妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件 作:江波界司
本日はお日柄もよく、申し分のない家ゲー日和である。
通話を繋ぎながら自室でアケコンを叩く。
朝から始めて、もう午後二時か。
お昼にはお腹が空くという人間的機能があるはずなんだが、俺もエリカも忘れているようだ。
チラリと見たスマホの通知も、気付いていなかったがそれなりに溜まっていた。
仕事関係は無さそうだし、面倒だからまとめて消そう。
「へぇ、個人勢って大変なんだな」
「その分、企業Vよりは自由が効くがの」
「いやスタートに補正がねぇって相当なハンデだろ。釣り合い取れてんのかそれ」
「どの道、人の目にとまるかどうかは運じゃ。その先は実力じゃがの」
「先?」
「人の目に留まり続けるって意味じゃ」
平たく言えば、人気の維持。
運が絡まないとしたらそっちの方が難しいのではないだろうか。
素人の俺ですら、配信業は毎日活動しないといけない、なんて話も聞くくらいだ。
体力やペース配分を含めて、実力勝負ってことかね。
「俺との再戦を配信上でやりたいってのもそれが理由か」
「儂の売りはゲームの強さじゃからのう。負けたまま終われないんじゃよ」
「とかそれらしい事を言ってるが、普通に負けて悔しいだけだろ」
「やってしまえば兄者殿には全然いつでも勝てるがのう?」
「今日まだ勝ち越してないのは演出か?」
「ご要望ならここから三連勝してやるがの」
「できるなら見せて欲しいもんだな。できるなら」
「その半笑いが苦笑にならんようにするんじゃな!」
煽り合いは嗜む程度、ついでに親しい間柄のみにしよう。
今は何してもワールドワイドで晒されるからな?
お互いに打倒パンダを掲げて組手をしているが、常に集中し続けるのは無理がある。
本気モードに入るまでは気晴らしの雑談が混ざり続けるだろう。
あの変人との顔合わせ以降、暇な時間はエリカと対戦することが多くなった。
一方で夜斗とのゲーム時間が減っている気がする。
それは単純にスケジュールが空かないからであって、対戦相手を乗り換えた訳じゃない。
なんなら最近のP.Sライバーはどこも忙しいようだ。
名が売れるとやることも増えてしまうのは世の常である。
しかし仕事を早く終わらせると仕事が増えるのは理不尽だと思います。
【女子力向上委員会】誰が兄者さんに負けてるって?【八重咲紅葉、春風桜、甘鳥椿、兄者】
えらく悲しいタイトルを付けたもんだな。
俺が勝っていたとして、なんのプラス査定も付かない辺りが特に救いがない。
今回は珍しく事前準備をする時間があった。
もっと言うと、事前準備をさせられた。
八重咲からの頼みとはいえ、なんで俺が司会をせにゃならんのか。
その他にも色々とやってるし、俺はいつから裏方のスタッフになったのだろう。
まぁ借りがある以上断りはしないがな。
始めるか、事前情報があってなお意味が分からない配信企画を。
「女子力向上委員会ー」
「いえ〜い!」
「めっちゃ棒読み来たッスね!」
「台本にちゃんとビックリマーク付けたはずなんですが」
「まるで行動を読んでいたかのような言い草だな」
「当たり前じゃないですか!」
「そうッスよ!兄者検定何級だと思ってるんッスか!」
「知らねぇがそのイマジナリー級位はさっさと返納しろ」
「持ってないものは返せないッスね〜」
「持ってねぇものを誇るんじゃねぇ」
コメント:兄者検定やって欲しい
コメント:兄者王か
コメント:二級くらいは持ってそう
コメント:舎弟なら3級は余裕
コメント:今日もうそれやろうよ
やりません。
こちとらわざわざ問題まで考えて来てんだぞ。
女子力向上委員会とかいう、どこぞの大御所が暴れ回る番組みたいなタイトルこそ今知ったばかりだが、企画自体は知っている。
内容としては三馬鹿がクイズに答えるだけ。
三人で競うための司会役を俺に頼んだかたちと言える。
「──と、俺が知ってるのはここまでなんだが」
「なんですか?」
「タイトルと何も合ってねぇと思ってな」
「そうッスね!ここからが本番ッス!」
「マグマなのかここからか」
「実は兄者先輩が作ってくれた問題を、すでに女子力の高い人が解いてくれてるッス!」
「あ〜アタシ達じゃない人ね〜」
「配信外にも被害者がいると確定したんだが」
「女子力が高い人の答えは当然、女子力が高いはずですよね?」
「今回はその、女子力の高い答えを当てに行く企画ッス!」
「最終的に女子力が一番高かった人が勝ちです」
コメント:兄者も負担させられてて草
コメント:問題まで作ったのかよ
コメント:被害者Bは誰だ
コメント:配信にいないのw
コメント:女子力とは?
