妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件 作:江波界司
サンキューみんな。
界王拳の反動って仙豆で治るんですかね。
あの祭り、もとい大会から一週間。
俺は配信から完全に身を引いていた。
愚妹のチャンネルで出した、大会後すぐの振り返り配信にも俺は出ていない。
なんか、ねぇうん、色々と思うところがあった訳で。
今は卵とキャベツと小麦粉をひたすら無心で混ぜている。
「はぁ……はぁ……………………」
「兄者〜いつまでため息ついてんの〜」
「お前に俺の気持ちは永遠にわかるまい……はぁ……」
「なんか悩んでそ〜ウケる」
「人の不幸を笑ってんじゃねぇ」
お盆の上に人数分のグラスを並べる愚妹を睨む。
今すぐ全身ジッパーにしてアリーデヴェルチしてやりたい。
半分くらいは八つ当たりだな。
したくもなるて。
「リカ姉ぇとか〜ロキくんとかもありがと〜って言ってたよ〜」
「そりゃ社交辞令としては言うだろうけどな」
「大会大成功だったじゃん〜何がダメ〜?」
「成功ってか、上手く行き過ぎたっつーかな……」
「いいことじゃん〜」
天Vオーバードール杯。
それに俺がわざわざ出た大きな理由は、蛇王エリカから逃れるためだった。
夜斗の言い分と本人の性格から察したが、あいつは目的のためなら何でもする傍若無人さを持っている。
そんな奴に目を付けられるのは何かと面倒そうだと感じた。
ただでさえ立ち位置がグレーなのに余計な心配事は増やしたくない。
そのため今回、運営側には二つの条件を出していた。
一つは、俺の本戦への不参加。
これはVTuberではないという一線を守るためであり、乱入という形で達成されている。
もう一つは、これが天Vとの最後の関わりとすること。
これで俺は大会だけでなく、エキシビションなどにも一切参加しない契約となった。
ここまではいい。
問題はその後だ。
「俺の予定は予定通りにならねぇんだよな……」
「なんの話〜?」
「兄者殿、生地はまだかの?」
「だからなんでエリカが
「アタシが呼んだから〜?」
「いや呼ぶなよ」
「兄者殿が儂から逃げるからじゃろ」
「いや追うなよ」
「勝ち逃げされて追わない訳ないじゃろ!」
「クソめんどくさいなお前」
現在、俺はエリカに付きまとわれている。
物理的にという訳ではない。
もしそうだったらストーカーを生贄にポリスメン召喚の義をすれば済む話だからな。
コイツはあくまでもゲームでの再戦、というかリベンジを希望しているだけだ。
なんで司法はこれを裁けないんだよ。
俺とのLIME履歴を見せながら警察に相談したら、惚気乙とか真顔で言われかねない。
ゲーマーは負けず嫌いなんて話をよく聞くが、俺や夜斗とはレベルが違う。
どっかの盲目軍議チャンピオンくらい覚悟ガンギマリになってそうだ。
まぁそれならとっくに死んでるんだろうけど。
忘れてはならない。
コイツもP.Sライバーの素養があると、あのボスに認められている人材だ。
個人で配信業をしているため他の奴らよりも社会性はあるが、それでもやべぇ奴なのは確かだ。
ふざけるな、たかが黒星一つ、他のゲームでやり返してやる。
とか、往年の白い悪魔みたいなことを言ってきそうだ。
P.S0期生は伊達じゃない。
【天V】みんなで大会お疲れ様会〜!【春風桜、サイサリス・夜斗・グランツ、八重咲紅葉、蛇王エリカ、兄者】
「はい、おはる〜!」
「…………」
「ね〜!みんななんか言ってよ〜!」
「乗り気なやついねぇだろ」
「そんなに振り返るのイヤ〜?」
「それ以前の問題な」
そりゃ誰も話したくねぇだろ。
あまりにもメンツが酷い。
誰も喋らない現状、配信にはお好み焼きの焼ける音しか流れていないと思っていた。
どうやらノイズキャンセルでその辺は大丈夫らしい。
最近のマイクって凄いね!
大丈夫でないのはむしろ演者側だ。
「とりあえず自己紹介ね〜!春風桜だよ〜」
「八重咲紅葉です」
「夜斗だ」
「蛇王エリカじゃ」
「兄者」
「ね〜!みんなテンション低い〜!」
コメント:お通夜かな?
