そんな話です。良ろしければお付き合いください。
「神」生いろいろ
榎葉 山女はじっと見ていた。
ビジネスチェアを逆向きにして座り、目の前にずらりと並んだ神機の一つ一つを眺めていた。
その彼の頭の中で声が響き渡る。言うまでも無くレンの声だ。
(サクヤさんの神機は持ち主と良く似て真っ直ぐな神機(ひと)ですね。適合率はお世辞にも高くは無いですがそれをお互いで埋め合おうとする協力関係が神機とサクヤさんの間では出来ています。ある意味神機と適合者との関係では理想的と言えるでしょう。)
―成程。なんかサクヤさんらしいな。
(好きなものはサクヤさんが時々口ずさむ幼少のころ誰かに教わったらしい思い出の歌とリッカさんです。)
(次にアリサさんの神機ですね。性格は一言で言うと凄くプライドの高いひとです。)
―そんな感じがする。
(あと物凄い潔癖症です。彼女を洗う際の培養液は牙王製のM-23でないと物凄く不機嫌になる上、他の神機で使用後の培養液をうっかり彼女に使い回しちゃったりすると発狂します。ロシアにいた頃新人の整備士にそれをされて怒り狂ってその人を病院送りにしたそうです。)
―・・。今度M-23の改良版がでるからそれをリッカに納入するよう伝えとくよ。
(助かります。・・怒ると手がつけられないタイプでして・・)
―神機も苦労してんだな・・。
(あ、あとアリサさんにもう少し身の回りをちゃんと片づける癖をつけてほしいそうです。潔癖症の彼女からしてあれは「ありえない・・ドン引きだわ」だそうです・・)
―・・なかなか難題だけど善処しておくよ。
(好きなものはアリサさんとリッカさんです。リッカさんは今まで自分を整備した人間の中でも最も「解ってる」ヒト―だそうです。)
―ほう。
(次はコウタさんですね。神機の中でもかなりの古株です。もともとツバキさんに扱われていたのは御存知ですよね)
―そうだったな。新人のコウタにあてがわれた割に既に基礎能力が異常に高かったから話題になってたし。
(そうです。気さくでとてもいいひとなんですが・・時折「昔はよかったな・・」ってしみじみ呟く事が多いです。)
―ま、まぁ、前の持ち主の方が遥かにしっかりしてそうだしな・・。
(すきなものはリッカさんと昔の思い出に浸る事だそうです。彼の思い出話を聞く時は耳半分でないと精神が持ちません)
(今度は台場 カノンさんの神機ですね。・・彼女は)
―「巨砲、火力主義。撃ちっぱなした後は敵も味方も野となれ山となれ」・・タイプだろ。
(な、なんでそれを!?)
―・・。カノンさんやっぱり乗っ取られてんじゃないのかな・・?リッカに報告すべきか・・。
(それが持ち主のカノンさんとは非常に波長があっているのか適合当初から目を見張るシンクロ具合でした。適合率も高いですしね。正直相性抜群ですカノンさんと彼女は。)
―うーむ・・どっちとも取れる。結局真相は闇の中か・・。
(好きなものは持ち主のカノンさんと爆発、放射タイプの弾頭と射線上に立つ者全て。あとリッカさんです。)
―射線上に立つ者すべてを愛して「あれ」かい。愛が重すぎるぞ・・。
(今度はジーナさんの神機行きましょうか)
―おお。ジーナさんか。
(彼は敵を撃つ事に独特の美学を持ってます。理屈屋でもありますね)
―へぇ・・持ち主と相性抜群じゃないか。
(ただ・・ジーナさんにはもう少し相手を撃つ事にためらいを持ってほしいとのことです。)
―・・意外だな?ただスナイパーにそれは愚問だろ。相手に情けをかけたらむざむざ射撃チャンスを逃すし。
(そういうわけではないんです。理屈屋って言ったでしょう?ジーナさんが引き金を引く前に彼は儀式として「銃は私が構えよう。照準もわたしが・・」とかいつも語りかけるそうなんです。が、いつもその途中でジーナさんが何の躊躇も無くトリガーを引くのでその度に落ち込んでるそうなんです。最後まで言いきれた事が無いとか。)
―・・。何とも色んな意味でコメントしづらいな・・。次行こう次。
(好きなものはジーナさんとリッカさんです。あと半世紀以上前流行ったらしい青年コミックの・・)
―も、もういいって!!
