GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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うう。携帯端末での入力がツラい。6/29少し追記有ります。入力のめんどさに匙投げて書けなかった部分です。
良ければまたお付き合い下さい。


慟哭 改

感じる。

ハッキリと。

 

同族だ。そして同時に天敵の気配だ。幾つもある。

同じ細胞をベースにしながらも、完全に敵対関係にあるあの忌々しい存在が。

 

オウガはその気配に導かれるように強靭な両足を踏みしめて進む。

足元には幾人かの非戦闘員の死体ーいや正式には武装され、訓練もされた戦闘員であるがアラガミを前にしては非戦闘員と大差ない。

援軍のGEが来るまでに遅滞戦闘を行おうにも武器、弾薬、爆弾全ての攻撃が通じないのでは限界がある。

バリケードごと捕食しアッサリと突破して突き進む。

たった一匹のオウガの進軍は止められない。

 

元々この部隊は有事の際、アナグラの要人、重要資料、機密保持の役目を担っている。

表向きは。

彼等の常駐の真の目的はGEを初めとする反乱分子の排除、鎮圧を目的とした部隊である。よって対人はともかくアラガミに対しての戦闘は門外漢だ。

彼等はアラガミのなかでは将棋で言うなれば「歩」とも言えるオウガテイルすら止める手段が無いのである。

 

そしてそんな「歩」も敵陣に潜入すれば「成金」になる。戦況を決める決定的な役割を成す可能性を生む。

現状はまさにそれだ。

オウガはこの施設の心臓部とも言える場所に向かっていた。彼等に唯一対抗できる兵器が眠る場所ー

神機保管庫へ。

 

エントランスでヒバリの声が響く。

幾つもの隔壁を手元の端末で閉じる。中には偏食因子で構成された隔壁もあるが、アラガミであれば侵入経路などいくらでも作れる。

迷路の壁を壊してゴールまでの道を「掘り進む」事など造作もない。

ヒバリは痛感した。アナグラが何らかの襲撃に際して酷く脆弱であることを。

アラガミに人為的な意図が加わればこれ程まで脆いのか。

明らかにGEが全員で出払ったこのタイミングを狙われた。つまり情報、状況も漏れている。

薄ら寒さすら覚える危機管理意識の低さを痛感しながらも今のこの状況に彼女は向かい合うしかなかった。

 

そんなヒバリの目の前を1人の人間が駆け抜けていく。タツミへの救援要請をしている最中の彼女は呼び止める暇すらなかった。

確かに彼は今この支部が出せる最強戦力である。

 

しかし、今の彼はあくまで「ただの人間」だ。

 

この施設をはじめて訪れた時こそ迷子になったが、今では恐らくめをつぶっても辿り着ける。それほど足繁く通った場所だ。

 

そこに今何があり、誰がいるのかもすべて解っている。

待避勧告も出た。職員は殆ど尻尾を巻いて逃げた。

しかし、

ー君はそこにいるよね。

エノハには確信があった。

 

答え合わせはすぐに終わった。全くもって想像の範疇を越えない光景。

呆れて溜め息を思いっきり吐く。

「なにしてんだよ!」

 

「...。何しに来たの?君の神機ならまだ使えないよ?」

駆けつけやや息を切らしたエノハを一瞥、動揺が少し窺えたがすぐに手元の作業を再開。

 

見るに神機のロック作業だ。

オウガは確実に神機の反応を目指して進んでいる。格納され、コーティングされれば神機の気配は弱まり、相手の攻撃もある程度耐えるだろう。

神機を守り、尚且つ時間稼ぎにもなる。

但し神機を物質で格納する以上、当然固定機に各神機専用の偏食因子を調整しなければならない。

神機は変質、成長する。常に同じ偏食傾向のままとは限らない。人間が成長、普段の食育で味覚も変わるように彼等もまた好みを変える。

適合した神機が度重なる補食の先で適合したはずの持ち主を喰らうーつまりアラガミ化を引き起こす要因の一つとされている。

故に整備士は各神機の変質、成長に合わせて神機の眠る場所の調整をしなければならない。

これが非常に時間のかかる上に優れた整備士でないとまず固定機がおじゃんになる。

各神機の現時点のデータを別端末で閲覧しながら行うのが通常であるが、リッカは常に更新されるそれを既に頭の中に全てを叩き込んでおり、そらんじて今の作業を行っているのである。