コメント:優勝者がいてこれ?
コメント:空気悪w
コメント:誰もやる気ねぇw
コメント:エリカ様までいるぞ
コメント:何故エリカ様まで?
かなり謎なメンバーだろうし、ざっくりと説明しよう。
今回の企画者にして、天V乱入者枠で暴れ回り、事実上の優勝をもぎ取った女、春風桜。
大会準優勝チームの一人にも関わらず、決勝ではエリカとのマッチアップでコテンパンにされた被害者、八重咲紅葉。
同じく準優勝するも、通算対エリカ戦での負け越し記録を更新し、話題すらも乱入者に取られた悲しきエース、サイサリス・夜斗・グランツ。
優勝したことすら忘れ、自分を負かした相手を地の果てまで追い回すほぼP.Sライバー、蛇王エリカ。
で、お疲れ様会のつまみ用意までさせられた、絶賛エリカから逃亡中の俺だ。
どうやってこれで盛り上げんだよ。
「何がお疲れ様会だよ。ギスギス反省会の間違いだろ」
「儂はもう煽られてるんじゃと思っておるぞ」
「お前は勝手に参加したようなもんだろ」
「呼ばれた側じゃが?」
「お疲れ様会ってよ、桜はこの前やってなかったか?」
「みんなでやりたいの〜」
「とりあえずわたしはお好み焼き食べてますよ。もう語ることもないですし」
「おいエリカ、どうにかしろよ」
「なんで儂に振るんじゃよ兄者殿」
「お前がボコボコにしたせいで自信喪失してんだよ。見ろ、もうソースかけ忘れるレベルで落ち込んでんぞ」
「紅葉はいつまで引きずってるんじゃよ……」
コメント:あー因縁がすごい
コメント:八重咲元気だせ
コメント:ここは兄者の声真似でひとつ
コメント:エリカ様が強すぎた
コメント:八重咲ドンマイ
コメント:いい試合だったよ
「エリカは普通に強ぇから気にしなくていいと思ってんだけどな!」
「と、チームメイトが言ってんぞ」
「夜斗さん……兄者さん……」
「そうじゃそうじゃ、儂に負けまくってるグランツが言ってるんじゃから」
「ナチュラルに煽るなぁおい!」
「事実じゃろ」
「スコア比べようぜ!俺の方がダメージ取ってるからな!」
「後衛の儂よりダメが取れない前衛じゃったら笑うしかないのう」
「兄者〜二人って仲悪かったっけ〜?」
「仲はいいだろ。時期が最悪なだけで」
そりゃ大会終わりの因縁有りまくりなタイミングで呼んだらこうもなる。
スポーツではノーサイドの精神で、試合後はお互いを称え合うなんてのもよくある。
それはゲーム界隈、eスポーツの分野でも変わらない。
ただコイツらの場合は、旧友にして長年のライバルであり、気の置けないゲーマー仲間だ。
競い合い高め合い、時には煽り合って来た仲だろうからな。
こういう言い合いになるのは自然だ。むしろこのじゃれ合いこそ仲の良さの証明と言ってもいい。
「三先ならオレ達が勝ってたろうけどな!」
「実力勝負するまでもなく負けて準優勝じゃなかったかの?」
「そっちも結局兄者に負けて優勝チーム(仮)とか言われてんだろ!」
「おい矛先をこっちに向けんな」
コメント:飛び火
コメント:仲良いな
コメント:優勝チーム(仮)w
コメント:優勝(笑)
コメント:一応優勝チーム
コメント:優勝したことにはなってる
「そうじゃのう、その辺の話は儂も聞こうと思ってた所じゃ」
「いやリスナーが勝手に言ってるだけだろ」
「兄者さんは謙遜しますけど、リカロキペアに勝つって相当なことですからね?」
「しかもサクラと組んでだからな……」
「アタシは頑張ったじゃん〜」
「その頑張りをオレと組む時も見せて欲しいんだが!?」
「こういう言い方はあれですけど、よくロキさんと互角にやり合えましたよね?」
「あれは兄者殿の腕じゃな」
「アタシも頑張ったって〜!」
コメント:兄者が凄いのか
コメント:どゆこと?
コメント:兄者の位置取りがすげぇ良かった
コメント:姫は頑張った
コメント:兄者が上手かった?
