次の章あたりで少しバトルを入れてみます。
まだまだ試しの段階なので果たしてバトル描写がちゃんとできてるかどうか・・良ければ見てください。
新人来襲
エノハが極東地域に来て数カ月がたったある日、この支部に待望の補充人員が来た。
それも新型第二世代だ。支部長ヨハネスがロシア支部から呼んだ秘蔵ッ子。アリサである。
まだ十五歳の少女だが、神機適合率はエノハに匹敵し、模擬訓練、実地訓練の成績もぴか一の鳴り物入りの少女である。
第一部隊の新人、エノハ、コウタの二人も成長し、一部の大型アラガミ討伐任務アサインも許されるようになっていた上に、極東のエースのリンドウ、近接エキスパートのソーマ、遠距離支援のサクヤともともと実力が極東屈指のメンツが揃っていた第一部隊に新たにもう一人のバランサー、オールラウンダーの新型が入ることによって戦力だけなら間違いなく世界でも屈指の部隊となった。
支部長のヨハネスもこの部隊を大いに売り出していく気満々のようで、極東支部の戦力の充実を内外にアピールする事に注力していた。
それに新型で新人の少女、アリサのルックスがいいことも話題作りに一役買うというわけだ。
リッカは神機整備士という立場上、第一部隊の次にその新人の少女とコンタクト出来る立場だった。
アリサ本人より先にロシア支部から送られてきた彼女の赤い神機の構造を頭の中に叩き込むと同時に改良点や改善点も模索し、三日をかけて大体のことを把握した時、神機の持ち主は整備室に顔を出した。
お互いの自己紹介もそこそこに早速調整の終わった神機をアリサは見たいと申し出た。
十五歳という年齢にかかわらず、すらりと伸びた手足と抜群のプロポーションをした大人びた少女だが神機をまじまじと興味深そうに見る目は少し幼さが残る。そこは年相応にリッカには見えた。
「いい神機(こ)だね。調整し甲斐があるよ」
正直新型の神機調整は楽しい。銃形態と剣形態、二つの攻撃機構を両立させる調整は適度に難易度が高く、続々と追加される見た事の無いパーツの知識をひとつひとつ吸収する事もまた興味深い。更に既にエノハという第二世代が居る分、ノウハウは蓄積済みだ。この気難しそうな十五歳のエリートの少女にも気に入ってもらえる自信はあった。
「ふん・・いい腕ですね。有難う。助かります」
「お気に召してくれて嬉しいよ。また何かあったら遠慮なく言ってね?」
「はい。頼りにしています」
笑ってはくれないものの、少し表情が緩んだ。どうやらリッカをそれなりに信頼してくれたらしい。高飛車っぽい態度だが、彼女も新しい地で当然不安が無かったわけではないだろう。それに彼女が持っている物体は彼女の命がかかっている命綱だ。それを問題なくいつも通り、もしくはそれ以上の出来で仕上げてくれる技術者がいる安心感に国境はない。
しかし・・彼女のこの物言いや独特の雰囲気を気に入らない人間は出てくるだろうなとリッカは直感した。彼女自身悪気は無いのだろうが、少し愛想に欠ける。黙っていても目を引く美しさを持つ少女だけにそれが顕著に目立ってしまう。
リッカの直感は正しかった。彼女の任務が何度か発注されたのち、少しひねた連中は彼女に対して悪態と悪評を遠慮せず、また比較的良識ある一部のGEも彼女の物言いのキツさと高圧的な態度に少々手を焼いてるようだ。
「戦術理解度が高いのは嬉しい限りだが少し言い方がな・・避難民を誘導する際に脅しちゃだめだろ。パニック起こしたら収集つかねぇぞ・・」
防衛班班長タツミは避難民の誘導任務でアリサと同行した際の感想をヒバリやリッカ、そしてアリサと同じ班のエノハにそうぼやいていた。
(「ヒバリちゃんにデートを申し込む上でそんな仕事上の愚痴を聞かせるのはさすがにまずくないだろうかタツミさん」とエノハに突っ込まれ、タツミはしばらく落ち込んでいた。)
しかし当の彼女はそんな周りの反応を気にも留めず、黙々と任務をこなしていた。もともと実力は高く、頭のいい子なので数字は出すタイプなのだ。
だがさすがに周りの反応をうっとうしく思い始めたのかあまり人の訪れない整備室のリッカの前に顔を出すことが多くなった。
「ふぅっ・・!全く根性のない人達!あの程度で音を上げるなんてGEの名折れですよ!よくあれで今まで生きてこられましたね!忍耐力、自制心が足りませんね。極東のブシドーとやらはどこに行ったのやら・・」
―ご機嫌斜めのようで。
普段は周りの反応に対して積極的に反発することはない彼女だがリッカにはそういった面を見せるようになっていた。
「アリサ難しい言葉を知ってるね」
「日本語は三カ月でマスターしました。オオグルマ先生の母国語ですから」
他人に対して厳しい彼女だがロシアから彼女に帯同してきた彼女専属のカウンセラーだという医師に彼女は不思議なほどよく懐いていた。カウンセラーをわざわざ前の任地から彼女と一緒に転属させることは彼女への期待値の高さと同時に、彼女の不安定さを表す証拠でもある。
彼女の過去に何があったのか・・それをリッカが知るのはずいぶん後のことである。
彼女のバラエティ豊かな愚痴をリッカが頷きながら神機の調整をしている時、
ノックと同時にエノハが部屋に入ってきた。
「悪い。リッカいる?・・あ。アリサ」
「あ、エノハさん。・・どうも」
「取り込み中?」
「いえ。どうぞ」
「すぐ出てくからちょっとリッカ貸して?」
「どうぞ。ご遠慮なく」