コメント:それで上がるものなのかw
コメント:これは女子力向上委員会だな!ヨシ!
コメント:加害者三名と被害者二名でお送りします
「これ、愚妹の企画だろ」
「なんで〜?違うけど〜?」
「立案から進行までバカな事しか言ってねぇじゃん」
「バカとは失礼ですね!」
「ツバキPとさきディレクターの傑作ッスよ!」
「忘れてたわ、残りも大概だった」
「待って下さい桜ちゃんと一緒にしないで欲しいです!」
「流石にツバキもここまでじゃないッス!」
「二人とも〜?アタシにケンカ売ってない〜?」
「てか、なら愚妹は何担当だよ」
「ん〜主役〜?」
「なんで俺がコレより仕事負担してんだよ」
「指さすな〜てかコレ言うな〜」
コメント:主役乗ってるなw
コメント:せめて主演であれ
コメント:裏方が全員バカは新しい
コメント:ふざけた企画かいつも通りじゃないか
コメント:姫の企画じゃない絶望感
コメント:兄者の方が準備してて草
まぁ企画の性質上、演者に問題は作らせられないんだろうけども。
俺の預かり知らぬところで変更されたクイズの答えは、八重咲が勝手に表示してくれるらしい。
イカれたプロデューサーと有能さだけはあるディレクターに文句を言っても始まらないので、さっさと一問目へ進むことにした。
『問一。鉛筆と消しゴムを繋いでいる金属の名前は?』
「あれ名前あるんだ〜」
「そういう系の問題はいくつか持って来たぞ」
「ここで重要なのは、普通に正解しても意味が無いというところです」
「え、さき先輩、まず答え分かるんッスか?」
「初歩的なことだよ、ツバトソン君」
「オタクってどうでもいい知識でマウント取りたがるよな」
「デカめの主語で批判するのやめて貰えませんか!」
コメント:矛先がこちらまで
コメント:実は原作ホームズは言ってないセリフ
コメント:答えはフェルールかな?
コメント:なんで兄者は俺達を刺した?
コメント:兄者もオタクやろがい!
コメ欄にも見えるが、正解はフェルール。
カンニング防止で出題中はコメントを隠しているが、こちらで用意した答えが意味を成さない以上、もやはカンニングも何もないかもしれない。
甘鳥は『
ウチのバカが急に材質にのみ言及し出したのはまぁいいとして。
答えを知っているであろう八重咲すら外しに行っているあたり、模範解答の人物は知らないだろうという判断が見て取れる。
「つかなんで竹?」
「昔は竹でした、みたいな裏をかいた結果ッス!」
「愚妹は、もう諦めてるだろ」
「兄者〜これは女子力高い答えなら正解になるんだよ〜」
「高いのこれ?」
「意外とこういう答えが模範解答と被ったりしますから」
「んじゃ八重咲、女子力強者の答え出してくれ」
「はい!模範解答はこれです!」
『フェルール』
「おぉ、正解だわ」
「えぇ!!!スミレ先輩知ってるんですか!?」
「何気に失礼だな。てか被害者スミレさんかよ」
「ツバキが依頼したッス!」
「これ知識問題じゃん〜」
「女子力問題なんてハナから用意してねぇわ」
コメント:パイセンだったかぁ
コメント:当てるんかい!