(次はタツミさんの神機あたり行きましょうか。)
―ああ。興味あるな。
(凄く気難しい子です。適合当初はタツミさんの言う事を全く聞かず、タツミさんも困り果ててました。)
―そういや「適合率が低くて最初はまともに動いてくれなくて大変だった」って言ってたな。タツミさん。
(凄く人見知りが激しくて神経質な子です。でも今では誰よりも何よりもタツミさんが好きですね。)
―・・・。まさか神機にもその手のタイプが存在しているとは。
(ちなみに神機にしては珍しく徹底的に嫌いなものがありまして・・それは貴方も知ってるとある方なので言いにくいんですが・・。)
―ヒバリちゃんだろ。
(・・当たりです。ちなみに好きなものは言うまでも無くタツミさんです)
―誰もあずかり知らぬ所で妙な三角関係が発生してんのな・・。
(あ、続いてリッカさんです)
―神機って人間と一緒でいろんな奴がいるんだなぁ・・。知り合いが一気に増えた気分だ。
(次は・・カレルさんの神機行きましょうか。性格は素直で真面目。大人しい子です。)
―意外。持ち主が金に汚いからてっきり・・。
(・・元々は。)
―へ?
(・・。いまではちょっと変な方向にねじ曲がっちゃいました・・。素直で真面目な子だったんですけど)
―本っ当に人間味あるな。君ら。
(彼自身あまり興味の無かった素材・・プラチナ、金銀、装飾品を探知するようにカレルさんが調整した結果、逆にそれらを好むように偏食傾向が変化しました。でもあくまで持ち主のカレルさんにとってそれらは換金が目的なので皮肉にも彼の口には成長素材として一向にそれらが入らなくてですね・・その結果卑屈で歪んだ性格に・・。)
―・・それは気の毒に。
(今では毒の弾頭と毒舌が得意な皮肉屋と化してます。いい子だったのに・・。好きなものは永久に口に入ることは無いであろう金銀、プラチナそしてリッカさんです。)
(次は・・シュンさんの神機ですか)
―うん。
(シュンさん至上主義です。先に言いますがシュンさんが大好きです)
―濃いな・・。
(シュンさん全肯定です。そして「私のシュン君を傷つけようとする輩は毒に冒され苦しんで死ね」とのセリフと共に毒刃で相手をジワリジワリと嬲るのが戦闘スタイルです)
―おおう・・陰湿。
(シュンさんの独特の剣術に「どう!?ねぇ!?ウチの子すごいでしょ!?ねぇ!?」と言うのも日課ですね。)
―・・「モンペ」か。
(GEの女性陣に対しては例外なく警戒心をむき出しにしていますがリッカさんはとても気に入っているそうです。「彼女にならウチのシュン君をあげてもいい」だそうです。)
彼「等」が一通りの脳内会話を済ませた時に神機整備室のドアが開く。
「!」
「ん。あーエノハ。いらっしゃい」
リッカがどうやら私用を終えて帰ってきた。エノハも手を挙げて応える。
「邪魔してるよ」
(お邪魔してます!)
そしてレンがエノハに侵入して以来、今まで以上に聞こえるようになった神機達の「声」がエノハの耳ににぎやかに入ってくる。
レンの声ほどはっきりとした意味は解らないがリッカの帰還を歓迎する声である事は間違いない。
(((((((お帰り!))))))))
「・・だって」
「・・?」
「もう行くの?」
「うん。こいつの定期健診の時間だ」
エノハは固定された右腕をひらひらと振ってそう答え神機整備士を後にしようとリッカとすれ違う。
「そ。お大事にね」
「ありがと・・あ。リッカ!」
「うん?」
「よ!憎いね!この神機殺し!!」
「・・・は?」
お疲れさまでした。当分こんな感じで日常パートを出すつもりです。
また良ろしければお付き合いください。
有難うございました。