 

リッカはこの仕事に誇りを持っている。だからこそ

ーテコでも動きそうにない。

エノハは諦めをもって尋ねる。

「リッカ!あとどれくらいで終わる?」

「...これは後約八分」

「...!!手伝える事は!?」

「祈ってて。流石にこの作業は君にはできない」

 

神機は使えない。

手伝える事もない。

無力感、焦燥感に苛まれる。

自分がただ1人のただの人間であることがこれ以上に悔しい事はなかった。

ただ立ち尽くす。リッカの格納作業を佇んで待つ神機の列にならんで。

エノハは最後尾。

 

そして恐らくエノハの前の順番であろう目の前の神機を見る。

 

それはリンドウの神機だった。

 

その時だった。

 

ドクン

 

妙な空気の振動、共振がリンドウの神機から発せられる。

回りの景色の時が止まった感覚がした。

ー....!?

 

そこに響く。不明瞭な囁くような声。

 

ーあな...いいな。

知らぬまにギブスの間から覗く指先が延びていく。いや、指ではない。

腕輪から伸びる手のひらの形を極端に禍々しくしたような黒いかげが手の甲を這っていく。

 

「え...!?ダメ!それはリンドウさんの神機!!」

 

そのリッカの声に止まった時が動き出す。しかし制止は届かない。

 

エノハも百も承知であった。適合しない神機に触れる、または接続する事の愚かさを。

その所業から発声するリスクは非常に解りやすい。

 

体組織を補食され跡形も無くなる。

侵食によるアラガミ化。

拒絶反応の猛烈な反動でショック死。

など。

 

他にもいくつか事例はあるが共通しているのはGEはおろか、人間として再起不能になる点だ。

そんなタブーをエノハは犯した。

 

指先が触れると同時に頭を貫かれるような衝撃と断片的な光景が駆け巡る。雪の降りしきる光景、遠くに映るエイジス島を眺める。そして見上げる星空。新月なのか蒼く美しいシオの月は見えない。真っ暗でただ遥か先にもうすでにこの世には存在しないかもしれない星たちを眺めているだけ。

 

走馬灯と呼ぶにはあまりにも心当たりのない、そして空虚な光景に苦笑いした。

ーははは。...俺の人生ってこんなに空っぽなんだっけ?

 

エノハは膝をつこうとする。意識を手放しかけた。

しかし、耳に響く声が聞こえる。

彼の名を呼ぶ声が。

 

ー...違う!!

崩れかけた膝に力を入れ、おれかけた心を支えてくれた声の主を見る。

ついさっきまでの仕事のときの真っ直ぐな眼差しとはうってかわってヒドイ顔だ。

 

そんな顔をさせた自分に対する嫌悪感を糧にエノハは足を踏みしめる。

右手から何かが吸いとられていく様な感覚を覚える。その代わりに生まれるのはただ果てしない激痛だけだ。

それでも手は離れようとしない。

黒い甲を這う「者」の意志、そしてその下、エノハの手ー彼の意志が同じ方向を向いていたからだ。

 

 

駆け寄ろうとした。でもできなかった。

まるで彼が別の生物に変わってしまうような不安。

なんてムチャを。

なんてバカなことを。

 

エノハ!

