? ふざけやがって。

 そんでその操作を唯一動けるスミレさんに頼んだ訳だが、意外とバレないもんだな。

 

「とまぁそういう訳で、ある意味リスナーに向けたドッキリになった」

「気付いた人、いるのかな?」

「ちょくちょく怪しんでるヤツらはいたけどな」

 

 コメント:実質夫婦配信だった

 コメント:ついに姫いないの草

 コメント:夫婦配信でしか得られない栄養がある

 コメント:どうりで姫が喋らないわけだw

 コメント:パイセン上手かった

 コメント:兄者にジャックされてて草

 

「でも、意外だったよ」

「何が?」

「兄者くんは、春ちゃんが出れないってなったら配信しないと思ってたから。今も寝てるんだよね?」

「まぁタイミングが良かったからな」

「そうなの?」

「ああ。兄者相談室はこれで終了するぞー」

「みんなまたね」

「こっから先は、愚妹のデスクトップ背景に貼るホラー画像製作、作業垂れ流しだー」

「うわ〜兄者うわ〜」

「……なんか腹立つからスマホ用も追加で作るか」

「春ちゃんごめんなさい!」




はい、という訳で、かなり久しぶりの更新となりました。
いやそんなに間が空いている気はしないんですけどね?
知ってますか?
一年の内、10月から12月は、無いんですよ。
だからこの世にクリスマスなんて存在しないんです。
サンタもルドルフも聖なる夜もありません。
そんな感じでしばらく私が現実からソリで逃亡している間、
進行中だったコミカライズの話が進みに進み、
気が付けば漫画版が出ちゃってました。
何ともまぁこんな扱いにくい作品を描いてくれたものです。
本当に、心から感謝してます。
そちらも是非お楽しみ頂ければと思います。

2026年は沢山更新したいなと思ってはいます(ていうか新年抱負?)
数えたら去年の更新は3話分でした。
2025年ってすごく短かったんですね。
もう新年ですらありませんが、今年もよろしくお願いいたします。


マシュマロ、妄想募集↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=253518&uid=229168

ファンアート募集↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=253648&uid=229168

高評価、誤字報告、コメントもできればよろしくお願いします。

第三回 あなたの推しは?

  • 春風桜
  • 八重咲紅葉
  • 吹雪菫
  • サイサリス・夜斗・グランツ
  • 甘鳥椿
  • 音無杏
  • 紅上桃
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。