コメント:合ってんのかよ
コメント:被害者B=吹雪菫
コメント:女子力つよつよではある
本人には言えないが、答えを知ってることに驚いている。
本当に本人には言えないな。
ルールも理解できたし、ここからはテンポよく進めることができそうだ。
進行役を頼まれたけど台本が半分しかないのは仕様か?
『問二。弁当に入ってる緑色の薄いプラ紙の名前は?』
「これこそ簡単ッスね!」
「あ〜あれね〜うん、ね〜」
「絶対に愚妹が正解しないってのは分かったな」
「これは当てて欲しいですね!『バラン』です!」
「ツバキも『バラン』ッス」
「愚妹は?」
「『草』〜」
「急に単芝生やされてもな」
「ちゃんと答えだ〜」
コメント:パイセンの答えは?
コメント:葉っぱwww
コメント:合ってはいるけどw
コメント:一応、本当に葉っぱの場合もあるから……
コメント:高い弁当しか知らない人みたいになってるw
コメント:プラ言うとるやろがいw
「兄者〜アタシの合ってない〜?」
「これ部分点とかあんの?んで草で部分点ってどうなの?」
「企画のルール的に、ニュアンスが近いので点数入れてもいいですよね……」
「いいのかよ」
「やった〜!」
「正解の点じゃなくて、今回は女子力点ですから」
「知らねぇ単位で競ってんな」
「兄者先輩、思ったんッスけど、これ割とクソ問じゃないッスか?」
「テメェらが勝手にクソ問にしたんだろ」
問題作ったのに答えを変えられた俺の身にもなれ。
まぁこれ、クイズってよりスミレさんの思考を読み取れみたいな側面の方がデカイからな。
女子力の高さ以前に、あの人もあの人で中々の思考回路を持っている。
天然の考えを先読みするって無理ゲーでは?
次の問題はイラストで出題するものにした。
といっても自分で書いたわけではなく、フリー素材を繋ぎ合わせて作ったもの。
流石に本家の画像を引っ張って来るのは色々と問題になりそうだったからな。
回転する黄色い光弾の先端に、白髪の老人の顔だけが引っ付いている図。
これが表しているものは──。
コメント:超級〇王電影弾じゃねぇかwww
コメント:完成度たけーなオイ
コメント:あまりにも電影弾w
「これ、どう見てもアレじゃないですか!」
「それ以外ないんッスけど……スミレパイセン分かるッスかこれ?」
「なんか見たことある気がする〜兄者昔やってた〜?」
「できるか」
「実は兄者さんが作品をスミレ先輩に勧めてる可能性が!?」
「配信に出ないのに裏方させられてる被害者の名前知ったのついさっきだぞ」
「スミレパイセンなら奇跡を起こせるかもしれないッス」
「事前知識無しでこれの名前完答されたらもう怖ぇよ」
コメント:無理すぎるw
コメント:普通に名前出てこんてw
コメント:いやこれ何w
コメント:どうやったら初見で当てれるんだよw
コメント:もはや大喜利大会
コメント:お題が既に面白い大喜利会場
当初の予定だと、漢字で書けるかテストするくらいの難易度だったんだがな。
八重咲はもう諦めて普通に技名を書きやがった。
なんなら高らかに叫んでいた。
甘鳥の答えは『遊園地』。
世界がいくら広くても、こんなヘンテコ奥義をアトラクションに採用している施設は流石にないだろう。
まぁ最終的にスミレさんの答えがそれなら当たりなんだがな。
「で、愚妹は?」
「これ〜『扇風機』〜」
「ある意味正解ではあるが」
「だよね〜!なんか見たことあると思ったんだよね〜」
「需要も企画意図も謎なコラボ商品でしたね」
「企画意図の謎さで言えばお前らの方が遥かに上だろ」
「今回のは普通ッスよ?女子力低いとかリスナーに言われたのが発端ッスから」
「それ、タイトル通りなら俺と比べる必要あるんじゃねぇのか」
「それは向上してからやります!」
「これシリーズものなのかよ」
「あと本当に比べて負けたら傷付くッス」
「そこは勝つ自信を持っててくれよ」
コメント:向上するのかこれ
コメント:兄者に勝てるとでも?
