GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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とりあえず既に完成していたバトルを。
もう少しよろしければお付き合いください。


今日の日のさよならにタクトを 3

ドームに無数の穴を作り、エノハを燻りだしたアイテールはようやく姿を現した獲物を頭部にある巨大な目で目視した。

通常種のサリエル、そしてこの新種共に、女神や神の意匠を象った顔自体フェイクであり、本来はこの目で獲物をとらえている。

一見魅力的な容姿、独特の優美な動きは実は完全なブラフである。昔の生物でいえば「ミノカサゴ」と言った所だろうか。美しい見た目に反して危険な毒の棘と貪欲な食性を持ち合わせた獰猛で剣呑な捕食者である。

打ちだす球体から時間差を伴って放たれるレーザーは派手さはないものの、十二分の貫通力と殺傷力を持ち、身にまとった麟紛は猛毒を伴って目標の体内を侵食、GEすら行動力を失う。

「とりあえず・・」

エノハは上着を脱いで口、鼻にぐるりと巻きつける。じわじわと皮膚から浸透する分は仕方ないにしろ、呼吸器や循環器系に侵入されると即行動不能につながる可能性が高い。新種故に毒性も未知だ。

吸い込まないに越したことはない。偏食因子の強い素材で作られた上着であれば気休めにはなるだろう。

しかしそれもこれも・・

 

―まぁ・・接近しないことにはそれすらも杞憂なんだけどね。

 

既に再びエノハの周辺を取り囲むように球体が配置されていた。数が先ほどよりも増えている。

限られた狭い範囲の中でエノハは無数の次から次に放たれるレーザーをシールド、刀身でいなしつつ、時に体を可能な限りひねってかわす。

解放中の動体視力ならこの作業は特に問題はない。しかし、とことん攻め手が無いというのはやはり気分が悪い。

 

自分の真後ろで二つ光る球体を認識しつつもそれに目を当てず、射線から体を逸らさない。

レーザーが球体から線になる直前に盾をその方向に構え、アイテールに向け跳躍する。そこに盾に直撃した敵のレーザーの反動で加速、

 

―もういっちょ・・!

 

さらに砲身に切り替えて空撃ち。エノハの体はより加速し、アイテールの目前まで瞬時にたどり着いた。

驚いたアイテールは目の前まで急激に距離を詰めた敵に向け、反射的に即レーザーを放つ。が・・

目の前にてエノハはひょいと空を蹴るように跳躍する。解放中のGEの身体能力が生み出すあまりに不自然な動きであった。

そのままレーザーをかわしたエノハは神機を刀身に戻し、アイテールの背後へくるりと空転した後、アイテールの巨大な昆虫の様な尾腹部に神機を突き刺す。

・・・・!!!

その痛みにアイテールは鳥類の様な奇妙な悲鳴を上げ、その痛みを振り払おうと空中で不規則に乱れた回転を繰り返す。

「う・・わわわ!この・・!」

エノハは捕食モードに転換、噛みついて振り落とされぬようこらえる。

どっちが上なのか下なのか解らない程の回転がしばらく続いた後、いきなりアイテールが落ち着いたように動きを止めた。

そこは既に「上空」と言って差し支えない。眼下で部下たちの激戦の光が見える。

そこでアイテールはエノハを乗せたまま両手で顔を覆う様な仕草を取った。

―・・・!?やばい・・!