「儂を見つつ、要所要所で援護を入れてたからのう。ロキからしたら邪魔でしょうがなかったじゃろう。儂も最後は誘導されたしの」
「エリカが邪魔で全然できなかった方だぞ」
「普段のお主らはどんだけ息が合うんじゃよ」
「別に合わねぇわ。本気でやれとか言いいながらコイツと組ませやがって」
「何が不満だ〜クソ兄者〜」
「兄者殿はサクラと組んだ方が本気でやるじゃろ」
「何を根拠にそんな仮説立てやがった」
「可愛い妹のために張り切ってるんじゃないかの?」
「よし手出せ、二度とコントローラー握れねぇように焼いてやる」
「照れ隠しかの?」
「利き手で勘弁してやろうと思ってだが、両手焼きをご所望か?」
コメント:ギスギス……
コメント:ずっと喧嘩してるw
コメント:戦いはまだ続いている
コメント:もはやP.S外にも遠慮がねぇw
コメント:兄者と対等にやり合える稀有な存在
コメント:エリカ様に勝ったバケモノ
本気でやり合えるなら舞台はなんでもいい、と打ち合わせの段階でエリカに言われたが、チーム分けの時点で勝たせる気ないなとは思った。
まぁ思いの外愚妹が真面目にやってくれたお陰で試合にはなったがな。
練習期間に愚妹をタイマンでボコした甲斐があるというもんだ。
本人は文句しか言ってなかったが、無意識下でも技術向上には繋がっていただろう。
「でも実際、兄者さんはかなり全力でしたよね?」
「だな!アケコンまで持ち出してたみてぇだし」
「そうなんですか!?」
「そうだよ〜」
「あのコントローラー交換はそういうことじゃな」
「その辺踏まえて、奇策でもぎ取っただけだからな」
「それってよ兄者、三先だったら負けてたって事か?」
「三本先取までやってたら対応されて終わりだ。三戦目の時点で後半には受けられてたしな」
「もし三先になってたら、兄者ならもっとエグい戦法とか考えそうだけどな!」
「まぁあの時点でも、愚妹とコントローラー入れ替えるとか、試合中にボイス繋いで挑発するって手もあったが」
「想像以上にエグいですね!」
「身内じゃない大会でやっていい範疇超えてるからな」
「兄者殿を見くびってたのう……」
コメント:エグいw
コメント:兄者お得意の盤外戦術
コメント:トラッシュトークか
コメント:半分くらいやってなかった?
コメント:BO5でもいけたのでは?
コメント:まだ兄者には先があったのか
コメント:魔王モード怖いw
コメント:真魔王の兄者は無敵
コメント:やはり最強は魔王兄者か
逆に言えば、それくらいのギリギリ反則間近な方法を取らないと勝てないってことだ。
無理矢理に勝ち得ただけのこちらとは違い、エリカ達はハンデ付きの二回戦も勝ち越し、決勝まで残った夜斗と八重咲を正面から蹴散らしている。
実力も安定感も含まれる優勝チームという称号は彼女らにこそふさわしい。
のだが、エリカ殿はエキシビションの一敗がご不満のようだ。
「つーことで、今回はたまたま俺達が勝っただけで、エリカ達が俺らより弱いわけじゃないし、むしろ総合的にはそっちの方が上だ」
「それならもう一戦やろうと言ってるんじゃがのう」
「意味わかんねぇし、それやるって言ったら勝つまでやるだろ」
「当たり前じゃろ」
「でもわざと負けたらキレるだろ」
「なんでそんな当たり前のことをわざわざ確認するんじゃ?」
「お前本当にめんどくせぇな」
コメント:負けず嫌い様
コメント:蛇王様はしつこいぞ
コメント:本気にさせた兄者が悪い
コメント:さよなら兄者
コメント:これは逃げられませんね
「これが大いなる力の責任ってやつですか」
「まぁ?兄者は試合に勝っちまったもんな?」
「あにひゃもれ〜めふらひくほんひだっらひれ〜」
「飲み込んでからしゃべれよ」
「兄者、珍しく本気だったしね〜って言った〜」
「確かにな。作戦練ってる辺り、兄者結構ガチだったなあれ!」
「先方からの注文だったからな」
「なら再戦も受けて欲しいんじゃが」
「貸し借りも何もねぇんだから、受ける理由がない」
「まぁ?オレとは普段から遊んでるけどな!」
「手加減しながら相手されてそんなに嬉しいのかの?」
「されてねぇわ!」
「大会のは珍しい本気だったんじゃろ?」
「ぐっ……」
コメント:論破……
コメント:また夜斗の負けか
コメント:蛇王>魔王
コメント:真魔王>蛇王か
言い返せよゲームバカ。
フォローする訳じゃないが、夜斗を相手にして手加減する余裕はない。
少しでも手を抜けば一方的に負けるのは目に見えている。
本人は負け越してる言っているが、エリカと同等かそれ以上の出力を持ったプレイヤーだと俺は思う。
まぁ本人には言わんが。