日本語の返答としては当たり障りのない適当な言葉の選択だが、足を組んで目を逸らしてではいかんせん雰囲気と態度がなぁ~と、リッカは内心苦笑いした。
言葉の通り、ほんの少しでエノハは整備室を後にした。その後ほんの少しの沈黙の後、
「あのリッカさん・・一つお聞きしてよろしいですか?」
「・・?何?」
「エノハさんはどういうお方ですか?」
「エノハの事?」
「はい」
「どういうって・・そうだね。まだ私も良く解らない。変な人だなとは思うけど」
「・・・」
そういうことじゃなくて・・という表情をアリサはした。間違いなく恋心とかではないとリッカは断言できた。この子は正直すぎる。
―・・・成程。どうやら同じ新型としてライバル意識を持っている訳だね。
今まで彼女が配備された第一部隊の面々で特に愚痴の対象になっていなかったのはサクヤと彼だけだ。リンドウ、ソーマ、コウタは既に愚痴の対象になっている。特にコウタに対しての彼女の愚痴は辛辣だ。ちなみにサクヤは「リンドウはアリサにちょっとセクハラ発言が多いのよね・・あの軽薄な態度どうにかならないかしら。アリサが可哀そうよ」とリッカに愚痴っていた。しかし、同じ新型のエノハに対してだけは一向にその対象にしていない。
アリサ側としては同じ新型として強く意識しているにもかかわらず彼が相手にならないことが気にかかるのだろう。かといって粗探しをするほど特に突っ込みどころも無ければ、脱帽して称賛する点もない。要するに良くも悪くも愚痴るとっかかりが無いのだ。
「蛙の面にションベン」という諺を彼女は知っているだろうか。
言ってしまったら「ショショショ、ションベンってセクハラです!」とでも言われるだろうか。でもアリサが彼に行っている行為はまさにそれだ。
エノハは焚きつけてもダメだ。焚きつけられていることにも気付かないかもしれない。
まぁ・・技術者として現段階での比較はできる。純粋な戦闘力の面においてなら。それで納得してもらおうとリッカはエノハの神機、そしてアリサの神機の現在の状態をホログラフィにしてだした。
「彼の戦闘力、潜在能力は高いよ。文句なし。数字の上でも適合値も高いし、戦闘回数も増えてかなりの数の捕食を繰り返してるから神機の能力も高い。そして整備士特有の視点で言わせてもらうと・・まず刀身が貴方と同じ神機のキズの付き方をしてる」
「どういう意味ですか?」
「無駄なくアラガミの装甲の薄い適切な場所を狙って切ってるってこと。無駄な攻撃回数を減らせるうえに討伐時間も早くなる。おまけにその分当然刀身のダメージは少ないからそれを直す技術者としては楽ではあるね。逃げてるだけなら刀身は成長しないはずだし、オラクルの消費の激しいブラストを使う彼は手数を相当稼がなければまともに運用できないはず。ちゃんと手数も稼ぎつつ有効な攻撃を行っているってこと・・もちろんアリサ。キミもね。ここは・・引き分けかな?」
「成程」
「銃は・・貴方がアサルト、彼がブラストだから単純に比較が出来ないかな。ただし貴方の銃身の方が反動が少なくて連射がきく分、仲間をサポートする面なら貴方の方が上かもね。火力はさすがに劣るけど・・ここも引き分けかな」
この少女の性格が協調性に欠けていると言う事は既に周知の事実だ。ここは善導をしていかないと。実際にアサルトで出来る事はサポートに関してはブラストよりも上だ。そこを自覚してくれれば新型として大いに活躍できるだろう。
「ただ・・盾に関しては決定的な違いがあるね。貴方と彼は」
「!それは何ですか?」
「彼のシールドは傷だらけ。でも貴方のシールドは傷が必要最低限しか付いてない。回避の無駄がない証拠だよ。その点に関しては・・貴方の勝ちかな?」
「そう・・ですか!」
控え目に反応したように見えるがこの目の前の少女が内心相当喜んでいる事をリッカは感じ取っていた。初めてと言ってもいいくらい微かに、でも素直にほほ笑んだのを確認したからだ。相当の負けず嫌いなのだろう。この少女は。
「有難うございました。大変参考になりました」
「・・。でもこっちとしては盾にはもう少し傷を付けて欲しいかな?修理し甲斐がないもの。良かったらついでにコウタ君辺りを守ってあげたら?」
「ああ・・旧型の彼ですね?仕方ない・・解りました。新型の辛い所ですね・・」
「もちろん他の旧型の人もね。キミには彼らを盾で守ることも、剣で相手をひきつけて援護することも、一緒に火力を集中して一気に倒すこともできる。やれることが他の人たちより段違いなんだ」
「ふぅ・・面倒事が多いとも言えますね」
「はは。そうかもね。でも頑張ってね。私もあなたの神機をいつも完璧にしてみせるから」
「解りました。リッカさん・・有難うございました。そろそろ失礼します。カウンセリングの時間だ」
「またいつでもおいで」
リッカは手を振って新人の尖った、でも存外素直で一生懸命な少女を見送った。
リッカはまだ知らない。彼女の多くのことを。
それがきっかけで大きな事件が引き起こされ、第一部隊・・いや極東全体が大きく動き出すことをまだ誰も知らない。
物語は大きな展開を迎える。
原作をやられた方はアリサ参戦後、GEのストーリーがどういう展開になっていくかよく知っている方も多いと思います。1,2含めてあそこらへんのシナリオというか展開は結構面白い方に入ると思います。
これが面白くできるかどうかは全くの別問題ですが・・。
またよろしければお付き合いください。
有難うございました。