すさまじい凶兆を感じ取り、エノハの顔に戦慄が走った瞬間―アイテールを中心に巨大な光の柱が全方位に広がった。己以外すべての物をはじき出す絶対領域のエネルギーフィールドが展開。

反射的にエノハはシールドを開き、それを受ける。

「がっ!・・くっそ・・・!!」

それを受けた今の場所が問題である。エノハは大きくドームからはじき出され、後は落下を待つだけの状態であった。ここでの落下はエノハに軽くないダメージを与え、

この場での一時的戦線離脱を意味する。アイテールにドーム内の侵入を許せばソーマ、シオに危険が及ぶことになり、終末捕食の危険性が高まる。

 

その時だった。

レーダー上のエノハの「ありえない」立ち位置に気付いていたヒバリが既にコウタに無線を入れており、不規則に飛ぶ空中のアイテールの行動の一部始終を彼は見ていた。そしてアイテールから発せられた光の柱に金色のオーラを持った者が弾かれてしまったのも。

 

―おいおい!「指揮者」が演奏を終えるまで舞台を降りるわけには行かねぇだろーが!?

 

コウタは無線に向かって親友の名前を力の限り叫ぶ。

 

『エノハ!!受け取れ!!』

 

彼は通常弾頭を連射、狙いは落下しているエノハである。

無線に響くコウタの声と同時の銃声―エノハは全てを理解した。

「頼れるぜ・・シスコン兄貴!!」

エノハが構えたシールドを次々にコウタの放った弾頭が直撃、コウタの作った「足場」が改めて指揮者を「壇上」へ押し上げていく。しかしアサルト故「推進力」は低い。連射は効くが中々エノハの「高度」が上がらない。

その間にもアイテールはドームへの侵入を果たそうと浮遊していく。

 

「カノンさん!」

『はい!?』

コウタが撃ちながら叫ぶ。この中で唯一エノハと同じブラストを扱う彼女―それにかけるしかない。

「エノハを撃って!早く!」

『ええ~!?私に誤射をしろと!?そんなこと出来ません!』

 

―・・敢えてオレは何も言うまい。

同じ防衛班であるタツミは内心そう突っ込んだ。

 

「いいから!!」

『う~すいませんエノハさん!・・・くらえ!!』

オラクル弾に爆破を接続した弾頭がエノハめがけて放たれる。

さすがカノンである。

誤射に関しては他の追随を許さない。完ぺきな精度だ。

―ひ~お手柔らかに。

そんなエノハの切なる願いは届かなかった。容赦なく強烈な爆風が彼を襲う。

「どわ~!?」

度を過ぎた爆風を受けたエノハの体はドーム側面に突っ込み大穴をあけた。

 

アイテールはセンタードームの頂上に到達、その下にいるノヴァ、ソーマ、そしてシオを確認し、再び両手を顔の前で交差し、「溜め」の姿勢を取る。

エネルギーフィールドでドームの屋根を吹き飛ばし、侵入する腹積もりだ。

その真下。

屋根を吹き飛ばし、オラクル弾がアイテールのスカートを直撃する。

弾かれるようにしてアイテールはほんの少しぐらつき、降下。ドームの天井に接触寸前でぎりぎりこらえ、再び空中に戻る。

「・・・!?」

訝しげな奇声を発し、周りを見渡す。そして今の己の「立ち位置」を知る。

ドーム中央―そこは今や先程自らが空けた無数の「穴」があり、それに取り囲まれているのだ。

今オラクル弾を放ったのは十中八九あの人間。吹き飛ばしたはずのあの人間。

その人間が今ドームの天井の下のどこかに位置取り、自分を狙っている―アイテールはそう確信した。

安全圏で「モグラたたき」をしていた時とは違う。今のアイテールは「地雷原」に居るようなものだ。

アイテールは身構える。「溜め」をすればその隙に即反撃が来るだろう。集中を妨げられたらあの「とっておき」はだせない。ならば・・

 

「おいおい・・なんだよあれ・・!?」

眼下でドームの頭頂部を見ていたコウタはその光景に愕然とした。

 

アイテールを今までに無いほどの数の光弾が取り囲んでいる。エノハの反撃の瞬間にそこに向かって一斉に打ちこむ。逃げ場も無いほどに。

そして同時に「溜め」の姿勢を取る。攻防一体の総火力の解放だ。

このドーム天井など跡形も残るまい。

しかしこの「溜め」はあくまでフェイクである。エノハの行動を誘発する合図の様なものだ。

相手の行動のタイミングさえ解っていればいなすのは容易い。

 