「ところで兄者さん。あの試合、アケコンを使ったから勝てたんですよね?」
「理由の一つではあるな」
「わたしがあげたアケコンを使ったから勝てたんですよね!」
「まぁ有るものをわざわざ買わねぇし」
「これは何かお返しがあってもいいんじゃないですかね!!!」
「なぁ夜斗、お前らのチームのコーチング担当って、一応俺なんだよな?」
「そうだが、それがどうかしたのか?」
「いやー、せっかく教えた相手が、決勝じゃストレート負けとはなー」
「ぐっ……」
「ぐふっ……」
「わ〜夜斗くんと紅葉ちゃんにダメージ入った〜」
「しかも片方はほぼ完封されてたなー」
「おぐっ……!」
「けどあれ、前衛がしっかりフォローしてたらまだ分かんなかったよなー」
「ぐうぅぅぅ……!」
「あの、愚妹ですら、キルを取れた相手なのになー」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「ちくしょう!なんかすげぇ悔しくなって来た!」
「ね〜これアタシもバカにされてない〜?」
「一言で四人ディスってるのう」
コメント:全体攻撃
コメント:イ〇グランデ
コメント:アル〇マ
コメント:魔王の一撃
コメント:サンダーボルト
コメント:これがご褒美か?
コメント:流石は魔王
コメント:ドS式のお返し
新顔が増えても、どうやらバカ共は何も変わらないらしい。
大会というイベントが転換点になるかとも思ったが、どうやら杞憂のようだ。
まぁ人はそう変わらねぇわな。
バカは相変わらずバカだし、オタクはいつも通り不安定だし、ゲーマーってのは揃いも揃って偏っている。
こんなふざけた奴らと騒がしい光景が、日常だと思えてしまう。
我ながら、中々に毒されてるな。
慣れってのは怖いもんで、何かのきっかけでもない限り、慣れていることにすら気が付かない。
その内、この新顔にも慣れて来るんだろうな。
いや、流石に逃がして欲しい。
蛇は大概、毒があるんだよ。
大会の準備期間は、かなりの割合でゲーセンに行っていた。
その為、家を空けている時間は普段よりも更に長かった。
飯も惣菜とか案件先から貰ったレトルトがメインだったな。
俺が勝手に食う分にはいいのだが、愚妹には少し悪いことをしたかもしれん。
「そういや愚妹よ」
「なに〜?」
「あの時の試合、お前結構真面目にやってたよな」
「あ〜そりゃね〜」
「何で釣られてんだよ」
「別になにも〜兄者がめっちゃマジだったから〜」
「気を遣ったと?」
「……あ〜ミスったら怒られそ〜じゃん?」
「別にミスってキレるほど短気じゃねぇよ」
まぁしかし、実際問題、愚妹がいつも通りのパッション頼りの脳死テンションプレイを続けてたら、勝つのは無理だったろう。
それなりに練習もしてくれたしな。
久々に、俺も真面目なものを作ってやろうか。
そんな気概を胸に、冷蔵庫を開けた。
中は真っ黄色だった。
「で、これは?」
「ミ、ミスって〜」
「これは全部寄付します」
「やだ〜!アタシのプリン〜!」
食う気なの?
5キロはあるぞ?
どうも江波界司です。
やたらと最近早いですね。
そりゃ変化系を名乗るくらいには気分屋ですから。
ノってる時は特級より上です。(筆の話)
できるなら理論派な人になりたかったんですがね。
俺バカだから分かんねぇけどよぉ、
バカだから分かんねぇわ……。(悲しい現実)
マシュマロ、妄想募集↓
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ファンアート募集↓
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高評価、誤字報告、コメントもできればよろしくお願いします。
第三回 あなたの推しは?
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春風桜
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八重咲紅葉
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吹雪菫
-
サイサリス・夜斗・グランツ
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甘鳥椿
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音無杏
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紅上桃