コメント:次回が楽しみだ
コメント:兄者が向上させる側なの草
コメント:これ女子力関係なくね?
既に女子力がゲシュタルト崩壊を起こしてるよ。
てか定義からして壊れている。
こいつらはさっきから何を競ってるんだっけ?
俺との勝負にしても、今回のようなルールで比べられた方が勝てる気しないんだけどな。
いや、勝つことが嬉しいのかも怪しいし、なんならこれにおける勝ち負けって何?
ルールも企画意図も崩れ始めて来たが、都合の悪いことからは目を背けるのが一番だ。
さっさと答え合わせを済ませてしまおう。
「スミレ先輩の答えは、これです!」
『おじいちゃんになったピカチ〇ウ』
「色々とダメだろこれ。訴訟されても文句言えねぇぞ」
「大喜利大会なら優勝してるッスね」
「本人は真面目に答えてるのが余計にな」
「言われてみたら〜見えるね〜」
「見えないです。超級〇王電影弾にしか見えないですから」
「まぁ女子力高い人は奥義の名前とか知らんわな」
「オタクに女子力は難しいって言いたいんですか!」
「難しいんじゃね」
コメント:なんでおじいちゃんになったw
コメント:見えないってw
コメント:これが一般的な回答か
コメント:電光石火やね
コメント:黄色いだけでいったろパイセンw
コメント:フリー素材だから伝わりにくかったかな?
コメント:老けた電気ネズミは草
その後も女子らしさを学ぶという名目で始まった、スミレさん天然無双のクイズ番組は続いた。
もはや部分点を取ることすらままならないほどの激戦を制したのは、合計1点を獲得した愚妹である。
バカと天然は紙一重というか、思考が似るのかね。
まずい、これ悪口以外のなにものでもないな。
また一つスミレさんに心の中で謝る内容が増えてしまった。
いい人ではあるんだがな……。
今回にしてもかなり理不尽な協力要請を受けてくれてるわけだし。
ちゃんと労うよう、三馬鹿には配信後にきつく言っておこう。
インターネットが普及仕切った現代、詐欺メールには注意したいものだ。
最近ではSNSのなりすましなんかも流行っているという。
実際、俺も現在進行形で体験している。
あくまで乗っ取られたではなく、乗っ取りを受けたアカウントからの連絡が来た側ではある。
そこには、まぁまぁ高めの宿泊施設の情報が貼られていた。
LIME
八重咲『ここが泊まるところです!』
八重咲『予約とか諸々の手続きは済んでるみたいです!』
俺『何の話?』
八重咲『兄者さんも来てくれるんですよね?』
俺『どこに?』
八重咲『フェスですよ!』
全く身に覚えのないイベントの情報が追加で送られて来た。
URLは流石に触れない。
「兄者〜来週の土日暇でいいんだよね〜?」
「それはいいが、愚妹、これどう思う?」
「ん〜?あ〜ちょうどこれのこと〜兄者も行くんでしょ〜?」
「何に?」
「フェス〜あ、リアルイベントだっけ〜?」
「いや、だからなんの?」
「P.Sのフェス〜ライブみたいなやつ〜」
「……は?」
どうも江波界司です。
どちらかと言えば日常回でしょうか。
配信してますけど、兄者にとってはこれが日常になりつつあるんですよね。
次回は日常かはたまた。
感想、応援が力の源になってるなと感じる今日この頃。
マシュマロ、妄想募集↓
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ファンアート募集↓
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高評価、誤字報告、コメントもできればよろしくお願いします。
第三回 あなたの推しは?
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春風桜
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八重咲紅葉
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吹雪菫
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サイサリス・夜斗・グランツ
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甘鳥椿
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音無杏
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紅上桃