案の定その瞬間にドーム天井を突き破り、迫る攻撃を確認し、一斉にレーザーをその方向へ照射しようとした。オラクル弾を打ち消して放った敵ごと貫く程の密度で。

しかし、天井を突き破って彼に迫ってきた物体はなんと―神機だった。

シールドの面をこちらに向けている。盾を構えたまま突っ込んできたのだ。

これは短絡的で突発的な玉砕覚悟の攻撃―アイテールはそう判断した。

盾は狙わない。狙うはその背後に隠れている持ち主を上下前後左右全ての方向から貫けばいい話だ。

アイテールは一斉に照射。眼前に迫る盾の背後から多量の血が噴出するのを見届けるだけ―

のはずだった。

―しかしアイテールは目を疑った。

放った無数のレーザーに命中した手ごたえが無い―と同時に宙を舞っていた神機が重力に負けて落ちていく。

 

その盾の裏側には・・絶対に居るはずの持ち主の姿が無い。

ありえない。

アラガミに唯一対抗する手段である神機を捨てた瞬間、人間に一切の勝ち目はない。

これは神機使いの常識であり、彼らと戦闘を行ってきたアラガミにとってもそうだ。

そんな命綱と言える神機を戦闘中に投げ捨てるはずがない―

その眼前のありえない光景にアイテールの思考が一瞬停止した時である。

 

―両手が空いてると移動も早いね。

 

エノハがアイテールの真後ろの穴から飛び出した。

 

「・・推して参る」

 

パン!

エノハは拳と掌を目の前で合わせる。

 

アイテールが後ろを振り替えるとそこには両手を上着でぐるぐるに巻き、既に大きく右腕を振りかぶって跳躍しているエノハの姿があった。次の瞬間は何とも異様な光景だった。

強烈なエノハの右ストレートがアラガミ―アイテールの顔面を捉えていた。

全くの無駄な行為である。当然アラガミにダメージはない。しかし、オラクル細胞を埋め込まれ、解放状態、そして研鑽の日々によって鍛え上げられたエノハの体から繰り出される肉弾のそもそもの物理的な衝撃はかなりのものである。空を浮遊するために比較的軽いサリエル種の体は大きくはじかれる。

尚も追いすがり、エノハは連撃を加えた。

 

「神機!使いの!」

左ショートアッパー、右フック。

 

「腕っ節~!」

左ニー。

 

「なめたら・・」

アイテールの頭を持って右ニー。

 

そして蹴りあげ・・上空へ。

 

「・・いかんぜよ・・!!」

組んだ両掌をエイジスの夜空に高々と振り上げ、「ハンマー」をアイテールの頭部に加え、叩き落とす。

堕ちたアイテールの体はドーム天井を突き破る。

えてして念願のドーム侵入を果たしたアイテールの眼前には・・

綺麗に九つ空中に浮かび、並んだ炎の「機雷」の姿があった。

 

天井上と天井下の睨みあいの最中、アイテールが手を打っていたのと同様にエノハもまた手を打っていた。

直前にシユウから奪ったアラガミバレットを全て費やし、既に本当の意味での「地雷原」は完成していたのである。空中に浮かぶ「機雷」、「地雷原」だが。

 

「・・BOMB!!」

 

堕ちるアイテールは避けようも無く、それに接触する。

 

複数の機雷の爆発はアイテールとの接触の度、連鎖的に発生。アイテールの体を焼き払いながら尚も過剰なほどに連鎖爆発を繰り返す。最後の爆発が発生したのち、ボロボロになってドーム内を真っ逆さまに堕ちていく神の姿を象ったアラガミの目に彼が「追い求めた者」の顔が映る。

 

巨大なノヴァの顔。全てのアラガミの最後の目的、存在。

ここから生まれ、そしてここに還る―

 