 

仕事の事など最早忘れてしまった。整備士失格だな?私。

自責と後悔の念。

しかし、それをじっくりと味わうことすらも。それすらも今の私たちの状況は許してくれなかった。

 

背後から迫る気配に振り返る間もなく私の意識ははね飛ばされる。呼吸もとまりそうな衝撃で。

 

侵入者の隔壁を吹き飛ばす強烈な爆風に少女の体は三メートルも吹き飛ばされ背中を強打した。意識が保てるはずもなくうつ伏せに力なく横たわる。

 

侵入者ーオウガテイル。遂に目標地点へ侵入。

 

ここだ。見つけた。

敵。敵。敵だらけ。

餌。餌。餌だらけ

 

忌々しい無数の天敵の気配。そして無力な人間が二人。

破壊衝動と食欲を同時に満たせる悦楽な状況だ。

狂喜に満ちた咆哮をアナグラ全体に響かせる。

うつ伏せだったリッカがその衝撃波で仰向けに転がされる程の咆哮だ。

「う...」

呻くリッカの声に狂獣は反応。じとっと彼女に向け眼を動かす。同時に次の自らの行動の指針は決まった。巨大な口を広げる。

ここに来るまでに数多の人間、施設内の備品を捕食し巨大化した狂獣には小柄な少女の体など一口サイズだった。

 

開口した上顎と下顎の影がすっぽりとリッカの体を黒く覆った時ー

 

ドスっ!

 

狂獣の眉間になにかが突き刺さる。

それは神機の寝床。固定機だった。その先端部はまるでねじおられたような不自然な壊れかたをしている。

どれほどの力を加えればこの様に破損するのか検討もつかない不自然さだ。

 

オウガはダメージこそないものの眉間の衝撃でよろよろと後退りし、巨大な頭部の重みを便りに向き直った。

が、獲物は消えていた。

 

いや、横取りされた。

肉食生物にとって最大の屈辱。獲物を掠め取られること。

オウガは低く唸り、突き刺さった固定機を頭を振って弾き飛ばした。

オウガのその「返礼」をー

 

彼は呆気なく真っ二つにした。二つの破片は彼の背後の壁に各々突き刺さる。

 

左手で少女の体を支え、右手には血のように赤い神機ーそれをまるで雛を守る親鳥の羽のようにして仰向けの少女を包み込んでいた。

 

「...」

右手のギブスをちらりと見る。

人間性が明らかに残った目で。

そこには幾つもの仲間たちのメッセージがあった。

 

「この機会にゆっくり休んでね。無茶はしないこと!たまには先輩の言うことは聞くものよ サクヤ」

「リーダーが休んでいる間に私追い抜いちゃいますから!だから...今はゆっくり安心して休んで下さい アリサ」

「此方は心配すんなよな。俺が1.5人分働きゃすむことだ!! コウタ」

「..お前はしばらくじっとしてろ。ある意味お前はコウタより向こう見ずだからな ソーマ←んだと~ コウタ」

「今度お見舞いにボマークッキー届けますね カノン」

「貴方の分も綺麗な花を咲かせるわ...お見舞いのお花はそれでいいかしら?」

「また無理しやがって!休みの間ヒバリちゃんと話放題じゃねーか羨ましい!はっ!?オマエまさかヒバリちゃんを狙ってるんじゃ!?させねぇよ!? タツミ」

「...↑気にしないで下さい。今はお大事に。...御自愛を ヒバリ」

 

ーありがとう。

そして済まない。

...皆。

 

エノハは仲間達の想いのつまったそのギブスを。

 

叩き割った。

 

赤い腕輪が躍り出る。

完全に解放された掌が虚空を強く握りしめる。ハラリと肩と腕を固定していた布が音もなく床に落ちた。

仲間の想いを砕いた負い目なのだろうか。エノハは伏せ目がちに視線を落としていた。

しかしそこにはいつも支えてくれている少女の顔があった。

少し痛々しい姿だが生きている。生きていてくれている。

その事実はー

顔を上げる。前を見る理由としては十分過ぎる。

 

「...こいつに触んなボケコラ殺すぞ!?」

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。また良ければお付き合い下さい。
ありがとうございました。
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