「母」の顔だ。

ようやく、ようやくたどり着いた―

偽の神がそう思った時だった。

 

「・・・さっきからうるせぇぞ・・てめぇら・・」

 

不機嫌そうな低い声が届くと同時、先程対峙していた人間が持っていた神機より遥かに巨大な神機が真下から振り上げられ、アイテールを再び打ち上げる。

そこに爆風で空中に巻き上げられた自分の神機を回収したエノハが空中から飛来。

 

―乱暴な扱いして悪かったな。お詫びだ。

 

真下に神機を向け、偽神の頭部を喰らい、へし折った。

 

 

 

「もっと静かに戦えねーのか・・」

憮然とした顔でソーマは苦言を降りてきたエノハに呈す。

「そーだ♪そーだ♪」

響く無邪気な声の持ち主―シオが茶化す様に便乗してきた。そんなやり取りにエノハはくすくすと笑い、

 

「いや、すまないね。ご両人」

 

「っ・・・!!」

エノハのその一言にソーマは一瞬で閉口した。

「???「ごりょにん」・・?エノハ・・なに~?「ごりょにん」って」

「ソーマに聞いて?じゃ!俺忙しいから」

そそくさと去るエノハ。

 

「ちょっと待て!おい!!・・・くっ・・あの野郎・・・」

「ソーマ・・?」

「ああ!?し、知らん!!俺は知らん!!俺は知らんぞ!!」

 

「お似合いの二人って意味だよ~?シオ~?」

 

「なっ・・がっ・・・!??」

―博士・・貴様ぁ・・・!

 

ソーマは忘れていた。ここに「彼」がいることを。榊だ。「余計な事を言うランキング」は極東でも上位だ。

 

「・・おにあい?」

「うん。とっても仲が良くて、一緒にいるのが周りにいる皆にとって変じゃない、そんな二人の事だよ~?」

「・・そっか」

 

もうソーマは声も出ない。

そんなソーマにシオは声をかける。

 

「ふふ・・・なんか・・これ・・とってもあったかいな?・・うれしいな!いいな!ごりょにんって」

シオはおそらく弾けるような笑顔をして微笑んでいるのだろう。もう彼女の表情を見る事も出来ないがソーマ達にはそれが解った。

そしてその言葉に寂しさと悲しさが少なからず含まれている事も解っていた。

戦況は防衛班の参戦により好転しつつある。

詰まる所別れの時は近い。

「さよなら」を告げる時が。

 

「ここにいたい」。でも同時に「ここにいてはならない」。

これほど悲しい事はない。

 

そんなシオの気持ちが痛いほど全員解っている。

再びドーム天井に躍り出たエノハはさっきまでの雑談時の和やかな表情は消え、再び戦士としての表情に戻る。

 

『こちらコウタ!こっちはあらかた片付いた!ノヴァの触手の焼却作業に入る』

『こちらタツミ!こっちも片付いて次はB地点の大型二体はこっちで引き受ける!防衛班の腕の見せ所だぜ!任してくれや!』

『あはは!ねぇ貴方!?その程度なの!?がっかりさせないでよ!あははあはは!!』

『こちらジーナ・・カノンのことは私に任せておいて』

『こちらサクヤ・・エノハ君無事みたいね。良かった・・さぁ!援護を続けるわよ!アリサ!?』

『はい!サクヤさん!・・エノハさん!』

「ん・・?」

『シオちゃんとソーマさんの所は・・任せましたよ?』

「・・おうよ」

無線から響く仲間たちの戦勝の声。

 

終曲の時は―近い。

 

「・・シオ?ソーマ?」

届くはずの無い声。エイジス上空を吹く風でかき消されて下にいる二人には届くはずはない。

でも声は届いていた。

 

―・・うん?

―・・おお。

 

「・・時間だ」

 

 

「・・・」

ソーマは月を見上げて無言のまま立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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